※この記事は、12月3日 【内容起こし】IWJ 百人百話 第18話 植木宏さん【前半】の続きです。

<36:30頃~>
 そういうことがあって、ちょっと僕も悩んだ時もあったんですよ。変な話ですけども、戦争が起こった時に、もし戦場だったら、男っていうのは女子供に「逃げろ」っていうのは当たり前だと思ったんです。普通に。

「でも、今回のは違うんだ?何が違うんだ?」
って本当に正直疑問に思ったんです。
「こんな危険だよ」って、皆それは知ってる。
「それで十分じゃん」
って思うんですけど、それでも避難させない・・・。できない・・・。
 僕の中には"?"しかなかったんですよね。
 いろいろ聞いていくと、結局経済だったりお金がなかったりとか、お父さんの話だと寂しいとか、1人で暮らしていけないとか、子供と離れるの嫌だとか、逆もありますよ、もちろん。お母さんが離れたくないと。お母さんが大丈夫って言ってるとか、いろんな人間の生々しいものが浮き彫りになってきたっていうのが、今回の本当にね、そういうやりとりしてちょっとショックだった部分大きかったんですけど、改めて冷静に見てみると、『人間性』が全部浮き彫りになっちゃったな。
 国の体制もそうですし、県もそして、親たちも福島県人も、それぞれの人間が『放射能』っていうキーワードをもとにして、『人間性』が全部綺麗に出てきちゃったなって思うくらい、いろんな人たちが思ってることっていうのが、
「あ、あなたこんなこと思ってたの?」
っていうのがいっぱい見てきたっていうのがありましたね。
 僕、その1通のお手紙っていうか、その一番ショックだったのと同時に、やっぱ福島県を何とかしようと頑張ってる人たちも居るんだということも同時に判ったんですね。
 だから一概に「逃げろ」だけでも、本当に残された人たち、経済的に本当にね、後輩自身も実は、今回の地震も含めて、今まで何回も会社がつぶれそうになっても立て直して、一生懸命やってきたの判ってて、なんとかこれから軌道に乗りそうだっていうときに、大借金を背負っちゃったんですよ。今回。
 もうかみさんにも言えないくらいうちも大変なんだって。

Q.借金っていうのを説明してください。
「3.11以降自分の会社、やっと軌道に乗ってきて回ってきたところで、地震が起きちゃって、それをきっかけに本当に経済的に会社も回らなくなってきちゃって、なんとか必死になって取り戻そうと思って頑張ってるのに、そうやって『風評被害』で不安を煽ることによって、どんどん流出しちゃったら、福島県どうなるんだ?経済もう疲弊しちゃって、潰れる企業増えちゃって、失業者が増えてって、本気でそれ望んでんですか?」
っていう話になっちゃったんですよ。
 彼の話を聞いて、呆気に取られちゃった。
 なんで呆気に取られちゃったかっていうと、【命と経済】っていう部分で、これが天秤の基準になってたんですよね。同時に進行するっていうことは本当に難しいことなんだなって。多分みんなここに残ってる人たち、特に会社を運営してる人たちっていうのは、どっちかっていうと多分経済っていうか、会社の運営のほうっていうか、損得を優先してる人たちが多い。当たり前の話かもしれないですけど。
 それによって、結局出られない家族、残らなきゃいけない従業員がどんどん増えちゃってるっていうのが当たり前ですけど、それによって雁字搦めになって出られないでいる人もたくさんいるんだなっていうのも、初めて気づいたんですよね。
 正直言って、苦しい・・・。
Q.彼の立場もわかる? 
 わかる。
 だから、その辺はちょっと冷静になったんですよね。その時。
 だから、3月以降この福島県に残ってて、一生懸命復興のために頑張ってる人たちのために、何ができるんだろうと思うと、【無い】ってこと。僕の中に、僕ができることって何だろうっていうと、除染とか変な話ですけど、気休め程度くらいしか無い・・・っていうのが正直なとこなんです。
 これ、本当にね・・・、答え無いんです。今は。
 命優先が100%になっちゃってる僕としては、『経済よりも命だろ』。
 子供たちが死んじゃったら、将来の福島もないんじゃない?
 「今さえ良ければいい」とか、「今さえ乗り越えればいい」っていう問題じゃないんじゃない?
 何十年、何百年ともしかしたら続くかもしれない、この放射能の影響を目先で考えちゃってる人が多いんだなって思う・・・。
 これがはっきりと見えないんですよね。未来がどうなるかっていうのは、僕も判らないんです。本当に。
 この部分が一番苦しいです。
 ただ、今はできるだけ避難の時期だ。福島県を捨てるわけじゃないっていうのは、彼とはその後メールのやり取りもしてないんですけども、結局、難しいのは、難しいっていうか、彼がどう考えてるのか僕は知りたいんですね。
 結局「今さえ良ければいい」と思って、経済を立て直そうと思って考えて頑張ってるのか、その本音の部分はやりつくしてないんですよ。本当に放射能は安全だと思ってるのか、それは見ないことにして経済復興しようとしてるのか、わからないんですね。そこが判るとまた話し合いができるのかなと思うんですけど、どう見ても今の状況だと、彼のツイッターとか見てても、全くそういうことに触れないんですよね。多分経済優先で、あとは福島の経済を活性化させたいっていうのが本音なんだなって。
 それで彼はものすごい頭いいんですよ。いろんなこと知ってて、放射能のこともとことん研究してというか、知り尽くしてるはずなのに、そういう情報は一切ださないんですね。
 かといって「ランチなう」とかね、そっちのほうばっかなんですよ。どうでもいい情報。なんでもっと「予防しよう」とかやんないのかな?っていうのが不思議なんですよね。
 そんな中で、結局僕は「出ていけ。福島県に居ると邪魔だ」と言われてますけど、僕だけじゃないじゃないですか。情報を出すっていうのは、もう福島県内のお母さん方もそうですし、いっぱいいるんですよね。
 そういう情報をとにかく皆で出し合ってる、それ自体を『ネガティブキャンペーンやめろ』って、その後輩は片っ端から『ネガティブキャンペーン』やってる人に対して、言い続けてるらしいんですよね。
 でも、抑えきれないと思うんですよ。だんだん最初は噂話から、現実になってきて、その現実が見えてきて尚更情報発信してるわけですから、どんどん広がってるのはありますよね。不安がね。
 そうなったらどうなるかっていったら、結局、ちゃんとした情報、国から出てない、ちゃんと公表しなきゃ尚更不安だから、やっぱり不安がどんどん大きくなると、どんどん県外へ流出していくんですよね。そうなってきたとき、結果的には、「もう福島県に住みたくない」っていう人がどんどん増える一方で、経済なんてのも成り立たなくなってくんじゃないかなって、僕は思ってるんですけど、そこを見据えてちゃんと彼は話してるのか、そこを議論したいんですよね。議論したいっていうか、彼がどう思ってるのか聞きたいんですけども。
 まぁ今のところ連絡は取れないですね。取っても僕もゆっくり話する時間もないし、変な話ですけど、そこまで言うんだったら本当にね、2年後3年後、本当に何もなかったときに、ゆっくりと時間作ってお話したいなと思います。それまでは多分平行線だと思うんで、無駄な時間使うよりは、また5年後でもいいから、時間をとってお話する機会があればいいなと思ってます。
 あの、とにかく情報、ツイッターとかブログで僕、バンバン情報出してるじゃないですか?
 で、変な話ですけど、彼が何で僕をターゲットにしたかっていうと、僕大した文章じゃないんですよ。文章能力もそんなに高いわけじゃないし、詳しく書いてるわけでもないし、一言、二言、自分の思ってることを書いて、あとは転送したりとかしてるくらいなんですけども、彼から言わせると、今一番、なんていうんですか、活動してて目立つ存在で、影響力あるのが僕だと思ってるんですね。福島県内の中でも。
 僕が出すことによって、それがさらに広がっちゃうとか、恐れてるらしいんですよ。
 だから、例えば変な話ですけど、僕をじゃあ情報を出さないようにして県外に逃げたって言っても、これだけね、福島県内の中で現実がどんどん発信されてる中で、片っ端から除外することもできないし、むしろ県外に逃げた人たちも、福島県に対して、友人とか知人とかにもどんどん情報を送ってる最中なんですよね。
 そうするともう情報を遮断したり隠ぺいするってことは、多分不可能に近いと思うんですね。それを一生懸命叩く。叩くっていうのも当然できないし、そういう意味では、僕、情報っていうか、事実ですよね。事実っていうのは、広がる一方だし防ぎきれないと思うんですよ。そういう中で本当にね、一生懸命『ネガティブキャンペーン』を抑えようとしても、それは無駄だと思いますよね。
 さっきちょっとお話したブログでやり取りした中で、いろんなお母さん方が支持してくれた。逆に彼自身がそれを書いたことで、福島の『ネガティブキャンペーン』を彼自身がやっちゃった部分があるんですよね。
 逆に僕の方が得しちゃったっていうか、ちゃんと信頼してもらった。やりとりの怒りのメールも含めてですけど、情報を出したことによって、同情っていうことじゃないですけど、僕が思ってることも、彼が思ってることもよく判った。
 でも、彼は攻撃的なメールで来たんで、逆に彼に対して福島県人はこう思ってるんだっていうのに対して、県外の人たちも県内の人たちも、逆にその人自身がその『ネガティブキャンペーン』をはっちゃってるっていうふうに認識してる人たちも多いんですよね。
 そういう意味では本当に逆効果だったんじゃないかなってね。
 だから、伝えるっていうのは、攻撃的に書いちゃうと伝わんなかったり逆に敵作っちゃうってことが、本当にたくさんあるってことを彼知らないのかな?っていうかね。
 表現の仕方って本当に難しいなって思いましたね。その時。
Q.そのほか、周囲で「葛藤」は何かありましたか?
 結局離婚しちゃった家族も、何人か知ってますけども、そこも浮き彫りなんです。『人間性』が浮き彫りになっちゃって、放射能のことで当然ですけど、夫婦間で話しますよね。その時に
「旦那ってのは何も考えてないんだな。この危機的な状況の中で、私たちを守るっていう発想が無いんだな」
っていうのがあって、愕然としちゃって離婚しちゃった家族も知ってますし、一応職場の人なんですけども、避難を促して、
「今こういう状況だから、小さいお子さんいるでしょ?僕は一時避難でもいいから、とにかく外に行った方がいいよ。少しでも安全なとこに行った方がいいよ」
ってお話したら、
「できないんです」
っていうんですよ。
「何で?」
って言ったら、
「旦那が・・・。うちの旦那『大丈夫だから』『国も言ってるし、県も言ってるし、何もないんだから』『大丈夫なんだから行くな』って話になった」
って、そこで初めてちょっとね、「え!?」って思ったらしいんです。
「私たちを守ってくれるんじゃないんだ?逃げろって言ってくれるんじゃないんだ?」
そっちをずっと信じ込んじゃって、話がずっと平行線になっちゃって、話すとケンカになる。話せばケンカになる。毎晩そういうのが続いて、結局
「話しても無駄だ、一緒に居ても、子供たちの将来・未来が不安でしょうがない。」
 もう腹くくって離婚しちゃった奥さんもいらっしゃいますよね。
 非常に全部じゃないんですけど、聞いてる範囲では、奥さんっていうかお母さんっていうのは、やっぱ【命の視点】で考えてる人が多いですね。
 やっぱり自分たちの子供、自分がお腹を痛めて産んだ子供、将来的に何かあっちゃいけないっていうのが、やっぱ【命の視点】で考えるお母さん。
 お父さんっていうのは、話聞いてる中では、どっちかっていうと【無関心】の人が多く聞いてますね。【無関心】。「大丈夫」何も調べてないくせにテレビの情報を鵜呑みにしちゃって「大丈夫」「県もこうやって発表してる」「数値も低いだろう」って。テレビのテロップに流れてる情報だけがそのまま鵜呑みにしちゃってる部分が多くて、テレビに出てくる人たち、皆『安心・安全・大丈夫』じゃないですか。それをそのまま受け取ってる人たちが多くて、だからスイッチ切っちゃってるんですよね。それ以外にないんですよね。
 かといって、自分で逆のこと、危険なことを調べるかってことも特にしてないし、「皆大丈夫っつってるから、大丈夫だよ」みたいな、流されてるっていうのがあるのかな?ってちょっと思いますけどね。
Q.父親との葛藤は?
 変な話、うちのおやじっていうのは、俺と全く真逆っていうか、多分ね、一般的なお父さんに近いのかなって思うんですけど、テレビ見て文句言ってるんですよ。
「政府が悪い。国が悪い。県が悪い。なんで皆うごかねぇんだ?アクションおこさねぇんだ?」
って、ずっといろいろ言ってるんです。「誰が悪いんだ、政治家が悪いんだ」とかって言ってんですけど、
「それをそのままそっくり県のとことかどこでもいいから、対策本部でもいいから、そのままそっくり言ってくれ。それを言ってくれたことによって、変わるかもしれない。それが一人じゃなくていっぱい増えてったら変わってくんだよ」
っていつも言ってるんですね。でも、
「なんで俺が言うんだ?俺に人の意見とか、そんなのいちいち言ってくことねぇべ?!」
ってケンカになっちゃうんです。
 要するに、愚痴なんですよ。
 なんでもそうなんですよ。愚痴だけ並べても、世の中って変わらないじゃないですか。それをテレビに向かったって変わらないですよね。
 それを「具体的に行動おこさないと変わってかない」って何回説明しても、わかんないんです。
 じゃあパレードとか反対アクションとかあったとき、
「お父さん、一緒に行かない?行けば1人また増えるし、こういうことを想ってるんだよって意思表示をそこで言えばいいだけなんだよ。なんかで演説しろとかそういうわけじゃなくて、参加するだけでもいいじゃん。一緒に行こうよ」
って言っても、
「そんなの行くか!」
みたいな感じなんですよね。
 言いっぱなしなんです。
 要するになんでもそうです、愚痴。
 多分、福島県のよく聞くのは、そこなんですよ。
 結局、その場でテレビに向かって思ってること、愚痴をその場だけで終わらせちゃって、次に「じゃああなた何やるの?」っていうと、それは絶対行動しない。言わない。行動しない。
 それは多分ほとんどの人なんじゃないかなと思います。
 「あぁなんだよね。こうなんだよね。あいつが悪いんだよね。学校が悪いんだよね。」
 みんな人のせいにしちゃってるだけで終わってる。
 ツイッターとかブログもそうですけど、ツイッターって僕は、変な話ですけど、情報を得る参考っていうふうにしか思ってないんですよ。
 そこで、捌け口としてバーッと書いたって、世の中変わんないと思ってます。
 それよりも、そこの中で得た情報から、具体的にどういうアクションを起こしていくんだ?どういう意思表示をしていくんだ?っていう部分からやんないと、単なる捌け口で終わっちゃってるような気がするんですよね。
 だから、うちのおやじ見てると、本当に判りやすいっていうか、
「あ、これが(変な話、福島県の人っていうのも変ですけど)日本人の典型的な例なんじゃないかな」
っていうのが最近気づいたんですよね。
 今は本当に今日も、場が悪い空気だったんですよ。
「もう気分悪いから。早く行っちまえ」
みたいな感じで見送られたっていうか。
Q.お父さんと?
 そうですね。口も聞かないっていうかね。
Q.どんなぶつかり合いだったんですか?
 いや、とにかくね、
「そこまで愚痴言ったりいろいろするんだったら、電話一本でいいから、県に言ったり政治家に言ったり、直接言ってくれ」
「そんなんできるわけねぇだろ!」
ってケンカになっちゃうわけです。。勇気が無いんだと思います。単にここで言うのが精いっぱい、愚痴を言うのが精一杯なんだと思う。具体的に行動に移したり、アクションを起こすことに対して、ものすごい心が弱いっていうか勇気が無いっていうのが、まぁうちのおやじなのかなーなんて思って。
 声を挙げるということが苦手なんでしょうか、なんでなんでしょうかね?不思議なんですけどね。
Q.いろいろなものが見えてきた中で、他に何か気が付かれたことは?
 うーん。気が付いたこと・・・。
 気が付いたこと・・・。
 これ、ぶっちゃけ話でもいいんですかね。
 僕、ほんとね、気が付いたことっていうのは、一つは【皆が被害者で皆が加害者だった】ってことに最近気づいたんですね。
 本当に国が悪い、政治が悪い、自治体が悪いだけではない。
 じゃあそういうふうにさせた原因は、政治家が悪い。
 じゃあ政治家を選んだのは誰?
 市民なんですよね。
 皆が願ったとおりのことが、今原因と結果で表れてるだけなんで、僕はそのことを最近気づくようになってきたんです。
 だから、そういう意味では・・・、東電だけが悪いわけではない。本当に僕たちの意識自体が、選んできたことが、無知・無関心だったこと、無責任だったことが、今全部出てきちゃってるんじゃないかなって思ってるんです。
 そこをちゃんと冷静に判断しながらやってかないと、いつまでたっても変わんないんじゃないかな。今ちょうど選挙が始まってる中で、じゃあ皆政治家の人たち、候補者たちはどんなこと考えてるんだろう?ということをまず聞く。自分の一票を本当にその人に投じるかどうか、何が本質なのかっていうのをちゃんと見極めて、一票かもしれないですけど、「一つ一つ変えてくしかないな」っていうのは思ったんですね。
 皆、なんていうのかな。
 【無力感】でいっぱいなんですよ。
 福島県人だけじゃないかもしれないですけど、【無力感】なんですよね。
 やっても無駄。
 言っても無駄。
 何やっても無駄。
 そういう人たちがあまりにも多いんだなっていうのが、最近つくづく思ったんですね。
 でも、僕たちは違うな。
 【無力】じゃなくて、本当は【微力】なんだな。
 その【微力】なんだっていうことに気付いてほしんです。まずは。
 思ったんですよね。
 僕たちは【微力】だけなんだ。
 例えば、1人が僕たちみたいに活動したりとか、1人が100のことやるんじゃなくて、100人が本当に1歩動かしただけで、世の中って大きく変わってくっていうか、変化していくって思ってんですけど、その1歩が踏み出せない人たちが本当にいっぱい居るんだな。
 でも、そこをどうやってこうアプローチして伝えてって、行動に移すまでっていうのを伝え続けるかっていうのは、非常に今僕の中では、悩みっていうのは変ですね。どういう心に届くメッセージを発していったらいいのか・・・。
 そこが一番・・・伝えるって難しさですかね。
 一番感じてます。
Q.最後に、ご家族の心境の変化についてお聞かせください。
 えー、5月、そうですね、4月、5月とうちのかみさんと散々ケンカしたんですね。その原因は、とにかく俺は
「1日もはやく1秒もはやく、この福島県から避難してくれ」
って話をずーっと続けてたんですね。
「どこでもいいから、いっぱい今だったら受け入れ態勢が出来てるから、旅館でもいいし、行ってくれ」
って話したんですけども、
「急には引っ越しできない。荷物もまとまんないし、子供たちのこともあるし、保育園のこともあるんで、出られない」
「どっちが大事なの?」
っていう押し問答がずっと続いてたんですよ。
 で、彼女っていうか、うちのかみさんいわく、
「許容範囲を自分なりに計算した。勉強した。」
 僕が言ってることは、理論的とかデータ的には話せないんですよ、そういう部分で伝わらないっていう部分で、
「僕が言ってることは、全然納得できない。理解できないっていうか、理論的にもっと話してくれ。じゃあどこまでってあんたは判ってるの?」
って言われて、「怖い、危ない」くらいしか確かに無かったので、そこはだけど、うまく伝えきれなかったっていうか、それまで僕もちょっとね、正直悩みました。
 でも、喧々諤々して、本当にね、離婚寸前までいったんですよ。
 とにかく俺も怒鳴って言ったこともあるし、
「もし子供に何かあった時に、俺、本当にゆるさねぇぞ!」
ってことを言ったときに、うちのかみさんなんかもやっぱショックだったと思うし、僕と一緒にいたら、ケンカがずーっと続くと思ったと思うし。
 そんな中で、実際引っ越してみて、生活始まってみると、あまりにも松本市っていうか長野県が良くて、彼女のツイッター、日記、電話で聞くと、
「もう幸せでたまんない」
って言うんですね。そのギャップっていうか、こっちに居た時のピリピリ感とは真逆で、
「毎日が楽しくてしょうがない」
っていうんで。
 ただうちのかみさん、偉いなと思ったのは、「長野県に行って自分たち助かったからいいや」じゃないんですよね。
 あっちから発信できるものを、今一生懸命ブログ書いてくれて、避難先情報一覧をずーっと書いてくれて、
「こうやって問い合わせしたらいいよ」
とか、一つのブログにまとめて発信してくれてたり、今引っ越したというか、福島県の人たち同士で繋がって、『自分たちで出来ることやろうよ』っていう動きを今作ってるんですよね。そういうなかで、いつでもこっちに来られる状況とか、
「1人でこっちに来て寂しい思いしてるお母さんとかに、一緒に生きていこうよっていうネットワークを作っていきたい」
っていう話をしてたんで、そういう意味で、新しい人生、新しい生活が始まった仲で、全てが家族にとってはハッピーに今動いてるかな。
 子供たちも本当にね、ビクビクしないで元気に生きてるし、何の不安もなく、思いっきり遊べてるし、それだけでも僕は安心するし。
 そういう意味では変な話、夫婦間の会話っていうのも、ケンカばっかりしてたときは、電話もしなかったしメールもしなかったんですけど、今は毎日お互いに写真とって、「こんなことやってるよー」ってできるようになってきたし。<笑>
Q.仲直り?
 そうですよね。
 仲直りはしたかなって思ってます

Q.ご自身はなぜ福島に留まるのですか?
 それ自体が不思議だったんですよ。
「自分たちが逃げて、避難して、安心だからいいや、新しい生活始めよう」
っていう方も多分いらっしゃると思うんですけど、僕はできなかったっていうのは、やっぱり僕は福島県出身だし、僕は福島に育てられた人間だし、この福島っていう土地を愛してるんですよね。友達もいっぱいいるし、育ててくれた先生も、諸先輩方たくさんいる中で、友達もいっぱいいますよね。
 その友達たちを切ってまでっていうか、自分たちの幸せだけでいいのかな?自分たちの家族が助かればいいのかな?もしかしたら、情報が入ってないだけで、逃げられない人たちも居るだろうし、友達だけじゃないんですよね。いろんなお母さま方、子供達。まぁ皆ですよね。福島県人。
『知らないだけなのかもしれない。もしかしたら、僕の一言で、僕が言ったら、きっかけを作ることで、その人たちが助かるかもしれない。』
 そう思ったら、僕が今できること。いつまで続くか判らないですけれども、できることって言ったら、それしかないかなって。
 一番最初に言ったように、僕がこの活動を始めた理由の一つは、本当に子供たちが悲しむ姿、苦しむ姿、絶対に見たくない。それだけなんです。
 理屈抜きにそれは嫌だ。
 それを悲しむ家族、お母さんの泣いてる姿とか、絶対見たくない。
 それはアフガニスタンで、僕はいっぱい見てきたんですよ。いろんな苦しんでる子供達、やせっぽっちで死んでいく子供。そのお母さんの嘆きっていうのは、本当に耐えがたいですよね。
 それが今度アフガニスタンという国とかじゃなくて、自分たちの国で、自分たちの住んでる故郷でそれが起こると思ったら、そんなの理屈あんのかな?ってね。皆で子供たちを、命を守ろうっていうのに理屈なんかないですよね。
 もう、本能なのかもしんないですけど、守んなきゃ。皆で命を守んなきゃ。それだけですよね。想いは。
 だから、いまちょっと家族と離れ離れになって、さびしい思いはお互いにしてるとこあります。
 子供も本当、突然ですけど、僕は子供にははっきり言ったんですね。
「おとうちゃんね、福島に戻るよ。戻って頑張ってくる。」
「何頑張るの?」
「ケンちゃんね、『ばい菌マン』いっぱい吸っちゃったり浴びちゃったりすると、イタイイタイになって苦しいよね。お友達がそうだったらどう?」
「やだ!」
「その一人でもお友達がイタイイタイになんないように、おとうちゃんは皆助けてくる。そして、ばい菌マンやっつけてくる。だから、おとうちゃん、ちょっと福島に帰って、いっぱいね、頑張ってくるから、ケンちゃん、ちょっとお父さんとは離れ離れになるの、本当に寂しいかもしれないけど、ごめんね」
って言って、今こっちに来てるんですよね。
 子供っていうかうちの息子も、
「わかった。おとうちゃん頑張ってきてね。いっぱい助けてきてね」
って励ましてくれるわけですよ。健気だなとおもいつつも、先日、うちのかみさんから電話来て、
「おとうさん、やっぱ一回帰ってきて。」
「どうしたの?」
「夜中、突然長男のほうが、『おとうちゃん何でいないの?おとうちゃん、いつ帰ってくるの?』って泣いてたんだ」
 ずーっとやっぱ子供は子供で、離れ離れになってるおとうちゃんを我慢強く辛抱してたんだな。ある時ふっと寂しさが出てきたときに、
「やっぱおとうちゃんに会いたい」
って溢れてきちゃったんだな。
 だけど、本当にその天秤もほんとに苦しいんですよ。
「本当だったら、長野県に行って、家族と水入らずで新しい生活を始めたら、どんなに楽だろう」
って思うことありますよね。
 でもそれ以上に上まわってるのは、1人でも犠牲者を絶対出したくない。
 その想いだけです。
 ただ、今僕にできることは、何でもやろうって思ってます。
 ・・・。
 そうですね。
 辛いですね。なかなかね。<笑>
 たまにスカイプとかね、電話してお話することあるんですけど、もうしゃべりたいこといっぱいあるんですよね。
「おとうちゃんね、今日こんなことした、あんなことした」
って。あくまでも画面なんですよね。抱きしめたり触れ合ったりっていうのはできないっていうのは、だからちょっとね、もうちょっとしたら、やっぱ家族に会いに行ってこようかな<笑>
 ・・・。
 悔しいっすね。<涙されてます>
 まさかその難民助けてきた僕が、難民になると思わなかったし、まさか福島県の人たち・・・難民ですから、正直言って。うちの家族も難民ですから。
 なると思わなかったですしね。
 それが本当に、人間って本当に不思議だなって。
「アフガニスタン、大変だね」
っていうけど、皆他人事なんです。ある意味ね。それは仕方ないことだと思うんですけど、気づきって、自分に振りかかって初めてわかるんだなって。
 原発って大変だっていうことはわかってた。どれだけ大変かって、あのチェルノブイリの事故が起きてね、子供たちとお母さん方のああいう映像っていうのは、僕も見てたんですけど、どこか他人事だったんだなって。
 自分たちの身にふりかかって、初めてその恐ろしさとか現実がわかって・・・後悔ですよね。
 ・・・。
 もう後悔はしたくないですね。
 僕が活動するきっかけになったのが、あるとき、ネットワーク地球村の高木さんの話を聞いて感動して泣いたんですよ。その生き様っていうか、1人でもやり続けるっていう姿に感動して。地球環境問題っていうかね、地球温暖化にしても何にしても、あの時は絶望的だなってずっと思ってたんです。でもその時にその話をきいて終わった時に、僕はやっぱり無理って思ったんですよ。そんな地球のこととか未来のこととか、そんなの絶対無理って思ったときに、無理って言った瞬間に、頭に不思議な話じゃないんですけど、ピーンって浮かんだ映像っていうのがあったんですよ。
 それが未来の子供なんですよね。自分の子供だったんですよ。未来の子供から、
「おとうちゃんはこの現実を知ったんだよね。その現実を知ったおとうちゃんは、僕たちに何してくれるの?」
ピーンってきちゃったんですよね。
 一旦背中向けたものに対して、ムクッて向き合うことに決めて、それが今多分現実なんだなっていうか、現実に起こっちゃったんだなって。
 子供たちはしっかりと大人の背中を見てると思うんですよ。
 こういう状況の中で、何が起こってて、子供達って知らないようで知ってると思います。
 親の態度も姿勢も、全部見てると思うんです。
 今大人たちはどんなことしてくれるんだろう?子供たちはしっかりと見てんだなと思います。
 そう思うとね、
「おぉ!見てろよ!!」
ってこの間も保育園に行ったときに、
「大人の背中、見せてやる!しっかり見てろよ!頑張るからな!!」 
ってね<笑>言ってたんですけど。
 本当に一人ひとりができることやって、大人の背中を見せる、それが僕がただ一歩の希望かなと思ってますよね。<笑>
 はい。そういうこと思ってます。
【以上】


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