※この記事は、11月13日 【動画・内容起こし】木村真三氏+河田昌東氏の講演会「放射能汚染時代を生き抜くために~チェルノブイリから福島へ~」【その①】の続きです。

<23:25頃~>
(河田氏)

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 これは、私どもが6月から南相馬市内の詳細なマップ作りをやっておりまして、その第一回目の調査結果なんですけども、この黄色いところよりも赤い方に濃いところ、これが年間5mSv以上の場所になっております。市内全域の約23%にあたりますけれども、しかしここにはまだ人口7万人だった場所ですけれども、現在4万人の方が住んでいます。

 チェルノブイリの放射能は実は日本にもやってきました。これは私の先輩の名古屋大学医学部の古川(路明)さんが測定された値ですけれども、核実験を大学の屋上でずっとモニターしておりました。それが86年の4月の末に、突然通常の線量の200倍くらいの測定値が得られたわけです。彼はまだこの時、事故が起こったことを知りませんでした。
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「機械が壊れたか?」
というふうにもおっしゃっておりますけれども、翌日くらいだったか、そのニュースを見て、
「あれがチェルノブイリの放射能だったんだ」
というふうに納得されたと伺っております。
 同じ測定を、これはスウェーデンのストックホルムの核研究所が行った値でありまして、全く同じようなパターンが得られております。

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35 福島の場合ですね、これもご覧になった方も多いかと思いますが、ノルウェーとかドイツの気象研究所が、刻々と動画で汚染の予想を配信していたわけでありますが、ちょうどこれは3月29日ですね。ご覧のようにこのころの気候によって、大量の放射能が飛び出したわけではありますけれども、北西の風によって多くが海に流れ出たわけです。
 これがもし6月以降の南東の風が主な方向になりますと、大量の放射能がはるかに多い面積を汚染した可能性があります。
 つまり原発事故というのは、どういうタイミングで、どういう風向きの時に起こったか、これがその後の運命を決めてしまうということであります。

 ご承知のように放射能の影響は外部被曝と内部被曝があります。
 ちょっとこれは漫画風に書いたんですけれども、外部被曝は身体の外から被曝する。この時に大きな役割をするのが、エネルギーの大きなガンマ線になります。

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 それに対して身体の中に入った放射線によって被曝する場合には、もちろんガンマ線でも被曝しますが、エネルギーの小さなベータ線の影響が非常に大きいということが言われています。今問題のセシウムは、両方ガンマ線とベータ線、両方出します。
 もっぱら外部被曝だけ問題にしてると本当のベータ線による内部被曝の影響が見えなくなってしまうということが、大きな課題になります。
 我々がチェルノブイリで学んだことは、内部被曝が大きな要因であるということです。

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 これはウクライナ政府が出した数字を、私がグラフにしたものですけども、各州別の平均被曝線量と人口を掛け算したものでありますが、我々が支援してるジトーミル州、一番被曝が多いところですが、白いところが内部被曝、黒いところが外部被曝。これを見てもわかりますように、7割がたが内部被曝だということがわかります。
 これはちょっと時間がないので省略します。
 風下で様々な外部被曝、内部被曝が起こってくるわけであります。
 これは、事故から1か月後くらいにウクライナの首都キエフを旅行した女性のスカートにレントゲンフィルムで現像した写真ですけれども、この黒い点々が全て放射性物質=ホットパーティクルと呼ばれます。この時にこの場所を歩いていた人は、この空気を吸ったということになります。非常に典型的な内部被曝の原因を示しています。

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 私の方はこの間、共同研究を行っておりますウクライナの大学のディードフさんのデータですけれども、事故から初年度ですね、1年間の被曝は、(1)が50%が粉塵の吸入による内部被曝、それから(2)は13.5%、これが食べ物による内部被曝。残りが外部被曝で35%といっております。

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 そして、時間が経ちますと、地表に積もった核物質は、雨によって地面に沈んでいきます。そうすると、今度は粉塵による内部被曝よりも、食べ物による内部被曝の方が大きな要因になるということを、このグラフは示しております。

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 今の福島とチェルノブイリを比べますと、福島の場合には、土壌の質にもよるんですけれども、概ね耕してないとこに関していえば、3㎝とか5㎝くらいの汚染が大半であります。

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 ですから、学校の校庭なんかは表土を剥がすことで対策が可能であります。
 ところが、ウクライナの場合には、25年経ちますから、セシウムが表面から約20㎝、それからストロンチウムは水溶性が高いので約40㎝まで浸みこんでしまっています。こうなりますと表土を剥いで除染するということは不可能なんです。
 ですから、我々はこういうところで菜種を植えて時間をかけながら、地面をきれいにしていこうというプログラムを作ったわけであります。

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 これは、たまたま立ち寄った飯舘村の風景ですが、放棄された菜の花畑であります。非常に地表の線量が高かったので、土壌と菜の花を持って帰って分析しました。

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 表面から5㎝くらいのところは、1㎏あたり176,000ベクレルというものすごい汚染です。それに対して20㎝下は470ですから、これを見ても表面の汚染が非常に高いということがわかります。ナタネはもちろん、3,400ベクレルですから、食用にはなりません。
 これは、我々がずっとこの間支援しているナロジチ地区の住民の身体の中のセシウムの量ですけれども、7,400とか18,500くらいの人が一番多いんですね。事故から15年経ったときのデータです。 もともとキューリで表示してあったのを、私がベクレルに換算したので、こういう中途半端な数字になっております。

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 こうした人々の内部被曝を起こしている主な原因は、食べ物であります。
 肉類とか、或いは魚も汚染してますが、特にキノコっていうのは、非常に汚染度が高いわけです。

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 私がここで問題にしたいのは、今の国の暫定基準であります。これはもう皆さんよく御存じのとおりでありますけれども、今の暫定基準というのは、基本的に飲み物は200ベクレル/㎏或いはリットルあたり。食べ物が全部500ベクレルということになっております。

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 ウクライナは非常に初期には甘い基準だったんですけども、事故から10年経ってですね、基準を改定しまして、左のような数字になっております。例えば飲料水は2ベクレルですから、日本の100分の1ですね。パンが20ベクレル、日本ではお米ですから、主食が。これが500ベクレル、というふうに非常に違いがあるということがわかります。
一言でいえば、ウクライナの場合には、一生のうちにたくさん飲み食いするものについては、基準を厳しくする。あまり摂取量の多くないものについては、多少緩やかでもいいというふうに現実の生活に沿して決めてあります。そしてトータルで被曝線量を減らすというのが考え方です。
 ですから日本も一刻も早く機械的な暫定基準を改定する必要があると思います。
 この暫定基準のもう一つの問題はですね、実際にこういうレベルの汚染がない、例えば福島産の果樹ですね。こんなレベルのものはほとんどないわけです。あるいはお米にしてもそうですけれども。
 にもかかわらずこの暫定基準があるために、消費者にとっては基準以下だと言われれば、490ベクレルかもしれないと思うのは当然であります。実際には10ベクレル、30ベクレルのものでもですね、消費者は敬遠してしまうわけです。
 国は風評被害はけしからんと言いますけれど、実は風評被害を作ってるのは、暫定基準というふうに私は思います。
 あと、病気のことは木村さんがお話されると思いますが、ガン・白血病ももちろん起こりますが、これは一割以下でありまして、その他さまざまな病気が起こってまいります。
 この間、21年間信じてきた中で、我々は一つのジレンマに陥りました。
 病院は整備しました。病院に行けば病院ではある程度治療可能になりました。しかし、家に帰ってくれば、また汚染したものを食べて内部被曝を続ける。また病人になる。という悪循環が続くわけですね。
 それを解決しなければ、どうにも解決にはならないわけです。
 我々は1年間様々な研究した結果ですね、これから申し上げる新しいプロジェクトを始めました。
 これは実験を始めた前後のをナロジチの風景です。

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 この研究の、というかプロジェクトのきっかけになったデータの一つですけれども、ウクライナで出版された論文の表ですが、横軸が汚染のレベルですね。土壌からどれだけ移行したかという数字ですが、縦軸にいろんな野菜が入っております。

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同じ汚染でも、トマト・ナス・キュウリ・かぼちゃといったウリ科やナス科は、非常に汚染しにくい科なんですね。これは現在福島でも我々は立証しています。

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それに対して上の方のからし菜とかクレソンとか、一言でいえばナタネの仲間なんですけど、アブラナ科っていうのは、非常に汚染しやすいのがわかります。

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 ということは、逆に汚染した土地にナタネを植えて、それの力で土壌から吸収すればいいんじゃないかと考えました。
 これは専門用語で『バイオレメディエーション(Bio-remediation)』というんですけど、それに関する論文は世界中にたくさんある。しかしどれも大学の実験室で行われたポット試験が主な実験結果なんですね。
 しかし、実際に汚染した場所でそういうことをやるっていうのは、我々以外ほとんど初めてだったと思います。まぁ、一部には、
「無謀だ」
と、言われながら、しかし、やってみました。

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 ナタネを植えますと、ナタネが土中から放射性物質を吸い上げます。そして、油を作りますと、油が汚染してなければディーゼルオイルを作ったり、或いはほかの応用が可能であります。理論的には恐らくこうなると思っております。
 あと、ナタネ油をしぼったっていうのは、油を出す。それから葉っぱとか茎とかバイオマスですけれども、そこに放射性物質がありますから、これはメタン発酵をやってですね、ガスをとれば燃料として使える。
 最後に残る、ここに『汚泥』と書いてありますが、これはバイオマスなので排水ですが、その中にセシウムが入ってくる、或いはストロンチウムが入ってくる。
 これを吸着材で吸収して、綺麗な水にして廃棄処分をするというのが、プロジェクトの施肥であります。
 文字にするとこうなります。

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 2007年からこの施肥を始めました。

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 20年間放置された荒地です。さっき言ったように州の北半分は、荒涼たる荒れ地になっているわけでありますけども、住んでる人は自家用の野菜を作ってそれを食べる。あるいは牛を飼って、その肉を食べたり牛乳を飲んだりする。とういう生活をしているところでありますけれども、そこを耕してナタネを植えます。こんなふうに土を耕しますと、コウノトリがやってきて、汚染した昆虫やミミズを食べるわけですが、いつの日か、コウノトリも綺麗なものを食べられるようになればいいなというふうに願っております。
 そして6月、初めて20年来の荒地にナタネ、菜の花が咲きました。感激でした。

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 分析用のサンプルをとります。
 もちろん日本に持ってきて分析するわけにはいきませんから、国立大学と連携しまして向こうで全て分析をやっております。
 それで、バイオディーゼルオイルを作ることに成功しまして、自家発電装置用にしたり、あるいはトラックを運転したり、現在は自分たちの畑を耕すために、トラックター或いはコンバインの燃料にしたりしています。
 それでは、バイオガスですけれども、バイオガスの装置というのは、これは我々の仲間が設計した図ですけれども、既製品がありませんから、全部自分たちで穴を掘って、コンクリを打っていくことから始めなければなりませんでした。

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 途中は省略しますけれども、2010年、ちょうど1年くらい前になりますが、バイオガスが発生した。

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 最後の排水の処理なんですけれども、ちょうど福島の事故が起こる直前に行った実験であります。汚染したキノコから抽出したセシウムですね。活性炭、ベントナイト、ゼオライトという吸着材を入れて、吸収の実験をやりましたところ、活性炭はほとんど効果が無い。それに対して、ベントナイト、ゼオライトは効果があるんですが、ゼオライトが一番効果がある。30分くらいで95%以上吸着しました。

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 ゼオライトというのは、最近皆さんお聞きになるかもしれませんが、実は東京電力が高度汚染水を処理している吸着剤であります。
 これはつい最近の写真ですが、その吸着装置を作っているところ。まだ1か月くらい前にしかならないかな。最終段階になっております。

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 問題は、当初期待したナタネを植えて、土壌からセシウムを吸収して減らしていこうという戦略だったんですが、5年間やってみて、実はこれは大変困難であるということが判りました。
 恐らくナタネ以外の、ひまわりはもちろんダメだっていう報道がありましたけれども、モノでも難しいのではないかなと思います。これは、簡単に言えば、1㎏の土から1㎏のナタネをとることは不可能だからです。濃度は非常い汚染は高いんですね。高いんですけれども、それを短期間に濃度を減らしていくっていうのは、非常に難しいんですね。
 しかし、そこで新たな発見がありました。
 ナタネっていうのはご承知かもしれませんが、連作障害というのがあります。同じ場所に続けて植えることができない。だから裏作を植えます。2,3年してからナタネを植えるというふうに栽培するわけですね。
 その裏作の分析もやったわけです。

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 実はナタネは非常に強く汚染はしますけれども、裏作に植えた、大麦、小麦、ライ麦などは汚染が非常に少ないということが判りました。
 これは簡単に言いますとですね、植物が吸い上げるセシウムっていうのは、土の中の水に溶けているものなんですね。一旦それをナタネで吸い上げると、また土壌から溶けて、ジワッと出てくるわけですが、その時間が2,3年ある。その間は通常の作物を植えても、汚染が非常に少ないということがわかりました。
 っていうことがわかって、これまで汚染があるということで、全く荒れ地になっていた場所を新たにこういうスタイルで、
『ナタネとそのほかのものを交互に植えるという形で、農地の復興が可能ではないのか』ということがわかったわけであります。

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 これを今度の3月で一応5年計画が終わりますから、結果をまとめて今後の政策提言をしたいと思います。
 ただ、今年の4月に現地に行ったときに、州知事さんとお話をしてたんですけども、この結果を報告したらば、それを大変高く評価していただきまして、来年度からですけれども、30万ヘクタールでナタネを栽培し、バイオガス工場を作るプロジェクトを始めると言っていただきました。
61 そんなわけで、我々のこれまでの努力が少しは報われるのではないかというふうに思っております。
 これはですね、この間の今お話ししたような中身を本にしましたので、入口にありますから、もしよかったら読んでみてください。
 以上であります。
 どうもご静聴ありがとうございました。
【①終了】

【その③】に続きます。
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