※この記事は、
5月3日【内容起こし】小出裕章氏:「日本に帰る前に知っておきたい『放射能』のこと」in NY【その①】
2月16日【内容起こし・関連動画あり】小出裕章氏:放射線審議会の食品新基準へのクレーム、瓦礫処理問題の大阪維新の勉強会、4号機プールからの燃料取り出し@たね蒔きJに関連しています。

20120509 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章


【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(水野氏)東京には近藤さんです。
(小出氏)皆さんお久しぶりです。よろしくお願いします。
(水野氏)小出さんはアメリカに行ってらしたというふうに聞いております。3.11以降「データのある場所にいておきたいんだ」とおっしゃっておりましたけど、1年少し経ってやっとアメリカに招かれて行けるようになられたんだと思うんですが、あちらでいろんな方ともお会いになったでしょう。一番印象に強く残ったことはどんなことでしたですか?
(小出氏)私は米国という国が大嫌いなんです<苦笑>。行きたくなかったのですけども、米国に行ってみてもやはりそこに生きている人は、みんな同じ人間だと。朝起きてご飯を食べて、子供を育てて、みんな苦労をしながら生きてる人がそこに居るということを改めて思いました。
(水野氏)この日本の放射能については、あちらの方々、どんな見方をしていらっしゃいますか?
(小出氏)それはですね、事故が起きてから日本の政府・マスコミが様々な情報を流してきたわけですけれども、その情報が世界で流されている情報と乖離があった・・・と思います。
 世界の方々は、日本政府が流している情報をどんどん信じることができなくなってきたということになっていて、「本当はどうなのか?」ということで大変困っておられたんだなということを改めて思いました。
(水野氏)はぁ・・・。アメリカの方がより実態に近いものを伝えていたんですか?
(小出氏)そうですね。事故が進行していた時に、人類が初めて経験するような事故だったわけで、どんなふうにこの事故が進展するかわからない。わからないまま、例えば原子炉建屋が爆発していくというようなことがあったわけで、大変みんな不安に思っていたのですね。
 その時に日本の政府はただただ「大丈夫だ。大したことはない」というような情報を流し続けていたわけですが、もちろんそんなことはないわけで、みんな世界中が不安に思っていた。そして、米国にしても50マイル以内の米国人は全部逃げろという指示を出していたわけで、そういう世界での認識と日本での情報の流れ方が違っていたということは・・・大変皆さんに対して重荷を負わせたんだと思います。
(水野氏)シカゴでも講演なさったと聞いてますけれども、このシカゴという町は原子力にとっては歴史的な場所なんですってね。
(小出氏)そうです。米国がナチスに対抗して原爆を作らなければいけないと決意をしまして、その原爆を作るためには原子炉を作らなければいけないと思いました。日本の皆さんは「原子炉」と聞くと原子力発電をと思うかもしれませんが、もともと原子炉というのは、原爆の材料にするプルトニウムをどうやって作ることができるかということで作られたものなのです。
(水野氏)もともと電力を作るために考え出されたものではない?
(小出氏)はい。
(水野氏)兵器のためのプルトニウムを生成するための原子炉。
(小出氏)そうでした。その人類初の原子炉が動いたのが、シカゴ大学のフットボール場があったのですが、その観客席の下にちょっとした巨大な空間がありまして、そこで初めて原子炉が動き出したと、そういう歴史があった町です。
(水野氏)はぁ・・・。じゃあそこで取り出されたプルトニウムが、結局は原爆・・・として使われたことになるわけですよね?
(小出氏)ただ、シカゴ大学でできた原子炉は、いわゆるおもちゃのような原子炉で、要するに原子炉というものができるかどうかという、そのことすら判らなかったわけで、ようやく原子炉が動くということがそこで判った。そこで、あとはプルトニウムを作るための原子炉はワシントン州のハンフォードというところに巨大な原子炉を作って初めて取り出すことができました。
(水野氏)はぁ・・・。まぁ、原子力がどういう形でこの世に存在し始めたかという歴史を見ると、それは戦争だったということですね。
(小出氏)そうです。それで私にとっては、自分が歩み始めた原点なわけですから、一度は行ってみたいと思っていました。
(水野氏)そこでどんなメッセージを送られたんですか?
(小出氏)日本というこの国が今福島原子力発電所の事故に直面しているわけですが、それがどういう内容なのかということと、日本というこの国がどのように原子力に関わってきてしまったかということを聞いていただいて、やはり原子力は放棄すべきだという話を聞いていただきました。
(水野氏)さて、帰って来られたら大阪で今注目されている問題の一つがですね、瓦礫の処理です。これにつきまして大阪府と大阪市が震災瓦礫をですね、此花区にある人口の島であります夢洲で焼却した灰を埋め立てて処分するという方針を固めた模様です。
 この焼却した灰を埋め立てるということについて、どうお感じですか?
(小出氏)やってはいけません。
(水野氏)これは小出さんは「やってはいけない」とおっしゃっていたんですが、でも、もう環境省と最終調整に入った模様なんです。具体的な方法を環境省がいくつか提示しております。一つずつどういう意味なのか教えていただきたいんですが、まず一つが焼却した灰を処分地に直接埋め立てる、これはどうですか?
(小出氏)いけません。
(水野氏)まったく「いけません」?
(小出氏)はい。
(水野氏)・・・では、セメントで固めた灰を埋め立てる、これはどう・・・
(小出氏)いけません。
(水野氏)なんでセメントで固めてもダメなんですか?
(小出氏)放射性物質というのは、発生した現場にとことん閉じ込めるということが原則であって、もともと福島のもの、或いは汚染地のものを大阪に持ってくるという、そのこと自身はやってはいけないのです。やってはいけないし、出てきたその焼却灰というものは放射性物質を濃縮していますので、それをそれぞれのところで受け入れることを引き受けてはいけないのです。もとのあった場所に戻して一括して責任を持ってお守りをするということをやらなければいけないのです。どんな形でも引き受けてはいけません。
(水野氏)灰は受け入れてはいけない。
(小出氏)はい。
(水野氏)じゃあ「どんな形でもダメだ」とおっしゃいましたが、今の案でセメントで固めるのはコスト的に高いから一番有力だと見られているのは、ゼオライトを使う案だそうです。
(小出氏)<苦笑>
(水野氏)これは、放射性セシウムを吸着させるゼオライトをまず敷いて、その上に灰を埋め立てるという案です。
(小出氏)あの、なにがしかの効果はもちろんあります。ゼオライトにはセシウムが吸着するという性質がありますので、なにがしかは効果があるし、セメントに固めてしまえばセメントが崩れ落ちるまでは何がしかの効果があります。
 しかし、本当はだからそんなことはやってはいけない。原理・原則ということをやはり今考えていただきたいと私は思うし、本来であればそれぞれの場所に焼却施設を作って、そこで焼くということを政府にやらせなければいけないのです。なんでそれをやらせないままにそれぞれの自治体が安易に引き受けてしまうのか、私にはまずそれがわかりません。
(水野氏)確か、2月頃でしたか、大阪維新の会の方達が小出さんのところに大勢で出向かわれて、この瓦礫の処理の話聞かれたんじゃないですか?
(小出氏)そうです。私はその時にも今聞いていただいたように、「原則は現地でちゃんと処理をして、焼却施設を作ってそこで焼くことだ」と私は聞いていただきましたし、「でも今のような無策な政府がある限りは、しかたがないから全国の施設で引き受ける・・・」
(水野氏)「焼くことについては」ですね?引き受けるとしても?
(小出氏)はい。「焼く可能性はある」と言いましたし、「その場合もちゃんと環境に放射性物質をばら撒かないようなフィルタをきちっとつけなければいけない。そしてできた焼却灰は現地に返さなければいけない」と言って、維新の会の人たちにも本当に何度も何度も言ったつもりです。
(水野氏)皆さん、反応はいかがでしたか?
(小出氏)まぁ、私が居た場所では皆さん聞いてくださっていたようでしたけれども、今のような結末になるのだとすれば・・・何、何を聞いてくださっていたのかなと思います。
(水野氏)近藤さん、いかがですか?
(近藤氏)それは・・・先生が言ってる意見が通らなかったっていうのは、大阪維新の会の人たちをコントロールするもっと偉い人がそういう考え方だということなんですかね?
(小出氏)多分そうだと思います。
(近藤氏)うーん・・・。
(水野氏)そうですか・・・。ゼオライトで幾分かは効果はあるけれども・・・抜本的なところの考え方や方向性が違うというような小出さんのお考えですよね。
(小出氏)そうです。
(水野氏)・・・このまま行ってしまうんでしょうか。大阪府と市は国と調整をしているようです。
 どうもありがとうございました。
(小出氏)ありがとうございました。
【以上】


【関連記事】
大阪・夢洲でがれき処分へ 府市、セシウム吸着検討
朝日新聞 2012年5月9日10時45分
 大阪府・市は、受け入れを表明した岩手県内の東日本大震災のがれきについて、大阪市此花区沖の人工島・北港処分地(夢洲=ゆめしま)で焼却灰を埋め立て処分する方針を固め、環境省と最終調整に入った。海洋汚染を防止するため、同省は近く、放射性セシウムを吸着させる鉱物のゼオライトを処分地に敷き詰める方法などを提示。府市は今後、専門家会議を経て正式決定する。
 夢洲は広さ385ヘクタール。市内唯一のごみの最終処分場で、ごみの焼却灰を中心に1980年代から埋め立てが続く。
 大阪府市による震災がれきの受け入れについては、松井一郎知事、橋下徹市長とも前向きで、府は昨年12月に国より厳しい放射性物質の基準を設定。橋下氏も処分地の検討を指示していた。ただ、放射性セシウムは水溶性が高く、国は焼却灰がなるべく水と接触しない形で処理するよう通知。このため、市は海面を埋め立てている北港処分地でも問題がないか個別評価を求め、同省が調査していた。
http://www.asahi.com/politics/update/0509/OSK201205090015.html



失礼します。
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