※この記事は、
1月21日 【内容起こし】神保哲生氏×宮台真司氏:エネルギー政策の各作業部会の『信頼』と日本人の『民意』と『空気』@Videonews.com
1月30日 鹿児島で「原発とメディア」シンポジウム:「政治、官僚、業界、学会、報道がもたれあい、癒着し、反対意見を封殺していく構造があった」
1月25日 【内容起こし】日隅一雄氏:世界と日本の仕組みの違いと主権者が主権を行使するために@CNIC【後半】などに関連しています。

20120229 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

【以下、お時間のない方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(水野氏)近藤さんもいらっしゃいます。小出さん、さっき敦賀市長がカニを公費で細野原発大臣らに送ったっていう話がありましたけど、小出さんも何か原発関係の方から何かもらうなんてことは、小出さんはないですか?<苦笑>
(小出氏)残念ながら一度もありません。<苦笑>
(水野氏)一度もないですか。でもあれですね、有名な先生方も研究費という名目でお金がだいぶ出てたりとか、天下りが絶えないとか、いろんな・・・カニ・・・ね?これ、一人1万円あたりですか。まぁまぁそれは逆いうと小さい話に見えるかもしれません。高額でいろんなことがあるようですが。
 小出さん、今日はですね、東京でいろいろ発信なさる場も作っていらっしゃるビデオジャーナリストの神保哲夫さんもいらっしゃるので、神保さんにも加わっていただこうと思います。
 神保さん?
(神保氏)はい、どうも!
(水野氏)どうぞ、小出さん。
(小出氏)はい、どうも、神保さん、こんばんは。
(神保氏)なんかちょっと変な感じですね。
(小出氏)そうですね。間が毎日放送、たね蒔きジャーナルが入っていて、いつもは直接神保さんとお話しするので。
(水野氏)そうですか。
(神保氏)いつもは直接なんで。
(水野氏)なんか、すいません。お二人の間を私が裂いているような格好で申し訳ないです。
(神保氏)ちょっとそんな感じです。
(水野氏)<笑>
 あの、今日ね、皆さんで話していただきたいのは、この1年の原発報道の中で、東電や政府がいろいろ情報を発信してきました。その時に使われる言葉にこだわってみたいと思うんです。
 例えば、『冷温停止状態』っていうのもびっくりした言葉ですよね。『冷温停止』という専門用語が成立しなくなったら、『状態』をつけたらいけんのかい!?という・・・。
 これも小出さんに伺って、初めてその言葉の裏にある真実が判ったわけですけども、
「冷温停止なんてありっこないんだ」
という真実が、ややもすると判らなくさせられる、そんな言葉がいろいろとあったかと思うんですね。
 近藤さん、どうですか?その辺り。
(近藤氏)だから、語感ですよね。語感でとにかくはぐらかすわけですよね。実態をね。いっぱいありますよね。
(水野氏)いっぱいありますよね。例えば『事故そのものの収束宣言』っていうのもありましたよね。
 ・・・もう小出さん、これもう『事故そのものの収束宣言』ってどういう意味にうつりますか?小出さんから。
(小出氏)私にとっては訳が分からないです。
(水野氏)どこからどこまでが事故そのもので、どこから先が事故そのものじゃないか、判らないですよね。
 神保さん、その辺り、言葉のまやかしっていうのはどう感じてらっしゃいますか?
(神保氏)一つはだから、よく言われる『霞が関文学』っていう言葉があるんですけどね。
(水野氏)『霞が関文学』?
(神保氏)はい。官僚の方々が使う言葉というのが、もともと・・・事実をできるだけ覆い隠すような言葉づかいっていうのを心得てないと、あそこでは生き抜いていけないような文化がもともとあるんですね。
 面白かったのは、東京電力っていうのはもともと民間の会社のはずなのに、やはり地域独占でやっていて、非常にお役所に近い、経産省からも歩いて1分くらいのとこにありますから・・・
(水野氏)そんな近いところにあるんですか!?お役所まで!
(神保氏)斜向かいですね、ほとんど。
(水野氏)斜向かいにありますの?
(神保氏)はい。あるもんですから、「あ、ここでもやはり霞が関文学が使われるんだ」というふうにまず思いましたね。そういう言葉が出てきたときに。
(水野氏)はぁ・・・。記者会見に出られたときにも思われましたか。
(神保氏)はい。『爆発的事象』とかですね。
(水野氏)あ、あれね、 『爆発』とね、『爆発的事象』って言われたらね、私なんか全然違うように思いますよね。
(神保氏)そうです。いちいち「どういう字を書くんですか?」って聞かないといけないような言葉で皆さんしゃべってましたよね。
(水野氏)そうか、『爆発』と言わないで『爆発的事象』
(神保氏)はい。多かったですね、そういうのが。
(水野氏)文学やなぁ・・・、近藤さん。
(近藤氏)神保さん、官僚以上に官僚的かもわからんですね、東電っていうのは。
(神保氏)そうですね。それプラス、専門家というか技術的な専門性が入ったので、もっとひねりが入ってる感じはしました。
(水野氏)ひねり入ってますか~!?
(神保氏)だから、『冷温停止状態』というのは、本来は非常に科学的に明確な定義がある言葉じゃないですか。そういうのに『状態』をつけるとか、官僚用語でなんとかの最後に『など』というのを付けるっていうのはすごく多いんですね。『など』がつけば後に何が入ってもいいっていうのは、結構決まり文句なんですけれども・・・
(近藤氏)『等』って書くやつですね。
(神保氏)そうですね。
(水野氏)『等』って一言書いておけば・・・
(神保氏)はい、何が入ってもいいということで『等』の中に含まれるといえば何でもアリというのがよくあるんですけど、状態をつけることによって、本来は専門的な言葉に全然違う意味を持たせるなんていうのは、ちょっとひねりが入ってるんですね。『霞が関文学』の中でも。
(水野氏)うーん・・・。
 小出さん、小出さんもいろいろお感じになる言葉があると思うんですけどいかがですか?
(小出氏)『除染』ですね。
(水野氏)『除染』ですか!
(近藤氏)そうだね、『除染』っていうのはありえないもんね。
(小出氏)はい。
(水野氏)『除染』の定義って、どこからどこまでをどうすることを『除染』っていうんですかね・・・?
(小出氏)どうなんですかね・・・。私たちの管理区域の中には、『除染室』というのを必ず作ることになっていて、それは放射性物質を扱って身体が汚れたりしたらば、その汚れを落とす、そういう部屋があるんです。
 ただし、落としたところで放射能は無くなるわけではなくて、今度は放射性の廃液の方に移るということなんですね。
(近藤氏)『移染』ですからね。
(小出氏)はい。結局だから『移染』なんです。
(水野氏)あ、『移すだけ』なんですね。汚れを移すことでしかないけれども、それを『除染』というふうに『除く』と書くと、本当になんか、放射性物質が消えるような気が合しますよね。
(小出氏)そうですよね。そういうニュアンスで今、政府が『除染』という言葉と使って、住民たちにあたかも何か「汚れが無くなるよ」という幻想を与えようとしているのです。
(水野氏)これを『移染』というふうにもし変えるとすると、「どこに移したんだ」「どこいったんだ」っていつも疑問を呈することができますが、『除染』といったがために、安全な、ほかにどっかいっちゃったっていう感じじゃないですよね。
(小出氏)そうですよね。
(水野氏)・・・実際は『移染』でしかないわけですね。
(小出氏)はい。だから、移す場所がなければ移すこともできないわけですし、大地全部が汚れてるわけですから、基本的には移動させることも本当はできないのです。
 その厳しい現実を皆さんが本当は知らなければいけないんですが、国や、国が率先して
「除染をすればなんとかなる」
というような宣伝を強めてきているのです。
(水野氏)私はこの言葉も最近、どうなのかと思うんです。『中間貯蔵施設』っていいますよね。放射性物質やら汚染瓦礫やらどうするんだというときに、『中間貯蔵施設』っていったら、ほんまになんか
「5,6年だけちょっと置かしてんか」
というような雰囲気がするんですよ。
 でも、それと『最終処分場』とは本当に違うのか。この『中間貯蔵施設』という言葉も気になるんですが、いかがですか?
(小出氏)もともと中間貯蔵施設というのはあったのです。そういう名前の施設が。
(水野氏)はい。もともとは。
(小出氏)それは何かというと、原子力発電所の使用済燃料を従来は再処理工場に持っていって処理をするという建前だったのですが、再処理工場が一向に動かないものですから、もう仕方がないから「どこかに中間的に置いていく場所を作ろう」ということで『中間貯蔵施設』というものが、原子力の世界で言葉ができたのです。
 それは今、例えば東京電力は青森県のむつ市に、5000トンの使用済燃料を中間的に貯蔵するという施設を作ってきたんですね。それは最終的には再処理工場に持っていくという建前があるからそうなったわけですけれども、私は
「その『中間貯蔵施設』が『最終貯蔵施設』になりますよ」
と言って、警告してきたのです。
(水野氏)建前が崩れたとしても『中間』という言葉は残り続けるんですよね。
(小出氏)そうです。はい。
 ですから、今回の場合もそうですね。何かあたかも『中間』ということを言っていますけれども、私はもう一度やったらば動かないと思います。
(水野氏)うーん・・・。
(神保氏)実際に『最終処分場』が無い以上は、『中間』が『最終』なんですよね。
(小出氏)はい。そう思います。
(水野氏)実態はね。
(神保氏)ちゃんと『最終』が決まっていて、「いついつまでに、ここまで置きます」っていう日付だの行き先が決まっていて初めて『中間貯蔵施設』という言葉が中身があるんですが、『最終』が無いということは、『中間』が『事実上の最終処分場』になるということに、誰が考えても、子供でもわかるようなことですよね。
 でも、その言葉を弄んでしまうわけですね。『中間』と言って。
(水野氏)近藤さん、どうです?
(近藤氏)先生、この間、アメリカの原子力規制委員会だったかな。発表がいろいろありましたけど、日本の枝野さんは『一部損傷』とかいうような言い方をしてたんですけど、あれはしかし、正確な規制委員会ではどういう表現になるんですかね?
(水野氏)『メルトダウン』のことですか?炉心の『一部損傷』というのは。
(近藤氏)『メルトダウン』っていう言い方をするんですか?
(小出氏)学問的にいえば、状況によって言葉は違うと思います。『炉心の損傷』という燃料棒の被覆管が破損したとかいうことを呼ぶ場合には『炉心損傷』という言葉を使いますし、中に入っていたペレットが溶けてしまうようなときには『燃料の溶融』という言葉を使いますし、それが広く燃料全体が溶けてしまうようなときには『炉心溶融』という言葉を使いますし、それが更に大きくなって溶け落ちるようなことになれば『メルトダウン』という言葉が・・・
(近藤氏)それはそしたら、枝野さんの発表はその実態に即した言葉を選ばれてたんですか?
(小出氏)いえ、そうではありません。
(近藤氏)そうじゃなかった・・・?
(小出氏)ですから、政府もそうですし、東京電力もそうですが、事故をなるべく小さく見せたいという動機が一番初めから働いていて、もう1号機なんていうのは11日のうちにほとんど溶融して溶け落ちていたわけですけれども、それでも「溶融なんてことは無い」と彼らはずーっと言い続けていたわけで、「一部が損傷した」と言ったわけだし、原子炉建屋が爆発してしまったときも、先ほど神保さんが言ってくださったように『爆発的事象』と彼らは言ってたのですね。
(水野氏)なるほど・・・。言葉一つで・・・
(近藤氏)随分印象が違うなぁ。
(水野氏)随分とそこに情報操作の意図があったのか無いのかっていうのは、検証されるべきだと思います。小出先生、どうもありがとうございました。
(小出氏)ありがとうございました。
(水野氏)神保さんにはこの後も伺います。
【以上】


【関連記事】

原発相らに公費でカニ 敦賀市長 歳暮、谷垣総裁にも
東京新聞 2012年2月29日 夕刊
 原発三基が立地する福井県敦賀市の河瀬一治市長が昨年十一~十二月に、地元の高級食材越前ガニの詰め合わせ一万円分を歳暮として細野豪志原発事故担当相ら国会議員十一人に贈っていたことが分かった。公費の市長交際費から支出していた。敦賀市内には、高速増殖原型炉「もんじゅ」と敦賀原発1、2号機が立地し、同原発3、4号機の増設計画もある。河瀬市長は全国原子力発電所所在市町村協議会の会長を務め、福島第一原発事故後も、もんじゅの開発継続や増設の推進を国に求めている。
 市長交際費支出明細などによると、計十一万円分を購入。細野原発事故担当相のほか、海江田万里元経済産業相、当時もんじゅを所管する文部科学相だった中川正春防災担当相、前原誠司民主党政調会長、谷垣禎一自民党総裁らに贈った。
 昨年十一月十九日~十二月八日に上京した際、議員会館を回って渡すなどしたという。前年は国会議員への歳暮はなかった。
 河瀬市長は取材に、「福島事故の収束に当たる苦労をねぎらい、一日も早い収束、復興を願う意味を込めた」と話し、原発政策で配慮を求める意図を否定。公費からの支出には「問題ないと考えている」と話している。
 河瀬市長は一九九五年に初当選し、現在五期目。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012022902000185.html


こちらも是非ご視聴ください。
20120229 [1/2]たね蒔きジャーナル「ついに神保哲生さんが番組出演!」
http://www.youtube.com/watch?v=OB58A6qtBv0
http://www.youtube.com/watch?v=G1i-BN604Aw