※この記事は7月24日 検察が原発事故に関する国・東電への刑事告訴を順次受理へ【事故調の結果を待っていた】に関連しています。

国会事故調査委員会の委員を務められた田中三つ彦さん自ら、事故調最終報告書の重要部分を説明されています。

是非ご覧ください。

【動画】8月8日 『福島第1原発事故 残された謎とリスク』国会事故調はどこまで真相にせまれたのか!?
http://live.nicovideo.jp/watch/lv102483266?ref=grel
出演:(敬称略)
   田中三彦(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員 科学ジャーナリスト)
   福島みずほ(社民党党首)
   木野龍逸 (ジャーナリスト)
進行:
   七尾功(ニコニコ動画 政治担当部長)


最終報告書のダウンロードHPこちら

《主なお話》
【その①】
  ・津波到達時刻と電源喪失時刻『3時35分』
  ・SR弁の音『圧力と音』
その②
  ・1号機非常用復水器(IC)をなぜ止めたのか
  ・『55℃/時』
  ・東電のテレビ会議
その③
  ・爆発の映像がない4号機
  ・地震直後の1号機4階での出水
  ・ストレステストと下がった安全へのハードル
  ・原子力規制委員選定のプロセス

【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

七尾氏(七尾氏)みなさん、こんばんは。ニコニコ動画の七尾です。本日は、『福島第一原発事故 残された謎とリスク』と題しまして、7月7日に報告書を公表いたしました国会事故調が、どこまで事故の真相に迫ることができたのかを見ていきながら、今後の課題などにつきまして、皆さんとともに考えていきたいと思います。
 番組では皆さんからの質問も募集しております。今日は是非、コメントで皆さん、書き込んでください。よろしくお願いします。
 その前に一つ、本日国会で大きな動きがございました。皆さんご存知のとおりだと思いますが、消費増税法案の参院採決をめぐる衆院解散総選挙の確約につきまして、民主党、自民党、公明党間で様々なやりとりがありまして、現在も続いている模様です。
 ということで、大変申し訳ないんですが、本日出演を予定しておりました民主党・川内博史議員は急きょ欠席ということになりました。川内さんは、原発に関してももちろんそうなんですけれども、民主党結党時からの重要なメンバーでもございまして、なにとぞご理解いただければと思います。たいへん申し訳ございません。
 それではですね、本日の出演者の皆様をご紹介いたします。 
 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会、委員を務められ、科学ジャーナリストでもあります田中三彦さんです。よろしくお願いします。

(田中氏)どうも。

(七尾氏)約半年間、この膨大な報告書をまとめられたわけですが、今の心境はとりあえずほっとしたというところでしょうか?

(田中氏)ほっとしたというところもありますけどね、いろいろ批判も入ってきてますので・・・そんなにほっともしてないですね。

(七尾氏)あ、そうですか。そしたら、本日はその辺も含めてじっくりとお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
 続きまして、社民党党首・福島みずほさんです。

(福島氏)どうも、こんばんは。よろしくお願いします。

(七尾氏)原発をめぐる課題も山積する中でですね、本日政局の真っただ中に突入したわけなんですけれども、我々国民は一体これ、どう理解したらよろしいんでしょうか?全く訳が分からない事態なんですけど。

福島氏(福島氏)そうなんですね。実は、昨日、今日の8日に消費税増税法案参議院の委員会で採決というのを民自公が決めたんですね。私たちは反対をしたけれど、議事懇談会でそれが決まりました。私たちは、というか、自公の野党はこう思うんですよ。消費税増税法案が成立して自民党と公明党が不信任と問責出すなんてのはおかしいと。そんなの茶番だと。今まで一緒に法案を成立させるぞとやってきて、成立した途端に掌をひっくりかえして出すのはおかしいじゃないかと、私たちは消費税増税が国民の生活をやっぱり破壊してしまうという立場から、それを阻止するためにやっぱり出すと。採決の前に衆議院で不信任、参議院で問責決議案を出すんだということで昨日出しました。そして、今日になって、初め自民党と公明党、というか自民党は採決した後出すと言っていたんですが、若手などから「いや、もうちゃぶ台返しでいいんだ。」解散とか言わないのであれば、っていうか選挙をやれば今自民党が勝つという可能性もあるわけだから、「とにかく採決の前にもう出しちゃえ」という話も出たんです。
 ところが、経済界から「何言ってんだ!」と。或いは公明党から「せっかく自分たちは皆を説得したのに、そんなので反対だ」と言われ、少しトーンダウンはしてるんです。でも自民党は野田さんが解散の時期を確約しない限り協力をしたくない。つまり、もしそれを言わないんであれば、例えば参議院で問責決議案もまだ消費税増税法案は採決してないわけですから、可決して成立してないわけですから、その前に出しちゃうと。すると参議院では止まっちゃってしばらく動かないわけですよね。
 ですから「それをやるぞ。それが嫌だったら解散の時期を明言してください」と。今朝、総理は解散の時期なんか言わないですよ、事前に。それは森嘉朗元総理みてもいう訳がない。
 それで、これで「近い将来、国民の信を問う」と言ったんですが、「近い将来」っていつだろう?
 七尾さん、「近い将来お酒を飲みましょう」って近い将来っていつでしょうか?っていうんじゃないけれど。
 ある民主党の国会議員が「近い将来っていうのは、来年の任期までも含む」って言っちゃったためにもっと話がややこしくなり、とにかくこれが白紙になりました。自民党が付き返しました。
 でもこの間、今後どうなるか。
 私はこう思うんです。国民の声を聴かない野田内閣は信任に値しない。消費税増税だけじゃなくて、原発再稼働、それから原子力規制委員会の人事、田中さんそうですよね。それから、オスプレイの配備など。これもおかしい。だから不信任に値すると思ってるんです。
 でも、今の段階では、民主党内閣もおかしいんだけれども、自民党も「とにかく解散の確約が取れれば協力をするけれども、それを言わないんだったら協力しない」って。だから国民にとってその法案がどうか?という話ではなくて、党利党略、自分たちの本当に有利なようにどう進めるかだけで、国民の側を向いてないんですよ。
 こんなの本当におかしいと思います。

(七尾氏)ありがとうございました。そしたら、エネルギーは是非今日、田中さんが来てるのでよろしくお願いします。

(福島氏)はい。よろしくお願いします。

(七尾氏)最後に、この皆さんご存知だとおもいますが、『検証 福島原発事故記者会見』の著者でもある、ジャーナリストの木野龍逸さんです。

(木野氏)よろしくお願いします。

(七尾氏)最近の木野さんのご活動について教えてください。

(木野氏)活動が停止中な感じですね。

(七尾氏)でも保安院ではいろいろ・・・

(木野氏)あ、保安院は行ってますけど、東電の会見は相変わらず出入り禁止なので活動停止中です。ちょっと何とかしようと思っています。

(七尾氏)はい。判りました。
 それでは本日、さっそく一つ目のテーマにいきたいと思います。
 まず、国会事故調の調査で明確になった事実についてです。
 延べ1167人に900時間超かけて調査した結果あきらかになった事実関係についてですね、簡単で結構ですので、田中さんのほうからまずお話いただければと思います。
 いくつかあると思うんですけど、ひとつずつお話いただいて、疑問等があれば皆さんの方から質問していただく、そういう形にしましょうか。簡単で結構です。

(田中氏)えーっとですね、事故で判ったことでいうとですね、事故の原因の調査をしてるわけだから、その原因は何だったか、どんなことが判ったかということだと思いますけれども、原因は大きくわけると二種類あります。
 一つは、背景的な原因というんですか。社会的なものとか政治的なものとか、いろいろそういうことですね。捉われた・・・

(七尾氏)『虜』ですね。

田中氏(田中氏)『虜になっていた』とかですね、そういうものが原因ですね。社会科学的な原因というか、そういうようなものがある。
 それからもう一つ、私が特に関わっていた事故原因の調査に関して言えば、物理的な事故原因ですよね。地震が起きた。それから津波が来た。それから事故っていうのは必ず機械は勝手にいくものではなくて、その間に機械と人間が相互作用するわけですよね。だから、事故のプロセスとか事故っていうのは、人間がどう関わっていったかというのが大きな要因です。
 だから、そういう意味で運転員の方がどのように操作をしたかということが非常に重要だというふうに認識をして、それでその原因を調査いたしました。
 それから、もう一つ重要なことは、問題は3.11の地震が起きた後についてだけなのかということですね。物理的な話でも。「建設のとこから3.11までに戻って、福島の第一原発は本当に地震や津波が来た時に耐えられる力っていうものを持っていたんですか?」それを徹底的に調べましょうということです。
 私がここである程度責任を持って話ができるのは、どっちかというと後者の方で、菅さんがどうだったとか東電とか電事連の絡みだとか、そういう話になると、私・・・はちょっと責任が持てないから、あまりその辺の話は勘弁してもらいたいと思うんですけど。
 後者のほうですね、3.11以前、もともと福島第一原発っていうのは基礎体力を持ってたのかどうかということに関して言うと、それはそんなことは無かったということですね。それは、地震の専門家でいらっしゃる石橋克彦先生が主に中心になってお調べになったことです。
 そんなことが一つですね。
 それから3.11以降について、どうだったのかということ、これについて言うと、大きい点はいくつかありますけど、ひとつ最大のもの、一番重要なものの一つ、もう一つ二つありますけど、その重要なものの中に『津波が到達した時間が全くデタラメだった』ということですね。このことは、東京電力が6月20日に報告書を出しました。それから政府事故調が7月23日だったですかね、に出してますけれども、ちょっと日にちに間違いがあるかもしれませんけど、どちらも最終報告書、或いは政府事故調の場合は最終報告書をかねて中間報告書を引用してますのでね、それを見ると
『3月11日の3:35に第一発電所に津波が到達した』
ということになっています。これは東電が言ってるのでそのまま検証せずに、政府事故調もそのまま『3時35分』ということで話をしてるんだと思います。
 ところがですね、『3時35分』というのは全然嘘で、東京電力の第一原発の海岸線よりも更に1.5㎞手前のところにある波高計の設置位置ですね、そこでの時間なんですよ。『35分』っていうのは。
 だから、そこから我々の計算では、1分・・・ちょっとかかるんですね。突堤・・・入り江・・・その防波堤の先端のところに届くのに1分くらいかかる。それから更にそこから岸へ到達するまでに東電の提供してもらった写真なんかを見ると、更にそれから50数秒かかってますので、最低2分かかってます。
 だから『3時37分』になるわけです。
 『3時37分』に到達してから、今度はどうも北から南に向かって津波が上がっていくので、溯上と防水性は無かったにしても建屋の中に入っていって水浸しにするまで、やっぱり時間がかかるわけですよ。少なくとも多分1,2分かかると思うんですけど、そうすると37分に来て38分くらいからディーゼル発電機が動かなくなるということがあるんならわかるんだけど、それより前にディーゼル発電機が壊れているっていう事実が、特に1号のA系の発電機なんかはあるんですね。
 これは、これを非常に調査されたのは多分福島先生もよく御存じの伊藤良徳(よしのり)さんがやられて・・・

(福島氏)同じ法律事務所です。だけど別にコンタクトとってませんから。最中はコンタクトをとっちゃいけないっていうんで。

(七尾氏)実はユーザーの皆さん、田中さんも言葉を慎重に選ばれてるのはご覧いただいてお分かりのとおりなんですが、なんか守秘義務っていうのがある?ある程度縛りがあるんですかね?

(田中氏)ありますね。守秘義務というのは、難しくてね、ここでどういうふうに言ったら僕は違反して捕まって・・・

(福島氏)大丈夫ですよ。今日是非Ustの皆さんに、っていうか今日是非田中さんの話をたっぷり2時間聞きたいと思ったのはこういう事情もあるんです。
 参議院の予算委員会で委員の皆さん、委員長などを呼ぼうとしたら、自民党が反対したんですよ。ところが衆議院の内閣委員会だと自民党は賛成したんだけど、なんか民主党がうだうだ言ってるって。

(田中氏)何を聞くの?

(福島氏)要するに委員の皆さん、委員長とか国会事故調のその時は委員長だったんですけど、黒川委員長を
呼ぶということが、国会ではすんなりいかない。もうざっくばらんに言うと、自民党は3.11以後の責任にしたかった。民主党は3.11前。3.11前の方が罪は重いんですが・・・

(七尾氏)要するに自民党の長期政権の時にいろいろ原因があると?

(福島氏)そうですね。だから自民党にしてみたら菅さんについて言ってもらうのはいいんだけど、3.11前が虜であって、要するに有体に言えば『原子力帝国、原子力村』であった、そりゃそのとおりなんですよ。そういうところがどうも気に入らないようで、なかなか・・・。ただし、こんなの宝物じゃないですか。ものすごいお金かけて国会で初めてこういう独立した事故調を作って。だって私たちイラク戦争の時の検証委員会やれって、それはできなかったわけだから、こういうので初めて国会が超党派で全会一致で作って、その蓄積をあたってもらい、国民が共有しなかったらほんと宝の持ち腐れですよ。
 だから、話してください。

(田中氏)話しますけども<笑>、話しますけど定義がはっきりしないんですよね。例えば、多分文言きちっとしたものがあると思うけど、事故調の中に入って知り得たことは、報告書で明らかにしたもの以外については、それは守秘義務が一生かかるということですね、簡単に言えば。
 そうすると、例えば事故調の会議室は何階にあったかとかね、そういうことも入って初めて判ることだけど、これも言っちゃいけないのか?とか。

(七尾氏)確かにそうですね。

(田中氏)それは多分言ったって問題ないと思うんだけど、だから何を言っちゃいけなくて、何を言っていいのかっていう問題ですよね。それからここで話をした、ここに書いた事実はいくらしゃべってもいいわけですけど、だけどここに関連することで、例えば運転員の方から聞いた話を更に補強してここで言っていいのかとか、そういう微妙な問題が有ると思うんだけど、それはある程度よさそうだろうと思って、今日はいくつかしゃべろうかなとは思ってますけど。

(福島氏)だけど、とっても大事な点で、前田中さんが委員に選ばれる前に話を聞いて私が感激をしたのは・・・

(七尾氏)委員になる前の話だったらいいんですよね?

(福島氏)そうですね。それで、私がとても去年の事故直後に田中三彦さんに来ていただいて勉強会などやったときに思ったのは、実は判りやすくいうと、津波で起きたのか地震で起きたのか、正直言うと東電も津波のせいにしたいわけですよ。地震のせいにしたら耐震指針の見直しとか全部やりなおさなくちゃいけないから。だからさっき言った伊藤良徳弁護士がやったという『実は津波が来る前に壊れていたんではないか?』っていうのはとても重要なポイントで、それが国会事故調の一つの、いっぱい??があるんですが肝の一つではありますよね。

(田中氏)そうですね、私は口が軽い・・・その当時・・・今も軽いんですけど、口軽の人ですから、実は3.11が起きた時から僕は克明にエクセルにデータを発表されたもの入れて、傾向などを見ていて、それで3月の27,8日頃原稿締切があって、『世界』というところに原稿を書いたんです。その時に直感ですけれども、データなんか公表されてないですから、そこで判ってたことだけ新聞記事とかそういうのを見て、ある程度判った、「これは地震でやられてるんじゃないか、特に1号機にそういう??が」あって、それをさっさと『世界』に書いちゃったんですね。
 そしたら、その後またそのことでいろいろ書いて、自分でそういうふうに言っちゃったものですからね、その後でてくる「データについて解釈しろ」とかなっても、いっても反証になるようなデータはなかったんですけど、それで事故調に入ったんでね、ある意味でいうと自分の仮設を検証するようにならざるをえない。
 だからもし、これ間違えたら私は首つらなきゃいけないのかなとか<笑>

(木野氏)それを今日一つお伺いしたかったんですけど、前にこれ、『世界』の1月号、田中さんの原稿で「1号機で水が漏れてたんじゃないの?」っていう仮説を書いてて、その後事故調に入って、そういったことは確認がどれくらいできたのかな?っていうのをちょっと。

(田中氏)結局、仮設との対峙っていう問題で毎日辛かったですよ<笑>仮説検証っていう雰囲気もあって、個人的には相当辛い思いをした。
 ただ、できるだけ冷静にしようと思ってたのと、石橋先生と私が共同議長という格好になって、共同議長っていうのは何かというと、グループが三つあったんですね。ワーキンググループが三つに分かれてて、ワーキンググループ1っていうのが私たちで、石橋先生と私が共同議長になって・・・

(木野氏)事故の検証?

(田中氏)そうですね。だからさっき言った物理的な事故の原因を検証しようということです。当然二人じゃできないので、協力調査員という方が二人のグループ全部合わせて10人とそこそこですか。

(木野氏)専門の方?

(田中氏)専門とか、さっき言った伊藤良徳さんという弁護士の方とかね。だいたい皆さん原発に相当詳しい人です。研究者もいらっしゃいます。
 そういう年の頃は40くらいから60過ぎまでという、そういう人たちが全部で10人。だから我々、そうですね、最大15人も居なかったと思いますね。
 その人たちは専従じゃないですから。

(七尾氏)そうなんですよね。

(田中氏)だから仕事を持ちながらだから、これは大変なことです。

(七尾氏)国会事故調の事務方の話すると、専従じゃないし半年間っていう短い期間なので、なかなか集中できないんですよね。

(田中氏)できないんです。それで、12月8日に任命されましたよね。それから1か月はほとんど組織作りと「どうやっていこうか」っていう委員会の話ばっかりで、1月6日か7日にキックオフミーティングといって協力調査員の方と委員の人たちがみんな集まって一堂に会して、「これからどうやるか」っていう議論をして、戦争みたいな議論があったんですけどね。

(木野氏)1月に入ってからなんですね。

(田中氏)そうですね。だからそこで1か月ないでしょ。それから報告書を書こうとして、こんな分厚いものを書こうとすると、原稿はこれの倍あったんですけどね。けずって・・・

(一同)えー!

(福島氏)もったいないじゃないですか、削るなんて。

(田中氏)いや、削るという・・・だからこんなんなっちゃうから「削れ、削れ」と。そういうドラフトを何回だしましたかね、4,5回、4回目か5回目にようやくこういうふうになるわけだけど、それまでにやっぱり2カ月くらいかかってますから、だから実際に調査というのができたのは、3か月とか4カ月、4カ月なかったくらいですね。その間にその15人くらいで・・・最大15人もいないかな、12,3人で仕事を抱える人たちにお願いしながら現地行ったり、いろいろヒアリングしたりということをやったわけです。
 それで、みんなで分析をしたりっていう会議をしたり、もう寝る暇も泣かった。我々も大変だったけど、協力調査員の方にものすごくお世話になったということです。だから、個人的な問題は、そういう中で考える暇もなくて、ただ直感としてね、石橋さんもおっしゃってましたけど、1960年代に建った原発ですよね。それは当時の地震学とか、その頃は体制設計審査指針なんて無いですから、そういうものに自主規制みたいなものの中でいくわけだけど、そんなものが今回のような大きな地震とか、Ssといわれる地震動があるんですけど、そういうようなものにもつと思うのがむしろ無理でね、だから「多分ダメだろうな」という気はしてました。
 結論で言うと、私自身がこの結論を望んだというよりは、後でお話できると思うけど、思いがけないところから、いろいろ運転員の方のお話を聞いていてね、やっぱり想像もしなかったことがありました、ということです。

(福島氏)たとえば?

(田中氏)例えばね、現場は、今このスタジオ静かでしょ?ここでバンと電気が消えるじゃないですか。切れて、ファンの音も何も無くなって照明も全部落ちて、そうすると聞こえるものって何かあるかというと、人の声くらいですよね。例えば自動車の走る音くらいは聞こえるかもしれない。それ以上静かな状態なんですよね。

(木野氏)何にも音しない?

(田中氏)音がしない。でも、このことはね、現場の方の話を聞いて初めて判ったことだけど、なんかね、騒々しいようなそんな先入観ありますよね?

(木野氏)だって熱いものがまだお湯沸いてて流れてるわけですよね?

(田中氏)ところが、やっぱり嫌になるほど静かで、何をしていいか判んない。一種の虚脱感みたいなことをお話になる方が多い。
 それで、一方、2号機、3号機はやっぱり静かなんだけれども、人の声しかしない。真っ暗でしょ?その中で、直後SVO・・・

(木野氏)電気が全部落ちた・・・

模式図(田中氏)そうそう。3時・・・さっき言ってた津波到達時間の3時40分前後ですかね、そのあたりでSVOが起こって電気が切れる。そうすると、その辺りからいわゆる音が静かなんだけど、2号、3号はそうではなくて、特に2号の運転員の方にお話を聞いたら、原子炉の逃がし安全弁っていうSRVというんですけどね、あれが要するにお釜=原子炉だけど、高温高圧のお湯沸かし器ですね。

(木野氏)やかんですね。

(田中氏)
その巨大なやかんがどんどん圧力が上がってきちゃうわけですよね。そのままでいくと破裂しちゃうわけです。だから、そういうことにならないように安全弁みたいなのがあって、逃がし安全弁っていうんですけど、それがある圧力までいくとパッと噴くわけですね。開いて。

(木野氏)
自分で噴くわけですね。

(田中氏)
ええ。自分で勝手に開くんですね、自動的に。そうすると、その蒸気が猛烈なんです。普通タービン回してる蒸気ですけど、その量でいうと3分の1くらいがワーッと外へ出ていって、このくらいの太さの排気管を通って、下のよく格納容器、フラスコとドーナツみたいなの、あのドーナツみたいなところに入っていくわけですね。そこにって水になる仕組みですけど、そういうときにやっぱり水理学的動荷重っていうことだと僕は思ってますけど、かなり激しい音がするんですね。それから振動でしょう。それがズドン!ズドン!って間欠的に聞こえてくる、地鳴りのような音が。開いて流れて入って、あのドーナツっていうのは断面どのくらいあるか知ってます?

(木野氏)30メートル?

(田中氏)いや、直径は10メートルくらいなんですよ。10メートルで・・・

(福島氏)サプレッションチェンバーとかいうやつですよね。

(田中氏)そうです。円の直径が30メートルくらい、断面は10メートルくらいで結構ぶやぶやの浮き輪みたいな。そこに蒸気がが勢いよく入っていて、水に変わるんですね。水の中にブワーッと出てくる。その時に、多分振動が起きてるんだと思うんですけど、
「ズドーン!ズドーン!っていう音がときどきするんだ。地鳴りのような音です」
ということを言ってました。
 そういうのが何度となく聞こえてきたと。それがSRVの音だと彼らは認識しているという。

(木野氏)それは経験上そう思うんですかね?

(田中氏)経験はしたことないですよね。だから、「これはSRVの音なんだな」というふうに・・・

(木野氏)「そうじゃないかな」って

(田中氏)それはね、私たちが聞いたんじゃないんです。SRVの音がそういうズドン!ズドン!としてるというということをあちらの方から話して、それで僕らは「あぁ、そんな静かなのか」と。
 SRVっていうのは、噴くとそういう衝撃があるということは昔から判って、それは問題になってたんですよ。水力学的動荷重って、アメリカで問題になったことがある。それで、噴いてくる排気管の形をストローみたいにしてると衝撃が大きいので、Tクインチャっていって、ちょっと話が難しいけれど、和らげる構造にしてるんですね。

(木野氏)ちょっと広げるみたいな構造ですね。

(田中氏)そうです。それを福島の場合も80年代の後半にそういう工事をしてると思います。そういうふうに衝撃がもともとあるところを和らげてあったけれども、結局そういう音がしてる。多分。私の推測ですけど。
 それでね、1号の方はどうだったかと思って1号の(運転員の)方に聞いたら、
「何にも音がしてない」
って言うんですよね。
「不思議じゃないですか?」
って聞いてます、僕は。
「結局SR弁っていうのは開いたかどうかをどうやって確認されたんですか?」
っていうことですけど、
「音的なもので確認したのではない。ただ動いてるんじゃないかなというふうに思ってた」
ということです。

(木野氏)でも中央制御室の電気全部落ちて真っ暗気になってる中で、スイッチを動かしても判らないわけですよね、状況は。

(田中氏)状況はわからない。だから「動いてた」という確認できる音とかメーターとか、そういう電気信号とか一切無し。ただ「動いていたんじゃないか」とただそれだけ。
 それで2号は動いてたということがはっきりわかる。

(木野氏)そういう意味では、1号と2,3の状況って、全然最初から違うんですね。

(田中氏)最初から違うんです。今僕が反論をある・・・名前を言うのは止めますけど・・・

(木野氏)反論される?

(田中氏)そうそう、国会の事故調の意見箱みたいなところに昨日入れてきた方が居てね、専門家の人で有名な人ですけど。黒川委員長宛てに手紙が来てましたけどね。それで僕の方に回ってきて見てますけど、
「国会事故調のSR弁の音でなんだかんだっていうのは、非常に稚拙な判断だ」
なんて、そういうふうに書いてましたね。なんか後ろの方を見たら、
「SR弁が開かなかったのは、メルトダウンをおこして高温になったから、フランジっていうところがあるんですけど、そこから漏れたんじゃないか」
というふうに言ってるんですよ。全然関係ない。

(木野氏)関係ないですよね。SRV・・・

(田中氏)炉心溶融が起きたころの話をしてるんじゃなくて、津波が来た直後くらいにSRVっていうのはもう噴かなきゃいけないんだけど、僕はそういう話をしてるのに、それを運転員の方が聞いてる時に異常と思ったかどうかについて判らないんで、ただ、「音がしなかったんですか?」と聞くと「してない」ということを言ってた。だからむしろ信憑性が高い。
 それから、あと3号も去年東京電力が書いてますけど、自分で内部調査したんですけど、その時に3号の運転員の方が、やっぱり
「SR弁が作動するたびに音がドンドン、ゴーッとしてる」
と、それも言ってる。
 あとそれで、そういうものなのかどうかということで、5号、6号の運転員の方に聞いたら、やっぱり
「数年前に4号を意識的に開けたことがある。その時にズドーン!という音が聞こえた」
とか。
 それでも足りないので、東海原発と福島第二原発と女川の原発ですね、そのところへアンケートを出して、それでSR弁みんな動作してるんです、あの日に。
「その時に音が聞こえましたか?」
ってことをアンケートしましたところ、東海原発は返事が無かった<苦笑>それから福島第二原発は「一切音がしてません」、それから女川の原子力発電所「1号から3号まで音がしてました」ということで、そのアンケートを貰った時に東京電力、これは気が付いて口裏合わせで・・・

(木野氏)1号が静かだっていうのを正当化するために・・・

(田中氏)静かだって言うのを正当化するのに話かなと思って、始めどう考えたらいいかなって思ったんですよ。そしたら、よく考えてて、実はこれ、気づくのが遅かったっちゃ遅かったですけど、これを書く前にそれを書けば良かったんだけど、はっと気が付いたのは、
「そうか、福島第二原発っていうのはドーナツがないや。」
 MarkⅡなんですよ、あそこは。

(木野氏)アドバンス、建屋と一体型になってる。

(田中氏)そうですね。ここをひっくり返したようなやつ、池みたいな。
 だから、全然振動形態が違う。
 逆に女川の1~3号は改良型ではあるんだけどトーラスの部分はほとんど変わりませんので、ドーナツそのままです。だから、ああいうものはみんな音がするんでしょう。それがそのまま振動するよってことが1970年代にGEなんかは問題にしたことですよね。

(木野氏)要するに振動が大きくなるともたないからっていう?

(田中氏)そうそう、もたないからもう少し衝撃を和らげろっと、そういうところが今回動いたわけですね。

(木野氏)そういう意味では1号がそういう状態、SR弁が噴かなくて開かなくて、開かないってことは中の圧力がどんどん・・・

(田中氏)どこかから逃げてたってことですよね。ということは、SR弁の何気圧まで上がるとSR弁が開くようになってるんだけども、安全弁機能というところは、それが作動することになってるんですけど、それが作動しなかったということは、そこまで圧力が上がらなかったという可能性があるでしょ。そうすると、なんで圧力が上がらないのかということになると、何かどこかで漏れてるという、そういう問題が。

(木野氏)その時間帯は数字は出て?

(田中氏)もう無いんですよ。

(木野氏)無いんですね。あぁ・・・。

(福島氏)ちょっと話が戻ってスイマセンが、津波到達2分前に電源喪失をしていたんじゃないか?

(田中氏)これは重要ですね。

(福島氏)だから、全電源喪失の原因は津波だとされてきたけれども、多分津波が来てでも押し流されたと言っていたけれども、政府事故調ではそうなってますよね。しかし国会事故調では少なくとも1号機の片方にある非常用ディーゼル発電機は津波が到達するよりも1,2分前に停止したのではないかということも書いてありますよね。これは重要なことですよね。

(田中氏)すごく重要です。それはね、ディーゼルは燃料として軽油を使っています。その軽油は海側の方に置いてあって、そこからパイプが・・・それは全部検証してないんですけど、パイプが地面を張ってきて、それで中のデイタンクというところに入れて、それから回してるんですけどね。そのラインがやられたかもしれないですね、地震でね。燃料系。完全に破断したのかもしれない。だけどこちらにタンクはありますので、それがもってる分だけ動いたという可能性もあるかもしれない。それから亀裂が入って少しずつ漏れてて、最終的にたまたま似たような時刻の時に止まってしまった、よれよれと運転してた、というような感じかもしれない。
 判らないけれども、そんなふうに津波が来る前に止まってしまったということがね、特に1号機のAっていうのは、これは起きてる可能性が非常に高い。
 伊藤さんとおとといだったかな、そういう集会があってお会いして、一緒に話をしたんです。事故調としてじゃなくて、個人として僕らが考えるとね、1号のA系は堂々とダメなんです。
 だけど、他のもね、2,3、3,4って言ったらいいのかな。そういう発電機が津波が到達する前に壊れてた可能性、止まってしまった可能性がある。3号機だとかそういうもの。

(福島氏)これはやっぱりとても重要なのは、浜岡など津波対策で防潮堤高くするとか、散々そんなこと言ってるけれども、例えば大飯原発だと防水するとかね。非常電気ディーゼルやってて、高台にやるとか言ってるけれど、そんなことやったって地震でぶった切られたりとか、それこそ大飯原発は活断層があったら終わりなんですよ。津波以前の問題でダメじゃないっていうところを、やっぱり電力会社は嫌なんですよね。
 そこが実はウィークポイント。「津波ではなくて地震が起きれば、いろんなものが切断されたり失われたりすることがあるんだ」

(七尾氏)最終的には、特定できるんですか?

(田中氏)いや、特定できない。

(七尾氏)できないんですか?

(田中氏)いや、どうして壊れたかについての特定は難しいでしょ。今まだ中に入れない。1,2,3(号機)の下(サプレッションチェンバー)に行かなきゃいけない。

(七尾氏)逆に今後入れれば判る可能性もあるわけですか?でも判らないですよね。

(木野氏)その頃にはもう・・・そういうのは撤去しちゃってるかもしれないし・・・

(田中氏)まぁそれは今は少なくとも、当面はダメですよね。我々がどうやって壊れたかについて危ない仮説を出すのはね、ちょっとやっぱり控えたい。その立証責任は東電にあるわけだからね、どうして止まったかについては、地震との因果関係等について話をするのは彼らであって、東電はもともと言ってる時間そのものが35分と、2分も早く言っていて。
 自然に見えたんですよ、最初はね。35分に到達して、37,8分から次々とやられていくっていうのは絶妙にいいじゃないですか。
 それで伊藤さんがほぼ確信を持ったのが、この原稿を書く頃ですよね。4月の末からですけど、伊藤さんがいつ出したかはっきり忘れちゃいましたけど、5月の中ごろに東京電力から見解があって、伊藤さんは確認をしたわけです。
「37分でいいか?」
という話を東電に文書で。そしたら、
「波高計の時間として認めていいんだ」
ということで、向こうも「あれは波高計の設置位置での時間だった」ということを認めてるんです。
 しかもですね、驚くべきことに我々は控えめに2分と言ったわけですよね。そこ(波高計)から2分と。東電は『2分半』

(木野氏)あー。

(七尾氏)えー・・・

(田中氏)『37分半から38分にかけて』というような表現になってたと思いますけど・・・

(木野氏)その後の岸に到達してからの溯上してからの時間というのは、東電が考えてる時間ってもうちょっと実は長かったりとかするんですかね?

(田中氏)だから、それ+α。だから、東京電力さんは、なんでわざわざ気前よく30秒付け加えてくれたのかよくわからないけど、そうすると更に困難になる。
 それは5月の中ごろに東京電力がそういうふうに言ってきたんですよ。言ってきたにも関わらず、その6月20日の社内事故調にはまだ『35分』で戻ってるんですよ。

(福島氏)酷いですね。

(木野氏)その辺が判らないですよね<苦笑>

(田中氏)その辺が判らない。だから伊藤さんが言うような表現を借りれば『二枚舌を使ってる』わけなんですよ。

(木野氏)うーん・・・

(田中氏)公式には『35分』って言って、我々への質問の回答には『37分半』みたいなことを言ってる。

(木野氏)でも国会の事故調の報告書に、ちゃんと東電の回答として数字が出てれば、それはそれで公式ですよね、一応。

(田中氏)だから多分、私直には聞いてないのでわからないですけど、新聞かなんかがインターネットのニュースか何かに、
『東電は最終報告書の見直しをする』
とか言ってましたよね?あれがこの絡みなのかな?という気はしてますけどね。

(七尾氏)もちろん入ってるでしょうね。

(木野氏)社内報告書の内容をあまりにも内容が違うので、国会事故調も政府事故調ももう一回見直しをしなきゃいけないっていうのは段々言いだして、ただいつまでにやるっていうのは決めてないんですけどね。

(七尾氏)まだ受け皿というか体制がきちんとできてないんですね。

(田中氏)でもね、僕らは半年しかなかったわけでしょ?それから人数も少ない。
 向こう、政府事故調っていうのは大量の・・・根本的に『35分』っていうものが波高計の時間だったっていうことはね・・・

(木野氏)最初から知ってたと思うんですけど

(田中氏)最初から知ってたのか、うかつにも・・・最初から・・・

(木野氏)知ってますよ。だってそこで時間とってますからね。

(田中氏)だからそれに見事に騙されてた感じがありますよね。だから、これは最大な問題、最初に言いましたように判った中で最も最大じゃないか。詳しくは事故調、ダウンロードすると時間かかるし印刷するとお金もかかる、カラーだから。

(木野氏)これ販売するっていう噂が・・・

(七尾氏)今ユーザーから「欲しい、欲しい。販売しないのか?」っていうコメントがたくさんある。

(福島氏)販売したらいいですよ。だって民間事故調って、あれも本で出ましたよ。

(木野氏)国会事故調の事務局が「もしかしたら売るかもしれない」っていうことをちょっと・・・

(七尾氏)これ売らなくちゃだめですよ、逆に。

(木野氏)売るか配付するか・・・

(福島氏)非常にわかりやすいんですよね。資料もついてるし提言もついてますからね。私なんか提言を読んでほしいとか思うけど。

(七尾氏)ちなみに民間事故調は10万部出荷されていて6万部は売れてるんですよね。

(木野氏)売れすぎ。いいなぁ<笑>

(七尾氏)そうなんですよ。学研から出てるんですよ。
<45:00頃まで>


【その②】に続きます。
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