※この記事は、
【脆性(ガラス化)について】
10月26日 【動画・内容起こし】福島第一原発設計技師(田中三彦氏、渡辺敦雄氏、後藤政志氏):地震の揺れで機能喪失を指摘【その①】
10月3日 東大・井野名誉教授:玄海原発の圧力容器の材質不均一が脆性温度に影響か・・・?と指摘
9月4日 細野大臣:「原発の寿命はストレステストなど結果をもとに科学的に判断」「危険性は個々の発電所によって違う」【結局何も変えない?】
8月22日 【CNIC動画追記】四国電力:愛媛県中村知事を訪問【伊方原発1号機の炉壁脆性検査を前倒しへ】
7月4日 小出氏:玄海原発と圧力容器の老朽化(ガラス化)@たねまき
【野田首相】
10月23日 野田首相:フランスと共同宣言、国際緊急チーム検討「最高水準の安全性と除染協力を促進」
10月18日 枝野経産相:IEA閣僚理事会で「原発の安全性を世界最高水準へ」
9月20日 【動画あり】野田首相のインタビュー@WSJをご紹介【野田首相の方針】
9月2日 野田新内閣発足:各紙の記事を比較【各紙が何を重視しているか】
【アメリカの寿命認可】
9月8日 世界の原発老朽化事情@WSJ【米国、認可期間を80年を調査ですと!?】などに関連しています。

20111129 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章


【以下、お時間のない方のために内容を起こしています。ご参考まで】

まず原発の寿命というものについて、今日は教えてください。
よく原発の寿命は30年或いは40年という話を聞きますけど、これはどうして30年、40年という数字が出てくるんでしょう?
(小出氏)はい。原子力発電所というのは機械ですね。たくさんの部品から成り立っているわけで、ポンプもあれば配管もあるし、様々なものが組み合わされてできています。
 そして機械というのは、たいていみなさんの想定してる機械もそうですけれども、どこかが壊れれば交換するということで、何がしか寿命を長くできるというものですよね。普通のものでも。
 ただし、原発の場合には、絶対に交換できない部品があるのです。
 それが『原子炉圧力容器』と私たちが呼んでいるいわゆる原子炉の本体というか、圧力なべそのものですね。それは、もう猛烈な放射能のかたまりですし、大きいものでは1000トンもあるような超重たいもので、それだけは交換できない。
 それ一体何年もつのだろうか?ということを一番始めに考えました。
 鋼鉄というのは、普通皆さんわかっていただけると思うけど、叩いても割れないし、ちょっとくらいへこんだり、トントン叩いていけば伸びるという、金属は『延性』という伸びる性質というのを持ってるものなんですね。
 一方ガラスというのは、『脆性』と言いまして、トンカチで叩いたらパリッと割れるという・・・

『脆い』と書く、脆弱の脆で・・・。
(小出氏)そうです。
 でも、金属もですね、普通は延性なのですが、温度をどんどん冷たくしていくと、ある温度より冷たくなると脆性になると・・・

へぇー!ガラスみたいに叩いたら割れるような脆いものになってしまう?
(小出氏)そうです。零下何十度という状態にしないとならないのですが、金属も冷やしていくと、いつか脆性になってしまうという、そういう性質を持っています。
 ただし、マイナス何十度というのは、普通は無い条件なので、皆さん思っているわけですが、その金属が中性子を浴びていると、脆性になる温度がどんどんドンドン高くなってくるのです。
 だから、運転をすればするだけ、脆くなる温度が常温に近づいて来てしまう。
『いったいそれが何時になったら許すことが出来ないほどの、普通の温度でガラスのようになってしまうんだ?』
ということを当初から考えたわけです。それで
『せいぜい30年か40年中性子に浴びせ続ければ、普通の温度で鋼鉄がガラスのような性質になってしまうだろう』
と予測をたてまして、原子力発電所の寿命は30年か40年だとしたわけですね。

そうなんですか。
しかし、今回事故を起こした福島第一原発の場合は、1号機は運転スタートしてから、まさに40年経ったとき、71年3月のスタートですから、ちょうど40年で事故が起きたんですよね?
(小出氏)ただし、圧力容器がガラスのようにパリッと割れたような事故ではありませんでしたね。今回も。どのくらいの温度でパリッと割れてしまうだろうか?ということは、試験片という金属を圧力容器の中に入れておいて・・・

小さな欠片ということですね?
(小出氏)そうです。運転をするごとに何年かごとに、その試験片を検査して、
「何℃になればガラスのように割れてしまうか?」
ということをテストし続けてきたんです。
 それで、
「40年はまだ大丈夫だろう」
ということで、未だに運転をし続けてきたということなのですね。

うーん。
ただ、これまでですね、30年経ったら、一旦これからどういうふうに運転していくかという計画書を電力会社が出して、それを国が10年延長するシステムだったそうで・・・
(小出氏)はい。それを認めて40年までは許してきたのですね。
 それでも、敦賀もそうですし、美浜もそうですが、40年経ってもまだ余裕がありそうだということで、また運転を国が認めるということを国がしてきたわけです。

福島第一原発の場合はですね、40年ちょうど経ったのが、この3月だったわけですが、その1月前、2月7日に『あと10年運転していいよ』という意味の認可が下りていたんですって?
(小出氏)そうです。

ええー!
私はこれ、知りませんでした。
(小出氏)福島の私たち、脆性遷移温度というのですけれども、延性の状態から脆性になって変わってしまう温度という・・・

脆くなってしまう温度ですね?
(小出氏)その温度の記録をずっと見てきた上で、
「あとまぁ何年かやってもいいだろう」
というそういう判断をしたということなんですね。
 ただし、この脆性遷移温度というのは、原子力発電所ごとにかなり違っているのです。低い温度にしなければなかなか割れないというような原子炉もありますし、普通の温度でももうガラスのような性質になってしまっているという原子炉も、実はあるのです。
一番危ないのが玄海1号炉という原子炉ですけれども・・・。

九州電力の玄海原発の1号炉ですね?
(小出氏)そうです。はい。それは脆性遷移温度が九十何℃・・・

九十何℃なんて、え?あの私らがお鍋でお湯沸かして100℃になる、あの九十何℃?
(小出氏)そうです。100℃を超えていれば延性なんですけれども、それよりも冷たくしてしまうと鋼鉄がガラスのような性質に、既にもうなってしまっているというという状態に玄海はなっています。

(平野解説員)これは、先生、ほかの先生も含めて、やっぱり危険性を指摘してるんですけども、原子力安全・保安院とか九電とかはそのまま延長ってものを押し切ろうとしてるわけですよね。
 傍から見ると、客観的な第三者機関ですよね。推進する機関・団体じゃなくて、公平に危ないということを指摘する組織っていうものが、日本に無いわけですよね。
(小出氏)ありません。

結局、電力会社が自分で
「まだまだ行けますよ」
という説明を国にあげて、国の経産省の原子力安全・保安院が
「いいですよ」
と認可するという、そういうシステムなんですね?
(小出氏)そうです。

それは、続けたい人ばっかりが、OK出してるようなもんですよね。
(平野解説員)そういうことを考えると、電力会社は絶対続けたいですよね。
(小出氏)もちろんです。もう既に作ってしまった原子炉があるのですから、少しでも長く使いたいと思うわけですね。
 そして電力会社の言い分で言えば、
「運転中の圧力容器の温度は330何℃になってるので、充分延性の状態なので大丈夫だ」
というのですね。
 しかし、何かトラブルがあって、非常用炉心冷却系の水をいれるとかですね、原子炉を停止させて、冷温停止にしようとすれば、どんどん冷やしていかなければいけないし、冷たくしなければいけないのですね。そうすると今度は割れてしまうという危険を抱えてしまうわけで、これは『どっちに行くにも恐ろしい』という、そういう状態になってるんですね。
 だからそれをどこまで受け入れるのか?という判断の問題です。

でも、今回原発の寿命について会合を開いているのは、今までお墨付きを与えてきた原子力安全・保安院なんですよね?
どうやって見直すつもりですかね?それ?
(平野解説員)政府は来年春に、公平な第三者機関の設置を目指すといったことをいってますけど、今の流れだとあまりなんかそういうことについて、熱心にやってる気配はないように思うんですけれども、どうですか?
(小出氏)残念ながら、私もそう見えます。
日本の国は相変わらず原子力を推進したいと言ってるわけですし、海外にも輸出をしたいというようなことをいってるわけですので、安全を装いたいということで進んでるのかな、と私には見えます。

しかしですね、野田総理が就任会見の時、こうおっしゃったんですよ。
『寿命が来た原発は廃炉にしていく』
と、そういうことをおっしゃったんですよ。
だから、私、『寿命がきた』ということは、30年、40年経っている原子炉は廃炉になっていくのかと、素直な私は受け取ったんですね?
(小出氏)はい。残念ながらそれは、素直すぎるのであって・・・。

あほですね・・・。
(小出氏)はい。ただ、例えば米国でももともとは40年と言っていたものが、次々と寿命が、当初の寿命がきてしまいまして、それを米国の原子力規制委員会というところが、20年間延長するという許可を次々と出しているという状態・・・

『20年大丈夫』なんていう許可を、次々アメリカが出してる!?
(小出氏)はい。そうです。

ということはですよ、今原子力安全・保安院のもとでね、こういう寿命について考えましょうという会合が始まりましたけど、もしかしたら同じように
『60年大丈夫です』
というような・・・
(平野解説員)延長前提の部門を作るための会合かもわかりませんね。

(小出氏)もちろんそうなわけだし、野田さんは『寿命が来た原発は廃炉にする』と言ったけれども、実は寿命が来ないのですね。まだまだ。

その寿命の定義が、私なんか素直な人間が思ってるのとは違うんですね!?
(小出氏)そうです。

『寿命は来ない』ということになるやもしれないと!
(小出氏)そうです。そうさせようとしてるのですね。

はぁーーー!!!
もうニュースを一方的に聞いているだけではですね、全く私が予想しているものとは真実は違っているようでございます。
(小出氏)はい・・・。

いやー・・・、わかりませんね。
(平野解説員)先生、それと玄海原発は、関西にももし万が一のことがあると、ものすごい影響があるんですよね?
(小出氏)そうですね。やはり玄海は西風が卓越風ですので、事故が起きれば中国地方を通って、関西・近畿圏まで放射能が飛んでくるということになるだろうと思います。

所謂圧力釜がふっとんでしまう恐れを一番高く抱えてるのが玄海原発・・・?
(小出氏)はい。おっしゃるとおり。
(平野解説員)だから、吸収の原発という、なんか関西から見て他人事っていう感じじゃないんですもんね。本当に・・・。

それとね、この2月7日に「あと10年運転していいと、福島第一原発に許可が下りていた」というのも、もしもその時に寿命の話がもっと厳密な形で進めてたら、もしかしたら事故を防げたんじゃないだろうか?なんてことも私は思うんですけれども。小出さん、それも甘いですか?
(小出氏)<苦笑>まぁ、もともとその寿命の延長をさせるというだけに、審査がされてきたわけですから、延長を認めないということは私には考えられませんし、今回の事故は、いずれにしても圧力容器が割れるということとは関係なく、発電所のブラックアウトですので、新品ピカピカの原子炉でも、いずれにせよ壊れたと思います。

はい、そこですね。
老朽化していなくても、新品でも壊れたというところが、また大変大きな事実なわけですね。
(小出氏)はい。

どうもありがとうございました。
(小出氏)ありがとうございました。
【以上】

【関連記事】
福島事故、老朽化の影響検討=他原発の安全性評価も-意見聴取会初会合・保安院
時事通信(2011/11/29-10:44)
 東京電力福島第1原発事故で、経済産業省原子力安全・保安院は29日、運転開始から40年を迎えた同原発1号機などの老朽化が事故の拡大に影響を与えたかどうかなどを専門家が検討する意見聴取会の初会合を開いた。
 1971年3月に運転を開始した1号機は事故直後に40年目を迎えており、2、3号機も30年を越えている。聴取会は、老朽化が事故に与えた影響などについて、年明けまでに報告をまとめる
 保安院は30年を越えた原発について、経年劣化の影響を評価し、10年間の運転延長を認可しているが、聴取会は従来の評価の在り方も検討。原子炉などの部材が長期間中性子を浴びてもろくなる性質(中性子照射脆化=ぜいか=)などの知見を評価にどう反映するかも議論する。
 運転開始から30年を迎える四国電力伊方原発2号機(愛媛県伊方町)、東電福島第2原発1号機、同40年を迎える関西電力美浜原発2号機(福井県美浜町)の運転延長可否についても、経年劣化を踏まえた安全性評価を行う。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011112900256

老朽化原発、安全性評価で初会合…保安院
(2011年11月29日12時03分 読売新聞)
 経済産業省原子力安全・保安院は29日、運転開始から30年を超す原子力発電所の安全性を評価する、専門家の意見聴取会の初会合を開いた。
 年明けをメドに東京電力福島第一原発の事故に設備の老朽化が影響していないかどうか検証する。
 長期間運転した原発に国民や立地自治体が不安感を抱いており、初会合で保安院は、現時点での知見に基づき検証する方針を示した。検証は福島第一原発から始める。保安院側から「劣化が原因と疑われるような要素は見つかっていない」との報告があった
 検証は、九州電力玄海原発1号機で判明した放射線による金属劣化についても行う。また、来春に運転開始から30年を迎える四国電力伊方2号機と東電福島第二1号機、来夏に40年を迎える関西電力美浜2号機の安全性をそれぞれ評価する方針も示された。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20111129-OYT1T00555.htm

【動画】CNIC
11月29日 高経年化技術評価に関する意見聴取会
http://www.ustream.tv/recorded/18810372 (179:27)
<関連資料>
第1回高経年化技術評価に関する意見聴取会-開催通知【経産省HP】
http://www.meti.go.jp/committee/notice/2011a/20111121006.html
高経年化技術評価に関する意見聴取会【原子力安全・保安院】
http://www.nisa.meti.go.jp/shingikai/800/30/800_30_index.html

座席表 http://twitpic.com/7lcc8m

座席表


年内予定 http://twitpic.com/7ld33d

年内予定


名簿 http://twitpic.com/7lcwwa

名簿


失礼します。
にほんブログ村 環境ブログ 原発・放射能へ
にほんブログ村

にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村