20120920 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章



【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(千葉氏)今日は毎日新聞論説員の近藤しんじさんと一緒にお話を伺います。
 今日もスタジオにはたくさん小出さんへの質問が届いていまして、それをお伺いしてまいります。
 まずはこちら。千葉県柏市にお住まいの方。
『先日、枝野経済産業大臣が建設中の原発の工事再開に合意したという報道がありました。ところで、大間原発は、燃料がフルMOXの特殊な原発ということですが、MOXは運転中の制御が難しいだけでなく、使用済燃料になれば放射線量が高く・・・放射能量が高く、仮に地層処分が決まったとしても、埋められるレベルまで線量を下げるために、プールで100年保管しなくてはならないという話を知りました。
 これは本当なんでしょうか?詳しく教えてください』
というメールです。
(小出氏)えー、100年という年数が本当にそうなのかどうかということは、明確には言えません。ただし、MOX燃料を使った原子力発電所から出てくる使用済燃料は、普通の原子力発電所から出てくる使用済燃料に比べれば、発熱量が高くてそれが長く尾を引いていくということは本当です。
 そして、これまで普通の原子力発電所から出てきた燃料は、原子力発電所の敷地の中に数年・・・およそ5年くらいまずは冷やしておいて、それから再処理工場にようやく移動できると、そして再処理をして取り出して、ガラス固化体というのを作ろうとしてきました。もっともそれもうまくいっていないのですが、うまくガラス固化体ができた暁には、50年後くらいには埋められるのではないかという、そういう期待で作業が進められてきました。
 しかし、MOX燃料の場合には、まずは原子力発電所の使用済燃料プールから再処理工場に移すまでに、もっともっと長い時間プールの底に沈めておかなければいけませんし、もともとMOX燃料を処理できるような再処理工場自体がありません。どうしていいかわからないままここまで来てしまったわけですが、最終的にはやはり使用済の燃料のままなんとか始末をつけるということになっていくだろうと思いますが、それも何百年先のことになるか判らないということになってしまいます。
(千葉氏)そういう状態の燃料を使う原子力発電所を新たに作ろうということなわけですね?
(小出氏)そうです。
(近藤論説員)小出さん、そもそもこの建設中の原発の工事再開という点なんですけれども、『2030年代に原発ゼロにする』という方針と明らかに矛盾してますよね?
(小出氏)そう思いますよね。誰が考えてもそうだろうと思うのですが。
(近藤論説員)そのあたりの方針については、いかがですか?
(小出氏)要するに日本というこの国が国の体裁を成していないのだと私は思います。少なくとも原子力というものに関しては、基本的に一貫した政策が全くありません。グラグラ、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしているだけで、もともと2030年にゼロにするか15にするか、25にするかということを国民に問うたのに、その結果「ゼロにしろ」という声が多かったにも関わらず、今度はいつの間にか『2030年代』とかいうように言いだしたのですね。『2030年代』というのは39年までということですから、もう全く話にならないほど酷い話だと思います。
(千葉氏)うーん・・・。更にですね、こんな質問のメールがきてますのでご紹介します。奈良県橿原市にお住いの方。
『革新的エネルギー環境戦略の原案によると、高速増殖炉原型炉・もんじゅについては、使用済核燃料から出る廃棄物を減らすための研究炉とした後に廃炉とする方向で調整されているそうですが、廃棄物を減らすための研究って、もんじゅでできるんでしょうか?』
13
9月15日【内容起こし】神保哲夫氏: 政府のエネルギー政策の内容解説と決定過程の流れを報告@ビデオニュースドットコムより

(小出氏)これもですね・・・原理の問題と実際のもんじゅという原子炉という問題、ちょっと分けて考えた方がいいと私は思います。
 原理的に言うとですね、いわゆる高速中性子というものを使うことができるのであれば、私たちは超ウラン元素と呼んでいる寿命の長い放射性物質を寿命の短い放射性物質に変える可能性があります。
 ですから、「そういう研究は必要か?」と問われると、私も「必要かもしれない」と心の片隅で思わないでもありません。
 しかし、もんじゅというような原子炉がその研究のために向いているかと言えば、全く向いていませんし、もんじゅを動かすなどということは途方もない危険を抱えてしまいますし、途方もないまたお金も払わなければならなくなります。 
 本当にその研究が必要だということであれば、もんじゅはまずは諦めて、基礎的な研究から始めるべきだと思います。
(千葉氏)まぁ、動かすための理由を後付けでつけてるという感じにも聞こえなくもないんですが・・・。
(小出氏)はい。要するにそういうことなのです。もんじゅというものを作ってしまって、すぐに廃炉にすることもとても難しいものなので、なんとかして延命したいと思っているのが一つと、それから昨日もちょっとお答えしましたけれども、もんじゅというものを発電の為であろうと研究の為であろうと、動かしてしまうと、超優秀な核兵器材料が生み出されます。そのことをどうしても狙っている人が政治の世界にはいるだろうと私は推測しています。
(千葉氏)なるほど、そういう事情があるんですね・・・。判りました。
 次なんですけれども、15日の毎日新聞に原子炉の廃炉についての記事が載っていたんですが、原子炉はいつかは必ず廃炉になるわけですけれども、事故を起こしていない原発でも原子炉を止めて建屋を解体して、更地にできるまでにはどんな過程があってどれくらいの期間がかかるものなんでしょうか?
(小出氏)どのくらいの期間がかかるかは、実際には判りません。まだちゃんとやった原子力発電所は世界中に一つもありません。
(千葉氏)え!?一個もないんですか?
(小出氏)はい。小さな原子炉を解体したことはありますけれども、実用規模の原子力発電所を解体した例は世界中一つもありません。
 それで、どういうことをやらなければいけないかというと、廃炉ということには大きく分けて二つあります。
 一つは、もう全く手を付けることなく原子炉そのものを全部、例えばコンクリートで封鎖してしまってですね、今まで使っていたものをそのまま墓場にしてしまうというやり方です。
 それからもう一つは、日本がそれをとろうとしてるやり方なのですが、とにかく全部バラバラにしてしまって更地に戻すというやり方です。
 ただバラバラに戻してしまうといってもですね、放射能まみれになっているわけですから、壊すだけでも大変です。例えば日本で一番始めに動き出した原子力発電所は、1966年に動き始めた東海第一原子力発電所です。その発電所は1998年に32年間動いた段階で停止しました。それからようやく廃炉作業というものが始まりました。放射能の汚れの少ないところから少しずつ解体していますけれども、未だに原子炉本体には手を付けることもできないままで放ってあるという、そういう状態になっています。
 そして、その廃炉作業というものですけれども、まぁ何十年かかかるわけですが、様々なごみが出てきます。大雑把にいうと、一つの原子力発電所を解体すると、60万立方メートルのゴミが出るという試算になっています。ただ、それを全て放射能のゴミとしてお守りをしようと思うと、大変な労力とお金がかかってしまうので、「それはもうできない」と。
「放射能で大変汚れたものは、かなり深い穴を掘って埋めよう。」
そして
「もう少し放射能の汚染の度合いの低いものは、もうちょっと浅い穴を掘って埋めよう」
というような計画になっているのですが、放射能の汚染が比較的少ないものに関しては、もう野放しにしようという、そういう方針になっています。
(千葉氏)うわぁ・・・
(小出氏)それを私たちは『クリアランス』という言葉で呼んでいますが、例えば放射能の汚染の少ない鉄材などが野放しにされる。そうすると、屑鉄屋がそれを買っていくわけですね。そうすると、その屑鉄は回収されて、また鉄製品になって市場に出回ってくることになります。
 例えば、家庭のフライパンというようなものの中にも、その鉄材が混じりこんでくるだろうと考えているわけです。
 じゃあフライパンを使って料理をした時に、その行為によってどれだけの被曝をするかということをモデルで計算をしまして、1年間に10マイクロシーベルトという被曝を越えないように計算で得られるのであれば、もう野放しにするという、そういう基準になっています。
(千葉氏)うーん・・・
(小出氏)ですから、これからたくさんの原子力発電所を解体することになるわけで、もしこれまでの日本の政府の方針が実行されてしまうのであれば、私たちの生活の中にいろいろな形で原子力発電所の放射能が出回ってくるという時代になります。
(千葉氏)うーん・・・。あの、新しく原子力発電所を作るというよりは、むしろ本当にきちんと安全な廃炉の仕方っていうのを早く研究した方がいいっていうことですね。
(小出氏)そうですね。もう残念ながらこれまでに既に50基を超える原子力発電所を作ってしまいました。それを壊す手段すら知らないままここまで来たわけで、本当に・・・皆さん、立ち止まってまずは考えるべきだと私は思います。
(千葉氏)はい。判りました。小出さん、どうもありがとうございました。
(小出氏)ありがとうございました。
【以上】

【参考記事】

エネルギー・環境戦略:「30年代原発ゼロ」決定 識者の話
毎日新聞 2012年09月15日 東京朝刊
 ◇状況に応じて柔軟に見直しを−−井熊均・日本総研創発戦略センター所長
 「原発ゼロ」という言葉が独り歩きしているが、「40年運転制限の厳格適用」「原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働」「原発の新増設はしない」の3原則は国民的議論を反映した成果と言え、評価できる。
 新戦略が想定する再生可能エネルギーの大量導入や、IT(情報技術)を用いたエネルギーの効率的な制御による省エネといった方向性も決して間違っていない。この分野は新興国などでもニーズが高く、原発など既存の大規模電源を推進するよりも新たな産業が生まれる余地は大きい。
 2030年のエネルギー社会を現時点で描くのは限界がある。状況変化に応じて柔軟に見直していけばいい。

 ◇廃炉に必要な技術、維持できず−−澤昭裕・21世紀政策研究所研究主幹
 選挙を意識したのだろうが、あまりに拙速な判断だ。原発ゼロになるのは30年代だといっても、技術は急速に失われる。夢のない業界に進んで就職する若者はおらず、現役の技術者にも転職先を探す人が出てくるだろう。廃炉に必要な技術の維持もままならなくなる心配がある。
 近い将来停止する原発のために、電力会社は数千億円もの巨額な安全対策費用を調達できるだろうか。電気代は大幅に上昇し、電力不足も解消されず、生産拠点の海外流出が加速することになりかねない。せめて今後国会に提出する関連法案には、数年後の見直し規定を盛り込み、原発ゼロの弊害が顕在化した時に備えるべきだ。
http://mainichi.jp/feature/news/20120915ddm008010104000c.html

失礼します。
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