20120809 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章


【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(千葉氏)今日は毎日新聞論説員の藤田さとるさんと一緒にお話を伺います。
 ではまず、この質問なんですが、東京電力のビデオの公開で新たな事実が判りました。
 地震発生から2日目の去年3月13日の夜に危機的状況にあった福島第一原発2号機に海水を注入しようと準備していた発電所の現場に対して、東電本店が、
「もったいないからなるべくねばって、真水を待つという選択肢はないのか?」
と言っていたことが明らかになりました。
 もし、このとき真水が届くのを待って注水が送れていたりしたら、どうなっていたんでしょうか・・・?
(小出氏)もちろん事態はもっと酷くなっていたと思います。あの時はとにかくなんとしても原子炉の中に水を入れて冷やさなければいけないという事態でした。
 私は、もう海水どころか泥水でもいいから入れてくれと思いました。
 そういう事態だということを東電の本社の人たちが全く理解していなかったということなのですね。いや、本当に・・・あまりの油断というかですね、『原子力発電所はいついかなるときも壊れない』と彼らは思っていたんだろうなと思います。
(千葉氏)あの、この時点で1号機と3号機はもっと前の段階で海水が注入されていたと伝えられているんですけど、そうするとこの二つは廃炉の可能性が強かったということで、この時点でもすぐ近くに、本当にすぐ近くにある2号機は、
「設備が保てれば、将来また動かせると東京電力は思って真水を待とう」
というふうに言っていたというふうに見てもいいんでしょうか?
(小出氏)多分そうなんだろうと思いますけど、あまりにも愚かなことですね。既にもう原子炉は溶けてしまっているわけですし、二度と使い物にならないということが判っていなければいけなかったはずなんですけれども、そうならなかった・・・。あまりの楽観主義というか、自分の都合のいいように考えたいという人たちが、東電本社を牛耳っていたということになると思います。
(千葉氏)あと、もう一つ気になることとして、福島第一原発の同じ敷地内にあります5号炉、6号炉が廃炉ということになっていないことについてなんですけれども、チェルノブイリ原発の事故の場合、事故を起こした4号炉のすぐ近くの1号炉から3号炉は、長い間運転していたというようなことを聞いたんですが、これ本当でしょうか?
(小出氏)本当です。
(千葉氏)・・・そんな近くにあるのにも関わらず、事故を起こした炉が近くにあるにも関わらず、運転をしていたんですか?
(小出氏)はい。被曝を覚悟の上で、発電所の署員が残ってそこでかなり長い間運転をしていました。
(千葉氏)・・・・それは・・・ちょっと信じられない話なんですけれども・・・やっぱり電気の確保のためにそういったことをしたということなんですか?
(小出氏)そのとおりです。
(千葉氏)はぁ・・・。うわ・・・。なんとも言い難い話なんですけれども。
(小出氏)そうですね。私もそう思います。
(千葉氏)そしたら、福島の5号機、6号機もそういうことが行われる可能性があるわけですか?
(小出氏)東京電力はそれを狙っていると思います。ただしそこで働く人たちは、もちろん被ばくを避けることができません。
(千葉氏)はぁ・・・。被曝をしながら動かすということですか。
(小出氏)と、東京電力が狙っているということなんですね。私はもちろんそんなことを願いませんし、福島第一原子力発電所も含めて、全て廃炉にしてほしいと思います。
(千葉氏)はい・・・。判りました。
 それから、次の質問になりますけれども、こんなニュースが入ってます。
 静岡県知事がトリウム原発という新しい型の原発に関心を示して、どうやら中部電直が研究を始めているという報道があるんですけれども、このトリウム原発というのは、プルトニウムを作り出すことがなくて、安全性が高いというふうに伝えられてる報道もあるんですけれども、これ、本当ですか?
(小出氏)全く馬鹿げたことです。
 意味がありません。
 もともと原子力発電というものが今日まで来る間には、長い淘汰の歴史があったわけで、その淘汰の過程を経て、軽水炉と呼ばれている今日本で動いている原子炉がようやくにして勝ち延びてきたのです。その軽水炉すらが、もう経済性もなければ危険性も大きいし、生み出してしまうゴミの始末もできないということで、米国も撤退を1970年の前半に始めていますし、ヨーロッパも70年代には原子力発電から撤退を始めているのです。もう原子力に夢が無いなんてことは歴然と判っていることだと私は思います。
 その上で、トリウム原発というのは、今使っている軽水炉よりもはるかにまた技術的なハードルが高いものですし、メリットと言えるほどのメリットも何一つないと私は言っていいと思います。
(千葉氏)はぁ・・・。トリウム原発自体は新しく出てきた技術というわけではなくて・・・
(小出氏)ありません。
(千葉氏)もうだいぶ古いもの?
(小出氏)そうです。60年代になんとかやろうとして研究を始めたのですけれども、こんなものはものにならないということで、とっくの昔に諦められたものなのです。
(千葉氏)はぁ・・・。それをまた研究しなおそうという話なんですか?
(小出氏)そうです。
(千葉氏)藤田さん、いかがですか?
(藤田論説員)ちょっとあまり現実性が無さそうですよね。
(小出氏)はい。もっともビルゲイツという人が、去年だったでしょうか、「自分の金をはたいてでもやる」という旗を挙げたりしてるわけですけれども、少なくともテクニカルな意味でいうならば、これまでの歴史をしっかりと見てほしいと私は思いますし、全く実現の見込みは無いと私は断言したいと思います。
(千葉氏)あの・・・トリウム原発というものはですね、具体的にはどういったところが難しい点として挙げられるんですか?
(小出氏)この自然界にあるもので核分裂をする性質を持ってる物質というのは、ウラン235しかないのです。それを何とか利用しようとして、ここまできたわけですけれども、それすらがもう出来ないというところに直面しているのですね。
 この直面する前に、ウラン235だけではエネルギー資源にならないので、核分裂はしないウラン238という物質をプルトニウム239にして、なんとかエネルギー資源にしようとして、今日までずーっと格闘してきました。原子力を推進したいという人たちですね。それで高速増殖炉というものをなんとか作ろうとしたのですが、全てできなかったのです。
 トリウムというのは、もともと核分裂しないのです。
 ですから、トリウムそのものを使えるわけではありませんし、トリウム232という物質なのですが、それをウラン233番というものに変えた上で、それを核分裂させようというのが現在言われてるトリウム炉というものですけれども、もともとウランをプルトニウムに変えてやろうと、その計画すらができなかったし、核分裂するウラン235を利用することすらが、今頓挫しようとしてるわけであって、トリウムなんてものをウラン233に変えてやろうなんてことは、もともと遥か先というか、技術的にはもう夢のようなことでしか可能性がありません。
(千葉氏)はぁ。もともと放射性物質を放射性物質に変えて発電をしようということなんですか?
(小出氏)もともとトリウム232も放射性物質なんですけれども、それを放射性物質であり、尚且つ核分裂をする性質を持ったウラン233に変えて、エネルギー源にしようと、そういう計画です。
(千葉氏)もちろん、これは放射性廃棄物も出てくるし・・・
(小出氏)全く同じことになります。
(千葉氏)はぁ・・・。じゃあ本当に何か新しいことをやるとか、画期的な新技術というわけではぜんっぜん無いわけですね。
(小出氏)はい。全然ありません。ただ原子力をこれまで進めてきてしまった人たちが、なんとか生き延びるための方便で今言ってるだけだと私には見えます。
(千葉氏)このトリウム原発というのは、世界のどこかで例えば動いていたりとか、そういったことっていうのは無いんですか?
(小出氏)ひとつもありません。
(千葉氏)ひとつもないですか?
(小出氏)はい。
(千葉氏)実用化に向けて、何か進めている国が日本のほかにあるとか?
(小出氏)インドという国が、皆さんご存知だと思いますけれども、インドという国はウランの資源はほとんどないのです。その代わり、トリウムという資源・・・232番という放射性物質である、それは大量にインドという国内にあるということが判っていまして、インドがウランを使う原子力はダメなので、なんとかトリウムを使いたいということで研究をしていることは本当です。
 ただ、今聞いていただいたように、ひとつとして実用化していません。
(千葉氏)・・・判りました。小出さん、どうもありがとうございます。
(小出氏)ありがとうございました。
【以上】


【参考記事】
海水注入「もったいない」=東電本社、廃炉恐れ-吉田所長は反論・福島原発事故
時事通信(2012/08/08-17:40)
 東京電力福島第1原発事故直後の昨年3月13日、危機的状況にあった2号機原子炉を冷却するため海水注入を準備していた同原発の吉田昌郎所長(当時)に対し、本社側が「材料が腐っちゃったりしてもったいない」などと指摘していたことが8日、東電が公開したテレビ会議の映像で分かった
 圧力容器などが海水の塩分で腐食し、廃炉になるのを恐れたとみられる。東電は6月に公表した社内調査の最終報告で「本店対策本部を含め、事故収束に向けた対応をしていた」として、海水注入をためらったとの見方を否定していた
 映像によると、13日夜、東電本社で復旧計画の策定を担当する復旧班の人物から「海水からいきなりやるふうに聞こえていて」と疑問の声が上がった。肩書や名前は明らかにされていないが、この人物は「こちらの勝手な考えだと、いきなり海水っていうのはそのまま材料が腐っちゃったりしてもったいないので、なるべく粘って真水を待つという選択肢もあると理解していいでしょうか」と尋ねた。
 これに対し、吉田所長は「今から真水というのはないんです。時間が遅れます、また」と強調。「真水でやっといた方が、塩にやられないから後で使えるということでしょ」と問い返した
 さらに吉田所長は「今みたいに(冷却水の)供給量が圧倒的に多量必要な時に、真水にこだわっているとえらい大変なんですよ。海水でいかざるを得ないと考えている」と断言した。
 復旧班の人物は「現段階のことは了解しました」と了承したが、この後も復旧班から「いかにももったいないなという感じがするんですけどもね」と苦笑交じりの声が漏れた
http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2012080800852


浜岡原発:トリウム原発、厳しい意見相次ぐ 「ハードル高い」−−県専門部会 /静岡
毎日新聞 2012年06月13日 地方版
 中部電力浜岡原発(御前崎市)の経済性などを検討する「原子力経済性等検証専門部会」(部会長、有馬朗人・静岡文化芸術大理事長)が12日、県庁で開かれた。今年3月の会合に続きトリウムを燃料とする原発がテーマとなり、委員からは「(実用化には)ハードルが高すぎる」などと、厳しい意見が相次いだ。
 トリウム原発は、東京電力福島第1原発の事故をきっかけに川勝平太知事が注目する。
 会合では、委員の山名元・京都大原子炉実験所教授が、トリウムを使った溶融塩炉という形式の原子炉について発表。「原理的な魅力はあるが、化学的な基礎情報などが不足しており、かなりの研究開発が必要」との認識を示した。特別委員の亀井敬史・応用科学研究所特別研究員も「課題がいっぱいある」と述べ、技術的な難しさを指摘した。
 一方、各委員からはトリウムを活用するさまざまな方法を長期的に研究すべきだとの意見も表明され、オブザーバー参加した中電の担当者は、大学などと連携して研究を進める方針を説明した。
http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20120613ddlk22040272000c.html
 川勝知事は、「課題が明確になったことは最大の収穫。(中電には)現場で研究、実験して説明してほしい。全面的に協力し、支援したい」と述べた。【樋口淳也】
http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20120613ddlk22040272000c2.html

失礼します。
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