20120301 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章


ゲスト:尾池和夫

【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(千葉氏)今日は、毎日新聞論説員の近藤しんじさんと一緒にお話を伺ってまいります。それから、今日はスタジオに前の京都大学の総長で、政府の福島第一原発事故の調査検証委員会のメンバーでもある、地震学者の尾池和夫さんにも来ていただいてますので、一緒にお話を伺います。
 では、よろしくお願いします。
 まず最初に小出さんにお伺いしますけれども、政府の事故調査委員会の中間報告書が去年の年末に出ましたけれども、これをお読みになった時に小出さんはどう思われましたか?率直なところをお聞かせいただけませんでしょうか。
(小出氏)<苦笑>政府の事故調というのは、東大の畑村さんという方が委員長をされたのです。そして、畑村さん自身が一番初めに、
「個人の責任は追及しない」
とおっしゃったのです。
「個人の責任を追及してしまうと、証言が得られなくなってしまう。事故調の責任は、とにかく事故の真相解明することであって、個人の責任を問わずに情報を収集して真相解明する」
とおっしゃったんですね。それは一つのやり方だと私は思います。
 ただし、私は実はそうではなかったのです。
 徹底的に個人の責任を追及してほしいと当時も思いましたし、今もそう思っています。どうしてこれだけのことが起きながら、誰も責任を問われずにいけるのか、それが私にとっての最大の不思議な点です。
(千葉氏)はい。尾池さんは今のお話について・・・?
(尾池氏)なかなか、難しいところ、小出さんは前からそうおっしゃってますけど、私もその議論はだいぶ委員会でもしたわけですが、一つ、日本とアメリカの違いがその辺に大きくあるんですね。
 アメリカだといろんな証言をした人が、当然裁判になったときに責任を問われないっていう免責する法的な裏付けがあるでしょ。それが日本は全然ないんですね。そうすると、いろんなことを言ってもらったときに、本当にその「あとあと、本当のことを言ってくれるだろうか?」と。「全部言うけれども、そのかわり責任を免除してくれ」ということや、「アメリカのように法的に保証されてると、すごくやりやすいのに・・・」という議論があって、日本の不備がそこでもはや浮き彫りになってきたんですね。
 そんな議論しながらというので、
「じゃあもう委員会として、とにかく個人の責任は問わないということを宣言して、思いきりいろんな本当のことを言ってもらうようにしようや」
と、そういうことなんですね。なかなか苦しい選択なんですけど、そこは。
(小出氏)ただし、それがいわゆる原子力村というのを支えてきてしまった一番の構造だと思いますので。
(尾池氏)おっしゃってるとおり。
(千葉氏)尾池さんにちょっと質問が来てるんですけど、神戸のリスナーから。
「政府の事故調査委員会には、原発の専門家が居ないというのは本当ですか?」
(尾池氏)いや、そんなことは無いんですよ。吉岡さんという方も専門家ですし、それから委員会は10人ですけれども、それを支える専門技術顧問というのも居ますし、いろんな先生方が関与してくれてて、かなり専門的なことがちゃんと議論できる体制にはなってますね。
(千葉氏)その中で議論を進められているということなんですけれども、実は、原発ゼロをめざす『原発政策転換の1万人アピール』という動きが京都の学者や専門家の間から起きていまして、少なからぬ学者さんがアピールに賛同の意思を示されているのですが、実は今日こちらでお話を伺ってる尾池さん、そして小出さんがそこに名を連ねている、賛同の意思を示されているということなんですが、まずじゃあ尾池さんにお伺いしていきますけれども、今の検証委員会の委員という立場は置いておいて、地震学者として原子力発電は今後どうしていくべきだと思われますか?
(尾池氏)原子力発電の是非をあんまり僕は議論したことは無いんですけれども、よく見て判るとおり、何も怖いものであるのは間違いないですよね。だから、それをだんだん辞めていくというのは正しいと私は思ってますね。今すぐ辞めるったって、どうせ何十年もかかって辞めることだから、小出さんのいらっしゃる熊取の原子力実験所っていうのは、これはものすごく大事なところでね、大学で原子炉を持ってるところは京都大学なんですけど、外国からも研修を受けに来たりするわけですが、廃炉するにしても辞めると言ってもし決めたとしても、30年も40年もかかって辞めるのに、ものすごく優秀な技術者たちがそこで仕事をしないことには危ないわけですよね。日本は地震、噴火、津波だってある国で、もちろん他にも竜巻があったりいろいろするわけですから。
 そういうところできちんとした仕事ができる人をこれからも若い人を養成していかなきゃいけないわけだし、そういうところを考え、ちゃんと補償しながら将来を考えていく。
 基本的にはエネルギーの心配は、私はしてないんで。太陽が50億年保証してくれてますから、こんな便利なものはないんでね。それをいずれ使っていけばいいわけですから、圧倒的なものとして昔から見てるわけですが。
 それを安全にどう使うのか、辞めるのか、どっちにしても安全に守っていく、そこがポイントだと思ってます。
(千葉氏)小出先生、いかがですか?
(小出氏)私は原子力発電は即刻全廃すべきだと言ってきた人間です。そうしたところで、電力供給に何の支障もありませんので、まずは辞めるべきだと思います。
 ただし、今尾池さんがおっしゃってくださいましたけども、辞めたところで廃炉の問題があったり、既に生み出してしまった核分裂生成物をこれから10万年、100万年という単位でどうやって安全にできるかというのが課題として残りますので、そのための研究はやはりやらなければいけないと思います。
 京都大学には原子炉実験所という私の職場があるわけですし、そういうところもきちっとした専門的な知識をこれからも蓄えていきながら、これまでやってしまった原子力の負の遺産というものを何とか少しでも・・・人々に厄災を及ぼさないようにしなければいけないと思います。
(尾池氏)そうなんですよね。原子炉が一度「止めたらどうか」っていう話もあったんですよね。とんでもないことで。
「これは大学で死守しなきゃいけない」
と私は言った覚えがあるんですけども、本当に教育機関で韓国からも学生が来てるでしょ。そういうところでね、ものすごく大事な教育をやる機会。いろんな利用の仕方もあるわけですけれども、そういう大事なところをしっかりもっと補強してね、日本の原子力をとにかくどうするかっていうのは、これは政策の問題ですからとやかく私も言えないんだけれども、どっちにするにしてもとにかく守っていかなきゃいけないということだけは確かなんで、そのための教育っていうのをしっかりそこでやってほしいと思ってますね。
(千葉氏)原子力の研究を続けていくということを含めて、原子力を扱うということは、やっぱり廃棄物の問題というのが出てきてしまうわけなんですけれども、そこについてというのはなかなか今のところいい解決策というのは見えてないんですよね。
(小出氏)残念ながら、人間が原子炉というのを作り始めたのは1942年なのですが、既に70年経っています。そして、原子炉を作った時から生み出してしまう核分裂生成物をどうしたらいいのかということが、最大の重荷でして、研究も始まっていたのですけれども、未だに核分裂生成物の無毒化ということには成功していないのです。
 ですから、仕方がないから生命環境から隔離をしようということに今はなっているわけですけれども、その隔離の期間が10万年、100万年と、そういう期間にわたってしまうわけで、『本当に現在の科学でそれが保証できるか?』と問われてしまうと、それはできないということになってしまうのですね。
 ですから、これからも研究をやはりやるしかないというところに、今私たちが居るのです。
(千葉氏)あの、尾池さん、今の話に関連して、核分裂生成物をどこかに保管しなければいけないということを考えると、日本というのは地震国ですので、例えば『地震が起きずに、ここで安定的にそれを保持できる』なんていう場所はあるんでしょうか?
(尾池氏)そんな場所無いですよね。
 地震国とおっしゃったけども、地震と噴火と津波なんですよね。あと竜巻だなんだってあるわけだけども、どれが起こるかわからないし、しかも巨大噴火なんてこともあるわけですね。ね。
 だから、それは・・・どうしようもないですね。
 100万年と今小出さんが言われたけども、100万年の間に1000年に1回の地震は1000回起こるわけでしょ。巨大地震が起こるっていっても。
 そういうことだし、1万年2万年するうちに地球は寒冷化して、また氷河が覆うってことになりますしね、そういうことをそこに人類が持ちこたえてるかどうか判らないけど、そういうことまで考えて、地球のことをよく知った上できちんと答えださないといけない問題ですよね。
(千葉氏)・・・あの、こういったことに関して、小出さん、もっと科学者が議論して大勢の方が動くべきだという世論が高まってきているというふうに伝えられてるんですが、小出さんどう思われますか?
(小出氏)もちろんそうですし、でも、今日は尾池さんがこの番組に出てきてくださってるけれども、尾池さんは京都大学の総長だったという大変重要な方なんですね。
 私のような一介の教員がここで発言するのとは違う重みをもって尾池さんは発言をしてくださってるわけで、その尾池さんのような発言がきちっと学問の場所で生きてほしいと私は願います。
(尾池氏)それはものすごく大事なことで、こういう時にこそ学者がきちんとした学問をやらなきゃいけないと私は思ってますので、私の研究所もそういうとこなんですけど、そこでその『未来の日本をどう考えるか』という議論をしなきゃいけないので。
 そのためにね、根本問題として、来年度4月から、うちの研究所では
「我が国の学術を一体これからどうあるべきか」
という議論を起こそうとしてるんです。
(小出氏)はい。ありがとうございます。
(尾池氏)なかなか間に合わないかもしれない・・・<笑>
(千葉氏)わかりました。小出さん、ありがとうございました。
(小出氏)ありがとうございました。尾池さん、ありがとうございました。
【以上】

失礼します。
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