※この記事は、5月16日 原発・核燃サイクル技術等検討小委員会:核燃サイクル政策決定を「保留」へ、当面直接処分・再処理の両方を進める併存案へ【国としての方針無しでは当然の結果】に関連しています。

20120516 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章


【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(水野氏)東京には近藤さんです。
 まず伺いたいのは、原発から出てくる使用済核燃料をどうするかという話なんですね。今回、原子力委員会の小委員会が最も望ましいやり方だというふうに結論付けたのは、使用済核燃料を「再処理する」、取り出したプルトニウムを再利用するというやり方ですね。「これと併せて、地中への廃棄を進める」ことである、とこういう結論を出してきたみたいなんですね。
 ただ、これ私意味がよく判りませんで・・・。
(小出氏)はい。
(水野氏)「使用済核燃料の再処理と併せて地中への廃棄を進めること」って、どういう意味ととったらよろしいんでしょうか?
(小出氏)要するに彼らが混乱しているのです。
(水野氏)はぁ・・・
(小出氏)はい。もともと地球上にあるウランというのは大変貧弱な資源でして、普通の原子力発電所でウランを燃やして、それを使用済になったということで廃棄をしてしまいますと、原子力なんてエネルギー資源にならないのです。
(水野氏)もう次々ウランを使い果たしてしまったら枯渇するってことですね?
(小出氏)すぐに枯渇してしまうのです。だから・・・困るので使用済の燃料の中からプルトニウムを取り出して、それを高速増殖炉という特殊な原子炉で燃やすことによって初めて原子力を意味のあるエネルギー源にしようとする計画だったのです。
 ですから、再処理をしてプルトニウムを取り出せない限りは、もう原子力なんてもともとやる価値がなかったということで、これまではとにかく再処理は何でもかんでもするんだという路線で日本は来たのですが・・・
(水野氏)全ての使用済核燃料は再処理するんだというのが国策だったんですよね。
(小出氏)そうです。
(水野氏)実際できたんですか?
(小出氏)実際何もできなかった。
(水野氏)何もできてないんですね?
(小出氏)はい。高速増殖炉の実験炉・常陽も潰れてしまいましたし、原型炉として作ったもんじゅも1kwhの発電も出来ないまま潰れてしまっているのです。
 再処理工場自身も、作ってはみたものの、あちこちトラブル続きで結局動くこともできないということになってしまっていて、これまで原子力を進めてきた人たちが描いた夢が、全く実現できないまま巨額の国費を捨ててしまった・・・のです。
(水野氏)それだったら、
「今までえがいた夢は無理でした。ごめんなさい。今度こういうふうにします。」
っていうんだったら、私も意味が分かると思うんですよ。でも、「再処理もする。それと併せて、土地の中に捨てる」って言ってるんでしょ?それで余計意味がわからないです。
(小出氏)そうです。全くだから意味のわからない選択を彼らが今、また言い出しているのですね。
(水野氏)ということはですね、「使用済核燃料の再処理と併せて」というけど、これはもうもともと出来ないということが・・・もう判ってきて、「もう出来ない、本当は」と言ってるというふうにとっていいんですか?
(小出氏)ええ、私ははっきりと言うべきだと思いますし、まだ片足をそっちに突っ込んでいる状態なわけですけれども、いずれその足も抜かなければならない日が来ると思いますので、早くこんな夢からさめなければなりません。
(水野氏)そうですね。
(小出氏)はい。
(水野氏)無理なら無理と言って、次を考えるしかないですよね。
(小出氏)そうです。
(水野氏)それでもなんで片足突っ込み続けたいんですか?
(小出氏)それを言ってしまうと、原子力が全く意味の無いものであることを認めてしまうことになるからです。
(水野氏)・・・そうか、ウランの燃料はすぐ枯渇するんですから、どだい原子力でやっていくことは無理であるということにつながるわけですね?
(小出氏)そうです。
(水野氏)じゃあ、実態はこれ、「地中に廃棄」って、つまり地面を掘ってそこに・・・使用済核燃料を埋めるっていう意味ですよね?
(小出氏)そうです。
(水野氏)「捨ててしまう、そのままほっておく」ということですよね?
(小出氏)そうです。
(水野氏)「結局これを100%するしかないんです」という意味になるんですか?
(小出氏)私自身は再処理などということはやってはいけないと発言をしてきましたし、使用済燃料をそのままの形で何か処分をする方法を考えるべきだと主張をしてきましたので、再処理をやらないという決定はいいのですが、ただ私自身も使用済燃料をそのまま地面に埋め捨てにするということをもちろん良いと認めたことは、曾て一度もありませんし、やってはいけないと思います、それも。
(近藤氏)小出先生、どういうイメージなんですかね?穴掘って埋めるんですか?
(小出氏)そうです。今までは再処理をした後に核分裂生成物というものをガラスと混ぜて固めて、それを地下深くに埋めるといってきたのです。
(水野氏)ガラスと混ぜたらどんな形になるんですか?
(小出氏)要するのガラスになる。
(水野氏)固形物になるわけですか?
(小出氏)そうです。
(水野氏)それは割れないようなものになるんですか?
(小出氏)いいえ、割れてしまいます。割れてしまうのですけれども、比較的ガラスというのは安定な物質だと・・・これまでも思ってきたわけですから、なんとか「それがいいのではないか」ということで、そういう計画を建ててきたのですが、ガラスも割れてしまいますし、発熱もしますので、本当に安全な形にできるかどうかすらが判らないというままここまで来てしまっていたのです。
 ただ、それは地面に埋めるという計画でした。今回の場合は、もうガラスにするも何も全部止めて、使用済燃料というそのままのものを同じように地面に埋めてしまうという計画を出してきているわけです。
(水野氏)へー!
(近藤氏)その計画っていうのも、言葉だけの話で、技術っていうのは伴うんですか?
(小出氏)ありません。今までどこの国もそんなことをやったことはないのです。
(水野氏)ありません?
(小出氏)はい。
(水野氏)はぁ・・・?せめてガラスと混ぜてちょっとでも安定させてやろうということじゃなく、もうそれもやめちゃうっていうのは、なんでそんな計画になるんですか?
(小出氏)ガラスにするためには、まず再処理という作業をして、プルトニウム等を取り出して、残った核分裂生成物をガラスに固めるという作業だったわけですが、再処理地震がもうできない状態に今陥ってしまっていますし、六ケ所村の再処理工場でも、とにかく核分裂生成物の分離はしてみたわけですけれど、それをガラスにしようと思ったら全然できないで、壊れてしまったのです。装置が・・・
(水野氏)できない?ええ・・・。じゃあもう世の中にどうしていいか処方箋はないってことですね?
(小出氏)はい。もともと原子力発電所は『トイレのないマンション』と呼ばれてきましたし、生み出したごみをどうすればいいのか、誰も知らないままここまで来ているのです。
(水野氏)もしですよ?使用済核燃料を何もしない、そのままの形で地中に埋めますね?ほっときますね?どうなるんですか?
(小出氏)100万年間安定でいてもらわなければいけませんので、私は多分いつの時点化でそれが環境に漏れてくるだろうと思います。
(水野氏)・・・ねぇ・・・。地震もありますよね。活断層もありますしね。
(小出氏)そうです。もう日本なんていう国は、活断層の無い場所はありませんし、年がら年中地震が起きてるわけですから、100万年なんていう時間の長さに渡って保証できるような土地はどこにもありません。
(水野氏)はぁ・・・。近藤さん?
(近藤氏)はい。
(水野氏)なんかものすごいことを突きつけられているんですね。
(近藤氏)そうなんですね。だからそういうことはある意味最初から分かった上で、もう・・・見たくないもの、考えたくないものは考えないできたんですかね?
(小出氏)おっしゃるとおりで。はい。
(水野氏)私、去年映画でフィンランドの『10万年後の安全』という映画を見ました。これはフィンランドでの高レベル放射性廃棄物を最終処分するところを地下に作ってるっていう話だったんですよ。ドキュメンタリーで。あれ、確か地下500mまで硬い岩盤をずーっと掘っていく。で、ものすごい地下都市みたいになってますよね。
(小出氏)そうです。
(水野氏)あんなところにフィンランドは置こうと、捨てようとしてるわけですよね。
(小出氏)世界中が今それしかないから、なるべく深い穴を掘ってそこに埋めようとしているのです。日本もそれしかないだろうということで、再処理をしたガラス固化体をそうしようという計画だったのです。
(水野氏)はぁ・・・。しかしそれさえも破綻したと・・・。それなら、「破綻した」とはっきり言ってくれたら、まだ、まだしも現実が見えやすいんですが。
(小出氏)そうですね。
(水野氏)・・・見えたら困る人が居はるんですか?
(小出氏)原子力の世界というのは、私何度もこの番組でも聞いていただいたと思いますが、失敗をしても誰も謝りもしない。責任も取らないと、そういう世界なのです。
(近藤氏)なんていうんですか、今さえ良かったいいみたいな感じですよね。
(小出氏)そうですね。
(水野氏)実態は100万年後まで続くわけですよね。
(小出氏)はい。
(水野氏)どうもありがとうございました。
(小出氏)はい。ありがとうございました。
【以上】

以上、失礼します。

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