20120711 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章


【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(水野氏)東京には近藤さんがいらっしゃいます。
 まずはですね、福島第一原発事故を検証してきました、国会の事故調査委員会の最終報告が出た、これについて伺いたいと思います。
 これはですね、『今回の事故は、自然災害ではなく人災である』人災であるというふうに結論付けていて、これについて一方ほかの報告とは違う突っ込んだ印象を持つ方も多いかと思うんですが、この『人災だ』という結論の付け方に、小出さんはどんな印象、感想を持たれますか?
(小出氏)当たり前だと思いました。
(水野氏)『人災である』と?
(小出氏)はい。
(水野氏)それはどういう意味ですか?「当たり前だ」とおっしゃるのは。
(小出氏)事故報告書の中に詳しく書いてありますけども、「これまで東京電力自身がこんな事故は全然起こらないというふうに思ってきて、何の備えもしなかった」ということだったわけですし、「それを規制するほうの組織、いわゆる原子力安全委員会を含めた組織が全く役に立たなかった。そして法律すらが役に立たなかった」ということは詳しく検証されていますので、日本というこの国で原子力をやろうとしてこれまできたわけですけれども、そのやる組織が全く無いまま、ここに来てしまったという指摘なのですね。
 まさに『人災』です。
(水野氏)私は一つ、こういう記述があって気になったんですが、
『地震にも津波にも耐えられる保証がない、脆弱な状態で震災を迎えた』
という記述があるんですね。
 ただ、こういうことであれば、じゃあ地震や津波にも耐えられる保証のある脆弱でない状況というのは、どうやったら作れるんだろう?と思うんですが、これは科学的にどう思われますか?
(小出氏)国会事故調の方に聞いていただければいいと思いますが、私自身はそんなものは有り得ないと思いますし、特に日本というような世界一の地震国で、M8.5、9.0というような地震がくるようなところで、完璧に安全なんてものは有り得ないと私は思っていますので、事故調の記載自身があるのですけれども、多分事故調の人たちもそれを信じているわけではないと私は思います。
(水野氏)細かくいろいろ見ていきますとですね、これはどういうことなんだろう?というふうに疑問を持つ点がいくつも私のような素人でもございまして、まず一つ教えていただきたいのは、
「今回原発が壊れたのは、津波のせいだったのか、それとも津波が来る前に地震でも壊れていたのか?」
というのは非常に大きな点であると小出先生おっしゃってきましたよね。
(小出氏)そうです。
(水野氏)今回の報告書ではですね、
『地震で壊れた可能性もある』
という指摘があるんですね。
 これまで東電も政府の事故調も保安院も、
「すべては津波のせいだ」
と言ってきたんですが、
「いや、そうではないかもしれない」
という説明があります。ちょっと詳しいところを近藤さん、ちょっとややこしいかもしれませんけど、大切な点だと思いますので細かくご紹介させてくださいね。
 一つ問題になっているのは、津波の時刻と実際に原発の電源が喪失された時刻、この時刻がどうなのか?ということが大きいんですね。
 これまではですね、大前提となる津波が来た時刻は何時か?というのが、
   第一波は午後3:27頃
   第二波は午後3:35頃

とされておりました。
 ところが、今回の国会事故調は、この時間を
「いやいや、これは沖合1.5㎞のところにある測定器が記録した数字である。記録である。だから原発に津波が到着した時刻ではないんだ」
というふうに言っているんです。
 少なくとも1号機の電源が喪失したのは、午後3:35か36と見られているんです。
 こういうことを考えあわせますと、
「もしかしたら津波が来たといままでされていた時間というのは、沖合1.5㎞に来てた時間ですから、そこからまだ遅い時間になってやっと原発に到達してる。しかし、それまでの時間に原発の電源は喪失していたのではないか?」
 そういう記述がなされているんです。
 小出さん、このことの意味、どうお考えですか?
(小出氏)はい。ありうるかもしれないと思いますが、問題はこれ、何度も私は聞いていただいてきましたけれども、現場でそれを確かめに行くことすらがまだできないのです。電源設備の調査もできませんし、もっと重要なことは、津波が来る前に地震によって、配管が破れたかもしれないということをずっと私自身も気にしてきたわけです。
 そのこと自身を現場に行って確かめることができない。
 そういう事態が今あるわけで、まさに原子力発電所の事故というものの困難性をそのことが示していると思います。
 これまで四つ事故調査報告書が出たわけですけれども、そのどれもが実際の事故の証拠をつかむことができないというのが今なのだと思います。
(水野氏)そうですね。今回も
「地震で壊れた可能性があるとはしながらも、実際には電源喪失は津波による浸水だと断定する前に、基本的な疑問に対する筋の通った説明が必要だ」
と、こういう落としどころになってるんですが。
(小出氏)はい。でもそれができない。
(水野氏)筋の通った説明をしようにも、筋が通らんということがわかるにしろ、説明・・・つける資料を実際得ることができないんですね。
(小出氏)要するに、事故が火力発電所であれば、現場に行ってどうやって壊れたかということが調べることができるわけですけれども、原子力発電所の場合には現場に行かれないのです。はい。
(水野氏)近藤さん?これ、実際は強制力がある国政調査権の発動を要請して、もっと資料を公開の形で請求することもできたというんですが、それは実際しなかったんだそうですね。いろんな・・・もっとできなかったのかという点はあると思いますが。
(近藤氏)疑問点は今言った津波の到達2分前に電源が喪失してたんじゃないかということもそうですが、東電の説明も結構ウソが多いよね。改めて抱合せるとね。
(水野氏)びっくりしますよね。
「沖合1.5㎞の計器の時間やった」
なんて言われたら、「はぁ?」って思いますね。
(近藤氏)先生ね、私は『人災だ』という言葉の一人歩きをある意味恐れるんです。
 つまり、「人災だったら人がちゃんと注意してやれば、原発事故が防げるじゃないか」といいかねませんから、現に言ってる人おるわけでね。

(小出氏)そうですね。
(近藤氏)そうすると、僕は
『人災の面があるが、しかし人間のいかなる注意力を払っても原発事故を防げないのは、日本が異常なほどの地震大国である』
と、こう書けば私は論理的には納得できるんですよ。
 だけど、『人災だ』という結論だって言われたら、なんかさも鬼の首獲ったみたいに言うんだけれども、しかし、それ自体、逆に付け込まれる余地があるっていう・・・気がしてるんですが、先生も結局そういうことですよね?
(小出氏)近藤さんのご指摘のとおりですけれども、私はもう一歩思うところがあって、『日本は地震国だからどんなに手立てをしてもダメなんだ』と、そういうふうに近藤さんはおっしゃったと思いますが、私は
「別に地震国じゃなかったとしても原子力発電所というもは機械だから、壊れるときは壊れますよ」
とずっと言
ってきたのです。
(近藤氏)なるほど。
(水野氏)そうか、地震国じゃなくても、最終の処理の仕方はわからないままですしね。
(小出氏)もちろんです。核分裂という現象を起こしてしまえば、自分が作ったゴミの始末すらができないのが今なのです。
 事故にしたって、どんなに注意を払ったところで、やはりダメなときはあると覚悟しなければいけないと思います。
(水野氏)今回の事故報告書は、衆議院議長に渡されましたけど、
「政府に申し入れるべきものは申し入れます」
という答えがあったようで、こっから先どういうふうに取り扱われるかというのは決まっていないんだそうです。
 これ以上、ここから何かが始まったり、何かが改められたりというものでは無さそうですね。
(小出氏)まさに『人災』ですね。
(水野氏)まさにそういう意味での『人災』ではありますね。
(小出氏)はい。
(水野氏)どうもありがとうございました。
(小出氏)ありがとうございました。
【以上】


国会事故調報告書のダウンロード
 ⇒ http://www.naiic.jp/blog/2012/07/05/reportdl/


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