ようやく先日、『報道災害【原発編】真実を伝えないメディアの大罪』(上杉隆/烏賀陽弘道 共著)を読み終えました。なかなか本を読む時間が取れなかったというのが正直なところなのですが、手にしていながら読めないというのは歯がゆいものでした。
ここ数日体調を崩していたこともあり、横になって活字を追う時間が取れ、思うところがあったので読書感想文ではないけれども、ちょっとご紹介しようかと思った次第です。

『報道災害』とは本当にまさしくそうだなと納得させられる言葉で、各社の報道によって更なる被害を受けたのは国民であり、3.11の地震・津波・原発事故そのものとはまた違った複合的な面で、報道による人的災害があったのは事実だと思っています。そういう意味で、私はメディアに対する憤りは半端なものではありません。

そうして、この『報道災害』を読み進めるにあたって、思い出される物語がありました。
私の大好きな京極夏彦先生の本の中の『続巷説百物語』の『狐者異(こわい)』という話です。
【以下、本の内容に関するネタバレがありますので、内容を知りたくない方はご遠慮なさってください。】
この『狐者異』とはどういうお話かとさらりとご説明いたします。
稲荷坂の祇右衛門という江戸の裏を牛耳る悪党が居ました。
非人(ひにん)・乞胸(ごうむね)・猿飼(さるかい)と呼ばれる、いわゆる身分制度の中からも弾かれた人々の弱みを握り、悪事を働かせることでのさばってきた稲荷坂の祇右衛門が、3度目の斬首刑になったところからお話は始まります。
野ざらしにされた祇右衛門の生首を見たおぎんは、「まだ生きるつもりかえ」とつぶやき、主人公・百介の前から消えます。
おぎんの言ったとおり、しばらくして祇右衛門が生き返ったという噂がたちます。
「3度とも処刑された祇右衛門は、それぞれ本物だったはず・・・」
どうして死んだものが生き返るのか、一体どういうからくりになっているのか。
おぎんの話を百介から聞いた小股潜りの御行・又市は、先手を打って祇右衛門に関わる全てのことに決着をつけます。

詳細なからくりはご説明いたしませんが、結局のところ、この『稲荷坂の祇右衛門』というのは、『人』のことを指すのではなく、『仕組み』を指していたのです。
非人・乞胸・猿飼たちの弱みを握り、悪事を働かせる。例え最初の祇右衛門が死んだとしても、また投げ文でもして「お前の弱みを知っている、これをしなければ・・・」と脅せば、弱気者たちはそれをやってしまう。そうやって、頭をすげかえれば何度でも復活してくるのが『稲荷坂の祇右衛門』の正体でした。

お話の中では黒幕がきっちり成敗されますが、私が怖いと思ったのは、やはりこの『仕組み』に踊らされてしまう『人』でした。

『報道災害』の中でも触れられていますが、ことの根本には、日本の【記者クラブ】問題があります。何年もその開放を叫ばれてきた上杉さんと烏賀陽さんは、P.253の《当事者が存在しない暴走機関車》でこうおっしゃっています。
上杉氏:「10年前とまた同じことやんなきゃなんないの!?」(中略)
フリーランス側はずっとやっているけれど、記者クラブ側は人が入れ替わるんですよね。だから人が変わるたびに「あなたたちの先輩にはずーっと言ってきたの」とまた最初から説明しなきゃならない。(中略)
何度も何度も最初から説明する。しかも全社入れ替わりますからね。(中略)
烏賀陽氏:記者クラブ制度がいつまでも続いてる理由って「当事者が誰もいないから」だと思う。(中略)
記者クラブに「人格」なんかないんです。幹事社は2~3か月でクルクル変わるでしょ。しかも、各社の担当記者もローテーションで2年くらいでくるくる変わる。おまけに官庁側の広報担当者もくるくる変わる。(中略)
だから誰も「当事者」がいない。その上、新聞社にも永続的に「記者クラブとはこうだ」とマネージしてる人もひとりもいない。(中略)
上杉氏:記者クラブというのは、責任が誰にもないんですよね。だから中にいる人たちは誰もそのシステムを研究もしていないし、誰も実態を知らないんですよ。(以下略)

このパートに至るまでにも、記者クラブ制度の異常さについて語っていらっしゃいますので、より一層の気持ちの悪さを感じました。
この感覚が、『稲荷坂の祇右衛門』のシステムそのままだなと感じたのです。
『祇右衛門』の場合は、あからさまに悪事のためのシステムだし、嫌悪感というのはシンプルに理解していただけるかと思いますが、この『記者クラブ制度』も未必の故意のような、そういうものが感じられます。

私自身が、この『仕組み』の中に組み込まれてしまって、物事が見えなくなっていることって、本当にたくさんあると思います。
「流されていればいい」
という世の中ではなくなったことを改めて感じました。

うまく説明できませんでしたが、『報道災害【原発編】』も『巷説百物語』シリーズも両方お薦めいたします。
(出版社とかの回しもんではありまへん・・・《笑》)

『人の心』と『社会の仕組み』、折り合いをつけるのが大人なのかもしれないし、楽に生きるコツかもしれませんが、なかなか大人ぶるわけにもいかず、いささか困っております・・・《笑》

失礼します。
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