※この記事は、
4月9日 【一部内容起こし】テレビは原発事故をどう伝えたか?@Our Planet TV
2月6日 【関連動画あり】NHK調査:昭和40年代~今に至るまでに原発自治体に電力会社が支払った寄付金総額1600億円超【これも電気代に・・・】
1月25日 【内容起こし】日隅一雄氏:世界と日本の仕組みの違いと主権者が主権を行使するために@CNIC【後半】
6月10日 朝日新聞の「原発とテレビの危険な関係を直視しなければならない」をご紹介。などに関連しています。

本間龍さんという方が外国特派員協会で会見をされていました。
今一度、日本のメディア業界と広告代理店の関がどうなっているのかを見つめ直し、メディアとの付き合い方を考えるには良い機会だと思ったのでご紹介します。

どうぞ。





【以下、お時間の無い方のために日本語部分のみ内容を起こしています。ご参考まで】
※英語での質問者部分は基本的に空欄にしていますが、回答を見ていただければ内容は十分把握できます。

(本間龍氏)
 みなさま、こんにちは。
 只今ご紹介にあずかりました本間でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日はこの伝統ある外国特派員協会にお招きいただきまして誠にありがとうございます。また本日紹介のをとっていただいたジャパンサブカルチャーリサーチセンターさんに厚く御礼を申し上げる次第です。
 本日は私の英検2級程度の英語ではちょっと・・・<苦笑>お話するのは難しいと思いましたので、高松さんに通訳をお願いします。
 
 さて、本日は拙著『電通と原発報道』についてお話をする機会をいただき、誠にありがとうございます。拙著はみなさまよく御承知の日本最大にして、単体では世界第一の広告代理店、電通と国内第2位の博報堂というメガエージェンシーを中心とした広告代理店が、原発の報道にどのような影響を与えてきたか、またこれら広告代理店の業務がどのように行われているかを私の経験をもとにお話したいと思います。<一部音声不明瞭>
 私は博報堂に在籍していた10年以上前から、従業員としてはただ一人反原発NPOの原子力資料情報室の会員でございました。ですので、原発の恐ろしさをよく理解しておりました。
 ですから昨年の3月11日に原発事故が発生したときは、今でも思い出しますけれども、その恐ろしさに体が震える思いでした。
 事故後しばらくの間、原発事故の報道をつぶさに見ていたわけですが、当時日本のマスコミは、事故の重大さをほとんど伝えませんでした。その理由を考えた時に、電力会社の広告費に大変依存していた日本のメディアの体質に大きな問題があったということを再認識して、そしてそこには私が在籍していた広告代理店というものが非常に密接な関係を持っていたということを考えて、『電通と原発報道』を書こうと思いました。
 この1年間でいろいろな事故調査委員会で事故の検証が行われてきました。しかし、ほとんどの公の場合、メディアの責任というものに関して事故調査委員会等で語られたことはほとんどありません。ましてや、メディアに対して絶大な力を持っている電通と博報堂というような広告代理店の存在については、ほとんど公の場で語られたこともございません。
 しかし、原発の安全神話を演出し、多くの国民に間違った知識を与えてきたのは、まさしく広告代理店の仕事だったわけです。
 さらに、原発関連広告や事業を多く受注した電博(=電通と博報堂)の役割は、単に広告を制作するだけではありませんでした。彼らは、クライアントの危機管理も請け負っております。常にクライアントに不利益になるような報道に目を光らせています
 そして、ひとたび何かの事件や事故が発生した場合、ただちにメディアに対して、「そのようなニュースは流さないでほしい」という『要請』をいたします。そして、『要請』を受けたメディア側は、そのクライアントの広告の出稿料に応じて、手加減などを加えるかどうかというようなことを決定していく・・・というのが日本のメディアの現状であります。
 つまり、日本におけるニュースの報道の基準というものは、広告出稿料の多寡に比例していると言っても過言ではありません。
 これは何も東京電力をはじめとする電力会社に対してのみ行われていることではなくて、大手クライアントに対しては非常に日常的に見られることです。
 例えばトヨタのリコール問題は、議会での公聴会に社長が出席するまで日本のメディアではあまり大きく取り扱われませんでした。トヨタはメディアにとって最大級のスポンサーであり、そのネガティブ情報を大々的に報道することは、同社の怒りに触れ、その広告出稿を失う恐れがあったからです。
 しかし、こうしたメディアの対する『要請』は、当然ながら広告出稿料を背景にした圧力にほかなりません。そうしたクライアントに対する過剰なサービスが日常化し、ことの善悪に対する判断能力をマヒさせた結果、原発のネガティブ情報を悉く抹殺して、メディアの過剰な自己規制を生じさせる原因となったのだと思います

 では、なぜ電博にそのような『要請』がメディアに対してできるのでしょうか? それは両社で合わせて日本の広告費の7割のシェアを占めているからです。とくに電通のシェアは5割近くで、
「電通の期限を損ねると、明日から広告枠を埋めてくれないのではないか」
という恐怖感があらゆるメディアに過剰な自主規制を生ませているのです

 ただ、それでは電通が全社を挙げて原発を推進していたかというと、ことはそう単純ではありません。確かに同社は大手広告代理店では唯一、原子力産業協会という組織に加盟していますが、だからといって電通の中に司令塔があって、何がなんでも原発を推進していこうと言っていたわけではないんです。
 同じことは博報堂にもいえますけれども、両社ともに原発広告を作っていたのは、両者の中では決して大きくは無い、むしろ小さい・・・電力会社を担当する部署だけだった。特に信念も無く、クライアントの言われるままに、ただひたすら忠実に大量の原発推進広告を作っていたんです。
 ですから、恐らく両社の社員の中で、今回の原発事故に関して何かしらの責任を感じてるという人は、おそらくほとんどいないというふうに思ったのです
 そこには日本人特有の無責任者が、「会社としても電力という大手クライアントの機嫌損ねたくない、売り上げを失いたくない」という保身の論理が働いていました。そしてそれがメディアをも縛って、反原発報道を圧迫して、電力会社の増長へと繋がったのだと思います。
 みなさんよく御承知のとおり、報道機関は権力を監視する第4の権力と言われているんです。しかし日本の場合、それが権力側ではなく国民を監視するという意味だと指摘される方もいます。
 私は、広告代理店は夢を売る会社だと思って18年間働きましたが、こと原発のPRに関する限り、電博は自らの影響力の大きさの自覚が無い、金銭獲得以外に目標が無い第5の権力ではないかと感じるようになりました。
 その第5の権力は原発を推進する電力会社と政府からの広告費欲しさに、自らの影響力の自覚がないまま、推進側に立ったという自覚もないままに、過度にメディアを萎縮させて、反原発報道を圧迫した結果、チェックがきかなくなった電力会社が増長し、あの大事故につながったのだと思います。
<②開始>
 今年東電は国有化され、日本の民意は脱原発の大きく傾きました。しかし、広告代理店の責任追及というのはなされず、恐らく彼らも自己批判や総括というものをしていないと思います。または電事連をはじめとする原子力村の推進勢力は未だに温存されたままです。
 <③開始>
 この体制が温存されるかぎり、またいつの間にか原発推進勢力によるプロパガンダが息を吹き返す危険性があることを、私は大変憂慮しております。
 それを防ぐためには、広告代理店は、今後二度と原発関連の広告を制作しない・関わらないというような、真摯な反省が必要なのではないでしょうか。
 ところが、日本の大手メディアは電博の逆鱗に触れることを恐れ、今お話したような私の問題提起を国民に紹介することを避けています

 ほかに類焼がないのに大手メディアで本書がほとんど紹介されない事実がそれを物語っていると思います。
 しかしながら、私もかつてその一員として無自覚に推進側に身を置いていた者として、この事実はこれからも訴えていかなければならないと思います。
 しかし、幸か不幸か、日本は常に外圧=黒船に弱いのです。ここは外国メディアのみなさんに、日本のメディアと広告代理店の問題点を大いに報じていただきたいと思っています。
 本日は外国のメディアの方々と活発な議論ができればと思ってお邪魔しております。
 ご静聴ありがとうございました。


【質疑開始】
(質問者)


(本間氏)私は電通の社員ではないので、個別具体的なお話というのは、実はそんなに知りはしないのです。ただ、3.11以前に、もう電通とか博報堂という広告代理店が広告費というものを逆手にとって、メディアに対して
「とにかくクライアントの不利益になるような発言をメディア、テレビ、新聞の場ではするな」
と、そういう体制が完全に出来上がっていたんですね。
 具体的な僕が気づいた事例というのは、例えばテレビ朝日の朝まで生テレビという番組がありますが、あれが去年の3月の終わりにあったんですが、その時に登場していたいわゆるお話をする人たちが、かなり原発推進寄りの人たちが多かったんですね。あれだけの大事故を起こして、これだけなんで原発推進側の人間が集まってるんだろう?っていうのは、これは見ている人も非常に不思議だったと思うんですが、それは当然ながら、あの番組のクライアントを引っ張ってきてるのはほとんど電通なので、電通の側からそこに「そのコメンテーターは推進側の人を多くしろ」というようなプレッシャーが当然働いてるんだなと思いました
 もう一つ、非常に、これはもうみなさんよく、今まで何度もお聞きになったと思いますけれども、今年の3月11日にあるテレビ朝日の報道ステーションで、アナウンサーの古館さんが、非常なプレッシャーを受けている・・・要するに
『「原発特集をやるな」というような強いプレッシャーを受けています』
というのをテレビで発言されたんです
。それは私は本の中にも書きましたけれども、あれなんかは非常に具体的な・・・報道ステーションというのはほとんど電通さんがクライアントを集める担当ですので、それは当然ながら「もし古館さんがこれ以上批判的な報道を繰り返すならば、アナウンサーを降りてくれ」と、そういうプレッシャーがあったんだなと。それは裏側を知っている人間としては、非常によくわかりました
 
(質問)NHKは昨年、原発災害についてすばらしいドキュメンタリーを作成している。それについてコメントを。
 『要請』は広告代理店の番組製作者への圧力といっていたが、要請の具体的なやり方は?


(本間氏)今NHKはどうだったんだろうかということと、メディアに対する広告代理店がどうやって『要請』やるのかっていうご質問でした。
 NHKに関しては、(この本には)ほとんど書いていません。ただ、私が感じているのは、NHKというのは当然広告をとっていないので、電通と博報堂が直接影響を与えるということは、確かにできない。
 ただ、NHKといえども、最近非常にいわゆる民報関連の人たちであるとか役所の人たちとかの天下りですとか、そういう人的な交流というのは結構しています。ですので、こと原発に関して言いますと、いろいろな手がやっぱり伸びていて、NHKといえどもなかなか反原発というふうにはちょっと立てていないかなというふうに私は感じています。もちろん、非常に優秀なルポというのを何回も見ましたので、そういうものは、やっぱり流石NHKというふうに敬意を払っています。
 これは本に書いたんですが、民報がほとんど原発の事故の深刻さをまだ癒えていなかった3月20日くらいまでの間、唯一非常に的確な指摘をしていたのは、NHKの水野アナウンサーであったと思います。ただ、いろいろちょっと・・・聞こえてきた声によると、水野アナウンサーに対してNHKの上層部から「そういう不確定なことは言うな」というような非常な大きな圧力があったというようなことをちょっと耳にしたことはありました

 次に、広告代理店がメディアに対してどのように『要請』をするのかということに関してですが、これは実はこちらの本に非常に詳しく書いてあります。
 私ももちろん体験したことがあるんですが、例えばある企業で何か事故を起こしたとします。どこかの工場で例えば火災が起きたとします。そうすると、その火災が起きたというニュースがまず広告代理店にも入ってきます。そのニュースがどれくらいの大きさで報道されるのかというのを、私が営業部だったらすぐに電話とかで新聞社やテレビ局に聞きます。そうやって聞いて、たとえば「これは大ごとだから明日うちの新聞は一面で扱うぞ」という予定になってるということが、本当は我々は知ってはいけないんですけれども、メディアの営業部さんを通じて・・・メディアには営業部と報道部があります。これはもちろんセパレートしていますけれども、当然博報堂とか電通から「そのニュースはどうなってるんだ?」という質問がいくと、営業部が報道部の方に聞いて、報道部も口が堅ければ教えてくれないんですけど、そこはなんとなーく・・・情報が漏れてくる。それで「一面になりそうです」ということになると、これは非常に大ごとなので「なんとかなりませんか?」・・・「なんとかなりませんか?」というのは、例えば社会面に持っていってもらえないかとか、例えば夕刊にもっていってもらえないか。朝刊と夕刊では当然購読部数が違いますから。
 そうい配慮をお願いするわけです。
 お願いするときはもちろん背広で行って、普通にお話します。
 例えば、そういう交渉をしにいくときには、相手がA新聞社だったとしますと、そのクライアントがA新聞社さんにこの1年間でどれだけ広告を出したかという資料を全部持っていきます。要するに、「15段何回打ってますね」とか、「総合???何回打ってますね」とかそういう資料を私たちは全部持っていきます。
「A新聞さん、あんまりこのニュースを大きく扱っていただくと、今年はちょっと・・・広告を減らさざるをえませんね」
とか、または
「来年はちょっともう広告はなくなっちゃうかもしれませんね」
みたいな、「なくなりますね」とは言えないので、「なくなる・・・ちょっと難しくなりますね」みたいな、そういう交渉をします。
もちろんそれだけだと相手の機嫌を損ねてしまうので、当然アメとムチで、
「ここをちょっと穏便にしていただければ、また広告・・・ちょっと多く出すつもりがあるようです」
とか、そういう話をさせていただきます。
 大体そういう感じですが、どうでしょうか?
 
(質問者)思ったとおり! Just as I thought!
<会場苦笑>


(質問者)ニューヨークタイムス。本間さんは18年間博報堂で勤めていらしたんですが、JCO東海村の事故とか発生して、その時の『要請』とかはご覧になりましたか?今の『要請』の質問に続いて、ちょっと具体的な実例を聞きたいんですけど、原発報道に関しての実例はご覧になったことは?


(本間氏)いや、それはないです。というのは、私は電力の担当というのは実はやったことがないんですね。実は私、博報堂の北陸支社というところに5年間いたんです。そこには北陸電力というのがあります。そこは原発を1基持っているんですが、北陸電力の担当をやらないかと言われたので、私は
「それはできません。自分の信条として、原発の広告を作ることはできない」
というふうにお断りをしました。そのとき上司だった方が非常に良い方で
「それはわかった、やらなくていい」
と、チャンスを逃しました。まぁ、やらなくてもちろん良かったですけど、実際のものは見ていない。
 実際のものは見ていませんが、広告代理店がどうやって『要請』するのかは、全て同じなんです。ですから、トヨタもそうだし日産もそうだし、パナソニックもそうだし、何でもそうなんです。
 だから原子力に対してそれをやらないってことは有り得ない。
 ですから、これはもう絶対にやってるなというふうに申し上げておきます。
 『要請』というふうに言ってしまうと、私が元居た広告代理店の人間以外は、非常に特殊なことというふうに思われるかもしれないですが、私たちのように広告代理店の営業をやっている、またはやっていた人間にとっては、これは別に特殊でも何でもなくて、もう本当に日常茶飯事にやっていること。もう空気を吸うようにやっていることなんですね。
 だから別にそれが悪いとは全く思ってないんです。それはクライアントのためだから。お金をいただいているクライアントのために、そういうクライアントが嫌がるニュースは、やっぱり何とか少しでも食い止めたい。そこはすごい・・・忠誠心があるんですよ
 2010年度で東京電力の広告費というのは200億円以上あったんですね。電事連を含めたら全部で1000億円以上の広告費を1年間で使っていたわけです。これは広告代理店にとっては、非常に・・・当然ながら大きな魅力ある得意先ということにどうしてもなってしまうんです。そうなりますとやはり最上級のサービスを博報堂も電通もします。最上級というのは、そういう危機管理をも含めたいろいろな作業、メディアに対する『要請』ですとか、本当に毎日ニュースを全部チェックしています。ですから、そういう会社と提携してますので、例えば日本における朝刊すべてをダーッと全部チェックして、例えば東電だったら東電のニュースが出てるかどうかというのは、大体お昼くらいには判ると思うんです。それでもし例えば
「どこかの地方紙に、ちょっと東電の悪口が書いてありました」
ってことになると、それを持ってダーッと走っていって、
「こんなニュースが○○で載ってます」
という話をします。そうすると、別に東電じゃなくてもいいんですけど、クライアントとしては、
「このあとこれはどういう記事になっていくのか?後追い報道はあるのか?どういう展開をするのか?そういうことを電通さん、博報堂さんから聞いてほしい」
というふうに言われて、すぐにまた新聞社に連絡をする。やりとりをして、
「これは今日1回で終わりそうです」
というのであれば放っておきます。
「何回もシリーズで追及するようです」
ということになると、
「それは何とか勘弁してもらえませんか」
というお話をちょっとさせていただく。
 あとは、もちろんその新聞社さん、メディアさんの役員ですとかそういうところの判断ということになっていきます。
 
(質問者)
<④開始>

(本間氏)今「忠誠心とお金がどっちが大事なんだ」というご質問をいただいたんですが、これは広告代理店にとっては両方大事なんですね。ただ、広告代理店が、特に電博クラスの広告代理店がもつクライアントに対する忠誠心は、恐らくその会社に勤めている社員と同等、或いはそれ以上のものがあります。
 それと、今大変興味深いご質問があったわけなんですけれども、要するに自然エネルギー関連と企業が当然今これから成長していきますよね。それに対して電通とか博報堂っていうのはどうしてるのか。例えば電力、または電事連と自然エネルギーを担当してる部署が対立したりしないのかというご質問があったので、それは非常に良い質問なんですけど、結論からいうと全く対立しないんです。
 なんでかというと、広告代理店というのは、自分の意思を持っていないんです。要するに、自分は原発推進だろうが脱原発だろうが、どっちだっていいんです。言ってしまえば、お金をいただけるんだったらどちらでも構わない。お金を払ってくれる企業にとにかくくっついていく。ですから、これから今までは原発にくっついてきた。でも原発が駄目というふうになれば、次は自然エネルギーでみんなそっちへダーッと。当然電博の??は、優秀な人材は今まで電力会社のほうにつけていたら、それをひっぺがして自然エネルギーの企業にどんどんシフトしていく。
 非常にリアリスティック。そういうふうな考え方をしてるので、社内で対立するとかいうのは全く無いです。


(質問者)


(本間氏)今、「企業に勤めている忠誠心というものと、それを越えて国全体を考えるという気持ちというか、そちらの話を僕はしている。それが僕は後者のほうであるように感じているけれども、どうしてそう思うのか?」というご質問だったと思うんですが。
 私も広告会社に18年間いましたので、仕事自体に非常に誇りを持っています。今でも広告の仕事は人々に夢を与えるので、誇りを持ってるんです。
 ただ・・・ですから時には『要請』とかそういうことももちろん致しました。ただ、原発というのはちょっともうクラスが違うなと思ったんです。原発事故が起きると、日本という国が消滅してしまうわけですよ。これは他の企業のアクシデントとか、悪事もするし隠すですとか、そういうものとは全くレベルが違う。これはもう私は50歳ですからいいんですけど、私の下の世代、子供、私は子供もいます。そういった子供たちに日本という国を残すことができなくなってしまうという、そういう・・・これは別次元の・・・非常に恐ろしい・・・言葉が見つからないんですけど、『悪である』というふうに感じたんです
 ですから、あまり古巣の悪口を言うのはどうかというふうにもちろん思うんですが、このことに関してのみ、やっぱりこれは黙ってはいられないなというふうに思った次第です。
 先ほども申し上げたんですが、原発事故の原因というのは何なのかというのは随分語られているんです。もちろん最大の原因は地震があって津波が起きた、これはもう絶対そうです。2番目というのは、東電と政府・・・政府っていうのはこの場合自民党も全部ですけど、あまりにも原発事故に対して無防備だったというのが二つ目。
 3つ目に、やっぱり私は電力会社と政府にスポイルされた(ダメにされた)メディアの責任というのが非常に大きかったのではないかというふうに思ってるんですね。
 ただこの3つ目というのは、メディア自身がメディアのことを裁かなければならないというので、なかなか語られない。 
 じゃあその後ろにいる広告代理店については、誰も当然ながら話そうとしない。
 そういうことがあったんです。
 これはやっぱり原発を悪だというふうに思っている人間としては、やっぱりちょっと許せないと思っています。


(質問者)広告のスペースを確保する方法は?


(本間氏)メディアBuyingのやり方のご質問だと思うんですけれども、日本の場合は二つあるわけですね。一つは当然クライアントさんから、例えば「朝日新聞の15段の広告を出したいので、今日10月16日、15段一面を押さえてください」というオーダーのやり方というのがある。これは普通のオーダー。多分諸外国でも同じようにやってるんですけど、それとちょっと違ったやり方で、特に電通が非常に強いんですけど、あらかじめ10月16日の15段の枠を戦略的に確保しておいて、その15段をいろいろなクライアントさんに売りに行くというやり方。これは電通とか博報堂クラスですとできるんですね。要するに予約という形。保持しておくということができる。これができるのは、電通と博報堂くらいです。
 結局、そうやって15段を連続して押さえておけば、開いて開いて開いて・・・やると、広告が続くようになります。それを面白い広告ができますよとか、そういう非常にテクニカルなお話ができるんですね。
 その二つのやり方があります。


(質問者)ドイツの友人が日本の未来について、日本政府が原発を諦める決断をするかどうか興味を持っている。あなたは電通や博報堂はお金だけのために働いているという。
 こんな本を出版して、あなたはとても良い仕事をしたと私は思っているが、あなたの将来の収入が心配です。


(本間氏)<イタリア語>
 あ、すいません。ちょっと今、イタリアの方だったので、私はイタリアの小学校に行ってたことがあったので、それでちょっとお話をさせていただきました。
 「クリーンなエネルギーに電通とか博報堂が転換というか、そっちのほうについていくっていうふうにしていくのか、またはそういう優秀な経営陣がいるのか、具体例があるのか?」という質問だと思うんですけど、残念ながら私は部長職一歩手前くらいで辞めてしまったようなダメ営業だったものですから、経営の中枢にはあまり縁が無いんですね。
 さきほども申し上げたんですけれども、電通とか博報堂っていうのは、本当に全く・・・結果的には原発推進側にくっついていたわけですけど、それは原発推進側がお金を持っていたからであって、原発が正しいとか間違ってるとか、そういう判断をして原発推進側にくっついていたわけではないんです。ですから、クリーンなエネルギーがこれから世界の主流になって、日本の企業もそこにくっついていけば、広告が発生するぞというふうに思えば、すぐにシフトチェンジしてそっちへついていく。これが優秀な広告代理店の経営陣の考え方です。そこにポリティックス(政治)は全く関係ない。そういうものを持ったら、逆に危険なんです
「わが社はこうだ」
っていうふうに決めてしまうと、結局その路線が間違えた時に、方向転換にどうしても時間がかかる。そういうことをしないことによって、電博というのは今まで強くなってきた。
 そういう背景があると思うんです。
 それと、「今回この出版するにあたって大変だったのじゃないか」というご質問でした。
 これは全くそのとおりで、やはりこういう電博の名前が出るような書籍というのは、日本の大手出版社からはほとんど出版できません。お話は何社かさせていただいたんですけれども、担当レベルではみなさん「いいねぇ!」って言うんです。
 言うんですが、当然上層部に持っていくと、
「バカ野郎!ふざけんな!」
というふうに言われるわけですね。
「何考えてるんだ!」
と言われるんです。
 それほど・・・この本を読んでいただくとわかるんですが、別に電通と博報堂の誰が悪いであるとか、そういうことを書いたわけではないです。そういうシステムが働いてる、中身のシステムを説明した本なんですけど、「それでも嫌だ」「怖い」・・・誰が怖いのかっていうのはまた判んないんですけど、とにかく電通の誰からか、博報堂の誰からか、
「うちの会社の名前なんか出しやがって!」
と言われるのがものすごく怖い。本当はこんなちっぽけな本を出すだけでもものすごく怖がる。
 ですから、反原発報道なんてできるわけが無かったんです。
 最後に、「こんな本出してこれからどうするんだ?」という質問があったみたいなんですけど、そうですね<苦笑> 
 私はもともと広告会社から足を完全に洗ってしまった人間で、ちょっと経歴を読んでいただければお判りになるんですけれども、私刑務所にも1年間入っておりました。4年前に出所しています。ですので、本来であればそちらの方面の本をずっと書いていこうと思っていたんです。今までの3冊はそれに関する、日本というのはやはり刑務所は非常に問題があります。非常に再犯率が高いということで有名です。それに関する本を書いていました。
 ですから、今回こちらのほうが当然非常に反響を呼んでしまったわけですが、またそういう刑務所関係の本で、平穏な生活に戻っていければいいなと思っています。


(質問者)日本語で質問します。ビデオニュースドットコムの神保です。
 本来はメディア側に聞かなきゃいけない質問かもしれないんですが、恐らくメディアに聞いても誰も答えてくれないんので、是非本間さんに聞きたいと思います。
 今の話で、代理店側の事情というのは多少判ったんですが、なぜメディアがそのような状況、つまり電博に依存度を高めることによって、非常に自分たちを弱い立場に置いているように聞こえます。なぜメディアはそのような状況を許してる・・・つまり電博を使い続けなければいけないのか?メディアにとって電博を使い続けなくてはならない理由。
 それから先ほど電博は70%のシェアというお話がありました。なぜ電博にのみそのように力が集中したのか?それは例えば独禁法上の問題になるようなことをメディアが報じたことは一度でもあるのか?その辺を教えてください。


(本間氏)非常にやっぱり大切なご質問だと思うんですけれども、なんでそのメディア側が電博に特に依存するかというと、先ほど新聞の場合のオーダーのシステムをご説明しましたが、新聞で例えば15段の広告スペースが4ヵ所空いていたとします。それが必ずしも毎日売れるとか限らないわけです。要するに、今日は半分しか売れないかもしれない。明日は1ページも入ってないかもしれない。でも、そういう時に電博というのは、そこをあらかじめ買い切ってくれる。そういうマネーパワーがあるんです。そこを買い切ってくれていれば、変な話、その広告主と電博がどこからか運んできてくれる、とにかく何とか埋めてくれるんです。
 それがすごくメディアにとっては魅力なんですね。
 自分たちで広告主を探さなくていいわけですね。しかもそれを相当大きな規模でやってのけてしまう。あらかじめ15段とか。これテレビでも一緒です。テレビでもラジオでも全部同じです。あらかじめ枠を押さえてくれる。先払いしてくれるんです。
 そこがあるから、メディアは電博の依存から逃れられないというのがあると思います。
 それから、先ほど「電通のシェアが5割ということで、独禁法で問題になったことはないか?」これは当然あります。
 7,8年前に国会でもちょっと問題になったことがあって、独禁法にかかるのではないかという調査が始まるというところまでいって、なぜか立ち消えになった。
 当然、なぜかというのは・・・電通さんの人脈のすごさもあった。例えば電通出身の衆議院議員が今自民党に3人か4人くらいいます。
 そういうことも電通はぬかりなくやってるんです。
 ちなみに博報堂はいません。そういう政治力は電通のほうが圧倒的にあります。
 そんな感じでいいですか?


(質問者)ハンガリー。クライアントが電通や博報堂にアプローチして、さまざまな世論誘導を依頼してくることがあると思う。
 博報堂の経験で、どういうテーマでそういう依頼があるか?


(本間氏)広告代理店にとっては、世論を形成する・変えるというのは、まさに毎回課せられている仕事なんですね。要するに、
『何かの企業がこういう新製品を出した。これを売りたい。でも今まで世の中に無かったから、これをなんとか人に買ってもらいたい。』
っていうことがまさに新しい世論というか、そういうものを作る作業なんですよ。ですから、それをするために最適なPubulic Relationを考えるというのが私たちの仕事であるわけです。
 これはもう新製品とかが出ればそういうことをやりますし、私の経験上では、北陸支社に居た時に、富山県と富山市のオピニオンリーダーを集めて・・・あれは何だったかな・・・文化に関するオピニオンリーダーたちを集めての大きな会議みたいなのを開いたことがありました。富山市が作ったすごく近代的なクラッシックな西洋ホールがあったんですが、あまりにも予算を使ったので市民の方から「そんな贅沢なものを作りやがって」と反論がいっぱい出たので、それをどうおさめたらいいのかということに関して、新聞広告を出すですとか、識者を呼んでお話を聞くとか、そういうことをやって反対の世論を少し和らげるというようなことをやったことがありました。
 
【以上】

失礼します。
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