※この記事は、
8月19日放送 【内容起こし】宮崎哲弥×上杉隆@トーキングヘッズ「国家と情報Part 2」【3.11以降日本は世界からどう見られているか】<その①>
まとめられなかったけれど勉強した資料記録【その②】
8月7日【1時間ver.】上杉隆&おしどりトークライブイベント 【東電会見とメディアの裏側】<その①>
7月2日 日本原子力文化振興財団:原発推進へ国民分断・メディア懐柔-これが世論対策マニュアル@新聞赤旗などに関連しています。

今の日本のメディアがどういう状態なのか、まず知ることが必要だと思います。
原発報道も、この問題に大きくかかわっています。

どうぞ。

ニュース解説 眼 10月28日(金)
メディア問題の本質①記者クラブはなぜ問題なのか


解説:神保哲生(ビデオジャーナリスト)
アシスタント:大栗麻未(日本大学4年)


【以下、お時間のない方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(神保氏)
ニュース解説・眼、神保哲生です。
独自の視点でニュースを解説する番組、ニュース解説・眼、今週は私、神保哲生の眼で解説していきます。
さて、今日はこれから何回かシリーズにわたってお届けしようと思っています、メディア問題の本質というシリーズの第1回目で、今日はよくメディアのことで、最近耳にすることが多いかもしれません。
『記者クラブ』について何回かにわたって、その問題の本質の部分というものをこれから解説していきたいと思います。
(大栗アシ)はい。今日のテーマを。
(神保氏)
はい。大きなテーマは『記者クラブ』なんですけどね、記者クラブの問題っていうのは、ちょっと、ある特定の部分だけがすごく大きくクローズアップされてて、大事な部分が抜け落ちているところがあるので、少しその『大事な部分』の話をしますね。
これは、『ミニマムアクセス』っていう言葉を僕は使っているんですけれども、実際はメディアではそういう言葉があることはあるんですが、日本では実はこれ、コメ市場にですね、最小限の外国のコメを入れることを許す、という意味で「ミニマムアクセス=最小限のアクセス」をさせるというふうに使われた言葉なんですね。
ミニマム=最小限の、アクセスという意味なんですけれども。
メディアを理解するのに結構大事な言葉は、『ミニマムアクセス』という言葉なんですけれども、一応知っておいてください。
これは何を言っているかというと、ご存じでしょう、最近はね。記者クラブというものの問題があると。
これは日本では一部の大手メディア、これは基本的には、新聞・テレビ・通信社なんですけれども、5新聞全国紙、5全国ネットワーク=テレビですね、それから通信社・共同時事、それからNHK、それにあと3社実は地方のブロック紙というのが非常に強いので、北海道・中日・西日本のこれで全部で16社あるんですけど、16社を中心にして、日本中のすべての役所、それからすべての政党、すべての主要経済団体、例えば東電も記者クラブがあるんですよ。経産省の記者クラブの下にあるクラブなんだけど、記者クラブというものがあると。
クラブ自体は別にあっていいんです。取材しやすいように、報道記者が取材しやすいように部屋があったりとか、報道機関側がそこでまとまって記者会見を要求したり、情報公開を要求したりというので、別にクラブは結構なことなんだけれども、問題は、1990年代くらいまでは、今言った新聞・テレビ・通信社、それだけでほぼメディア、報道をやっているメディアのすべてがカバーできてたんですね。ほかの報道のメディアはほとんど存在しなかった。まぁ、一部CSだとか一部雑誌だとか、報道に近いことをやっているところはあったけれど、所謂日々取材をして記事を出すというような、所謂報道をやってるところというのは、そこでほぼ事足りていたんですね。
それがクラブのある種常駐メンバーになってしまったわけです。
そこで、実はクラブの問題が最初に表面化したのは、日本が国際化していく中で、外国の報道機関が来たと、外国の報道機関が日本にどんどん来るんだけれども、日本には、さっき言った16社体制の記者クラブがあって、その中にそこが全部政府のアクセスを独占してしまっていて、例えば記者会見に外国の報道記者が出られない。
私が最初にその壁にぶつかったのは、APの特派員で1989年に日本に来たんですけども、とにかくAPの記者が記者会見に出られないということで、世界中どんな全体主義のアフリカの独裁国に行っても記者会見に出てきたのに、突然日本という先進国で、目の前で記者会見やってるのに出られないというような驚いたことが起きて、その辺からずっと20年以上、記者クラブ問題にかかわり、交渉してきたんですけれども、まず記者会見に出れないという問題がある。
そのことがすごくクローズアップされて、それが
「アンフェアだ。フリーランスが入れない。外国や雑誌社がメディアによっては入れない。おかしい。」
っていうことで、ある種そこが利害がぶつかり合ってね、ちょっとケンカみたいになってるようなところが、それはそれで、もちろん入れないのはおかしいし、問題なんだけれども、実はそれ自体の問題よりもっと大きな問題は、実は今のクラブの体質にあるんですね。
そこは、『外部の人を入れない』ということの意味は何かというと、そこがさっきのミニマムアクセスっていう言葉が問題になる場所なんだけれども。
結局ね、「ある一部の人しか入れない。入れない人たちがたくさんいる」っていう状態は、この人たちがかわいそうだっていうことは、ちょっと置きましょう。かわいそうなんですよ。アンフェアなんです。差別されてるわけだからね。僕なんかすごく差別されてる側なんですけれども、でも、それを言ったら、ただ単に弾かれてる人が自分が入りたくて文句言ってるだけになっちゃうから、その主張にはあまり説得力や普遍性が無くなってしまう。
問題はそこではなくて、実はクラブの問題というのは、社会全体、資本社会全体がすごく大きな不利益を被るようなことが起きるから問題だ。それは何かというとこういうことなんです。
入れない人が居るということは、入れる人たちというのが『特権』を享受していることになります。
特権っていう、要するにプリヴィレッジドアクセス(priviledged access)っていうんだけど、特権的なアクセス。政府にこの人たちしかアクセスできない。記者会見に出られるのはこの人たちだけ、質問できるのはこの人たちだけ。ほかのメディアは出られません。
特権、或いは優先的アクセス、プリファードアクセス(prefered access)と言いますけど、優先的アクセスを彼らが持っていると。
それがなぜ問題かというと、特権や優先的なアクセスというのは、制限されたり失う可能性があるものなんですよ
つまり、その中に居るときに、例えば村の掟といいますけど、クラブのいろんな掟だのなんだの、暗黙のものも含めていろいろあるんだけれども、それに逆らった行動を取るということが、今持っている特権を制限されたり失ったりする可能性があるので、彼らはおのずとその村の中のルールに従うことが、自分たちの利益に至ることになってしまうと、つまり、『特権である』ということが、実は問題なんです
「特権を持ってるから、ずるい」んじゃなくて、「特権になってることが、自分たちのリスクになってる」。
なので、彼らはそこで結局は、村の掟、或いは利権を与えてくれている政府側に対してですね、本当に嫌がることはしないとか、他社がやらないことはしないとか、そういう自主規制も働くし、政府に対しても弱腰になるという問題が出てくるというのがまずある。
そこでね、『ミニマムアクセス』っていうのは、こういうことなんです。
例えば、誰でも出られるようにします。誰でもっていっても、通行人や見物人持って意味じゃないですよ。報道目的であれば、誰でも出られるようにしますと。
政府が保証するのは、会見に出られるところまでですと。
ミニマムアクセスです。
それ以上のことを政府がやるというのは、やらせてはいけない。
一部の人に特権なんか持たせることは、政府のむしろ権力の濫用だからダメだと。
ミニマムアクセスを認めるとこまでしか政府には認めない。
会見にとにかく全員出られます。質問できますと。
だけど、そこから先の独自取材は、皆さん自分でやってくださいと。
懐に飛び込んでインサイドネタ取りたい人は、取っ手も構わないし、「いや、僕はそんなことやると書けなくなるから、会見にだけは出るけど、外で在野で独自取材をやって、それでとったことは必ず書きます」っていうような記者がたくさんいてもいい。
両方居るんです。世界中にね。
ただ、どんなに嫌がる、それは政府が嫌がる記事でも、或いはクラブの他社が嫌がる記事でも一緒です。どんなにその人たちが嫌がる記事を書いても、ミニマムアクセス
『会見に出る権利だけは補償されてます』ってなった時に、初めてどんな嫌がることもできるし、どんな嫌がる取材もできるようになるわけですよね
だから、実はクラブの問題というのは、『一部を排除している』ところが問題ではなくて、『排除することによって、排除されてない側が特権を享受する形になっていて、その特権があるがゆえに、本当の読者や視聴者のニーズに答えられない』構造が出来ている。外の人たちっていうのは、逆に言うと、特権をもらってないから何でも書けるんですけど、今度は日常的なアクセスが認められてないから、結局情報が取れない。何でも書けるといっても、情報が取れないから、あることないこと書くような感じの扱いになって信用されないということが起きるわけです
これは、典型的な統治権力というものが、自分の地位を安泰にしたいと思ったら、『分断統治』(divid and rule)
っていうんだけれども、特権をある人たちだけを作って、特権のない人を外にやるというのは、典型的な分断統治の手法なんですね。
特権を貰った人たちっていうのは、特権を失いたくないからこっちにすりよる。
特権のない人たちっていうのは、うるさいけど、もう特権がないから力がなくなっちゃう。
そうすると特権がある人たちだけの??ができればいいっていうのは、あらゆる独裁国でやってることが、実はこの一部に特権を認める行為が最悪なわけです。それが。
メディアが今そういうふうになっている。
しかもそれが日本の問題は、
政府側がメディアに特権を与えてるんじゃなくて、実はメディアがむしろ率先して、自分たちの特権を守ろうとしてる

っていうところが、日本の非常に悲しい現実でね、政府がそれをやってるんだったら、まだ批判して「ふざけるな」って言えるんですけど、今回民主党政権になって、会見をむしろ開けようとしてるのに、記者クラブ側がその特権を何とか守ろうとしている、という、これは僕はメディアの自殺行為なので、
とにかくミニマムアクセスを認めて特権を放棄する。そのかわり、フェアであるところで勝負しましょう。」
というのが、記者クラブ問題の第一の本質
だということを覚えておいてください。
(大栗アシ)神保さん、ありがとうございました。
【以上】

失礼します。
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