20120614 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章



【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(千葉氏)今日は毎日新聞論説員の藤田さとるさんと一緒にお伺いします。
 ではまず、ニュースでもお伝えしたんですけれども、福井県の大飯原発3,4号機の再稼働につきまして、地元のおおい町の町長が再稼働を認める意向を示して、福井県知事に伝えたということです。今週中には県知事が同意して総理大臣に伝えられて、再稼働ということになる見通しなんですけれども、このことについてまず小出先生のご感想をいただけませんか?
(小出氏)はい。大変残念・・・です。ただし、残念・・・というだけでは済まないものがここにはあると思います。
 要するに原子力をやってきた長い歴史というのがあって、おおい町もそうですけれども、地域全体が原子力にすがらなければ生きていかれないと、そのような状況に追い込まれてしまった上で原子力を受け入れてしまいました。
 そして、一度受け入れてしまうと、それに依存するような町になってしまうわけですし、次々とまた新しいお金を欲しがる以外にないということになってきたというのが日本の原子力のやり方だったと思います。
 言葉はわるいですけど、いわゆる麻薬患者を作って、ますます麻薬漬けにしていくという歴史が続いてきたと私には見えます。
 地域の人たちにそれを「簡単に抜けろ」ということは、すぐには言えない。どうやればその町全体がきちっと生き延びることができるのかという、そのことを考えなければいけないのだと思います。
 ただし、町議会にしても福井県議会、或いは福井県知事にしても、その人たちこそがそういうことを考える責任がある人たちだと思いますので、しっかり考えてほしいと思います。
(千葉氏)その県議会なんですけれどもね、全員協議会を開いて再稼働問題について話し合ったそうなんですけれども、その結果「再稼働は知事の判断だから議会に意見を表明させて責任を負わせるというバカな話はない」といった意見が出て、県議会として採決や意見集約はしないで知事に判断を一任したということで、いろいろ報道を聞いていますとなんだか「総理が決めたから」「町長が決めたから」「知事がこういう考えだから」とみんな責任から逃げているという感じがするんですけど・・・
(小出氏)そうですね。情けない議会ですね。議員一人一人がちゃんと自分の想いを発信しなければいけないと思うし、一人一人が個人の責任を負わなければいけないと私は思うのですが、残念ながら、まぁ少なくとも原子力の世界では、個人としての責任を誰も負わないという、そういうまま今日まで来てしまいました。
(千葉氏)ほんっとに変な世界ですよね。
(小出氏)はい。
(千葉氏)それから、リスナーの方からの質問が来ておりまして、こちらご紹介します。大阪府にお住まいの方で、
『判り切ったような質問をして申し訳ないんですけれども、大飯原発を動かさないのと動かしたのとでは、危険度は違うのですか?』
という質問なんですが、先生、改めて教えていただけますか?
(小出氏)もちろん危険度は違います。運転中に全所停電をした場合には、事故が劇的に進行してしまいます。福島第一原発の1号機から3号機で進行したように、もう本当に手の付けようもないまま事故が進行してしまいますので、まずは動いている状態をやめるべきだということは徹底的に大切だと思います。
 では、「動いていなければ安全か?」といえばもちろんそうではありません。既にこれまで日本で原子力発電をやってきてしまったがために、広島原爆が撒き散らした放射性物質の120万発分に相当する核分裂生成物を日本は作ってしまった・・・
(千葉氏)120万発分ですか・・・?
(小出氏)はい。それは消すことができないゴミとして、それぞれの原子力発電所の中に溜まってるわけですし、今でも福島第一原子力発電所の進行中の事故の中でも、それが危機に直面しているのです。ですから、止めれば安全だということではありませんが、まずは止めなければいけないと私は思います。
(千葉氏)うーん・・・。
 ・・・はい。判りました。
 続いてはですね、東京電力の社内の原発事故調査委員会が近く最終報告書を出す予定だというニュースが入ってまして、その案が明らかになったということです。
 それによりますと、『原発の北西の方向に重大な汚染を引き起こした最大の原因は、当初言われていたベントではなく、2号機の格納容器から漏れ出したガスだ』と結論付けているんですけれども、詳しい損傷の箇所や原因については書かれていなかったということです。
 これ、詳しい損傷の原因がない報告書はほとんど意味が無いと思うんですけども?
(小出氏)はい、おっしゃるとおりです。もちろん現場に誰も行くことはできませんし、原因を確定するということはこれから10年後、20年後、或いは30年後になるかもしれないと私は思います。
 ただし、私自身は2号機の放射性物質の漏えいが生じた場所というのは、私なりの推測があります。それは、サプレッションチェンバーと私たちが呼んでいる格納容器の一部なんですけれども、格納容器本体はドライウェルと呼んでいますが、そことサプレッションチェンバーを結んでいる配管があるのですが、配管といっても巨大なパイプなんですが、私はそこが破損してそこから出てきたと思っています。それは、福島第一原子力発電所の最大の安全問題だと。もともと米国のジェネラルエレクトリックの設計者たちが指摘していたことで、それが多分現れたのだと思いますし、そうなると・・・政府と東京電力は津波が原因だと言いたかったわけですけれども、そうではないということになってしまいますので、どうしても東電としては言いたくないということだと思います。

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7月13日 後藤氏:ストレステストについて【ストレステスト・格納容器・緊急提言】@CNIC【その②】より

(千葉氏)はぁ・・・、藤田さん、いかがですか?
(藤田論説員)今回おおい町長の同意の表明を受けまして、数日中に福井県知事の同意を受けて、政府が大飯3,4号機の再稼働を正式に発表するということになりますが、しかしこの一連の手続きを見ると、せっかくこの夏みんなで節電をして原発無しでも節電してなんとかやっていこう、原発がなくても乗り切れるという、そういうことを証明できる非常にいいチャンスだったと思うんですが、そういうチャンスも奪われて非常に残念な気がするんですが、小出さんはいかがですか?
(小出氏)藤田さんがおっしゃるとおりです。十分今年の夏も乗り切れたはずだと私は思います。それも今藤田さんが「国民が節電をしようと思ってきた」とおっしゃってるわけですけれども、全く節電もしなくても乗り切れるのです。それは日本の国家の統計データがそれを示していますので、なんの節電もしなくても、日本はいついかなる時も電力供給に支障はないのです、本当は。
(千葉氏)はい。小出さん、どうもありがとうございました。
(小出氏)ありがとうございます。
【以上】

【関連記事】
大飯再稼働:福井知事、週内に同意 おおい町長容認を表明
毎日新聞 2012年06月14日 10時49分(最終更新 06月14日 12時54分)
 福井県おおい町の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働問題で、同町の時岡忍町長は14日、町議会全員協議会で「おおい町として再稼働の容認を決定した」と報告、同意を表明した。県議会も同日、全員協議会で各会派が西川一誠知事に意見を表明。一部会派は再稼働に反対したが、議会の大半を占める自民、民主は賛否を明らかにせず、西川知事に事実上判断を一任した。西川知事は16日までに再稼働同意を野田佳彦首相に伝える。
 時岡町長はこの日の町議会全協で、容認の理由として
 ▽野田首相が国民に、原子力発電に対する強い思いを語った
 ▽県原子力安全専門委員会が政府の判断基準を妥当と評価した
 ▽町議会が再稼働を容認した
 ▽立地町としての責任を果たすべきだという思いがある
−−などを挙げた。時岡町長は町の判断を14日中に西川知事に直接、伝える方針だ。
http://mainichi.jp/select/news/20120614k0000e010149000c.html
 一方、県議会全協では、公明党県議が政府の脱原発依存方針について問うと、西川知事は「いろいろ議論されるなかで対応していきたい」と答弁。共産党県議が「大飯原発が大丈夫だとどうして言えるのか」と反対すると、西川知事は「(県原子力安全専門委は)現時点での科学的知見で、福島のような災害が福井に来た時に対応が可能であると判断した」と答えた。民主党県議は「有効求人倍率は急落し、ハローワークに設置された特別相談窓口の相談が急増している。立地地域に対する緊急雇用対策、中長期的な支援を国に働き掛けないといけない」と経済対策を求めた。【松野和生、佐藤慶、山衛守剛】
http://mainichi.jp/select/news/20120614k0000e010149000c2.html

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1月8日【内容起こし】小出裕章講演会:『山梨と福島はつながっている~子供の未来のために知ってもらいたいこと』《即刻原発は止められる!》【その③】より

 ただし、「原発を動かさないと停電してしまうぞ」という脅しに国がそれを使って、ほとんどの皆さんがそれに騙されてまずは来てしまっているわけです。
 それでも国民のほうは、「まぁ節電くらいやろうか」という気になっているわけですけれども、それでも野田さんは「国民の生活を守るため」とかいかにも国民に恩着せがましく理由をやろうとするのですね。本当に異常な人たちだと私は思います。

【最大汚染源の2号機】 損傷箇所特定できず 東電最終報告の全容判明
(2012年6月12日、共同通信)
  東京電力の福島第1原発事故調査委員会(社内事故調)がまとめた最終報告書案の全容が12日、判明した。深刻な環境汚染を招いた放射性物質が2号機の格納容器から漏れ出たとの分析結果などをあらためて盛り込んだが、2号機の詳しい損傷箇所の特定は避けた。東電は外部の専門家による検証委員会の評価とともに近く公表する。
  報告書案はA4判約360ページ。地震による原発の主要設備への損傷は「ほとんどなかった」と説明。大気中に放出された放射性物質の推定量が90万テラベクレル(テラは1兆)に上ったことを、飛散状況を示す図解とともに記載した。
 原発の北西方向に重大な汚染を引き起こした最大の原因は、当初考えられていたベントによるものではなく、2号機の格納容器から漏れ出たガスだったと結論付けたが、詳しい損傷箇所や原因の記述はなかった
 また福島県沖で大きな地震が過去になかったため巨大な津波の発生は想定しておらず、国の研究機関も同じ評価だったとした。事故4日前の昨年3月7日に、津波の長期的評価について経済産業省原子力安全・保安院と検討した際も「今すぐ対策を実施するようにとの指示は受けなかった」と、判断の妥当性を強調している。
 原子炉冷却のため事故後に自動的に起動した1号機の非常用復水器(IC)を運転員が手動で止めた問題で、政府事故調から「機能の認識や操作習熟が不足し、対応の遅れを招いた」と指摘されたことについて「運転員は必要な知識を有していた」と反論した。
 ただ吉田昌郎(よしだ・まさお)前所長や本店幹部が状況を把握していなかった反省から「過酷な状況下でも情報共有する手段を構築しておくことが必要」とした。
 報告書案には、事故当時の官邸との情報連絡や広報体制のほか、撤退問題の調査結果も盛り込まれた。

 ◎依然残る疑問点
 【解説】東京電力による福島第1原発事故の社内調査の最終報告書案は、放射性物質の大量放出につながった2号機の損傷箇所を特定しないなど重要な疑問が未解明のままで、事故調査の難しさをあらためて示した。
 事故発生から半年余りは1~4号機のいずれも水素爆発が起きたとの見方が一般的だった。ところが、東電の社内調査で、2号機だけは水素爆発が起きなかったことが判明し、何が起きたのかが謎になっている。
 東電は、昨年3月15日、2号機の原子炉格納容器の圧力が短時間で低下したことを根拠に、2号機から放射性物質の大量放出があった可能性が高いとしている。
 高温、高圧の蒸気で格納容器のつなぎ目が破損し、隙間ができた可能性が指摘されているが、報告書案は「格納容器内のガスが何らかの形で大気中に放出された」としか述べていない。
 また報告書案は、地震の揺れで原発の損傷はなかったと結論付けた。津波が来るまでは原発のデータに異常はなく、「安全上重要な主要設備だけでなく、重要度の低い機器も機能に影響する損傷はほとんどなかった」としている。
 安易な結論付けは、ほかの原発の地震対策をおろそかにしかねない。自然災害への備えは、より慎重な姿勢で臨むべきだろう。
http://www.47news.jp/47topics/e/230320.php
 
失礼します。
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