20120906 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章


【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(千葉氏)今日は毎日新聞論説員の藤田さとるさんと一緒にお話を伺います。
 では小出さん、今日はリスナーの皆さんからのメールで寄せられた質問がたくさんありますので、それをお聞きしてまいります。
 まずはこちらの方。神奈川県にお住まいの方からです。
34『福島第一原発の事故で原子炉がめちゃめちゃに破壊された3号機、4号機よりも、一見普通に見える2号機が一番放射能をまき散らしたと政府が発表しているそうですが、私にはそれがよく理解できません。最後の防壁と呼ばれる原子炉建屋までが吹っ飛んで、キノコ雲まで出して大爆発した3号機が一番放射能を遠くまで撒き散らすのではないかと思うのですが、何で2号機なんでしょうか?教えてください』
ということです。
(小出氏)今ご質問の中に「放射能を閉じ込める最後の防壁が原子炉建屋」とおっしゃっていたと思うんですが、そうではなくて、最後の防壁は原子炉格納容器というのが基本的に最後のものです。原子炉建屋自身はもうどうでもいいようなものでしかありません。
 それで、福島第一原子力発電所の事故の場合には、1号機、2号機、3号機の三つの原子炉が溶けてしまいました。溶けた炉心から出てきた放射能は、放射能を閉じ込める最後の防壁である格納容器の中に漏れて溢れたのです。
 1号機と3号機の場合には、格納容器というものがそれなりに健全性を保っていました。だんだん圧力が上がってきて、あちこちから漏れてきたりしたのですけれども、でもベントという操作をやって、水で放射能をある程度捕まえた残りの放射能をベントで外に出したということをやりました。
 ところが2号機の場合には、ベントに手間取っている間に15日の朝早く、大きな爆発音が2号機のサプレッションチェンバーと呼んでいる格納容器の一部なのですが、そこの場所で音がした。そして、サプレッションチェンバーの圧力がすぐに大気圧と同じになり、格納容器の圧力もその後すっと大気圧を同じまで減っていった。そしてあの周辺で大量の放射能を検出したということで、2号機だけは原子炉格納容器という放射能を閉じ込める最後の防壁が、人間の制御を離れて壊れてしまったというのが日本政府の説明です。
 ただし、本当かどうかは実はわかりません。
 近づくことすらもできませんし、本当にどうなっていたのかということを知るまでには、多分10年というような時間が必要になるだろうと思います。
(千葉氏)見た目の建屋とかではなくて、一番重要な中の容器が2号機の場合に大きく損傷したというふうに考えられているから、放射性物質の漏れが激しかったということになるわけですか。
(小出氏)はい。日本政府の説明はそういうシナリオになっています。
(千葉氏)うーん・・・。判りました。
 じゃあ続いてこちらの質問に参ります。こちらは京都府にお住まいの方です。
『ある番組で見たのですが、数万年以上半減期のある使用済燃料に中性子を当てて半減期を減らす取り組みがJ Park Centerというところでなされているそうなんですが、これはどれくらいの見込みがあるんでしょうか?』
という質問で、J Park Centerというのは茨城県東海村にあるようなんですけれども、小出さんいかがですか?
(小出氏)ちょっと長くなりますけれども、昔中世という時代に、人間が錬金術ということをやっていました。すずを金に変えられないかとか、亜鉛を金に変えられないかということで、さまざまな試みをしまして、大変優れた人たちが活躍しました。今日のケミストリー=化学のすべての基礎を錬金術は作ったのですが、でも錬金術の最後の結論は、
『元素は変えられない』
というものでした。金は金だし、銀は銀だ。すずはすずで、亜鉛は亜鉛、銅は銅。もうどうにもならないというのが錬金術の結論で、結局錬金術は破れてしまったのです。
 ただし、実際には錬金術はできることがその後判りました。
(千葉氏)え!
(小出氏)なぜかというと、ウランという元素を核分裂させてしまうと、セシウムができたりストロンチウムができたり、量の多い少ないを別にすれば金もできる、銀もできる、白金もできるというそういうものだったのです。
 ですから、錬金術は実はできるということを人間が既に知っているのです。ですから、原子力発電所を動かして、さまざまな放射性物質を作ってしまって、中には猛烈に長い寿命のものもあるのですけれども、そういうものをとにかく錬金術を使って寿命の短いものに変えるというものは、原理的にできるということは判っています。そのためにもう既に70年近く・・・苦闘してきて、今はJ Parkというところで日本はやろうとしているのですが、何とか出来ないかということでやってきたのですけれども、未だに出来ないということになっています。
 70年間続けてきた研究が出来ないということですので、これができるというためには大変な何かブレイクスルーというようなものがないと出来ないだろうし、可能性があるというふうにはなかなか言いにくいと思います。
(千葉氏)例えば、本当に半減期何万年もあるような放射性物質を数カ月で放射性物質じゃなくしてしまうなんていうことは、今ではとても考えられないわけですね?
(小出氏)まぁ、原理的にできるということは判っているのですが、それを実際上やろうとすると、ものすごい厚い壁がいくつもありまして、その壁を乗り越えることができないまま、今日に至ってしまっています。
(千葉氏)藤田さん、いかがですか?
(藤田論説員)それは今まで70年間も研究を続けてきて、ある程度その研究は全身はしているわけなんですか?それとも基本的にはちょっと難しい状況が続いているわけですか?
(小出氏)ようするに原理というものはもう明確なのですけれども、それを実際上適応しようと思うと、二つ大きな壁がありました。
 一つは、それをやろうとするときに膨大なエネルギーが掛かってしまうという壁です。もともと原子力発電というのはエネルギーが欲しくてやってるわけですけれども、原子力発電で得たエネルギー全てを使っても、なおかつダメだということならまるで意味が無くなってしまうわけです。
 それから寿命の長いものを短いものに変えようとするときに、今度は逆に放射能でないものを放射能にしてしまうという副次的な反応を抑えることができません。それをどうしても乗り越えられないまま今日まで来てしまっています。
(千葉氏)ほう・・・。うーん、じゃあもう・・・ね、短い間にそんなことができるというのはなかなか思えない状況なわけですね。
(小出氏)はい。私もなんとか私たちの世代の責任でそれを実現したいと思いながら来ているのですけれども、簡単にはやはり行かないだろうと思います。
(千葉氏)うーん・・・。
 じゃあ次の質問参ります。大阪市東住吉区の方なんですけれども、
『福島以来放射線は全て悪者というイメージが出来上がりましたが、果たしてそうでしょうか?輸入食品の一部は、輸入前にガンマ線で殺菌されたものもあるようです。食品に雑菌の致死量に当たるガンマ線を照射すること自体、安全性で何か問題はあるんでしょうか?』
という質問なんですが。
(小出氏)これはもう長い議論が続いています。ガンマ線という放射線を当てることによって、食品の中に放射性物質ができるということはありません。ですから、その意味では安全だと言ってもいいのですが、食品自身が変質してしまいます。タンパク質が分解されたり、もともと食品に含まれていなかったような化学的な化合物が生じてしまったりして、それが生き物に対して悪影響を及ぼすのではないかという実験データもいくつも出てきています。
 それが本当なのか、それとも大したこと無いのかということで、ずーっと論争が今日まで続いているということです。
(千葉氏)うーん。大きく物の質が変わっちゃうということが起きるわけですね。
(小出氏)そうです。
(千葉氏)うーん。判りました。小出先生、どうもありがとうございました。
(小出氏)ありがとうございました。
【以上】

失礼します。
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