20120621 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章


【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(千葉氏)今日は毎日新聞論説員の池田あきらさんと一緒にお伺いしてまいります。
 では早速なんですけれども、今ニュースでもお伝えしたんですが、高速増殖炉もんじゅで新しい動きが起きておりまして、おととし原子炉容器の中に燃料交換用の装置が落下した事故があったんですけども、原子力安全保安院が交換した装置の機能試験を始めたということで、早ければ7月中にも事故前の状態に復旧するというニュースなんですが、改めてお伺いしますけど、このもんじゅというのは事故が連続して止まった状態が続いていたんですよね?
(小出氏)そうです。
(千葉氏)かなり深刻な事故というか、そういう事故だったんですか?
(小出氏)そうです。もんじゅという原子炉は高速増殖炉という形の原子炉なのですが、その形の原子炉は原子炉を冷やすために水を使うことができないという宿命を負っています。水という物質は、物を冷やすという意味では大変好都合なもので、皆さんも家庭で何か冷やそうとすると水を掛けたりするでしょうし、火事になれば水をかけるわけですよね。本当に水というのは便利なものなのですが、その水を使えないのです。そのために高速増殖炉という原子炉では、原子炉を冷やすためにナトリウムというものを使わなければならないのですが、ナトリウムは空気に触れると発火するのです。水に触れると爆発するのです。そして、放射線を受けると放射化するというか、そのもの自身が放射能になってしまいますし・・・。
(千葉氏)冷却材自身が・・・
(小出氏)放射能になってしまいます。
(千葉氏)放射能になるんですか?
(小出氏)はい。そしておまけに、ナトリウムというのは銀白色の、通常個体ですし、溶けても銀白色の、要するに不透明な液体にしかならないのです。ですから、何かあっても中を見ることすらできないということになってしまいますので、こんな物質でモノが作れるか?というくらいに困難なものなのです。
 そのためにもんじゅは度々事故を繰り返してきましたし、今回の燃料交換機のトラブルも一度壊れてしまうと、それを交換するだけで何年という時間がかかってしまうのです。
 こんな装置はもともと動きません。
(千葉氏)・・・今のお話を踏まえてお聞きしますけど、リスナーからの質問で、
『仮にもんじゅで福島のような事故が起きた場合、冷却などは可能なんでしょうか?』
ということですが。
(小出氏)冷却はもうできないでしょうね。要するに、福島の場合には、例えば自衛隊がヘリコプターから水を撒いてみたり、全くあれは役に立たなかったのですけれども、水を撒いてみたり、或いは消防庁が水を消防車から水を撒いてみたり、或いは原子炉の中には結局は消防車から水を押し込むというようなことをやったわけですけれども、もんじゅが事故になった場合は、水を掛けたら爆発してしまいますので、ほとんど何もできないということになると思います。
(千葉氏)え・・・。そんな中でですね、文部科学省はもんじゅの廃炉に関する可能性に関して指摘をしたりとかしてるんですよ。
 もう一つ質問が来ていまして、リスナーから
『このもんじゅは理論上破綻してるのに、存続の理由というのは一体何なんでしょうか?』
ということなんですが?存続させようということだと、この動きからすると考えられなくもないですが、小出さんどう思われますか?
(小出氏)原子力というものは、「未来のエネルギー源だ」と言われてきました。「化石燃料は枯渇してしまうので将来は原子力だ」と言われまして、私自身もそれを信じたのですけれども、今使っている原子力発電所、私たちが軽水炉と呼んでいる原子力発電所で使えるウランというのは、235番という番号のついたウランだけなのですが、それは地球上の資源としては大変貧弱で、すぐに無くなってしまうことが判っているのです。
 そうなると、原子力を未来のエネルギー源にするためには、238番という番号のついた方のウランを使う以外にないということは、もう初めから判っていたのです。それをプルトニウムという物質に変えることによって初めて利用できるようになるのですが、それを実現しようと思えば、高速増殖炉を使う以外にはやりようがないのです。
 しかし、それがもうとてつもなく難しい技術だということで世界中撤退してしまっているわけです。でも、日本というこの国が「原子力が未来のエネルギー源だ」と言おうとするのであれば、それをやるしかないのです。
 でも、実際にはできないということがわかっている。
 歴史的には判っているのです。
 それでも尚且つやろうとしているわけで、その理由はただ一つだと私は思っていまして、高速増殖炉という原子炉を動かしてしまうと、核分裂性のプルトニウム、ウランの場合にも核分裂するウランと核分裂しないウランがあって、235番だけが核分裂する。238番は核分裂をしないのですが、プルトニウムにも核分裂するプルトニウムと核分裂しないプルトニウムがあります。そして高速増殖炉をもし動かすことができるのであれば、核分裂性のプルトニウムが98%という超優秀な核兵器材料を入手することができるようになります。
(千葉氏)はぁ・・・。
(小出氏)ですから、エネルギー源になるとかならないとか、全く関係なくて、もんじゅのような大変小さなおもちゃのような原子炉でもいい。それを一度動かすことができさえすれば、超優秀な核兵器材料を懐に入れることができるというのが最後の理由だと私は思っています。
(池田論説員)小出さん、先日の原子力規制庁の法案ですか。それの附則がの中でも、どうも『安全保障』という文言がありましたよね。
(小出氏)はい。「いよいよ来たな」という感じですね。
(池田論説員)ですね。
(千葉氏)はぁ・・・。そのために福島以上の事故が起きたら、本当に止められないような状態の原子炉をまだ動かして使っていこうということなんですね?
(小出氏)そうですね。
(千葉氏)はぁ・・・。
(池田論説員)実際に文部科学省が5月に廃炉の可能性に言及したとはいえ、この間の年度末にはもんじゅに駆け込みの予算をつけましたからね。だから、どこまでそういうのが本気であるかというのはどうも疑わしい話ですよね。
(小出氏)そうです。はい。まぁ、福島第一原子力発電所の事故以降、すこし原子力村が静かだったんですが、ここにきて一気に反転攻勢に出てきまして、
『40年まで動かしていい。更に美浜にしてももうOK、40年超えているわけですけどもOKだ』
と言いだしてるわけですし。
(池田論説員)それからやっぱり大飯の再稼働というものは、そういう意味でも大きな動きですよね。
(小出氏)はい。ご指摘のとおりだと思います。
(千葉氏)はぁ・・・。
 じゃあ次の質問まいります。こちらは神奈川県にお住いのリスナーからですけれども、
『写真雑誌の中で原子力エンジニアのアーニーガンダーセンさんという人が福島第一原発2号機で、条件がそろえば再臨界が起きると警告していますが、一体どのような条件で、その条件が揃う可能性というのはどの程度あるのでしょうか?』
ということなんですが。
(小出氏)ウランという物質が臨界になるためには、ある形状の元にある量以上のウランが集まるということがまず必要ですし、その周辺に中性子を減速させるための物質、福島第一原子力発電所の場合には水なのですが、その水が適切な比率でその場所にあるという条件が満たされなければいけません。
 そして、その条件を一番うまく満たされるように軽水炉という原子炉は設計するのです。炉心というものを設計して、なるべく臨界になりやすいという形で設計します。ただし、今回の場合は、もうその炉心が設計の条件を失って、すでに溶け落ちてしまったのですね。
 そうなると臨界という条件からはどんどん離れていってしまいまして、私は今の状態で臨界になる可能性はほぼゼロと言っていいくらいだと思います。
(千葉氏)そうですか。
(小出氏)はい。
(千葉氏)じゃあ、その点はこういう警告をしてる人もいるんですけども・・・
(小出氏)可能性がないわけではないのですが、大変小さいと思います。
(千葉氏)はい。わかりました。小出さん、どうもありがとうございました。
(小出氏)ありがとうございました。
【以上】


【関連記事】
もんじゅ来月中、復旧見込み 中継装置の機能試験。無事終了
産経ニュース 2012.6.22 02:05
 日本原子力研究開発機構は21日、高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市)で、燃料交換用の新しい炉内中継装置(重さ3・3トン、長さ12メートル)の機能確認の試験を行い、経済産業省原子力安全・保安院の承認を得た。7月中には、約1年11カ月ぶりに事故前の状態に復旧する見通し。

 この日は、原子力機構やメーカーのスタッフら計35人が、原子力安全基盤機構の職員の立ち会いの下、原子炉内にある燃料棒と同じ形状の遮蔽体を装置を使って出し入れするなど、約50分かけて試験を実施した。試験は問題なく終了した。

 中継装置(全長約12メートル、重さ約3・3トン)は平成22年8月に原子炉容器内へ落下し、昨年6月に引き抜きに成功。今年3月に新しい中継装置を搬入し、5月に据え付けた。

 もんじゅは平成7年にナトリウム漏れ事故で停止。平成22年5月に運転再開したものの同8月に中継装置が落下し、試験計画が大幅に遅れている。さらに、東京電力福島第1原発事故の影響で、存廃も含め、あり方が議論されている。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120622/fki12062202050001-n1.htm


「原子力の憲法」こっそり変更
東京新聞  2012年6月21日朝刊
二十日に成立した原子力規制委員会設置法の付則で、「原子力の憲法」ともいわれる原子力基本法の基本方針が変更された。基本方針の変更は三十四年ぶり。法案は衆院を通過するまで国会のホームページに掲載されておらず、国民の目に触れない形で、ほとんど議論もなく重大な変更が行われていた
 設置法案は、民主党と自民、公明両党の修正協議を経て今月十五日、衆院環境委員長名で提出された。
 基本法の変更は、末尾にある付則の一二条に盛り込まれた。原子力の研究や利用を「平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に」とした基本法二条に一項を追加。原子力利用の「安全確保」は「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として」行うとした
 追加された「安全保障に資する」の部分は閣議決定された政府の法案にはなかったが、修正協議で自民党が入れるように主張。民主党が受け入れた。各党関係者によると、異論はなかったという
 修正協議前に衆院に提出された自公案にも同様の表現があり、先月末の本会議で公明の江田康幸議員は「原子炉等規制法には、輸送時の核物質の防護に関する規定がある。核燃料の技術は軍事転用が可能で、(国際原子力機関=IAEAの)保障措置(査察)に関する規定もある。これらはわが国の安全保障にかかわるものなので、究極の目的として(基本法に)明記した」と答弁。あくまでも核防護の観点から追加したと説明している。
 一方、自公案作成の中心となった塩崎恭久衆院議員は「核の技術を持っているという安全保障上の意味はある」と指摘。「日本を守るため、原子力の技術を安全保障からも理解しないといけない。(反対は)見たくないものを見ない人たちの議論だ」と話した。
 日本初のノーベル賞受賞者となった湯川秀樹らが創設した知識人の集まり「世界平和アピール七人委員会」は十九日、「実質的な軍事利用に道を開く可能性を否定できない」「国益を損ない、禍根を残す」とする緊急アピールを発表した。
◆手続きやり直しを
 原子力規制委員会設置法の付則で原子力基本法が変更されたことは、二つの点で大きな問題がある。
 一つは手続きの問題だ。平和主義や「公開・民主・自主」の三原則を定めた基本法二条は、原子力開発の指針となる重要な条項だ。もし正面から改めることになれば、二〇〇六年に教育基本法が改定された時のように、国民の間で議論が起きることは間違いない
 ましてや福島原発事故の後である。
 ところが、設置法の付則という形で、より上位にある基本法があっさりと変更されてしまった。設置法案の概要や要綱のどこを読んでも、基本法の変更は記されていない
 法案は衆院通過後の今月十八日の時点でも国会のホームページに掲載されなかった。これでは国民はチェックのしようがない。
 もう一つの問題は、「安全確保」は「安全保障に資する」ことを目的とするという文言を挿入したことだ
 ここで言う「安全保障」は、定義について明確な説明がなく、核の軍事利用につながる懸念がぬぐえない
 この日は改正宇宙航空研究開発機構法も成立した。「平和目的」に限定された条項が変更され、防衛利用への参加を可能にした。
 これでは、どさくさに紛れ、政府が核や宇宙の軍事利用を進めようとしていると疑念を持たれるのも当然だ。
 今回のような手法は公正さに欠け、許されるべきではない。政府は付則を早急に撤廃し、手続きをやり直すべきだ。(加古陽治、宮尾幹成)
<原子力基本法>
 原子力の研究と開発、利用の基本方針を掲げた法律。中曽根康弘元首相らが中心となって法案を作成し、1955(昭和30)年12月、自民、社会両党の共同提案で成立した。科学者の国会といわれる日本学術会議が主張した「公開・民主・自主」の3原則が盛り込まれている。原子力船むつの放射線漏れ事故(74年)を受け、原子力安全委員会を創設した78年の改正で、基本方針に「安全の確保を旨として」の文言が追加された。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012062102000113.html

失礼します。
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