20120523 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章


【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(水野氏)東京には近藤さんです。今日はまず、福島第一原発の1号機について教えていただきたいと思います。
 格納容器の中にどれだけの水があるのかということについて伺いたいんですね。といいますのは、この格納容器の水の高さ、水位が非常に問題だというのは、小出先生、いったら核燃料が水に本来全部浸かっているのが、本来の姿ですよね?
(小出氏)浸かってないと困るのですね。
(水野氏)浸かってないとえらいことになるんですよね。
(小出氏)はい。
(水野氏)それは結局は放射性物質が放出されることにつながるってことですよね?その大切な水位について、ちょっと久しぶりの情報だと思うんですけど、非常に気になるものが出てまいりました。
 この水位が1号機は東電が今までおよそ1.8メートルあると言っていたんです。推定ですけどもね。1.8メートルと言っていたんですが、今回原子力安全基盤機構というところが解析をしました。そうしたところ、40㎝しかない可能性があるという情報が出てまいりました。
 小出さん、これはどういう意味なのか教えていただけますか?
(小出氏)はい。1番問題なことは、「判らない」ということなんですね。
(水野氏)これ、東電も判らないし、原子力安全基盤機構にしたって本当のところは判らないわけですか?
(小出氏)そうです。今度の基盤機構のも単に計算してみて、なるべく測定値に合うようにしてみたらば、40㎝だろうとそういう推定なのです。
(水野氏)実際に誰かが測りに行ったわけでもなく、カメラを入れて調べたわけでもないんですね。
(小出氏)そうです。2号機の場合に、以前東京電力が「多分水はかなり入っているだろう」としてカメラを入れてみたら、全然水面が見えなかったということがありました。
(水野氏)そうでした。
(小出氏)そしてもう一度もっと低い位置でカメラを入れてみたら、東京電力の予想とは全然違って、実は60㎝しか水が無かったということが2号機で前に判りました。
(水野氏)そうでした。愕然としたのを覚えております。
(小出氏)今回も、東京電力は1.何メートルあるというふうに希望しているのでしょうけど、もちろんそんな希望したところで・・・そうなってるかどうかは判らないわけですし、基盤機構の40㎝というのが合ってるのかもしれません。でも、本当にどうなのかというのは、やはりカメラを入れてみなければ判らないと思います。
(水野氏)ただ、これ、毎時間6トンほど冷却するための水を入れてるんでしょ?毎時毎時6トン入れてるのに40㎝しかない可能性があるという計算結果なわけです。
(小出氏)要するに何トン入れようと穴が開いていればそこから出てしまうわけですから、基盤機構の推定によれば40㎝しか水が溜まらない高さのところのどこかに破損があるという推定になっているのですね。
 そして、それがいわゆるサプレッションチェンバーと呼んでいるドーナツ状のリングがあるのですが・・・
(水野氏)下のところですよね?
(小出氏)そうです。そことの繋いでるパイプがあるのですが、ちょうどそのパイプの位置にあたっているし、そこが破れているというのが基盤機構の推定なのだと思います。
(水野氏)はぁ・・・。これの推定について確立としてそうだろうなと小出さんはお思いになるんですか?
(小出氏)そう思います。
(水野氏)そうですか。
(小出氏)はい。この部分は昔からGEがこのタイプの格納容器を作った時から、この部分が弱点だと言われていた部分でして、この部分が破壊される可能性は高いと思います。
(水野氏)へぇ・・・。最初から弱点って判ってたのに・・・
(小出氏)そうです。
(水野氏)使ってたんですか?ずっと。
(小出氏)<苦笑>GEが設計して、「これでいい」と思って設計したわけですよね。それで米国内にもこのタイプの原子炉を作ったわけですし、日本に売り込むとこにあたっては、これしか当時GEは持っていなかったわけですから、それを売った。しかし、GEの内部でも、「やはりこれは問題だ」ということで、別の形の格納容器が作られるようになってきました。
(水野氏)はぁ・・・。あの、こうした水位が40㎝しかない可能性があるということを、じゃあどう見るかということにつきまして、原子力安全基盤機構はこう見ているんです。
「格納容器の中の温度は30度程度なので、核燃料は今も水に浸かって冷やされているとみられる」
 こういうふうに言っています。この見方について、小出さんいかがでしょう?
(小出氏)それは不適当だと思います。例えば、核燃料が既に格納容器の底を抜いてしまって、さらに下に沈んでいるとすれば、格納容器の中には核燃料が無いわけですから、格納容器の中の温度が上がらないのはむしろ当たり前になってしまいます。
(水野氏)それはそうですよね。もうそこに無いんですから、温度が上がるわけがないんですね。なのにその温度を以て「水に浸かって冷やされてるから大丈夫」っていうこの見方をしている原子力安全基盤機構というのは、どういう組織なんですか?
(小出氏)まぁあの、安全保安院の下請け機関ですし、もともと原子炉メーカーとか様々な原子力を進めてきた人たちの中から、かなり精鋭部隊が集まっている組織ですけれども、基本的には原子力を進めようとしてきた人たちです。
(水野氏)近藤さん?じゃあこれ今まで調べられてた側の人たちが、今度調べる側になってるということですやんね?
(近藤氏)うーん。
 先生、あの、今話が出ているのは1号機でしょ?
(小出氏)そうです。
(近藤氏)2号機、3号機はどうなってるんですか?
(小出氏)判りません。2号機も東京電力が期待した通りには水は無かったと言ってるわけで、かなり格納容器の下の方で穴が開いてしまっている、冷却のために水をいくら入れても全部漏ってしまうという状態なのです。結局本当に炉心がどこにあるかということを突き止めるまでには、何年・・・ひょっとすると10年以上の時間がかかるかもしれません。
(水野氏)あの、皆さんこのところこうした情報が少なくなっていたので、何か改善されているのではないかという幻想の中にいたかもしれませんが、なーんにも状況は変わってないわけですね。
(小出氏)はい。まぁ要するに『手の付けることができない相手が、見ることの出来ない場所に居る』のですね。それがどうなってるんかすらが、今はまだ判らないという状態です。
(水野氏)この原子力安全基盤機構がこうした状況でも「燃料は水に浸かって冷やされている」という推測をする訳って何なんですか?
(小出氏)なるべく国民に安心感を植え付けたいということではないかと私は思いますが。
(水野氏)はぁ・・・。ただ、小出さんの見られているように「穴を通って下に出てしまっているんだ。核燃料はそこに無いんだ」ということになると、もう工程表が全く意味を成さなくなるということはないんですか?
(小出氏)はい。ただ、東京電力にしても私が恐れているような事態の可能性がゼロだとは思っていないのですね。だから東京電力自身も地下にバリアを、いわゆる遮水壁というものを張るということは、彼らの工程表には入っているわけです。ですから、いろいろな可能性を考えながら対処しなければならないわけですが、私自身はとにかく環境の汚染を少しでも減らしたいので、遮水壁の工事は早急にやるべきだと去年の5月から言ってるのですけれども、残念ながらそうはなっていないのです。
(水野氏)ならないままですね・・・。
(近藤氏)小出先生、本当にどういう状態になってるかっていうことを知るすべというのは、ずっと無いんですか?
(小出氏)今壊れているのが火力発電所であれば簡単なんですよね。見に行けばいいんです。でも、原子力発電所の場合には、相手が放射能であるがために近寄ることができない。人間が近寄れない、目でも見えない場合には、何がしかの測定器でそれを推察するしかないわけですが、こんな事故が起きるなんてことは全く考えていなかったので、測定器すらもともと配置もされていなかった・・・のです。ですから、曲りなりにところどころにあった測定器の値を見ながら、計算をしてみたり推測をしてみたりしているわけですけれども、それが本当に正しいかどうかということは、やはり判らない、ということになってしまっているわけです。
(水野氏)火力発電所だったら、事故はどこかで収束しますけど、
(小出氏)必ずそうです。
(水野氏)原発は今も事故はだから、ある意味続いている、近寄ることもできないという・・・。
(小出氏)そうです。
(水野氏)そこですね。大きな違いが。
(小出氏)はい。
(水野氏)はい。判らないということが最大の恐ろしいことなんだということを、今日も知らせていただきました。
 どうもありがとうございました。
(小出氏)ありがとうございました。
【以上】


1号機「水位40センチ」 格納容器下部に穴 漏水か
(東京新聞)2012年5月22日 07時02分
1号機格納容器水位試算イメージ 東京電力福島第一原発1号機には毎時六トン前後の冷却水が注入されているのに、格納容器内の水位はわずか四十センチほどしかない可能性が、原子力安全基盤機構(JNES)の解析で分かった。2号機の水位は約六十センチしかないことが実測で判明しており、格納容器損傷の深刻さをあらためてうかがわせた。 
 解析は、注水量や格納容器への窒素の注入量と、格納容器内の圧力変化の関係を調べ、どこにどれくらいの損傷があれば、変化をうまく説明できるか探る手法を使った。
 その結果、格納容器本体と下部の圧力抑制室をつなぐ配管周辺に直径数センチの穴が開いている▽穴の場所は、格納容器のコンクリート床面から約四十センチの高さで、穴から大量に水が漏れ、水はそれより上にはない-との結論になった。
 漏れた水は、原子炉建屋地下に流れた後、配管やケーブルなどを通す穴を通じ、隣接するタービン建屋地下に流れ込んでいるとみられている。東電は1号機の格納容器の水位は約一・八メートルあると推定しているが、それより大幅に低い。
 格納容器の厚みは三センチほどあるが、穴があるとみられる配管(直径一・七五メートル)の厚みは七・五ミリと四分の一程度しかない。専門家からは、配管は構造的に弱いとの指摘が出ていた。
 溶け落ちた核燃料が完全に水に漬かっていないことも懸念されるが、JNESの担当者は「格納容器内の温度は三〇度程度と高くはない。水に漬かって冷やされているとみられる」と指摘する。
 廃炉を実現するためには、格納容器の損傷部を補修し、圧力容器ごと水没させる水棺にすることが必要。担当者は「解析結果は損傷部の特定に役立つ。今後はカメラによる実測も検討しなければならない」と話した。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012052290070251.html


1号機格納容器 水位40cmか
NHKニュース 5月22日 18時2分
東京電力福島第一原子力発電所の1号機について、独立行政法人が解析した結果、格納容器の中にある水が想定より大幅に少ないおよそ40センチしかたまっていないとみられ、容器の下のほうから水が漏れている可能性があることが分かりました。

2号機に続いて1号機でも容器の下のほうからの水漏れの可能性が出てきたことで、穴を発見して塞ぐ作業が、より困難になると懸念されています。
独立行政法人、原子力安全基盤機構が1号機の格納容器の中の圧力などをもとにコンピューターで解析した結果、内部の水が東京電力が想定している2メートルより大幅に少ないおよそ40センチしかたまっていないとみられることが分かりました。
この高さには、格納容器と下にある圧力抑制室をつなぐ配管があり、解析では、この配管に直径2センチ程度の穴があって、水が漏れている可能性があると推定しています。
この結果について、東京電力は「1号機の水温は30度程度と低く抑えられていて、格納容器の中の核燃料は冷やされている」と説明しています。
福島第一原発では、ことし3月、2号機でも東京電力が内視鏡による調査をした結果、水が60センチしかたまっていないことが明らかになっています。
東京電力は、廃炉に向けて格納容器を水で満たし、メルトダウンで溶け落ちた燃料を取り出す計画で、2号機に続いて1号機でも容器の下のほうからの水漏れの可能性が出てきたことで、穴を発見し塞ぐ作業がより困難になると懸念されています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120522/k10015299181000.html

失礼します。
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