※この記事は、4月26日 事故から26年目「チェルノブイリの教訓」に関連しています。

20120510 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章


【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(千葉氏)今日は毎日新聞論説員の二木一夫さんと一緒にお話を伺います。
(二木氏)よろしくお願いします。
(小出氏)二木さん、よろしくお願いします。
(千葉氏)それではですね、小出さん、今日もスタジオにリスナーの方々からの質問メールがたくさん届いておりますので順番にお聞きしていきたいと思っております。
(千葉氏)まず最初はこちらの方。神奈川県にお住まいの方。
「原発再稼働を主張する人の理由のひとつに、『再稼働しなくても原発には今までの使用済燃料があるのだから、危険性は同じ。それならば再稼働したほうがよい』というのがあります。毒を食らわば皿までということわざのようで違和感を覚えるのですが、小出さんはどう思われますか?」
という質問です。
(小出氏)はい。何を言ってるのか判りませんが、既に私たちが原子力を利用したために膨大な使用済燃料を作ってしまったということは本当です。そしてその始末が出来ないで困り果てているのです。そんな行為はまずはやってはいけないと思いますし、すぐにでもやめるべきだと私は思ってきました。そして、これからまた原子力をやるというなら、今までに生み出してしまった使用済燃料の上に更にまた、毒物を上乗せしていくということになりますので、そんな選択はとるべきでないと思います。
(千葉氏)そうですね。稼働すればするほど放射性の廃棄物も増えて危険性は増していくということになるわけですよね。
(小出氏)そうです。
(千葉氏)この廃棄物の処理もしっかり決めないといけないんですけれども、それも今の状態では決まっていないということですよね。
(小出氏)そのために原子力は『トイレの無いマンション』と言われ続けてきたのです。
(千葉氏)はい。わかりました。
 続いてはこちらの質問に参ります。千葉県にお住いの方。
「こんばんは。清掃関連の会社に勤めているんですけれども、先日環境省主催の除染等業務講習会というものを受講しました。その時に、放射線の健康への影響について説明を受けました。資料のグラフには赤い文字で「しきい値」と書かれていて、(境目という意味だと思うんですけども)、100ミリシーベルト以下では健康影響は現在のところは認められず、あってもとても少ないということでした。一方その後の除染業務の説明では、いかに被曝を避けるか、汚染を広げないかということをかなり細かく説明され、頭が混乱してしまいました。怖がらなくてもいい程度なら、そんなに注意しなくてもいいのではと思ってしまいますし、また大したことはないのなら、そもそもこんなに大がかりな除染は不要なのでは?とも思ってしまいます。講習では時間が押しているとのことで質問時間が無かったんですけれども、小出さん、国は一体何を考えてると思われますか?」
という質問です。
(小出氏)はい。国はですね、放射線被曝が・・・低線量であればあたかも安全であるかのように皆さんに思わせたいのです。しきい値という言葉が出てきたそうですけれども、しきい値というのは「その量以下であれば安全だ。被害が出ない」というものをしきい値というのですが、放射線に関する限りどんなに微量な被曝でも必ず危険があるというのが、現在の学問の到達点なのです。ですから、100ミリシーベルトを越えればもちろん危険はあるし、100ミリシーベルト以下であっても危険は必ず伴ってしまうという、そういうことなのです。
 ですから、なんとか除染でもなんでもして、人々の被曝量を少なくしなければいけないとして苦闘してるわけですね。そのために作業をする人でも被曝をしてしまえばそれなりの危険を負うしかないと覚悟していただくしかありません。
(千葉氏)この「しきい値」と書かれていて、100ミリシーベルト以下では健康影響は現在のところは認められずということで国は説明をしてるわけですけどもね。
(小出氏)けしからんことだと私は思います。
 要するに、100ミリシーベルト以下でもガンや白血病がいずれ増えてくるということは、学問に携わっている人であれば皆さん認めるわけです。ガンや白血病が健康影響でないというのであれば、そう言ってもいいかもしれませんが、がんで死んだらやはり健康に影響があるというのが普通なんだろうと思います。
(千葉氏)二木さん、いかがですか?
(二木氏)先生、こういう除染作業は講習会という程度でよろしいんでしょうかね?
(小出氏)本当はいけないと思います。放射線業務従事者という仕事に携わることになるはずですし、そういう人は特別に1年間に20ミリシーベルトまで被曝を許すという、私も含めてそうなのですが、そんな仕事に携わらせるときには、ちゃんと放射線の性質も教えなければいけませんし、どうすれば被曝を避けられるのかということに関しても教えなければいけないと私は思います。
 「時間が押しているから質問時間が無かった」なんて言語道断です。
(二木氏)そうですね。
(千葉氏)・・・うーん、そういう形で講習会が行われているということなんですけれども、次の質問に参ります。今度は大阪市にお住いの方。
「24日、ウクライナの政府機関の発表によりますと、チェルノブイリ原発周辺、半径30㎞圏内のうち、1000平方キロメートルを永遠に立ち入り制限をすることにしたそうです。立ち入り制限になったこのエリアなんですが、放射線量は毎時どれくらいなんでしょうか?」
という質問なんですが、小出さん判りますでしょうか?
(小出氏)放射線量に関しては、今ちょっと数字が判りません。ただ、チェルノブイリ原子力発電所の事故の場合には、1平方メートルあたり60万ベクレルを越えたところを避難させました。その面積は全部で1万平方キロメートルに及んでいます。
(千葉氏)1万平方キロですか?
(小出氏)はい。今ご質問会ったのは1000平方キロで、その10分の1くらいですね。多分それは、160万ベクレルとか200万ベクレルとかそういう程度の汚染だろうと思います。
(千葉氏)はい。あの、1万平方キロと今おっしゃいましたけど、1000平方キロっていう範囲でも東京23区のおよそ1.6倍の面積というふうに聞いたのですが、それの10倍の広さのところがそんな状況になってるわけですか・・・?
(小出氏)チェルノブイリ原子力発電所事故の場合には無人にされました。
(千葉氏)とすると、仮にですね、仮に日本の福島第一原発を中心として1万平方キロというと、どれくらいの範囲になるんですかね?
(小出氏)今、福島第一原子力発電所の事故で福島県の東半分、栃木県と群馬県の北半分、宮城県・茨城県の一部、或いは東京のごく一部というようなところが、放射線の管理区域にしなければいけない汚染を受けているのですが、その面積は2万平方キロメートルあります。
(千葉氏)はぁ・・・・・・・。いやいや・・・、えー・・・。
(小出氏)ただ日本の政府は、そんな広さのところを無人にできないからといって、人々をそこに住まわせ続けようとしているわけですね。
(千葉氏)はぁ・・・・・・。そういう状況なわけですか。
 チェルノブイリ事故というのは26年前の事故ですけれども、26年前に事故が起きてもまだその状況が続いているということですね?
(小出氏)そうですね。30年経って半分にしか減りませんので、基本的にはもう減らないと思うしかありません。
(二木氏)この26年経ってこういうふうに立ち入りを永遠に制限するというふうに改めてというか敢えて発表するというのは、何か新たに判ったとかそういうことがあるんでしょうかね?
(小出氏)少なくとも1万平方キロメートルのところを既に無人にしてるんですね。ソ連、ベラルーシ、ウクライナと三つの国を合わせて。そこに1000平方キロメートルだけはもう永久にということは、「残りの9000は戻す」というような、そういう表明なのではないでしょうか。
(千葉氏)・・・、しかし戻すといっても相当大変ですよね。
(小出氏)相当大変です。要するに、ライフラインも何も全部崩壊してしまっていますし、戻るにしても被曝を覚悟にしか戻れませんし、いわゆる故郷として感じていた人々はもうみんなほとんど亡くなってしまってるわけですから、そういうところに本気で戻りたいという人がいるとはなかなか私は思えません。
(千葉氏)わかりました。小出さん、どうもありがとうございました。
【以上】


【関連記事】
チェルノブイリ原発周辺1千平方キロを「永遠に立ち入り制限」
産経ニュース 2012.4.25 00:06
 26年前に大事故を起こしたウクライナ北部チェルノブイリ原発から半径約30キロ圏内に設けられた立ち入り制限区域を管理する非常事態省関連機関の高官は24日、首都キエフでの記者会見で「同区域の約半分は永遠に立ち入りが制限される」と述べた。インタファクス通信が報じた。

 同区域は正確な円形ではなく、面積は計2千平方キロ。このうち東京23区の約1・6倍に相当する約1千平方キロの立ち入りが将来にわたり規制されることになり、事故の影響の大きさをあらためて示した。

 同高官は一方、同区域の幾つかの場所では、放射線量が下がっており、こうした場所では何らかの経済活動を試みることも可能と指摘した。(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120425/erp12042500090000-n1.htm

失礼します。
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