※この記事は、2月15日【内容起こし】小出裕章氏:国会事故調での斑目氏の発言について@たね蒔きジャーナルに関連しています。

私は見ながらイライラしました。突っ込むところが満載すぎて、文章が乱れますので、自重いたします。
是非ご自身で確かめてみてください。

どうぞ。

【動画】
2月15日 第4回 国会 事故調査委員会(通称:国会事故調)
http://live.nicovideo.jp/watch/lv81521865
http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib3.php?deli_id=41555

【参考人】
  斑目春樹 原子力安全委員会委員長
  寺坂信昭 前 原子力安全・保安院長

【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】
黒川氏(黒川委員長)それでは時間が参りました。国会による東京電力福島原子力発電所事故調査委員会、通称国会事故調といっておりますが、第4回委員会を開会いたします。
 お手元にありますように、まず今日の項目の2番目ですけれども委員会の運営についてお諮りいたします。
 まず委員会の運営に関しては、参与についてございますけれども、当委員会の参与として、お手元の資料にありますとおり、原子力工学がご専門の木村逸郎先生、それから放射線医学その他分子生物学ご専門の児玉龍彦先生、さらに経済学公共政策などがご専門の八田達夫先生の3人が任命されましたので、報告いたします。

 次に、委員会運営についての運営規定ということでお話しますが、この委員会の運営規定ですが、改めてお手元に配布いたしました資料2の案で進めたいと思っていますが、特に委員の方から、こういうふうにやりませんか?
 はい、ありがとうございます。
 異議なしと認め、そのように進めさせていただきます。ありがとうございます。
 それでは、今日の3,4に入りたいと思います。
 まず、原子力安全委員会に関する質疑応答ということで、本日は参考人と質疑応答を開始しようと思っておりまして、本日は原子力安全委員会の斑目委員長、それから原子力安全保安院の寺坂信昭前原子力安全・保安院長においでいただいております。お忙しい中、お二人の委員長に国会事故調査委員会にご協力いただきまして、ありがとうございます。
 今般の東京電力の福島原子力発電所事故当時、お二人とも最前線の責任者として大変な責任のある立場でご苦労されたお二人から、当時の状況、経緯を伺い、原子力災害時の緊急対策、或いは事故の被害の軽減対策について、また今後の原子力安全の在り方等について有意義な議論をさせていただけたらと思っております。
 まず、原子力安全委員会について、斑目春樹原子力安全委員会委員長にお願いいたします。本当にありがとうございます。今日はよろしくお願いします。
 本当に斑目委員長には参考人としてご出席いただきありがとうございます。
 早速ですが、福島第一原子力発電所事故が起きたことについて、これまで原子力安全についての総元締めという立場でおられました斑目委員長には、過去の原子力安全委員会の活動について、どのように総括されていらっしゃるのでしょうか、まずお聞かせくださいませ。 
斑目氏(斑目氏)はい。まず、原子力安全委員会というところは、原子力安全の確保に関する基本的な考え方を示すということが最大の任務となっております。
 従いまして、そういうものを安全審査指針類として、これまで発行してきたわけでございますが、今まで発行してきた安全審査指針類にいろいろな意味で瑕疵があったということは、これははっきりと認めざるを得ないと思っております。
 例えば、津波に対して十分な記載がなかったとか、或いは全交流電源喪失ということについては、もう解説の中に長時間のそういうものは考えなくてもいいと書くなど、明らかな誤りがあったことは認めざるを得ないところで、大変原子力安全委員会を代表してお詫び申し上げたいと思っております。
 そういうことで、現在原子力安全委員会では、このような安全審査指針類に関しましては、順次改定を進めているところで、原子力安全委員会は一応この3月末をもって新しい組織に引き継がれるということですので、3月末を目指して、いろいろな中間とりまとめを外部の専門家の方にお願いしてるところでございます。
(黒川委員長)ありがとうございます。先生、今おっしゃいましたけど、確かにいろいろな今までのことでは、今度の福島第一原発でいろいろなことが明らかになってきたと思いますが、先生、特にご専門の立場もありますし、こういう委員会の委員長とされて、全電源喪失という思いもかけない事故とおっしゃいましたけど、このようなことはどの程度に想定されていおられたんでしょうか?
(斑目氏)安全委員会としてはですね、だいぶ前に検討した結果、我が国の停電の事情というのから考えて、諸外国と比べてその頻度は非常に低いだろうと、そういうデータをもって全交流電源喪失というものは考えなくていいとしてしまっております。
 それから、この外部からの電源というのは、基本的には安全系ではないというか、安全確保のためには、ディーゼル発電機さえ生きていればいいということで、ディーゼル発電機の安全性ばっかりに気を取られてた。しかしながら、ディーゼル発電機だって水没してしまえば使い物にならなくなる。まさにCommon Causeといいますか、津波が押し寄せてきたら、複数台用意しておいても一遍にダメになる。そういうことについての配慮が全くなされてなかったことは、大変な問題だろうと考えております。
(黒川委員長)なるほどね。そうすると、そういうことを今になってなのか、やはりそういうことを先生もご専門の立場ですから、特に低いとこにあるディーゼルエンジンなんていうのもそうですけど、想定されなかったんでしょうかね?
(斑目氏)えーっとですね、これは当時から私がずっと安全委員をやってるわけではございませんので、あくまでも推測になります。しかしながら、若干気になるのは・・・我が国と違って、例えばアメリカなんかを見ると、Station Black Outといいますけれども、これについてはですね、しっかりと「こういうふうな対応をしなさい」という方針、文書をつくってございます。
 そういうのを横目に見ながら、なんら対応もしなかったのは問題であったと思います。
 結局ですね、この問題のさらに根っこにあるところはですね、なんかそういう諸外国でいろいろと検討されたときに、ややもすると「わが国ではそこまでやらなくてもいいよ」という、そういう言い訳といいますか、やらなくてもいいということの説明にばっかり時間をかけてしまって、いくら抵抗があってもやるんだ!という、そういう意思決定がなかなかできにくいシステムになっている。この辺りに問題の根っこがあるんではないかというふうに私自身は考えてございます。
(黒川委員長)その「何となく難しい」というのは、先生のご経験だとどういうところにあるんでしょうか、具体的には?
(斑目氏)私の立場でどこまで申し上げていいかよく判りませんけれども、ある意味ではこれは・・・、『官僚制度の限界』といいますかですね、例えばそこの担当の人間が、大体2年くらいで日本の場合変わっていくわけですね。そういう時に、ものすごい大きい問題まで取り扱いだそうとすると、自分の任期の間に終わらない。そうすると、ややもすると、そういう大きな問題に手を出さないで、それでいかにそういうことを議論しなくてもいいかということの説明ばっかりやればいい。日本の公務員制度っていうのは、基本的に加点方式じゃなくて減点法だと思いますので、そういう制度をとってる意味では、なかなかそこは深堀ができないんじゃないかというふうに思っております。
(黒川委員長)それから、安全委員会の委員長の立場、或いは安全委員会としては、先生が今おっしゃったように、特に海外でいろんな対応によって、非常にSpecific
な・・・Specificというかどういうことをするという、周りにきちんと記述された指針みたいなものが出てきますよね。そういうことについては、もちろん当事者の役所もしてたんだと思うんですけど、議論してるうちにそうなったという話ですが、例えば事業者に対してはどういうふうにそれが伝わるんでしょうか?
(斑目氏)えーっと、私は我が国の場合、もっと事業者の責任というのを強く求めるべきだというふうに思っております。
 そして、事業者と規制当局との間に、これはIAEAなんかの安全基準にも書いてございますが、まさにフランクでオープンで、それでいてフォーマルなちゃんとしたコミュニケーションがなされなければいけない。そこがうまくいってない。
 ややもすると、護送船団方式といいますか、一番低い安全基準かなにかを電力会社が提案すると、なんとなくそれを規制当局として飲んでしまう。今度はそれが出されると、国が既にここでお墨付きを与えてるんだから安全ですよと言って、安全性を向上させる努力というのを事業者の方ではやらなくなってしまう。
 なんかそういう悪循環に陥っていたのではないか。
 やっぱり本来安全確保の一義的責任は、あくまでも電力会社にあります。従って、電力会社は国がどういう基準を示そうと、その基準を遥かに超える安全性を目指さなきゃいけないんです。
 それなのに、それをしないで済む理由として、安全委員会が作ってるような安全審査指針類が使われているとしたら、大変心外だと思いますし、これからは決してそうであってはならないと思っています。
(黒川委員長)委員長は『心外』というお言葉でしたけど、東京電力は今回のことで『想定外』というのはいかがでしょうかね?
(斑目氏)えーっとですね、これは非常に難しいところで、果たしてあれだけの大津波をどれだけの人間が想定できたかは判りません。
 しかし、まず二つ申し上げたいのは、第一にこういう津波自体が想定を超えるものであったとしても、そこで手立てが無くなってしまうということはあってはならないわけです。津波は想定を超えたかもしれないけれども、それの先の防備というか、防護対策が何重にもなされているべきである。これが原子力の安全を守る原則です。
 それがなされてなかったってことは、非常に残念だというふうに思っております。
 それから、二番目に、やはりあれだけの津波を想定できたかは別として、ある程度新しい知見というのが出てきていて、福島県沖においても大きな地震の発生があり得るという知見が出ていたわけですね。それなのにそれに対する対応が遅れたということについても、大変残念だと思っております。
(黒川委員長)はい。ありがとうございます。それでは、事故後の対応について、野村委員の方からお願いいたします。
野村委員(野村委員)委員を務めさせていただいております、野村でございます。
 今日は大変貴重なご発言いろいろといただきましてありがとうございます。
 今、事故後の話について、少しお話を伺いたいんですが、その前に一点だけ、今の委員長とのやり取りの中でお伺いしたいことがあるんですけれども、先ほどですと、やはり役所の人たちの仕事の仕方についての問題点、或いは事業者のほうが本来一義的な責任を持つべきだというご発言、確かにその通りだと思うんですけれども、私がちょっと承知してるところでは、委員長自身も『発電機を2台設けるべきではないか』ということが、例えば訴訟等で問題になった際に、
「そのようなことをやれば、そもそも原発の設計などはできない」
というようなことをご発言をされたり、或いは国会でもそういうご発言をされたりという記録が残っているやに思うのですが、そういうことはご記憶は無いでしょうか?
(斑目氏)えーっと、発電機というのは、多分ディーゼル発電機だと思うのですが、ディーゼル発電機は複数台用意しなければいけない。これは安全指針類にも書いてあることなので、多分ですね、そうではなくて、
「ある程度設計において事象を想定します。想定して、そこで一旦割り切る。これは設計をする以上はやむを得ない」
という発言をしてると思います。
 例えば堤防を設計するときに、どれだけの洪水まで考えなきゃいけないかという、それを想定しなければ物は作れません。ですから、物を作るために想定は必ず必要なんです。ただし、想定を超えた場合も考えておかなきゃいけない。そういう意味での割り切りは必要だと言ってはいると思いますけれども、それ以外はちょっと記憶にございません。
(野村委員)判りました。『想定外のことを考える』ということと、『割り切りをする』ということは、どういうふうな関係になるんでしょうか?
(斑目氏)これは、Defense in depth、多重防護といっておりますけれども、何層にも何重にも深く守られてなきゃいけない。ですから、物を設計するときには、ある装丁の元に設計する。だけれども、それで満足しないで、今度はそれを超えた時のことも考えておく。また更にそこに防護柵を用意しておく。さらにそれを超えた場合にも何重にもやっておく。
 これが多重防護=Defense in depthということでございます。
(野村委員)そういう意味では、安全委員会ではそういった意味での多重防護っていうんでしょうか、深層防護っていうのは配慮されていたというお考えでよろしいんでしょうか?
(斑目氏)いいえ。配慮されておりません。国際的な水準からいきますと、IAEAなどでは五重の防護という言い方をしてございます。事象の発生防止、進展防止、影響緩和。その三層までしか考えてございません。これに対して、IAEAなどでは、さらにそこを越えて、シビアアクシデントになった時の防護対策、更には最終的には防災対策といいますか、そういうところまで考えなさいよと言ってるところ、我が国の場合は三重のところで止めていた。
 そういう反省がございます。
(野村委員)ありがとうございます。
 では、先ほど委員長からありましたような事故後の対応について、少しお伺いしたいんですけれども、斑目委員長自身は、ご自身が国会で
「安全委員会の非常時体制っていうのは出来ていなかった」
というご発言をされていると思うんですけれども、これは具体的にどの点を指してそのように評価されているのでしょうか。
(斑目氏)例えば、発災後ただちに原子力安全委員会は、緊急助言組織というのを立ち上げることになってございます。緊急助言組織を立ち上げるために、一斉携帯メールシステムを使って非常招集をかけたんです。その招集は実は私自身の携帯にも届かなきゃいけないんですが、なったのはいいんですけど届かなかったんです。
 結局、こういう場合にこうする、ああするということをいろいろ決めておきながら、そういう携帯が通じない等々で、決められた通りにはほとんど何もできないという状況でございました。
 従って、もうそこは電話もなかなか通じなくて、助言組織なかなか立ち上げられなかったんですが、むしろ自主的に歩いて集まってくださった方々に助けられた形なんですが、そういう意味では、こういう緊急時に対する想定というのは、不十分であったというふうにつくづく感じております。
(野村委員)ありがとうございます。
 そうは言いながらも、原子力災害対策特別措置法に基づいて、委員長自身は総理、その当時の災害対策本部長に対して技術的な助言をされるという役目を果たされたわけですけれども、この役目を実際果たされてみて、今になって思うともう少し助言すべき点があったんじゃないかということが、もしお気づきの点がありましたら、教えていただければと思います。
(斑目氏)これは当時の状況では非常に難しいと思います。
 というのはですね、技術的な助言を与えるにあたっては、現状がどうなっているかという情報がないと出来ないんです。
 私が助言してた場所は、10人入ればもう一杯になっちゃうような、しかも固定電話が2回線しかなくて、携帯電話も通じない場所で、情報がほとんど入ってこないんです。そういう場でできる助言っていうのは、もう限界だったんじゃないかと自分自身では思っております。
 ただ、実際問題として、私はあのころ1週間以上ほとんど寝てませんので、記憶がほとんどすっ飛んでしまっております。どういう助言をしたのかというのも正確には覚えていないという状況ですので、ちょっとまだその辺は総括できてないという状況です
(野村委員)わかりました。今おっしゃられたのは、官邸の5階におられたということでよろしいですか?
(斑目氏)いいえ。私はずーっとですね、少なくとも11日の夜9時の時点からヘリコプターで飛び立つまでは、私の記憶では官邸の地下にある危機管理センターの中2階という応接室、小さな応接室にいたと記憶してございます。
(野村委員)その中2階におられる、或いはその後は5階に移られたということでよろしいですか?
(斑目氏)現地にヘリコプターが飛んで帰ってきて、一旦4号館に帰ってますけどもその後は今度はむしろ5階のほうにおりました。
(野村委員)中2階ないしは5階で様々なことが決定されたと思うんですけど、ご記憶のある限りで結構なんですが、3月11日から12日午後にかけまして、そこで重要な決定として覚えておられることっていうのは、どんなことがありますでしょうか。
(斑目氏)先ほどもちょっと申しましたとおり、私は記憶がほとんど生の形では残ってない。それで、その後いろいろな、例えば政府事故調の報告書とか東電の報告書とか、或いは安全委員会の他の人と話したりでだいぶ補いつつあって出来てるので、絶対こうだったという自信はございません。が、もっとも確からしいことで申しますと、まずは11日ですけれども、2時46分の地震後、5時半ころに官邸に向かってると思います。それで、どうも会議室の前で待っててもなかなか会議が始まらないなといったところに、多分保安院の平岡次長かなにかに「ちょっと助けてください」て言って、一度呼ばれて、総理のところに行ってるんじゃないかという気がします。
 そこにもう既に東京電力の方が呼ばれていて、
「とにかく電源車を運んでほしい」
という話になっていて、これは電源の問題なんですということに既になっていたと思います。
 それからずーっと今度は原子力災害対策本部が立ち上がるまで、また随分待たされて、それが終わった後、一旦私自身は安全委員会のある4号館の方に戻っております。
 9時になってから再び「是非来てくれ」ということで、今度は官邸地下の危機管理センターの中二階のほうにこもったわけです。
 この時までには、今度はそこでいわゆる全交流電源喪失どころではなくて、直流電源も無くなってるんだという事態を知って、ちょっとその前からそう感じたんですけれども、こうなるともうあと手は・・・要するに「圧力を下げて消防自動車でもいいからなんでもいいから、水をかけるしかないですよ」と。東京電力のたけぐろフェローがそこにいらっしゃいましたので、たけぐろフェローと相談しながらそういう助言をしたわけです。
 あ、その前に非常にはっきり覚えているのは、海江田大臣、当時の経済産業大臣から、
「東京電力といういちプライベートカンパニーから『ああしてくれ、こうしてくれ』『自衛隊を使って何かやってくれ』と頼まれても、政府決定できるわけないので、お前の口からいろいろ助言を聞きたいんだ」
と言われたことだけは、非常に鮮明に覚えております。
 それで、
「もうこれは圧力容器の圧を下げるということは、格納容器の圧が今度は上がってしまいますから、格納容器ベントというのをやらざるをえない。格納容器ベントをするというのは、もちろん住民の避難が大前提になりますので。」
というようなことで、格納容器ベントについての助言を行った。これは確かだろうと思います。

 その後、「格納容器の圧が上がってます」とかいろいろあって、
「とにかくベントを急いでください」
と言った後、最後はヘリコプターに乗るまで何を言ってたかってなると、正確なところはほとんど覚えてないのが実情です。
(野村委員)ありがとうございます。
 今ベントの話が出てきたんですが、ベントについての技術的な説明を行われたのは委員長ご自身という理解でよろしいですか?
(斑目氏)多分私の口から「ベントというのはこういうものです」と。ベントということで世の中に通ってしまっていますけど、これはあくまでも圧力容器の燃料に水を入れるのが目的ですので、そのためにはしかし、最終的には格納容器の圧を下げるためのベントをしなきゃいけないということで、一生懸命そのへんの解説をしてたと思います。
(野村委員)今ちょっと水を入れるという話が出てきたんですけれども、海水注入が行われる際に、斑目委員長ご自身は、総理に対して
「海水注入をすると再臨界の可能性はゼロとは言えない」
というふうにご発言されたと報道ベースでは報じられているわけですけれども、この発言自身は真実と受け止めてよろしいでしょうか。
(斑目氏)私自身はそういう記憶は、実は全くございません。
 ただ、二つ確かなことがございまして、私の方から再臨界の可能性についてまでも言わないだろうと思います。真水を入れるよりも塩水の方が可能性低くなりますので、私から言ったとは思いません。それが一点。
 第二点として、再臨界の可能性があるかと聞かれたら、これはゼロではないと必ず答えます。温度が下がっていくと再臨界の可能性っていうのはゼロではないんです。ですから、私自身、そういう発言をしたかどうかという記憶は全くないけれども、その二点だけは多分確かだろうということです。
(野村委員)あの、委員長の周りでまさに海水注入が行われていたわけですけれども、その時委員長自身は海水注入をすべきだというお考えだったですか?それともすべきではないというお考えでしたか?
(斑目氏)もちろん、海水でも何でもいいから水をつぎ込むべきである。当然
「海水注入で、海水で結構ですから注入してください」
と言い続けていたと思います。
(野村委員)ありがとうございます。それからあと一点、最後に伺いたいんですけれども、1号機の水素爆発が起こりました後に、官房長官記者会見で、
「放射性物質が大量に漏れるような事故ではなかった。従って直ちに影響はない」
という発言をされておられるんですけれども、このご発言についてもし、斑目委員長がその当時のことをご記憶がありましたら、その当時どう思っておられたのか、そして今思えば、この発言が正しかったというふうにお考えでしょうか?
(斑目氏)ここもほとんど記憶が無いんですが、枝野当時の官房長官の発言に対して、私が何かサジェスチョンをしたことは無いと思います。
 というのは、実は聞いた時に
「ただちに影響がない」
というと、我々原子力をやってる人間からはですね、
『晩発性のいわゆるガンの影響はある』
と言っているように聞こえるので、ああいう発言はむしろしないんですね。ですから、多分私のサジェスチョンはしてないと思います。
 それから、私自身があの水素爆発のシーンを見てどう思ったかというと、まず第一に
「あ、これは格納容器の圧力が上がって、それでしかしあるところでずっとサジってたということは漏れてたに違いない。当たり前だよね・・・ということは水素は当然出てたよね。ということは、爆発・・・考えなきゃいけなかったんだ」
とほとんど瞬間に思ってます。
 ただ、爆発のシーンを見た途端に、逆に実は1号機の爆発は、オペレーションフロアの上の方だけが吹っ飛んでますので、逆に格納容器はもったんじゃないか。事実、周辺の放射線量が非常に高くなって、東京電力が大変なことになってるとは言ってきてないなということで、半分安心したという、こんなこと言ったら大変・・・よくないことなのかもしれませんけれども、そう思ったという記憶もございます。
(野村委員)すいません、あと一点だけ。先ほどもう最後と申し上げたので恐縮ですけれども、ちょっとベントに戻って。そのベントの際に放射性物質が放出されるわけですけれども、その放出量でありますとか被曝量についての評価・助言というのを行ったのも、委員長でいらっしゃいますでしょうか?
(斑目氏)いいえ、ほとんど記憶が無いんですが、これは実は時間とともに変わってきてます。
 一番最初、夜の9時過ぎだったと思いますけれども、くらいの時点では、まだ私は炉心は溶けていない(実際まだそのころどうも溶けだした頃じゃないかと思ってますが、)と思ってますので、ベントをしても放射性物質は大して放出されてないと思ってます。これが時間が経つにつれて、これはもう炉心は溶けてるかなと思いだしてるわけですね。
 でも、他に手段が無いなということで、だんだん危機感だけが高まっていってる、そういう状況です。
(野村委員)その「炉心が溶けたかな」という考えをお変えになったのは、だいたいいつ頃のことになりますでしょうか?
(斑目氏)えーっと、記憶でははっきりしないんですけれども、格納容器の圧力が、設計圧力が1.5倍ですとか2倍ですとかっていう話が入ってきたころに、
「うーん、そうだろうな・・・」
というふうな思いがチラッと頭をかすめたような気がします。
(野村委員)ありがとうございました。
(黒川委員長)はい。ありがとうございました。さきほどちょっと私、最後に安全委員会の指針に関わらず、海外でいろいろなことが起こっていて、そのリスクを少なくするようなことをされてると言われましたよね。なんとなく雰囲気で、なんとかいいかという話があったんですけど、委員は
「それは一義的に事業者がちゃんと責任をもって、常に向上しなくちゃいけないことだ」
とおっしゃいましたけど、それを実際チェックしてるのは誰ですか?事業者がやってるかやってないか、自発的にやってること、それは投資家ですか?株主ですかね?保安院の責任はどうなるのか・・・
(斑目氏)ですから、やっぱり日本のそういう規制制度が、
『国がとにかく基準を定めなさい。これをクリアしてたら文句言わないでください』
というふうになってること自体が問題で、今度、初めてですね、いわゆるストレステスト、総合的安全評価という形で国の基準はここまでだけれども、それを越えてどれだけ努力してるかというのを見るような制度が入ってくるんだろうと思ってます。
 そういう制度をどんどん入れないと、なかなか事業者は努力を怠ってしまいがちで、このあたりをしっかり改善するべきだと私は思っています。
(黒川委員長)はい、ありがとうございました。それでは、事故後の対応について、いくつか桜井委員のほうから伺わせていただきたいと思います。
桜井委員(桜井委員)委員の桜井でございます。
 若干、細かいことをお聞きするようなことになるかもしれません。今委員長のほうからたいへん当時混乱しておられて、記憶がなかなか混乱しておられるということを伺いまして、私もよく理解した上で敢えて聞かせていただきたいんですが、ベントとの関係で、住民の避難ということを委員長おっしゃいましたね。その住民の避難とかについて、官邸のいわゆる5階なのか或いは地下の中二階なのか、ちょっと場所は限定しませんが、どんなことが決められるまでに話し合われたか、どのような方がどのような意見を言われたということについて、判ってる限りでお話いただきたいのですが。


(斑目氏)私はどうもですね、一旦4号館に戻った8時から9時の間に、福島県が2㎞避難の指示を出したとかっていう情報を得てから官邸に向かってるみたいです。
 官邸で「3㎞避難でどうか?」と聞かれて、
「それで結構ですから是非そのようにしてください」
と答えたのではないかと思います。
 したがって、3㎞避難という決定がどういう形でなされたかということは、私自身は承知しておりません。
 ただ、原子力安全委員会では、実はこのEPZの見直しでPAZと言ってますけど、Precauciously Action Zoneという、とにかく非常事態になったら何が何でもパッと逃げてくださいというゾーンを決めようという議論を始めようとしてたところでしたので、3㎞と聞いたらば、なんとなくそれが頭に浮かんで、
「それで結構ですから是非!」
と言ったような気がします。
 ただ、あまり記憶がはっきりしてません。
(桜井委員)くどいようですが、その3㎞でOKと理解されたというのを、もう少し気持ちの根拠、その時に頭に浮かんだことは、例えばどういうものがあってですか?いろんな3㎞っていう根拠はあるんですけど、委員長はその辺、どのあたりのことを・・・?
(斑目氏)ですから、その時点では私はまだ炉心は溶けてないと思ってるんですね。しかしながら、「ベントをしてください」と言ってるわけです。ベントというのは、まさに放射性物質を意図的に外部に出す操作ですから、これは当然・・・近くにいる方には避難していただかなきゃいけない。
 そういう国際的にどうなってるかというのをたまたまそういう議論をやってたので、よく知ってたので、それに法った方針であるなということで、結構な方向ではないかと思ったのではないかと思います。
(桜井委員)ありがとうございます。
 毎年のように避難訓練、総合避難訓練っていうのをやられておりますが、その時はどんな形でその避難区域というのは決定されて・・・シミュレーションですけど。
(斑目氏)本来、やっている訓練の時にはですね、まさにERSSという原子炉の状態がどうなってるかというデータが次々に送られて来て、それを更にSPEEDIという放射性物質の拡散予測モデルに入れて、そういうのを見ながら判断するという、そういうシナリオになってます。
 しかしながら、例えばSPEEDIの計算一つとったって、1時間はかかるわけで、今回のような事象にはとても間に合うような計画にはなっていなかった。
 やっぱりそういう予測に頼った、予測計算などに頼ったような避難計画を立てていたこと自体が間違いであって、発電所の方で大変なことになっているという宣言があったら、ただちにすぐそばの方には避難していただくというルールにしておくべきものであるというふうに考えてございます。
 この辺は現在、原子力安全委員会のほうで防災指針の見直しをやってまして、その辺の議論を既に詰めているところでございます。
(桜井委員)委員長のお考えはよく判りましたけど、他の方から委員長の口からSPEEDIという言葉がお出になりましたが、委員長以外の方が
「SPEEDIはどうなってるんだ?」
とかですね、そういうようなご発言というのは、委員長以外どなたかからありましたでしょうか?
(斑目氏)当時の私が官邸にいる間に、私が『SPEEDI』という言葉を聞いた記憶は、全くございません。
(桜井委員)委員長、今ERSSのことを言われましたけど、私どもの理解では、SPEEDIというのは、本来予測のためのもので、その予測をすることによって住民の避難の範囲とか避難される方向というものを、一つの要素かもしれませんが、その時の参考資料にするというために作られているシステムと、私は理解しておりますが、そういう理解でよろしいんでしょうか?
(斑目氏)あの、建前上、そういうことになっていた。不可能だと私は思いますが
(桜井委員)どの辺のところが『不可能』だというふうに?
(斑目氏)今回もですね、まだなかなかご理解いただいてないんですが、『SPEEDIが生きてたらば、もうちょっとうまく避難できた』というのは、全くの誤解でございます。
 というのはですね、発災時の3月11日から14日くらいまで、ほとんど海に向かって吹いてまして、むしろ安心していいような風向きだったんです。それがですね、15日になりまして、えーっと、その前にも一回あったかな。下の方に向かったことは1回ありましたね。それから15日になって一旦南にいって、ぐるっと西の方を回って・・・北に行って、また戻ってきて北西方向に行ってというような風向きなんです。これが、たまたま北西方向に向かったときに、そちら方向で雨が降ってしまった。
 したがって、現在飯舘のほうまで・・・かなり土壌が汚染されてしまったわけでして、SPEEDIをもう一回使ってですね、当時のことを再現していただくと、
「これを使ってどうやって逃げろ?」
という結果になるのは明らかですので、是非その辺は追実験して、SPEEDIの実力というのはこんなものだということをご理解いただきたいと思います。
 原子力安全委員会のほうで、まさに逆算して現状に合うように一生懸命入力データを調整してみたら、たまたま現象が説明できるという図だけを先に示してしまったものですから、
「あれがあれば逃げる方向を間違えないで済んだ」
というふうに皆さんが思ってらっしゃるとしたら、これははっきり間違いですので・・・是非しっかりとした説明をさせていただきたいと思っております。
(桜井委員)委員長の今の、今回についてのご説明というのは、今伺っていたところでありますけど、結果的にそういうことであるのかもしれませんが、そもそも、「建前は」と委員長はおっしゃられましたけど、先ほど私が申し上げた通りSPEEDIというのは、本来使ってみるためのものでなかったんでしょうか?結果的にそれで住民避難にプラスになったかプラスにならないかという観点ではなくて、何はともあれ、そういうツールがあるんだから、あらゆるツールを使って、少しでも何かを考えていくというような考えはいかがでしょうか?
(斑目氏)これはおっしゃるとおりです。SPEEDIというのが確かにその時点では、天気予報に過ぎないものではありますけれども、発電所からどういうふうな風が吹いているかということを、きちっとその時点、その時点では示しているものですから、これは当然公開はされてしかるべきものであったというふうには思っております。
(桜井委員)今、「その時点」とおっしゃいましたけど、細かい話で申し訳ないんですけど、予測機能というのは充分ご承知のとおり、現段階だけではなくて、今風が回っておられたということですが、制度とかいろんな情報の問題はあろうと思いますけど、使い方によっては雨の時期、方向ということもSPEEDIで何時間か先まで予測することは可能なわけですね?
(斑目氏)はい。もちろんできます。
(桜井委員)ありがとうございます。
 そうしますと
委員長は、今回のようなケース、簡単にいうと「ERSSの情報が充分でないときにはSPEEDIはほとんど機能しないだろう」とまとめるとそういうご見解?
(斑目氏)そういうふうに考えております。
(桜井委員)わかりました。ありがとうございました。
 データが無い場合に、単位量で入れるということになってますね、マニュアル上は。その辺についてのお考えは、評価というのはどんなふうに考えておられますか?
(斑目氏)事実、単位量でずっと原子力安全技術センターのほうでは計算してたので、これは当然逐一公表されるべきものだっただろうというふうには思っております。

(桜井委員)判りやすくいうと、図になるんですけど、それについては委員長のもとには届いておられましたでしょうか?
(斑目氏)少なくとも官邸にいた時には、全くそれを見た覚えはございません。
(桜井委員)最後に、委員長がさきほどおっしゃっておられましたけど、これからSPEEDIをどうするかということについて、ご検討されているということですが、よろしければその辺をどんなご検討を今されてるかということを、少し説明していただけるとありがたいです。
(斑目氏)まず、避難の区域の設定においては、SPEEDIはあくまでも参考情報であって、もうちょっとプラント状況を踏まえた決定と、更にはモニタリングといいますか、実測ですね。放射線量の実測に基づいた決定というのを主とすべきだと思っています。
 ただ、SPEEDIが全然じゃあ使えないかといったら、そんなことはなくて、あらかじめその発電所のある場所では、どういうふうな風が普通吹くかとか、そういうようなことについては、あらかじめ計算しておけば、どういうことを気にしなきゃいけないかっていうことははっきりわかるわけですね。ですから、そういうのをあらかじめドンドンやって、それを防災計画にうまく組み込んでいただきたい。
 こういう意味ではSPEEDIっていうのは、大変使いやすいツールではないかというふうに思っております。
(桜井委員)ありがとうございました。
<41:45頃まで>


【後半】に続きます。
にほんブログ村 環境ブログ 原発・放射能へ
にほんブログ村

人気ブログランキング