今回は、木村真三先生がかなり突っ込んだお話をされています。まさに現場で動かれているからこそ、これだけのお話ができるんだと私は思います。
是非ご覧になってみてください。動画で見るお時間のない方は【内容起こし】のほうでご覧ください。

【動画】IWJ ch5
2012年6月21日 第22回 エネシフジャパン (141:09)


【エネシフHP】

http://www.sustena.org/eneshif/

【主な内容】
その①
  ・『安全・安心』の意味
  ・原子力規制庁に関する環境委員会での参考人質疑について
  ・福島事故の汚染と26年後のチェルノブイリの汚染の様子
  ・放射線被ばくとガン発生率(BEIRⅦ、ICRP)とその他注意すべき疾患
  ・チェルノブイリでの妊娠性貧血の増加の様子

その②
  ・福島事故での汚染拡散の様子
  ・昨年3月末に行われた保安院の子どもの甲状腺被曝検査(35mSvの意味)
  ・内部被曝の認識のずれ
  ・昨年3月15日の台東区での測定と日本各地への放射能雲の広がり
  ・ネットワークで作る放射能汚染地図の様子(赤宇木の方々の様子)
  ・棄民状態のチェルノブイリ・ナロジチ地区と志田名地区
  ・瓦礫受け入れについて(新潟県三条市のアドバイザーの経緯)
  ・いわき市久ノ浜での海洋汚染の様子(生体濃縮)
※質疑応答もありますが、追ってUPいたします。資料は入手できておりませんので、キャプションにてご了承ください・・・。

【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】
(木村氏)どうも。こんにちは。石田さん、久しぶり!
 実は今日チェルノブイリから今朝帰ってまいりました。
 今、3分の1くらいウクライナのほうに住んでいて、毎月東京・・・というか福島とチェルノブイリの汚染地域を両方掛け持ちでやっております。

木村先生 今回のお話があった時に、21日と言われたとき「流石に辛いな」と思った。本当のところ帰ってきたばかりで帰国直後、というか今日帰国なので、キツイなとは思いましたが、こういう機会を与えていただくというのも一つの問題提起としてはいいのかなと思いましてお話をさせていただきたいと思います。
 今日、実際基本的に皆さんにお配りしたレジュメですが、こちらは6月8日に衆議院の環境委員会(動画が見られます。文字化されているのはこちら)で参考人質疑がありましたので、参考人として出た時に資料としてつけたもの。今日これからプレゼンテーションするものの大半は、そこに資料としてつけくわえさせていただいたパワーポイントのものを今回お話をさせていただくというふうに考えています。基本的にそれをやっていきますので、その中で実際本当は伝えたかったこと、たった15分で参考になる話なんかできるわけないんです。その15分で自分の気持ちを伝えて、如何に短く内容の濃いものにしていくかということをお伝えしていくというのは、非常に難しかったので、基本的にはこの文章に則ってやったというふうにお考えいただければ幸いです。
 今回も、このお話の中で一番最初に重要な部分というものをメインとしてやっていきながら、実際に福島で起きたこの1年間、1年3か月でどういうことがすすんで、どういうことになっているかということをお話しながら進めていきたいと思います。

・『安全・安心』の意味
 まず、皆さん、レジュメを見ながらみていてください。
 私は、1番最初に言いますのは、『安全・安心』という言葉は大嫌いです。
 そもそもがこの『安全・安心』という言葉は、いかにも人を騙しているような言葉にしかならない。『安全』というのは技術を以て確信して進行させていくものであって、『安全』というのを積み重ねることによって、『安全』というものはより安全が進んでいくということは皆さんもご理解いただけると思います。
 だけれども、ただしこの『安心』というのは、基本的には人の心です。精神的にどう受け止めたかというのを考えるのです。だから、それを『安全があるから安心できる』という言葉は、この原発事故以降は全くもって皆無となったわけです。
 そういうところで、それでも『安全・安心』という言葉が地元の首長さんでも使っています。福島県内では『安心・安全』とおっしゃるけど、この根拠をもっているのは『安心』というのは基本的には『何が』というのをうまくここに書いてあるように、
「誰のための政治であって、誰のための行政であって、誰のための研究であるか?」
これをきちんと明らかにしていくことによって、安全というものが付いてくるんだと私は思ってるんです。だから、基本的にこういうただ言葉のまやかしで国民を惑わせるというのは、非常におかしな話であるというふうに私は思っております。

・原子力規制庁に関する環境委員会での参考人質疑について
 この参考人質疑で実際にお話したかったというものは、まずこっちのほうを見たらいっちゃいますので、これは本当に学者のほうのお話で、「学者の立場から言ったらこうですよ」と、これ後で見せたいと思うんですが、
「実際に原発問題とかそういう問題の審議して、本当に継続すべきかすべきでないかという審議がならないうちに、もう原子力の安全利用のためと名を打って、原子力規制庁というものを作っていくということ自身がおかしいんじゃないですか?」
という話をしてまいりました。
 そもそもは、この原発自体が本当に動かしていいものかどうなのか、私が日本を出国してる間に政局が動いて、昨日ウィーン経由でウクライナへは直接行けないので、ウィーン経由で帰ってきたのですが、ウィーンの空港でもらった電子版見たら、政局の動きに驚いて「こんなことになってるのか?!」と驚いてしまいまして、議員の先生はこれから票集めで大変かもしれません。こんなことするから、みんな国民は信用しないわけなんですよ。国民が本当に信用するべきことっていうのは、「再稼働というのは誰のために?」ということを考えないといけないんじゃないかと思うわけです。こういうのがあたかもまず箱作りから入って話をしていくのでは、そもそも間違いじゃないかというのが私の意見で、私の意見陳述で言わせていただきました。
 本来、どこの国でも緊急事態省というのがあります。アメリカもそうですし、もちろん旧ソ連の被災3か国にも緊急事態省があるわけです。これは、原発のみならず災害等について、全てに対して独自の判断を持って動かなければならないというような実際に起こった、しかも現場の責任者がある権限を持って、そこで判断していくというような緊急事態省というシステムがあるわけなんですね。私もこれはウクライナの方でも調べたし、スウェーデンのほうの資料とかいろいろな資料、向こうの現地の私の共同研究者等に問い合わせて聞いて調べてたんですが、日本のようにこの原子力に特化するようなものの規制庁の話というのは、何か話をすり替えているんじゃないかというふうに私は思うわけです。
 だから、これは全て、「じゃあ誰に責任があるか?」、これが原子力規制委員会というものができるという話になりますと、原子力規制委員会自身の5人のメンバーが協議してという間に事故はどんどん進んでしまう、これはどういうことか?ということを、やっぱり委員の先生に質問されました。もちろんそのとおりなんです。「じゃあ今度は首相に権限を与えて首相に」っていうけども、首相は専門家ではないんですし、意見を聞いて動くということになりますよね。だから自分の都合のいい方しか付いてなかったら、自分の都合のいい判断しかできなくなるわけですよ。そういうことを考えた上でやるんだったら、やっぱり現場の実際に陣頭指揮を執って、その現場のスペシャリストが判断をもって、ある程度の避難とかそういうことをやるというのが一番大切なのかなと思うわけです。
 一番大切なのは、そこに居る人たちの『命』です。経済でも何でもありません。そういう地震の緊急時というのはそういうものであるということの認識を粗さというのを今回は感じた参考人質疑でした。

 ここにも書いてありますけど、東海村臨界事故の際にも、当時の科学技術庁は自分たちが核燃取扱いという事業所を監督官庁でありましたので、その科学技術庁の中でも実際起きた事故をすぐに調査して、住民の避難等について考えるということに対しては、すごく消極的だった。それで私が当時勤めていた放射線医学研究所でも、その調査に入るというふうに言ったときに、「行くな」という指示を受けました。
 こういうふうに「自分のところの不祥事をあら捜しする必要はない」と言われるような組織は、本来あっていいものなのか?ということですね。
 今回は、実際私の聞くところによると、事故直後から放医研は動きましたが、放医研は動いてデータ収集をしたにも関わらず、情報公開ということについてやってない。これは東海村臨界事故で経験したように、国というものはまずこういう災害が起きた時に情報を集約するというシステムを作らなければならないということで、システムができました。でもこのシステムはできたけど、これを国民に対して情報公開していくというシステムまでは作ってなかったんです。だからこそ、皆さんが「一体自分たちは大丈夫なのか、大丈夫じゃないのか。」しかも、最近東京都議会議員の共産党の議員団で、都内で1マイクロシーベルトを超えるような地域が見つかったというふうなことが報じられてました。たまたま私がウクライナに居るときに、とあるメディアの方から問い合わせが来て
「これ、先生、これってどういうことなんですか?1マイクロは危険ですか?危険でないですか?さらにその土壌というのは25万ベクレル/㎏というような情報が出ていますが、これって大丈夫なんですか?」
というような問い合わせがあったので、それに対してはきちんと答えました。
 それがあった場所というのは、とある公園だと思います。その公園の植え込みの周辺に1.1マイクロあった。その下の土壌が25万ベクレル/㎏という汚染された土壌があったということなんですが、これは当然事故後時間が経っていったら、どんどん濃縮されてくるわけです。雨水とかそういうもので集まったもの。表面に放射性物質が付着していますから、そういうものがすーっと集まってるわけですね。集まったところで水たまりや木々があるところ、密集してるところというのは、水を止めてしまいますので、そこに濃縮してしまうという現象が起きます。これはもちろんチェルノブイリでもそういうことが起きていますし、今現在でも実は起きています。今現在でも、やはりセシウム134・137というものは、科学的に存在するときには大体塩化物として、塩化物というのは・・・塩化セシウムとかほかの化合物あって存在するわけです。単品のセシウムというもので存在するわけではなくて、ある物質とある物質がくっついて安定な状態にもっていく、これが科学物質としては安定の状態になるために必要な当たり前のことなんですが、こういう状況の時に、この塩化物のセシウムというのは非常に溶けにくいんです。非常に溶けにくいけれども、徐々に溶けていく。それは水の量が多ければ多いほど溶けやすさは進んでいきます。私が大学院の時に博士課程の時には、分子生物学というのをやってました。私自身はこの放射線の専門家になる前というのは、実は物理・化学・薬学・医学の4つ分野をクリアしてまいりました。医学系の時に、最後博士号のときに僕はパーキンソン病の発現気性というのでとったんですが、この時に分子生物学も使わなきゃいけないし、他も使わなきゃいけないということで、そのDNAを抽出するんです。このDNAを抽出するとき、濃縮させるときに塩化セシウムを使うんです。その濃い塩化セシウム溶液の中にDNAを入れると、きちんと不純物・タンパク質は落ちるし、DNAは浮いてくる。というようなことで、上積みをとってというような操作をするんですが、この実験をしていたときに、はたと今回気が付きました。このセシウムという塩化物のセシウムというのは非常に溶けにくいもの。相当溶かすのに必死になってやっても、なかなか思い通り溶けないんです。ということは、徐々に溶けてくるということは、本物のセシウムが表層の近い地位であるならば、それは徐々に溶けだしていく。汚染はまたどこに出てくるか今後判らないということですね。

・福島事故の汚染と26年後のチェルノブイリの汚染の様子

 ちなみにチェルノブイリで私がずーっと調査をしている汚染地というのは、26年前の事故当時、1時間当たり30ミリシーベルトの放射能雲が通過していた地域です。その30ミリシーベルトの放射能雲が通過していった地域は、幸運にも雨や雪が降らなかったおかげで地面の汚染が飯舘並みクラスです。これが雨や雪が降ってたら、もうもちろん人が住めるところじゃなくて、大変なことになってます。そういう地域なんですが、その地域においてですね、結局政治的・経済的な理由から、この地域に1万人の住民が棄民状態で取り残されています。今も住んでいます。その地域のために、実は調査をしているというというのがこの事故前のお話です。
 もちろんこの事故が起きると、想定した上での調査でしたので、事故が起きた時にきっと長い時間を掛けた時に、人の身体というのは内部被曝でどういう状況になっていくのかというものを見ていく。これはちゃんと調べておかないと、今もって原子力の推進側の先生方は如何にも「100ミリシーベルト以下は大丈夫だ」と言ってますが、そんなことは有り得ない。きちんと生物学的・医学的にきちんと調べてみても、100ミリシーベルトは大丈夫だということを言う根拠は何一つないわけです。そういう中で、きちんとしたデータをもって話をしなければ説得できない。国民に民意を問うことはできない。ということなので、きちんとしたデータを取るということが目的で、実はチェルノブイリに入ってるというわけなんです。
 その地域でも、牧草地帯が広大に広がっています。その牧草地で自給自足をしなければならない、棄民状態ですので、彼らは生活費が1年間で180ドルというような、補助金しかもらってない。新鮮な食品を買うための支援プログラムあります。それはソ連崩壊までの3年間は3度の食事、子供たちは学校給食まで4度の食事を出された。子供たちは体を使うのでお腹が減ってしまう。3食じゃ足りないということで、4食まで支給されてきちんと健康管理していただいていたんですが、ソ連崩壊の後、その地域で何が起こったかというと、まずお金がないからということで打ち切りになったんです。彼らは自給自足を選ぶしかないということで、自給自足になったわけです。その時に牛や豚を飼って、牛はミルクを飲んで、源乳をとってチーズやミルクにしたり、野菜は自分のところの汚染地域の畑で作ってそれを食べるということで、今もって障害が出るレベルのお子さんたち543人を集めた結果では、平均的に1300ベクレル以上のセシウムが未だにお子さんに入ってるというような状況です。
 そういうところで調査を進めていくと、ある牧草地に紹介されました。その牧草地というのは、これはドニエプル川の支流にプリピャチ川というのがあるんですが、そのプリピャチ川の川に沿って村があるんですが、この村は雪解け水の時は氾濫するんです。その氾濫した肥沃な肥料の中、土をもたらして、その土地を更に肥沃な土壌を作り出すというようなことになってるんですが、実はその牧草地に窪地ができまして、その窪地には氾濫した水がどんどん干上がってくるでしょ。干上がってきたら、そこからどんどんどんどん、その窪地に溜まってくるわけです。そうするとそこに一番濃縮されたセシウムが含まれた水が溜まってきて、それが干上がってしまうということで、その窪地が線量が今もって3マイクロ、4マイクロあるようなところがあるわけです。事故後25年経って、26年経ちましたが、それで3マイクロ、4マイクロあるっていうのは驚異的なものです。ちょっと森に行くと5マイクロ超えます。
 そういう地域に彼らは住まわざるを得なかったというようなところで、実際、この本題の期間、「いつまで続くのか?」とよく言われるんです。たかだか1年しかたってないのに、もう忘れようとしてるところが怖いんです。これは忘れさせちゃいけないんです。事故後影響というのは、今後、これから出てくるものであって、これをきちんと見ていかなければいけないのです。これを見ていくことに対して、それを余計被害が拡大しないように、未然に防ぐのが放射線衛生学、予防医学の知見で僕がやってる仕事なんです。
 だからこそ何が危険でどうすればいいのかというような回答をもって話をしていくというのが、僕のスタンスなんです。

<20:00頃~> 
 こういう話をしたってドンドン脱線して、こちらの話に行きましょうか。
 これは、(照明はつけたままで結構です。)明るくないと皆さん寝てしまいます。この辺で大学の講義で・・・獨大で講義やってるんですが、暗くすると皆寝ちゃうんですよ。
<会場笑い>
 絶対寝させちゃいけないときに、は必ず学生側には必ず電気をつけてくださいというふうに言っていて、見にくくても我慢してください。

・放射線被ばくとガン発生率(BEIRⅦ、ICRP)とその他注意すべき疾患
 これは、私が一番大きな組織の中で信用している米国科学アカデミーの低線量電離放射線被ばくにより健康リスク評価委員会=BEIRというところなんですが、このBEIRが出してる第7班でPHASE2という2005年に発行された本の中に出てるんですが、この中にまだ100ミリシーベルトが大丈夫だというふうに一切言ってないです。ここの話をすると、
『「100人の人が、ここに居る人が皆100ミリシーベルトの被ばくをしたよ」という前提で話をしなさい。「100人のうち1人が放射線による原因でガンを発症するでしょう」』
というふうに言っています。
『この放射線由来でガンを発症する人は100人のうちに1人。ということは1%の方がガンになりますよ。また、その半分、0.5%の方はガンで亡くなってしまうんだよ』
ということです。だから放射線で100ミリシーベルト浴びると0.5%の方はガンで亡くなる可能性があるんだということを示したものです。これはICRPでも国際放射線防護委員会でも同じようなことが言われてますが、これは非常に判りやすい説明なのでこれを使っています。

1


 でも、でもですよ?ここで聞いてください。ここで大切なのは、何もしなくても100ミリシーベルト浴びようが浴びるまいが、何もしなくてもこのうち42人は何らかの原因でガンになってしまいます。これは今現代の状況なわけですね。ということは、100ミリシーベルト浴びたとしても浴びてなくてもガンになった。
「じゃあそのガンはこの放射線由来なの?どうなの?」
っていっても判らない。ここが一番つらいところです。
 これは僕はずっと、実はいろんな大学で講義をしてまいりましたが、僕はちょうど放医研をやめた後に、塗装工をしながらやっていた後に、法政大学の非常勤講師をしていました。その時に環境医学というのを授業でやっていましたが、その時に僕はずっと公害問題をとりあげていて学生に教えていたんです。それで公害問題を見ていったときに、一つ言えるのは、イタイイタイ病であれ水俣病であれ、これは原因が追究できるんです。髪の毛から爪の中から、爪の分析をすること、髪の毛を分析することで、これが何の原因で中毒になったか、重金属であれば見ればわかるわけです。
 でも、放射線というのは自分の身体を貫く、もしくはこの放射線が体内に留まるけれども、それは4年も経てばほとんどは抜けてしまいます。それで原因が掴めなくなってしまった後にガンになる。これがどこをもって、この人が被曝をしたからガンになったという判断だという証拠が出せるかというと、これは出せないです。今回の被災三法案っていうんですか?原発の被災者法案の中でも、放射線について結局言及できないのは、こういう問題があるからだということです。
 例えば、これ、ここの中の人たちが200ミリシーベルトの被曝をした場合です。この概念から言うと、200ミリシーベルトの被曝をした場合、200人のうち2人の人がガンになって一人は助かり一人はガンで亡くなってしまうということになります。それを今200ミリシーベルトの話をしましたね?これを「じゃあ10分の1まで落としました」と考えた場合、今度20ミリシーベルトの話になります。じゃあ20ミリシーベルトで100人の人に20ミリシーベルトあたったとすると、理論計算的には直線的に上昇するんだという話が出ておりますので、この直線仮説も基づいて考えると、1000人のうち2人がガンになって、一人がガンで亡くなってしまうはずであるというふうに言われてるわけです。
 これをもって国は「20ミリシーベルトを被曝してよい」と言っているということが、ここがまず1000人に一人の割合でガンで亡くなってしまうことというのは、これは皆さん、意外に思われるかもしれませんが、とてつもなく大きいです。なんで大きいかというと、ポリオのワクチンというのがありますよね。このポリオのワクチンで障害を持つ子供や無くなってしまう人は150万人に一人と言われてるものが、あれだけの大騒ぎをしてポリオのワクチンをどうにかしなきゃいけないという話をして、全世界的で動いてるわけです。それなのに、1000人の1人が死ぬ可能性があるにも拘らず、「帰っていいよ」という根拠というのは、僕はどこを探しても無いわけです
 だから、その比較の問題というものをきちんと皆さん、考えていかねばならないんじゃないかと思うわけです。
 ちなみに、これは一応最大の危険率をもって考えてますので、本来ゆっくりゆっくり毎日毎日被曝が積み重なって被曝をした場合、これの概念からいうと、このBEIRⅦというのは、3分の1くらいまで発生率が下がるであろうというふうに言われています。
 ICRPは「半分くらいに落ちるであろう」というふうに言われてますから、100ミリシーベルトの人が200人居ても1人がガンになるかというくらいのレベルと考えてよいかと思いますが、実際、このようにガンを受けることは可能性として非常に長いなというふうに言われてるわけです。

「じゃあ、皆ガンで直接的に死ぬ・死なないだけの議論をしてそれだけでいいのか?」
というと、それは間違い
です。
 ということで、僕はこれは実は昨年3月の時に辞表を出した労働安全衛生総合研究所でずーっと仕事をしていたときにやってたのが、医療従事者の被曝問題ということです。僕は労働関連の仕事に入ったので、労働以外をやってはならぬというふうに言われました。
「1番じゃないとダメなんですか?」
と蓮舫議員が言ったあの事業仕訳で廃止を食らいまして、その対象になったからということで所内が非常にピリピリして、本来大切であって実際被曝労働者問題としてきちんとやらんなければいけないような問題も、直接的に説明できない。説明できないのは「役人とお前らじゃないか。幹部じゃないか。」というのは僕もはっきり言ったことがあるんですが、結局僕自身がチェルノブイリの事故調査とかこういうことも全部廃止させられました。
「やるのは、医療従事者の直接的な被曝問題だけやってください。」
 そういうことしか見分けができなというのが、もう一つの問題なわけですね。それは行政、これ労働基準局諸葛の研究機関ですから、労働行政の行政官が説明できない。まして、その行政官に対して説明ができないという幹部の愚かさを露呈したような話なんですが、こういうことで「労働者の直接的な仕事しかやっちゃいけない」と言われたって、甘んじて実際にやってたのが医療被曝・医療従事者の被曝問題ということでやってたんですが、近年の報告というのは2007年ですが、2007年の報告では、Radiation Researchという、我々の業界の中では非常に権威のある論文、雑誌なんですが、ここでChumakというウクライナの放射線医学センターの疫学の専門家が報告をしてるんですが、
『チェルノブイリでの事故処理作業者の中では、123mSv』
これ、目だけですよ?全身被曝で123ミリシーベルトだったら大変なことですが、目だけだると意外と多いんです。部分的には意外に多く被曝をしてる人は多いんですが、
『123ミリシーベルトから白内障患者が発生
する』
というふうに言われています。

 また、広島の放射性影響研究所の練石先生が発表されているRadiation Researchでは、広島や長崎で被爆生存者730人をたった一人の眼科医がきちんと鑑定をして、その結果調査をした結果、平均値としては白内障には二種類ありますから、皮質白内障で600ミリシーベルト、後嚢下混濁というのが700ミリシーベルトくらいから、どうやら白内障を呈しているポイントになっているんだというようなことを発表がされています。
 ということで、実は労働者被爆の問題に入っちゃうんですが、医療従事者で心臓カテーテルをやる医師、これは放射線科医、あと循環器内科の医師、後は消化器内科で心臓カテーテルだけではなくて、消化監察医をするような方、彼らが非常に多くの被曝をしてます。彼らは月に防護メガネを付けた上でも、大体1ミリシーベルトくらいの被曝をしてるというデータを3年かけて実地調査をしてデータをとっています
 そういうようになってるんですが、そんな内々で発表された循環器内科の段階では、医師の白内障が増加しているというふうに言われています。
 このようにしても、実際被曝というのはガン以外も起こるんだ、他の病気も起こるんだということですね。

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 では、最新の研究、2010年のBritish Medical Journal、これは医学分野の中で非常に権威のある、本当にここに乗るというのはものすごい良い仕事をされた人しか載らないわけなんですが、ここでやはり広島の放射線影響研究所のもう退官なされた清水幸雄先生という先生が53年間にも及ぶ被爆者の死亡データを集める作業をされたんです。この中で死亡された死因に全部集めていくという作業をした結果、脳卒中については死亡者の9600名の中で約1シーベルト、1Gというのは1シーベルトと考えていいのでガンマ線なので、1シーベルトの被ばくをしたときに、健常時に比べて9%の上昇をした、死因が9%上昇するんだというふうに言われています。1シーベルトというのは1000ミリシーベルトということです。1000ミリシーベルトの被ばくをした人たちは、9%の上昇が見られる。

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 心疾患についてはというと、14%というふうな結果が出てます。

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 これは、さっき言った1シーベルト=約1000ミリグレイを浴びた時に、100人のうち10人がガンになる、ガンのお話。さっきは100ミリシーベルとでしたけどそれを10倍すればいいわけですから、直線仮説で考えていくと直線になっていきますので、この概念にのっとって考えれば直線でいきますから、もちろん10倍になるわけです。1000ミリシーベルトの被ばくをした場合、ガンの発生率は・・・10人というふうになります。

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 このようになると、心疾患はこの発がん率よりも多いわけですよね。14%。こういうkとも実際最新データで出てるわけです。脳卒中はほぼ一緒、9%です。でも、ここですばらしい結論が出てるわけです。
『500ミリシーベルト以下は判りません』
と。原因かなのかすら言いません。今までガンの発がんの話と全く同じことをおっしゃってます。でも、これは明確ではないというふうに言っても警鐘を鳴らすことには間違いないわけですよね。この直線仮説というものを考えていけば、全く放射線影響というものは直線的になるということを前提に考えれば、もちろん下に下げることは十分可能で、これが予防医学的な見地でいえば正しい考え方であると思います。

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 ということで、今回、この被曝をされた方々というのは、やはり未来の病気にも気をつけねばならぬということです。

・チェルノブイリでの妊娠性貧血の増加の様子
 チェルノブイリも私が今まで調べたデータの中では、このほか妊娠性の貧血というものが上昇します。これは妊娠性の貧血の上昇というのは、ナロジチという私が26年間見捨てられたその地域、棄民状態の調査をした時に出てきたデータがありますが、ちなみにこの旧ソ連のカルテの保管年数、これ50年です。日本は5年です。5年経ったら無くなるわけです。無くなる可能性が充分あるわけです。捨ててもいい。保存期間が5年なわけなんで、真面目な先生はずっと残してますよ?でも残してない先生方も多いですから。これで残った旧ソ連というのは、文書という形に残すというのが伝統的にありましたので、そういうもののおかげで50年間のカルテが残ってるわけです。それを事故前から調査させますから。事故前からやったときに、この妊娠性の貧血だけは自信を持って明らかに優位な差がでると思ったのは、なんとそのナロジチの中央病院というのは産科医一人しかいません。産婦人科医の先生は、
「事故前からあなたはいるんですか?」
と聞いたら、
「もちろん」
と言うんです。ということは、一人の医師がずーっとこの30年間くらい全部見て、そのカルテを書いてるということは、明らかに間違いがない。恣意的なものが入ってないわけです。
 ということで、信頼性が上がるというデータで、私はこれはもう少し調べていこうと思っていますが、これも各5年ごとに刻んで全部病気の国際疾病分類表=ICDっていうものに分類表をあてて、40数種類の病気にわけて調査をした結果で、明らかにそれが出てきたというのが一つです。
 ??先生は小児科医ですからお判りだと思いますが、もちろん妊娠性の貧血っていうのはよくあることなんですが、これは薬でも治療できます。でもほっておくと大変なことになるというのはもちろんお判りですよね?
 ということで、実際、この貧血自身の簡単なものとはいえ、こういうデータとともに新しいものが出てきました。
 こういうことで、実際に被曝というもの、被曝の障害というものを皆さんで考えていかなければいけないんだよということをお伝えしました。

【その②】へ続きます。
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