※この記事は、
7月17日 大飯・志賀原発の断層再調査へ【第19回地震・津波に関わる意見聴取会の様子とその報道】
6月13日【内容起こし】渡辺満久教授:大飯原発、安全性はどこへ? 見逃された破砕帯問題【原発の地下に10本もの活断層の可能性・・・】@院内集会に関連しています。

2012.07.20 青木理 「原子炉の真下に活断層?」

TBSラジオ・Dig パーソナリティ:
   青木理(ジャーナリスト)
   江藤愛
ゲスト:
   西川拓 毎日新聞科学環境部
   渡辺満久(変動地質学)東洋大学社会学部教授
   崎山敏也 TBS

【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(江藤氏)今日は『原子炉の下に活断層?―原発の安全性について考える―』です。経済産業省の原子力安全保安院が、今週火曜日の17日に開いた専門家による地震・津波に関する意見聴取会。この席で石川県志賀町にある北陸電力の志賀原子力発電所1号機について、原子炉建屋のすぐ下を活断層が走っている可能性が指摘されました。
 国の指針では、活断層の上に原発を作ることは許されないため、いわゆる立地不適格となり、今後稼働が困難な状況になることも考えられます。
 また、3号機に続いて4号機も稼働を再開しました福井県大飯町にある関西電力の大飯原子力発電所についても、「発電所の敷地内を走っている断層が活断層である可能性を否定しきれない」という意見も出されました。
 こうした指摘を受けて、国では、北陸・関西の両電力会社に再調査を指示しましたが、専門家の中には「典型的な活断層。建設許可の申請がよく通ったと思う」と国の審査の甘さを批判する声もあったということです。そもそも、志賀原発の設置許可申請というのは、1987年。そして大飯原発も85年と、いずれも25年以上経過していますが、なぜ今まで見落とされてきたんでしょうか。
 青木さんは、この問題はどうご覧になっていますか?

(青木氏)だから、ね・・・。江藤さんいまおっしゃってくれたとおり、「なんで今更?」っていうことでしょう?福島の原発の事故があったからって、延長線上でいろいろ問題が出てくるんだろうけれど、その原発の真下に、そもそもね、僕もそうだし江藤さんもそうだと思うんですけど、「活断層って何?」っていうところから判らない部分もあるんだけれど、でもこれによると国の指針では『活断層の上に原発を作ることは許されない』と。
 今日ゲストでお招きする専門家の先生なんかも、「これは活断層だ!」って言ってると。
「今更そんなこと言われても」
っていうのが一つと、じゃあ今江藤さんがおっしゃったような「今まで見落とされてきたのか?」っていうあたり。
 活断層は何かというあたりから、なんで今まで見落とされてきたのかっていう、その原子力行政や電力会社の姿勢の根本のところまで、初めから終わりまで、全部ちょっと深堀できればなと思っています。

(江藤氏)これが本当に活断層であるとするならば、今後どうしたらいいのかっていうのは、非常に気になる・・・

(青木氏)活断層だったら、もう廃炉にするしかないってことでしょ。

(江藤氏)廃炉にできないんでしょうかね。

(青木氏)だから、こんなことやってたから、もうちょっと深読みして言っちゃえばね、
「今更作っちゃった以上、廃炉にできないから活断層なんだけど、活断層ということじゃなくしましょう」
というような倒錯した発想になっちゃうんじゃないかなっていう心配も出てきますよね。

(江藤氏)そうですね。そういったところを深く掘り下げていきたいと思います。
 というわけで、改めまして、今夜のDigテーマはこちらです。
『原子炉の真下に活断層?―原発の安全性について考える―』
 今日は志賀と大飯の原発の活断層とは、実際にどんなものなのか?
 そしてなぜ活断層の上に原発を建ててしまったのか。
 そのほかの原発はどうなっているのかについて取り上げます。
 ゲストは、変動地形学がご専門で、原発と活断層の問題に詳しい東洋大学社会学部教授の渡部満久さん。
 そしてお電話で、毎日新聞科学環境部の西川拓記者にお話を伺います。
 また、火曜Digの原発関連ニュースでもおなじみ、TBSの崎山敏也にもスタジオに入ってもらいます。
 そして、11時30分頃からはコラムコーナー、金曜DigDag青木理のニュース侍です。今週は何を?

(青木氏)原発がらみなんですけれども、原発の事故に絡んで、メディア・マスコミが批判されることがたくさんあって、最近、例えば首相官邸前で今日もあったみたいなんですけど、デモがありますよね。「そのデモを伝えるのが遅かったんじゃないか」なんていうふうに批判されたりとか、最近ね、実は国会の記者会が使っている建物を巡って、「これを大メディアだけが占有してるのはおかしいじゃないか」ということで訴訟が起こされたりとかしてるんですね。
 っていう、そのちょっと報道と原発事故の問題について考えてみたいと思います。
【参考記事】
ネットメディアが仮処分申請 国会記者会館の屋上取材
共同通信(2012年7月17日)
 首相官邸前で毎週金曜日に行われている「脱原発」抗議行動をめぐり、インターネットメディア「OurPlanet―TV」(東京)と白石草代表が17日、取材のために国会記者会館屋上の使用許可を国と記者クラブ「国会記者会」に命じるよう求め、東京地裁に仮処分を申し立てた。

 申立書によると、会館は衆議院が土地を所有し、記者会が管理を委託されている。官邸に隣接しており、抗議行動の全体像を撮影するために屋上への立ち入りを2度申し入れたが、記者会は未加盟メディアの立ち入りを許可すると混乱を招くなどの理由で認めなかったという。

 国会記者会は「弁護士と協議し、対応を考えたい」とし、衆議院事務局は「裁判所の判断を見守りたい」とコメントしている。
http://www.kyodonews.jp/feature/news05/2012/07/post-6240.html  

(江藤氏)ニュース探究ラジオDig、TBSラジオをキーステーションに金曜日はジャーナリストの青木理さんと江藤愛でお送りしています。よろしくお願いします。

(青木氏)よろしくお願いします。

(江藤氏)今日のテーマは、『原子炉の真下に活断層?―原発の安全性について考える―』です。
 メールをご紹介します。
 東京都・8年留太郎さん43歳だぜからです。ありがとうございます。
『原発がらみの問題が報道されるたびに、「そんなことは昔から判ってたことなんじゃないの?」とついつい斜に構えてしまいます。活断層についても、原発事故があったからこそ明るみになりましたが、関係者の間では、昔からの隠れたる常識だったのではないでしょうか?』

(青木氏)そうですね。まぁそうなんですけれども、おっしゃるとおり8年留太郎さん、8年留太郎というと僕も大学留年してたから、ちょっとドキドキしちゃうんだけど、それはともかくとして、かといって斜に構えるのは判るんだけれども、また放っておくとね、同じことを繰り返してしまうので、やっぱりここで1回きちんと問題を考えておくべきだなと思いますよね。

(江藤氏)そして宮城県・スーさん高校生です。ありがとうございます。
『なぜ今更になって活断層の話が出てくるんですか?原発を作る際に、しっかりと調査をしたんじゃないでしょうか?それとも当時の技術では無理だったんですか?いずれにせよ、活断層が確認されたらどうなるんでしょうか?ちなみに、宮城県の女川町にある東北電力の女川原発はどうなんでしょうか?教えてください』

(青木氏)今の質問は全部、今日聞きたいことばかりですね。

(江藤氏)そして世田谷区のやーぶるすさん37歳男性です。
『そもそも、活断層とは何でしょうか?どうやって活断層の調査をしているんでしょうか?』
 これは本当にそもそも気になりますね。

(青木氏)僕も判らないですね、実は。

(江藤氏)私も判らないので、詳しく聞いていきます。
 それでは今日のゲストをご紹介していきましょう。
 変動地形学がご専門で地震と活断層の問題に詳しい、東洋大学社会学部教授の渡部満久さんです。こんばんは。

(渡辺教授)どうぞよろしくお願いします。

(江藤氏)そして、火曜Digの原発関連ニュースでもおなじみ、TBSの崎山敏也です。よろしくお願いします。

(崎山氏)はい。よろしくお願いします。

(江藤氏)それでは、まずは17日、今週の火曜日に行われました原子力安全保安院の意見聴取会について、毎日新聞科学環境部の西川拓記者にお電話でお話を伺います。もしもし?

(西川記者)もしもし。

(江藤氏)こんばんは。
 この意見聴取会なんですが、これはどういったものなんでしょうか?

(西川記者)これはですね、地震とか津波のお話だけじゃなくて、いろんな原子力関連の技術的な問題について、そのテーマごとに規制機関である原子力安全保安院が、いろんな専門家の方に意見を聞きたいという時に設置して、それで専門家の方に議論してもらって、その結果を規制に反映させる、行政に反映させるという、そういう仕組みになっている、そういうものですね。
 いろんな種類がって、ざっと2,30種類あるんじゃないかと思いますけれども、分野ごとの専門家がおられるという、そういう組織です。

(青木氏)これは、一般的には審議会ってありますよね?政府なり行政機関が設置して、答申を受けてその政策に反映させる。この審議会よりも、まぁ、レベルが上とか下とかってことは無いと思うんですけど、それよりは位置付けとしては下位になるんですか?

(西川記者)上位・下位っていうのはあまり私も詳しくないんですけど、より専門的というか技術的なお話で、そんなに??といいますか、割と気軽に効ける、そういう???が作っているようです。

(青木氏)特に法的拘束力がこれによって生じるわけではないわけですよね。あくまでも意見を専門家に聞くと?

(西川記者)そうですね。

(江藤氏)メンバーというのは、さきほど「専門家」と言ってましたが、専門家の方だけなんですか?

(西川記者)基本的にはそうです。

(江藤氏)例えば電力会社の人とか、っていうのはいない?

(西川記者)今回の今問題になってる地震の断層の件でいいますと、電力会社の方はその中には入ってません。

(青木氏)そもそもね、今回なんで志賀原発がメールでもいろいろきてるんですけど、『今更』って言ったら今更なんですけれども、なんで志賀原発、それから大飯原発が取り上げられた?大飯っていうのは、今度再稼働するっていうことになったので、今取り上げるっていうのは多少遅すぎるって気はするんですけど、まぁ理由は判るんですが、なぜ今回志賀が改めて取り上げられることになったんですかね?

(西川記者)これはですね、去年の大震災のちょうど1か月後の4月11日に、実は福島県でそれまで動かないというふうに思われていた断層が地震で動いたというケースが見つかりまして、それはたまたま福島第一原発から50㎞くらい離れたところに・・・

(青木氏)いわき市ですね。

(西川記者)そうですね。そこだったんですけれども、東京電力は
「それは活断層ではない。動かない」
と思っていたのが、4月1日の余震で動いてしまってですね。
 で、原子力安全保安院も、
「これはちょっと新しいタイプだ」
ということで、「詳しく調べろ」というふうに東電に指示しまして、東電が調べました。
 そうすると「やっぱ確かに動いてました」っていうことが判ったものですから、一応全部の日本全国の原発をもう一回改めて見直してみようということになりまして、今ちょっとちょうど一個一個、見直しが進んでいる段階ですね。
 それで、今回たまたま今回の志賀原発の問題とか大飯原発の問題というのが浮かんできまして、実はその前に一つ、敦賀原発ですね。
敦賀原発も敷地の下に活断層があるんじゃないかということで、これは一足先に調査が進んでいます。それでこのたび、大飯原発と志賀原発も地価調査をしなさいと、そういう指示が出たという段階ですね。

(青木氏)かなり厳しいというか、意見が飛び交っていたようですけれども、実際に現場で取材なさって、どんな意見が出たかと、西川記者自身がどんな印象を受けたか?

(西川記者)そうですね。大飯原発のほうはですね、専門家の方も「個人的にはこれは活断層ではないと思う」という方が目立っていて、何人かいらっしゃいまして。ただし、関西電力が「活断層ではありません」というふうに主張してるわけなんですけど、それを裏付ける証拠というのがちょっと根拠が弱いねと。ちゃんと
「断層を掘って、地層を撮影した写真を出してくれ」
っていうふうな要請もしたんですけども、関西電力は、
「探したけど見つかりませんでした」
というようなことで、ちょっと根拠が弱いということで、再度調査をしなさいと・・・

(青木氏)「白かもしれないけど、証明するためにちゃんと調査をしようと、もしかすると活断層じゃないかもしれないけど」
というようなニュアンスですか。

(西川記者)ニュアンスでした。

(青木氏)志賀のほうはもっと厳しいわけですよね。

(西川記者)その後、志賀原発の議論に移ったら、もう途端に、のっけから非常に厳しい意見が出てですね、もう「こんなものは典型的な活断層じゃないか。専門家が見れば一目で判る」というような意見が続出してですね、「唖然とする」とかですね、「呆れてモノが言えない」とか、かなり国のそういう会合ではあまり聞いたことがないようなキツイ言葉がバンバン出てくると、そういう状態でした。

(青木氏)最後に一つなんですけどね、リスナーからのメールとかツイッターでもかなり来てるんですけど、
「そんなこと今更言われるってどういうことだ?」
というご意見が多くて、今日こちらスタジオでもその話をするんですけれども、科学環境部でずっと取材されていて、どうですか?今更ね、こんなもの活断層だろと言われて、活断層の上に作っちゃいけないはずなのに作ってた。最終的な結論はこれからなんでしょうけれども、その激しいやり取りをご覧になってて、どんな印象、どんな感想っていうか、思いでしたか?

(西川記者)やっぱり志賀原発は特にそうですけども、一応電力会社が原発を建てるときに調べてですね、「これは活断層じゃありません」といって、それを国の方も認めてるわけですね。
 誰が認めたかというと、当時は原子力安全保安院というのは無くて・・・

(青木氏)通産省ですね。

(西川記者)はい。25年前なので、実際に現地に見に行ったのは通産省の資源エネルギー庁の人だということで、そのいわゆる原子力を推進する、原発を推進する組織の人が見て、「電力会社が言ってるとおりです」とお墨付きをだしているということでですね、やっぱり当時のチェックというものが非常に甘かったというか、なぁなぁになっていたんじゃないかと。
 ということは、他の原発もひょっとしたら、そういう緩いチェックというのがまかり通っていたということが、ひょっとしたらあるかもわかりませんので、我々もちょっとこれからも他の原発についても注意してみていかないといけないなというふうに思っています。

(青木氏)なるほど、判りました。

(江藤氏)西川さん、ありがとうございました。
 毎日新聞科学環境部の西川拓記者でした。
 ということでね、基本的なことから伺っていきますが、そもそも活断層とは一体何なのかということで、渡部さん、教えていただけますか?

(渡辺教授)活断層というのは、近い将来に動いて、多くの場合地震を起こすような断層のことを活断層といいます。

(崎山氏)それはどれくらいのスパンの?「近い将来」というのは?

(渡辺教授)それは判りません。明日かもしれませんし、数千年後かもしれません。

(青木氏)いろんな資料を拝見すると、12,3万年くらいまでの間に動いた、或いは動いた形跡があるというものは、基本的に活断層ということなんですか?それともそんなものじゃなく、活断層と全般的にいうと、何十万年前であれば活断層であれば活断層なんですか?

(渡辺教授)近い将来に動くかどうかというのは、実は非常に判断が難しくて、最近動いたかどうかで決めてるんですよ。最近動いていれば、多分近い将来も動くだろうと思ってるわけですね。その「最近」という時間の区切りが、原子力の世界では12,3万年前ということ。

(江藤氏)12,3万年前は「最近」ということですね。すごい昔に感じますけど。

(渡辺教授)もう少し活断層の専門の分野では、もうちょっと長いです。2,30万年前。

(青木氏)なるほど。活断層というと、ラジオでなかなか伝えにくいんですけど、土地が上下にズレてるというのが僕らがイメージしてる活断層っていうようなものなんですけれども、実際は先生の論文とか拝見しても難しくて全然ついていけないんですが、褶曲している」とか、少し・・・バームクーヘンがぎゅっと押しつぶされるみたいな状況になって、ねじ曲がっているようなものとか、いろいろな種類があるわけなんですか?

(渡辺教授)はい。ずれ方は上下にずれるパターンと、横にずれるパターンがありますけれども・・・

(青木氏)そうか、横ってことは、横にずれるってこともあるのか。

(渡辺教授)硬い岩盤だと、本当にズバッとシャープな崖ができるんですけど、上にあまり固まってない地層があると、曲がっただけっていうふうに見える場合が多いんですよね。

(青木氏)なるほど。
 それで、今回の志賀原発の話で、今西川記者の話でいろいろあったんですけれども、大飯のほうは「これからどうなるか判んないから、もうちょっとちゃんと調べろ」という話だったみたいですけれども、かなり厳しい意見が出たと。僕自身もいろいろ報道を見ると、
「こんなもの、どこからどう見ても活断層だろ」
っていう意見がたくさん出たみたいなんですけれども、渡辺先生、実際に志賀原発の下に走っている断層ですね、これ、専門家として、やっぱりこれは活断層ということなんですか?


(渡辺教授)志賀の1号炉の下のやつは、活断層です。それ以外は考えられないですね。しかも、たまたまどこかで一回偶然動いたというよりは、2回、3回、繰り返し動いている活断層です。

2


1


地震・津波に関する意見聴取会(第19回)-配付資料
http://www.nisa.meti.go.jp/shingikai/800/26/019/240717.htmlより

(崎山氏)その北陸電力側、これ聞きたかったんですけど、
「波による浸食作用で生じたものである。だから活断層ではない」
という言い方をしてるんですけれども、波による浸食作用で断層に似たものができるんですか?

(渡辺教授)できません

(青木氏)うーん・・・

(渡辺教授)岩盤がちょっと上下にずれているのが波が削った、それは有り得るんですよ。ところが、その上に乗っかっている新しい地層までずれているということは、それは波の浸食作用では考えられないです。

(青木氏)うーん、これは本当に基本的なところなんですけど、活断層の上に原発を作っちゃいけないとなっていて、実際に活断層の上に建ってて、地震が起きてそれがずれた場合、もちろんずれ方にもよりますけどね、上に1mずれるのか、10㎝なのか、数㎜なのか、ずれ方にももちろん差があると思うんですけど、実際にずれちゃった場合、最悪の場合その瞬間に上に乗っかってる原発は破壊されてしまう可能性があるってことですか?

(渡辺教授)そうですね。工学的なことは私はちょっとよく判らないですけれども、建屋が建っていて、その下に活断層があって、数十㎝、1m動いてしまうと、建屋は壊れますよね。そうすると、原子炉自体は丈夫に作ってあるかもしれないですけど、ずーっとたくさん配管があるので、それが壊れてしまう。

(崎山氏)そうすると、冷却する水が流れている配管が例えば破断してしまうと、冷却水漏れが起きて、原子炉の中の核燃料を冷やせなくなると、そういったようなことが起きてしまう可能性がかなり高くあるんですよね。
 原子炉の中は何百本という配管が走っていますから、それが下に活断層があることでどんなふうに折れるか、想像もつかないですよね、これは。真下にあった場合は。
 かなり激しいことになるんじゃないかと思います。

(江藤氏)そもそも日本に活断層というのはどのくらいあるものなんですか?

(渡辺教授)たくさんありますね。数え方にもよるんですけど、細かいのを一つ一つ数えていくと、2000とか3000という数になるし、少しグルーピングして大まかに分けていっても、やっぱり100とか200はあります。

(江藤氏)この志賀原発がS-1断層、そして大飯原発はF-6断層というふうに問題にされていますけれども、この数字っていうのがちょっとどういうものなのか判らなくて、教えていただきたいんですが。

(渡辺教授)S-1とかF-6っていうのは、その場所でつけた番号なんですよ。それで、SとかFっていうのは、業者が使ってる特有の言葉で、シームとか破砕帯ということの頭文字をとって、それでその地域の何番目という数字が付いているんですね。

(青木氏)なるほど。すいません、ホントに基礎的なこと判らなくて、大飯原発の活断層は破砕帯ではないかと言われてるんですが、「破砕帯」っていうのは、活断層とはちょっと違うんですか?

(渡辺教授)「破砕帯」というのは、通常は断層があって、断層が動くとその周りの岩石が壊れるわけですよね。それを破砕帯といってるわけです。だからその言葉を使うと混乱を起こしているわけです。
 だから、全部「断層」と言い換えればいいんですよ。

(崎山氏)ということは、「断層」が無くて「破砕帯」があるということは無いわけですよね?

(渡辺教授)稀にあるんですけれども、今回の場合はそんなことは考えなくて良くて、破砕帯じゃなくて断層があると思えばいい。

(青木氏)断層があってズレてるから、岩が砕けたりとかそういう現象が起きてるということなんですね。

(渡辺教授)そうなんです。いつそれが砕けたかが問題なんです。

(青木氏)それが仮に10万年前だったら、原発作るにはいいかなってことになるけれども、でもどう見てもそんなじゃないでしょと?

(崎山氏)12万年前だったら、近々動く可能性が高くなってくるということですね。

(青木氏)これ、志賀原発についてまず伺いたいんですけれども、明確に誰が見ても活断層だというふうに渡辺先生もおっしゃるし、今回さっき西川記者に聞いたところによると、意見聴取会でもそういう意見が相次いだ。ということになると、地質学の専門家というか、の方々はみんなそう思ってるわけですよね。そんなものの上に原発が作ってあって、これは動かす(稼働させる)わけにはもういかないという判断でいいわけですよね。

(渡辺教授)私は動かしてはいけないと思いますね。

(青木氏)そもそも作ってはいけなかったわけですからね。

(渡辺教授)作ってもいけなかったです。

(江藤氏)なんでそれって20何年前に判らないものなんですか?調査ってするものじゃないんですか?

(渡辺教授)します。

(江藤氏)しても判らない?それは資料がないとか技術がないとか?

(渡辺教授)いや、そうではないです。私は、意図的に見逃したと思います。

(崎山氏)そうですね。この場合、北陸電力はさっき言ったように「波による浸食作用で生じたものだ」という説明をしてるんですね。当時は通産省と原子力安全委員会というところがダブルチェックを行っていたんです。ダブルチェックでそれぞれ、やっぱり地震とか断層の専門家がいたはずなんですね。それぞれダブルチェックに地質・断層の専門家がいたはずで見ているんですが、「波による浸食作用で生じた」という見方を追認してしまったんですね。そのまま。

(青木氏)これ、今日のね、東京新聞が比較的大きな記事で特集記事を書いていてね、今渡辺先生がおっしゃったとおり、問題の断層というのはS-1と名付けられて、北陸電力が1987年にまとめた志賀原発1号機の原子炉立地許可申請書の書類の中にも登場してた。ただその段階から存在は認識してたわけですよね。
 ただ、その時はゼネコンなんかが行った調査でも見つかったけど、こういうのが見つかっても活動性が問題となるものではないということにされた。2号機の時は97年。更に詳しく調査したけど、結論は同様だった。
 っていうことだから、要するに最初から存在は判ってたけど、活断層ではないという。
 これ、渡辺さんにちょっと伺いたんですけど、先ほどさらっとおっしゃいましたけれども、「見逃してた」というのは、これは専門家も含めてってことですか?


(渡辺教授)まずちょっとお話しなきゃいけないのは、最近はそうでもないんですけども、嘗ては活断層の審査をするときに、実は活断層の専門家はいなかったんですよ。非常に大きな誤解があって、どこにどういう活断層があるかということを研究してる研究者は、地質学者でもないし、地震学者でもないんですよ。これは、厳密にいうと地形学者であって、これが日本の学問体系では地理に入ってるんですね。地理っていうと、ほとんど人文系の先生方なので、活断層を本当に専門家に専門的に扱ってる方の過半数は文系学部に居るんですよ。その辺にちょっと誤解があってですね。

(青木氏)渡辺先生も、社会学部ですもんね。

(渡辺教授)そうです。

(崎山氏)実際には声が掛からない可能性が高いわけですね。

(渡辺教授)かつては全く声が掛かってなかった。

(青木氏)それは志賀原発の最初の設置許可、25年前の頃には掛かって無かったということですか?

(渡辺教授)その頃には本当の専門家はいないです。

(青木氏)どうなんですか?本当の専門家じゃなければ、見逃しても・・・見逃すっていうのは、見て見ぬふりするんじゃなくて、過失として見逃すということですね。

(渡辺教授)いろんなタイプのものがあるんですけれども、今回の志賀の話はそういうものではなくてですね、活断層の専門家じゃない地形学者じゃなくたって、これは絶対判ったはずなんですね。そういう、迷うとか間違うとかそういうレベルのものじゃないです。

(崎山氏)そうなると、北陸電力側が審査する通産省・資源エネルギー庁、そして原子力安全委員会に対して、審査してもらうのではなくて、こういう結論でどうですか?と押し付ける形になっていたんじゃないかと思いますよね、そうなると。「もうこういうことで行きましょうや」と。「審査してください。どうですか?活断層ですか?」じゃなくて、
「『これは波による浸食作用で生じたものですよ』、そういうことに皆さんしましょうよ」
といって、電力会社側の方が規制する側というか、決める側に回ってしまっていた可能性が高いんじゃないかと思うんですけどもね。

(青木氏)なるほど。渡辺さんがね、2008年に発表された論文というか???の中でですね、
『電力の確保や地球温暖化への配慮を考えれば、原発の建設は必要であるとかつては思っていた』
と・・・

(渡辺教授)今も思っています。

(青木氏)『またより安価に安く建設することも必要であるから、敷地の健全性に関しては、多少許される範囲内でのごまかしはあるだろうとも思っていた。しかし現実は渡私の予想を遥かに超えるものであった』
と、こういうふうに書かれているんですね。
 つまり、「多少」ね、全てのことに全部対応するのはものすごくお金もかかるだろうし、天文学的な可能性を考えなくちゃいけないから、「多少」は仕方ないだろうと思っていたとしても、まさか活断層の上に原発が作られているとは思っていらっしゃらなかった?

(渡辺教授)それは全く思ってませんでした。さすがにちゃんとした専門家がちゃんとした調査をして、ちゃんとした専門家がちゃんとした評価を、審査をしていたと思っていたわけですよ。
 ところが2006年に全く・・・全然違う、とんでもない評価がなされているということに気が付いて・・・

(崎山氏)その辺をもうちょっと具体的に、なに原発で?

(渡辺教授)島根原発です。

(崎山氏)島根原発でどういうことが起きてたんですか?

(渡辺教授)鹿島断層という近くにある活断層があって、私たちの変動地形学的な認識とは全く違う図が出されていて、多分30㎞、40㎞あるだろうという活断層が、8㎞とか10㎞に短く、いわゆる「値切り」っていいますけど、短くされていた。

(青木氏)でもその後、その論文にも書いてあるんですけどね、今回志賀原発が問題になってますけど、渡辺先生が新潟県の上越市のご出身なんですね。柏崎刈羽原発についても同じような問題点が見つかったということなんですか?それ以外にも敦賀原発なんかもそうなんですよね。

(渡辺教授)はい。

(青木氏)ということは、さっき西川記者も言ってましたけど、今崎山さんもおっしゃったけど、結局なぁなぁで、全てを最初に立地ありきで建ててきちゃったっていうことなわけですよね。

(渡辺教授)そのとおりですね。

(青木氏)「そのとおり」って言われちゃうと<苦笑>、僕もだから、逆に言うとね、最初に渡辺先生が掛かれた「多少」はね、嘘やごまかしはあるだろうと。だけど、活断層の上に原発建てるなんてほどのごまかしっていうのは、これはしかし、科学者だろうが経済人だろうが、電力会社だろうが、どう考えたって許されるもんじゃないです。

(渡辺教授)許されないです。

(青木氏)こんなものがなんでまかり通っちゃったんですか?

(渡辺教授)それは、どちらがリーダーシップをとったか判りません。多分、電力かもしれませんけども、『事業者側から出てくる審査結果を丸呑みしてしまう専門家が居たのが最大の原因』なんですよ。全くチェック機能が働いていない。
 僕は、いろいろ微妙な事例とかがあって、許される範囲はあるかなと思うけれども、今度の志賀原発に関しては、これは犯罪行為ですよ。こんなものを「大丈夫だ」といって審査を通して、まさにその上に原子炉が建っているわけですよ。もう20数年稼働してきて、今まで事故が起こんなかった、活断層の事故が起きなかったのは、単なる偶然なんですよ。運が良かっただけなんですよ

(崎山氏)今、北陸電力側の出してきたものを審査する側が丸呑みしたって構図は、もうこれは明らかに国による主導があったと思いますね。
 というのは、北陸電力っていうのは、実は9電力体制、沖縄電力を除いて9つの電力が今日本にありますよね。その電力会社全てが原発を持っているんです。これは全ての電力会社に必ず一サイトくらいずつは原発を持ちなさい。そしてそこにメーカーが原発を収めるというちゃんと決まった計画があったわけなんですね。
 ところが北陸電力は、立地する地点を探すのを手間取ったり、そうしたいろんな事情があって遅れに遅れて、実は9電力の中で一番最後なんですね。一番最後に建ったのが北陸電力の志賀原子力発電所なんですね。
 志賀原発は1993年かな。やっと動き出すんですけど、もうその時には日本中に原発は建っていて、40何基建っていて、その最後の最後、やっと建った。
 北陸電力は、自分は実は電力は足りないから建てなきゃいけなかったのかというと、そんなこと全然なくて、北陸電力は志賀原発の二つとも止まっていますが、電力は余っていて、中部電力とか関西電力に融通するくらい余ってるんですね。 
 それでも原発を建てなければならないという非常に強い圧力があったと思うんですね。
 やっとこさ見つけた立地地点。ひとつの有力な、実は地盤的にもいいところがあったんですけれども、そこは反対運動でダメになってしまって、次に見つけた事前の策として見つけたのが今建ってるところなんですけど、そこに建てた、やっと見つけた地現に建てざるを得ない。もう建てないわけにはいかないというところまで、かなり追い詰められていたんじゃないかと思うんですね。
 それがさっき先生が言われた、結局事業者が出してきたものを審査する側が丸呑みしてしまう、そういうことを起こしてしまう原因にはあったんじゃないかと思うんですよね。

(青木氏)しかし、でも、先ほど渡辺先生が「犯罪行為」っておっしゃいましたけど、それはそれぞれの立場で良心っていうのがあるわけですよね。専門家であれば専門家の、最低限守らなくちゃいけないという良心があるし、電力会社だってそうですよね。それから国にしたって保安院にしたってそうですよね。本来守るべき良心っていうのはちゃんとあるんだけれども、それを見逃したとしても最低限守るラインっていうのはあると思うんですけど。しかし、これは志賀に関しては、まさに絶対に専門家も規制機関も、もっと言えば電力会社にしても、守らなくちゃいけない最低限のラインを守らなかった、これは明らかに「犯罪行為」になるということですよね。

(渡辺教授)もう完全に一線越えてます。
<33:55頃まで>

【後半】に続きます。

失礼します。
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