※この記事は、5月3日 小出裕章氏:「日本に帰る前に知っておきたい『放射能』のこと」in NY【その①】の続きです。

小出氏(小出氏)では、その原子力発電で一体何をやっているんでしょうか。
 非常に単純です。お湯を沸かすということです。
 皆さんもお湯を沸かすと思いますし、私もお湯を沸かします。私はやかんに水を入れて、ガスコンロにかけてお湯を沸かすというのが普通です。私が使っているやかんは、口のところに笛が付いていて、水が沸騰して蒸気が出てくるとその笛がピーッと鳴るんですね。そうすると「あ、お湯が沸いたな」と思ってコンロの火を消しに行くと、そういうことをやっています。
 原子力発電も火力発電も、やっていることはそれと同じです。左の下に火力発電の模式図が書いてありますが、火力発電というのは配管の中に水を流します。そこで石炭・石油・天然ガスを燃やして、配管の中の水を温めます。水が沸騰して蒸気になって吹き出してくる。その蒸気でやかんの口についている笛を回すのではなくて、タービンという羽根車を回す。それに繋がっている発電機で電気を起こすというのが火力発電所です。
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 原子力発電所は上に書いてあります。真ん中に丸い形のものが書いてありますが、これは原子炉圧力容器と私たちが呼ぶ、鋼鉄製の圧力釜です。その圧力釜の中にウランが入れてありまして、ここで核分裂を起こさせると熱が出る。その熱で水を沸騰させて蒸気が噴き出してくる。あとはタービンを回して発電すると、これだけです。
 単にお湯を沸かすということしかやっていないんです。200年前に産業革命が起こってジェームスワットという人たちが起こした産業革命、つまり蒸気機関というのを発明したということなんですが、その非常に古めかしいことをやってるにすぎないと、そういうものなのです。
 でもなぜか原子力発電だけは都会にも建てられない。ニューヨークにも建てられない。東京にも建てられない。その理由は非常に単純で、ここ(原子炉圧力容器)で燃やしているのがウランだからです。ウランを燃やして核分裂させれば、核分裂生成物という放射能がどうしてもできてしまう。それが避けられないから原子力発電所は都会に建てられないということになりました。
 「どうしてもできてしまう」と私は今言いましたけれども、その「どうしてもできてしまう」という量が半端な量ではありません。
 今この白い画面を見ていただいていますが、この左の下に私が今から小さな四角を書きます。後ろの方の方は見えないかもしれません。書きます。
 これです。
 見えたでしょうか?
 もう一度書きます。
 これです。
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 これは何を私が書いたかというと、広島の原爆が爆発して燃えた時に燃えたウランの重量です。800g。皆さんが片手で持てる、それくらいのウランが燃えたときに、広島の町は壊滅してしまった。10万人もの人が一瞬のうちに殺され、10万人を越えるような人たちが被爆者として生きなければいけないということになった。
 それがこれだけ。
 では、私たちが電気がほしいといって動かしている原子力発電所、今日では100万kWというのが標準になっていますが、その原子力発電所が1年間運転するとどれだけのウランを燃やすかというと、これだけです。
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 1トン。
 広島の原爆で使われたものと裕に1000倍は超えるウラン、放射能を1年ごとに生み出さなければ、原子力発電所というものは成り立たない。それほどのものなのです。このことは、他の国々が原子力をやろうとすれば、大量にウランが必要になってしまうということを示しているわけで、さきほど聞いていただいたように、こんなにたくさんウランを使うと、ウランはすぐに無くなってしまうということに随分昔から気が付いていて、米国なんかはさっさと撤退をしてしている、そういうのがここにも表れていると思います。
 でも、何よりもこんなに膨大な放射能を作るということは恐ろしいことなわけで、原子力を進めてきた人たちが一体何をしたかというと、これも非常に単純なことをやりました。
『原子力発電所や核燃料施設は 都会には作らない』
ということにした。
 そのためにたくさんの仕掛けを彼らは用意しました。法律をたくさん作った。重要な法律は原子炉立地審査指針というものです。これは、
「原子力発電所は国がちゃんと安全審査をして認めるんだから安全だ」
と国が言い続けてきた。その安全の根拠とする指針なんですが、その指針にはこう書いてある。
『1.原子炉の周囲は、原子炉からある距離の範囲内は非居住区域であること。』
 もともと人が住んではいけない。次。
『2.原子炉からある距離の範囲内であって、非居住区域外の外側の地帯は、低人口地帯であること。』
 さらに念を押して、
『原子炉敷地は、人口密集地帯からある距離だけ離れていること』
としたんですね。
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「原子力発電所だけは都会に建ててはいけない。人が住んでいないところに建てろ」
ということを始めから法律で決めて日本はやってきたということになりました。
 実際どんなところに建てたのかという歴史を今からここに書いていこうと思います。今順番に書いていますね。今回事故を起こした福島第一原子力発電所です。関西には若狭湾沿いに連立させています。ここが浜岡ですね。ここが伊方。今建てたのは福島第二です。女川、九州の川内、これは東京電力の柏崎刈羽、北海道には泊ありますし、能登半島には志賀、そして東北電力は東通村というところに原子力発電所を作っています。
 日本で一番電気を使っているところは言うまでもないですけれども、東京です。東京湾は素通りしました。名古屋は伊勢湾を素通り、大阪は大阪湾を素通り。みんな過疎に建てて長い送電線を敷いて、都会に電気を送るということをやってきたのです。
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 そして、今ここに青い点を打ちましたが、これは青森六ケ所村です。原子力発電所が1年間かけて環境に放出する放射能を1日ごとに放出してしまうといわれるほどの・・・途方もない危険を抱えた工場が六ヶ所村に作るということにしました。そして、この事故が起きるまでは、まだまだ原子力発電所を新しい場所に作るというようなことを日本の国は言っていて、一つは大間という下北半島最北端。もう一つは瀬戸内海にある上関というところに建てる。こんな計画で日本に国は原子力をやってきたのです。
 今回の事故を起こした東京電力ですが、皆さん十分ご承知でしょうけども東京電力は東京に電力を送る、関東地方の各市町村、都県に電気を送るというのが東京電力の仕事です。そして一番たくさん電気を使うのがもちろん東京湾の割と沿岸なのですから、東京湾には火力発電所が連立しています。皆さん飛行機で東京に降りられると思いますけれども、見ていれば面白いように東京湾には火力発電所がザーッと並んでいるのが、すごいわかっていただけると思います。火力発電所は東京湾に立地させました。それが一番いいんです。消費地に隣接して発電所を建てる。送電コストも何もなくていけるわけですから、実に合理的にやったのですね。
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 では、東京電力の原子力発電所はどこにあるかといえば、事故を起こした福島第一、福島第二、これは東京電力に何の関係もないところにあるんです。数年前に中越沖地震というのに襲われた柏崎刈羽、これも東京電力とは何の関係もないところに原子力発電所を建てて、ながーい送電線を敷いて、東京に電力を送るということをやりました。
 そして東京電力は、ついこの間までもう一か所建設しようとしていた場所があります。それが青森県の東通村という、先ほども見ていただいた下北半島最北端というところに東京電力が原子力発電所を建てるという・・・東北地方を縦断して、ながーい送電線で東京まで電気を送るということをやろうとしていたのです。
 まことに許しがたいことだと私は思います。
 東京が電気が欲しいというなら、東京に作れと。他人のところに作っておいて、電気だけ取ろうなんていう、そのことだけでも私は間違っているというふうに思います。


 そしてついに、事故が起きてしまったのです。
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 これはもう皆さん、何度も何度もご覧になった写真だと思いますが、真ん中の下から上に伸びているのが、これがタービン建屋です。この建屋の中にタービンと発電機が並んでいます。その左隣に並んでいまるのが原子炉建屋です。1号機の原子炉建屋は、爆発して吹き飛んでしまったので、ボロボロになってしまいました。2号機の原子炉建屋は、まだこの写真では建物の形は残っているように見えますが、この原子炉こそが内部で最大の破壊が起きていて、環境へ放射能をまき散らした主犯格であると日本の政府が言っているわけです。3号機、これはもう骨組みすらないといったくらいに爆発をして壊れてしまっている。4号機、これも爆発で建屋が吹き飛んでいますが、まだ骨組みが残っているように見えます。しかし、この建屋の爆発は、後でご説明しますが、非常に変わった爆発の仕方をしていて、原子炉は運転を停止しました。制御棒を入れてウランの核分裂反応を止めて、とにかくもう運転はしないという状態にした。つまり地震が起きた時、もう自分で発電できなくなった。そういう時にはどうするかというと、
「発電所の外から送電線が敷いてあって、外から電気をもらえば発電所で使う電気がまかなえるから大丈夫だ」
と言っていたんですが、その送電線自身が地震で倒壊してしまって、外から電気が来なくなった。そのために
「発電所の敷地の中には、非常用ディーゼル発電機というのがたくさん用意しているから大丈夫だ」
というのが東京電力と国の主張だったのですが、それらの非常用ディーゼル発電機が津波によってやられてしまった。そうなると、自分は発電できない。外からの電気ももらえない。非常用の発電機も動かない。一切電気が絶たれてしまうということになりました。
 これは発電所の中央制御室です。
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 原子力発電所というのは、放射能を扱う場所ですので、基本的には建物に窓がありません。電気が無くなったら真っ暗闇です。ただし、真っ暗なだけではないんです。この部屋にはもう既に放射能が充満しているのですね。電気が無い中、こういう中で作業員の方達は、なんとか事故を収束させようとして苦闘しました。この後ろの方にも、ちょっと作業員が写っていますが、こんな姿です。
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放射能の防護服を着て、放射能を吸い込まないようにガスマスクをして、懐中電灯の明かりで事故を収束させようと苦闘しました。しかし、いかんせん電気が無い。電気が無ければ何もできない。ポンプを動かすこともできない。本当は冷やしておかなければならない原子炉そのものを冷やすためのポンプそのものも動かすことができないということになって、原子炉は次々と溶け落ちてしまったということになったわけです。

 一体どれだけの放射能をまき散らしてしまったかということを、日本政府がIAEAという国際的な原子力発電推進団体に報告した報告書があります。その報告書の中に、セシウム137という、私先ほど聞いていただいたけれども、私たちに被曝を与える最大の放射能、それをどれだけ大気中に放出したかという推計を日本政府が報告しました。その数字を見ていただこうと思います。
 まず、この左の下に書いた小さな四角、これは広島原爆が撒き散らしたセシウム137の量です。8.9×10の13乗ベクレルというんですけれども、皆さん数字を聞いてもあまりピンと来ないと思うのですが、でもこの黄色い四角くらいの大きさのセシウム137を広島の原爆がばら撒いた。まず理解してください。
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 では、福島第一原子力発電所がどれだけばら撒いたかというと、1号機の原子炉からこれだけ。広島原爆の5発分から7発分ばら撒いた。
 そして最悪だったのが、2号機。
 そして骨組みすら無くなってしまった3号機は、これだけで、全部でこれだけ放出した。なんと
「広島原爆の170発分というような放射能をばら撒いてしまいました」
ということを日本の政府が申告している。
 これ過小評価です。
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 日本政府というのは、今回の事故を引き起こした最大の犯罪者です。その犯罪者が自分の罪を重く申告する道理がないのであって、なるべく小さめにやったのです。
 世界の様々な研究者たちが、様々に報告を出していますけれども、こんな小さな値をはじき出した研究者は居ません。ほとんどがこれの2倍、3倍くらいという値を示している。つまり大気中に既に広島原爆でばら撒いた400発、500発分ばら撒いてしまいましたという、そういう事故なんです。そして同じくらいの量が海へ既に流れています。
 でも、地球というこの星を放射能で汚したのは、福島の原子力発電所の事故が初めてではありません。この米国やソ連、その他国連常任理事国という今世界を支配している国々が大気圏内の核実験というのを膨大にやって、地球上全部を既に放射能で汚していました。そして1986年にはチェルノブイリ原子力発電所による事故というのが起きて、広島原爆800発分の放射能をその時に吹き出させてしまった。そしてその時に地球上のそこらじゅうの国が汚れたのです。
 これは、チェルノブイリ発電所でばら撒かれた放射能が、世界のそれぞれの国をどれだけ汚したかという国連の報告の値を私が図にしたものです。
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左の方にあるのがソ連ですけれども、一番高い、つまり猛烈に汚れたところですね。それからフィンランドやスウェーデンという北欧も猛烈に汚れているし、オーストリアとかスイスだって汚れているということになっています。でも、これ一体どれくらいの汚染度なのかといういうことを見ていただくと、あ、これちょっとずれています。申し訳ないですが、ここには私が線を引いたのです。これはですね、大気圏内核実験により、地球全体の平均的な汚染レベル、3キロベクレル/平方メートルあたり、1平方メートルあたり3000ベクレルくらい汚れた。北半球だとこのニューヨークもそうですし、日本もそうですけども、1平方メートル当たり5000ベクレルの汚染を受けていた。ですから、これちょっと線の位置がずれているんですけれども、この上のほうの線が5という数字のところにあると思ってください。下の方の線がそれより低いところにあると思ってください。
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 放射線管理区域からものを持ち出す場合というのがあるんですね。私は京都大学原子炉実験所というところで放射能を取り扱って仕事をしています。そのたびに、普段は放射能に汚れていない綺麗なところで仕事をしていますが、どうしてもしょうがなく放射線の管理区域というところに入って仕事をすることがあるんですね。でもそこから外に出ようと思ったら、そのままでは出られないんです。もし私の実験着が放射能で汚れていたとすれば、そのまま外に出たら普通の皆さんも被曝させてしまいます。私が持ち込んだ実験道具が汚れていたら、外に持ち出すと普通の人を被曝させてしまう。私の手が汚れていれば、他の人を触ると被曝させてしまうということになりますから、私が放射線管理区域で仕事をして外に出るときには、検査をしないと出られません。その時に出られる基準というのが、1平方メートルあたり、4万ベクレルという値なんです。
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もし、私の実験着が1平方メートルあたり4万ベクレルを越えて汚染していれば、管理区域の中に放射能に汚れたゴミとして捨てて来なければいけない。実験道具もそうですね。私の手が汚れていれば、洗って来い。水で落ちなければお湯で洗え。お湯で洗って落ちなければ石鹸で洗え。それでも取れなければ、もうしょうがない。手の皮膚が少しくらい溶けてもいいから、薬品を使って溶かして落としてこい。そうしなければ外に出てはいけないという法律なんです。
 それがこの40という値なんです。
 チェルノブイリ原子力発電所の事故が起きた時に、ソ連のかなりの広域なところが放射線管理区域に匹敵するくらいの汚染を受けといってるんですね。本当はもっと大量に汚染しているところがあったんですけれども、平均してしまってこのくらいの汚染ということです。
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 そして、またちょっとずれてしまっているんですけど、米国はここに帯があるんです。日本も一番右の方にあって、チェルノブイリ原子力発電所の事故が起きた時には、日本は1平方メートル当たり100ベクレルくらいしか汚染を受けませんでした。過去に大気圏内核実験で5000ベクレル、1平方メートル当たりの放射能の汚染を既に受けていた。その上にチェルノブイリ原子力発電所で100ベクレルの汚染を受けたのです。米国はもう少し少ないです。数十ベクレルの汚染をチェルノブイリから飛んできた放射能で汚染を受けた。そのくらいでした。


 では、今福島の事故でどんな汚染が広がったかというのをフランスのデータでシミュレーションした結果がこれ。
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この真っ赤なあたりが福島で、東北地方と関東地方が膨大に汚れているのが判っていただけると思いますが、ずっと太平洋のほうに流れたものが米国の西海岸一帯にずっと汚染しているということが判ります。むしろ北海道や沖縄のほうが米国の西海岸の汚染度より低いということになっている。これはちょっと読みにくいグラフですけど、西海岸に行けば数十ベクレルという汚染を既に受けている。つまりチェルノブイリの原子力発電所の事故で米国が汚染をされた、その上にそれと同等、或いはそれを越えるくらいの汚染を米国の西海岸は受けています。
 それで、日本の真っ赤なところの猛烈な汚染地帯、どのくらいかというと、このくらいです。これはやはり日本の政府が公表した地図ですが、ここが福島第一原子力発電所です。
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汚染は色分けしてあります。真っ赤なところが猛烈な汚染地帯。その外側の黄色いところ。更にその外側の緑色っぽいところがありますが、ここは今現在日本政府が人々を強制避難をさせている地域です。1平方メートルあたりでいえば、60万ベクレルというような猛烈な汚染を受けているのが、このあたり。
 どうしてこんなふうに北東のあたりに汚染が広がったかといえば、事故が起きて放射能が噴き出してきたときに、風がこっちのほうに吹いていたから。風によって放射能がどんどん流れて、北東の地域を汚染しました。そして、原子力発電所から50㎞、60㎞という所まで達した時に、風向きが変わりました。そして南の方に向かって流れていきました。青い帯になっているところがそれです。これは福島県の中通りと言われているところで、東側には阿武隈山地、西側には奥羽山脈という山に挟まれた平坦な地域です。北から福島市、二本松市、郡山市、白河市というような福島県の人口密集地帯がずらりと並んでいる地帯です。そこを放射能が撫でるように汚染をしていくということになりました。栃木県の県境がありましたが、県境なんていうのは放射能からいえば何の意味もありませんから、楽々と超えて栃木県の北半分を汚染しました。次に群馬県の県境を越えて、北半分を汚染したということになりました。そしてそれは今度は長野県の山に突き当たって、南に流れていって、埼玉県西部と東京の北側が汚染されるということになりました。
 ある時には、北側から風が吹いていたので、放射能が福島県の浜通りと呼ばれているところを猛烈に汚染しながら茨城県に入って北部を汚染した。それから海に出たのですが、最後にまた茨城県の南部に戻ってきて、千葉県の北部を汚染する、こんなことになりました。
 そしてここの青い部分というのは、ここの下に書いてありますが、1平方メートルあたり6万ベクレルから10万ベクレル汚れている。その周りの薄いところがありますが、そこは1平方メートル当たり3万ベクレルから6万ベクレル汚れているのです。
 私、さきほど
「1平方メートル当たり4万ベクレルを越えるようなものは、どんなものでも放射線管理区域の外側に持ち出してはいけない。それが日本の法律だ」
という話を聞いていただいた。本当は管理区域の外側にそんな汚染物が存在してはいけない。
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 福島県の東半分、宮城県の南部、茨城県の北部・南部、栃木県の群馬県の北半分、埼玉県の西部というところを、放射線の管理区域に指定しなければいけないというような汚染が、今あるのです。
<01:03:00頃>
 人なんか到底そんなところには住んではいけない。私のようなごく特殊な人間だけが仕事のためにだけ入っていいというような汚染が大地そのものに広がっている。
 こんなふうになっても原子力を推進する人の中には、
「いや、そんなこと言ったってまだ人は死んでないからいいんじゃないか」
というような人が居るんだそうです。でも、人はたくさん死んでるんです。
 例えばこれは、去年の毎日新聞ですけれども、これは何を書いたかというと、原子力発電所の立地してる福島県の大熊町という町に双葉病院という大きな病院がありました。
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400人ほどの患者が入院していました。この病院は原子力発電所から約4㎞のところに建っていた。そして原子力発電所が次々と爆発した時に、放射能が噴出してきて放射線の探知機がどんどん反応していくということになりました。そして、警察官すらが「もう逃げるしかない」ということを言って、病院はしょうがない、とにかく病人だけを連れてなんとか逃げようとしたんです。ベットに寝かしたまま、???病室から下に降ろして車に乗せて逃がそうとしました。しかしその途中でも次々と患者が死んでいく。病院から連れ出すことも出来ない患者は置き去りにされた。そしてこの病院だけで45人が死んだ。
 たくさんの人が死んでいる。
 例えばこんなのも皆さんご存じかもしれませんが、ある酪農家は、自分が飼っている牛小屋の壁にチョークで『原発さえなければ』と書いて、ここで首を吊って死ぬという、状態になりました。
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 農民もそうです。自分が作ってきた田んぼの畑で育ってきた作物を見ながら、そこで自死するという農民だってたくさんいる。
 本当にどれだけの人たちがこの事故で命を奪われたのかと思います。
 命を奪われたのは人間だけではありません。
 例えば牛ですが、ここに立っている方は、国が「とにかく避難しろ」という指示を出したので、迎えのバスに乗って避難所に行ったんです。?????ということをやったんですけれども、彼にとって牛は家族なんですね。一頭一頭名前がついてる。朝起きて牛の名前を呼んで、身体を擦って食事を与えて、一緒に生きてきた。その牛を取り残してきた。彼はそれは耐えられないと、放射能を吸い込まないためのマスクをして、餌をやりに戻った、その時の写真です。
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 でも、全ての酪農家がそうではありませんでした。
 囲われたまま、その中で次々と牛が倒れていく。死んでいくということになりました。牛だけではない。馬だって囲われたまま死んでいきました。そうやってたくさんの家畜が死んだわけだし、中には囲ったまま殺すのは忍びないということで、牛を解き放った酪農家もいました。今ではこういう牛たちも、放射能の汚染地帯にたくさんいるんだそうです。でも、こういう牛たちは、放射能で汚れていますから、これが外に出てきては困るということで、日本の政府はこういう牛たちを全部殺戮するんだそうです。一体、この牛たちにどういう責任があるかと思いますけれども、彼らもまた命を奪われてしまうことになりそうです。
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 他の????一緒に写っている動物たち、犬たち、猫たちもそうですけれども、置き去りにされて今無人の町に彷徨っているということになっています。
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 これは、やはり原発が立地している福島県の双葉町という町ですが、双葉町にはこんな大きな看板が立っています。
『原子力 正しい理解で 豊かなくらし』
と書いてあります。
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 原子力発電所が危ないということが????ような??ですけれども、そこでそういうことは起きていた。
「日本の国では絶対に安全だと言っている。東京電力さんだって絶対安全だと言っている。そういう主張を正しく理解すればいい、そうすればたくさんお金が落ちてくるという意味で豊かな暮らしができる」
として町を作ってきた町だったのです。でも、本当にそのまま済めば良かったんだろうかと私は思います。私がウソをついていたということで済めば良かったんだろうと私は思うけれども、でも事故は起きてしまった。そして双葉町は無人になってしまった。

 これからどうなるかという話を少し聞いていただきます。
 右側にあるのが3号機です。もう骨組みすらが崩れ落ちているのが判っていただけるかと思います。左側が4号機です。骨組みが残っているように見えますが、3号機の壊れ方と4号機の壊れ方、ちょっと違うということに気が付いていただけるましたか。
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 3号機の方は、原子炉建屋の一番上の階、2階に相当しているように見えますが、実はこれは2階ではなくて、真ん中に床はありません。要するにこの教会のような非常に大きな空間です。私たちがオペレーションフロアと呼んでいる大きな空間、そこが吹き飛んでいる。水素が爆発して吹き飛んでいるのがこれ。
 4号機の方はどうかというと、確かに最上階の2階に相当しているオペレーションフロアが吹き飛んでいる。それだけではなくて、更にその下の階、そして更にその下の階までが破壊されてしまっているという壊れ方をしているのです。
 どういうことかというと、こんなふうですね。
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原子炉建屋を縦に割ってみるとこういう構造になっています。真ん中にあるのは、一番始めに見ていただいた原子炉圧力容器、鋼鉄製のお釜です。福島原子力発電所の場合は16㎝もの厚さが、とてつもなく分厚い圧力釜です。この中にウランが入っていて、普段はこれで発電をしています。そしてウランが燃えてしまうと、猛烈な放射性物質ができるよという話を先ほど聞いていただいた。ひとつの原子力発電所が1年発電するだけで、広島原発1000発分を越えるような放射性物質ができるといって、それがここに溜まっているんですね。放射能がここに溜まっているということは、エネルギーを発しているわけですから、つまり熱が出ている。ここに出ている熱を冷やせない限りは、原子炉は必ず壊れてしまうという、そういうものだった。ここを必ず冷やさなければいけないということだったけれども、電気が無いがためにポンプが回らない。結局冷やせないでこれ(燃料棒)が溶けてしまったと言ってるのです。特に過程で燃料棒被覆管というものがジルコニウムという金属でできていて、それが水と反応して大量の水素が発生するという性質を持っている。それでその発生した水素が原子炉建屋の最上階のオペレーションフロアで爆発して、ここを吹き飛ばしたと言ってるんですね。
 もう一つ、放射能が膨大にある場所が実はありまして、そこはどこかというとこいこなんです。使用済燃料プールというところです。原子炉の中であるところまでウランを燃やしてしまうと、もうそれ以上は燃えなくなる。つまり猛烈な放射能の塊になってしまう。使用済の燃料というものは、ある時の一定検査の時に、この圧力容器の上のふたを開けて、隣の使用済燃料プールに移すという作業をしてきました。4号機の場合には、この使用済燃料プールの中に、広島原爆が撒き散らしたセシウム137に換算すると、4000発か5000発分くらいのセシウム137を含んだ使用済燃料が、このプールの中に溜まっている、そういう状態でした。
 ですから、これも冷やさなければいけないという仕事が残っているのですね。でも、これ既に爆発して潰れてしまったわけですし、さっきの写真で見ていただいたように、実は4号機の場合にはここ(使用済燃料プールの建屋側壁面)も潰れている。猛烈な放射能の塊を今もこのプールの底に沈めて冷やしているわけですけれども、そのプールのある階すらが爆発で吹き飛んでしまっているという、そういう状態なんです。
 こんな状態です。

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 オペレーションフロアはもう吹き飛んで、もうスカスカになっているし、その下の階もみんな吹き飛んでいるんですね。ここも開いている。
 使用済燃料プールがどこにあるかというと、ここにある。

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この壁の後ろ側に埋め込まれている、そういう状態でこのプールの中に今見ていただいたように、広島原発4000発分、5000発分というような放射能が入ったままの状態であります。
 そして今現在も福島では毎日のように余震が起きています。もしこれから、本当に大きな余震が起きて、このプールが崩壊するようなことになってしまえば、もう打つ手はありません。もうこの写真で見ていただいているように、ただの普通の場所です。そこで放射能が噴き出してくるという、そういうことになってしまう。
「なんとか大きな地震が起きないでくれよ」
と願うことしかできないという、そういう状態になってしまっています。

 こんなになって、本当にどうしたらいいんだろうかと毎日のように思いますけれども、この日本という国はなんていう国だったんだろうなと改めて思うようになりました。

 日本は法治国家だと言われています。
「国民が法律を破ると国家が処罰する、だから日本という国は安全な国だ」
と国家がずっと言ってきたわけですね。それなら自分の決めた法律を守るのは、国家の最低限の義務であろうと私は思います。放射能、或いは被曝という形で国家はたくさんの法律を既に決めています。
 例えば、普通の人たちは1年間に1ミリシーベルト以上の被曝をしてはいけないし、させてはいけないという法律がありました。皆さんが日本に帰ると、その法律が守られるはずだったのです。
 そして先ほど聞いていただいたように、放射線管理区域1平方メートル当たり4万ベクレルを越えて放射能に汚れたものは、管理区域から持ち出してはならないという法律だってあった。
 でも、さっき見ていただいたように、猛烈な範囲が既に汚れてしまっている。その現実を目の前にして、日本の国家が何をしたかというと、自分の決めた法律を反故にした。人々は被曝しながらそこに住んでいい。逃げたい人は勝手に逃げろと言って、人々を汚染地帯に残すということにしたのです。

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【その③】へ続きます。
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