※この記事は、
9月28日 福島市除染計画:「条件以下は市民に除染協力、除染土も自宅仮置き」、一方、福島県知事:市町村の地区単位で汚染土置き場設置支援へ・・・
9月27日 環境省:年間5mSvの土を除染した場合、東京ドーム23倍分と試算【1mSvはもう守れないのか】に関連しています。

今日のたねまきジャーナルです。
環境省の5mSv、もう仕方がないんでしょうか・・・。

20110928 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章


【以下、時間のない方のために内容を起こしています。ご参考まで】

東京には近藤さんです。
まず、除染の話なんですけれども、福島県飯舘村が除染の計画を公表しました。
これによると、およそ2年で住宅地域の放射性物質の除去を終えるという計画なんですが、その時の目標値ですが、住宅地域の被ばく線量が、年間1mSv以下になる、そこまで抑えることを目標にしているというんですね。
ただ、小出先生、国はその一方で、こうしたことを言っております。
国の責任で除染はすると野田さんもおっしゃっておりましたが、国の責任で実施する除染について、環境省がその原則は年間の追加の被ばく線量は、5mSv以上の地域を対象とすると言っているんです。
つまり、5mSvに達していない地域については、国は除染をしないという意味ですよね?これ基本的には。
(小出氏)そうです。

そうしますと、飯舘村の皆さんは、1mSv以下にしたいとおっしゃっているが、だいぶ1mSvと5mSvに目標値の大きな開きがあると思うんです。
これどうお感じですか?
(小出氏)飯舘村の言っていることは正しいし、日本の国は自分の決めた法律を率先して破ると言っているんですね。

本来年間1mSv以上を被曝してはならないんですよね。誰であっても普通の場合。
(小出氏)もし、私が管理区域から放射性物質を持ち出して、水野さんなり近藤さんなりに1mSvの被曝をさせるようなことをすれば、私は法律にのっとって処罰をされるはずです。

そうか。そういう法律を日本は持っているんですね。
ところが、その国が5mSv未満のところは、除染をしないといっている話。
こうなると、近藤さん、飯舘村のように1mSvに抑えたいとなったら、後は自力でお金、自分とこでやってくださいということになりかねないんじゃないですかね?

(近藤氏)そういう問題も同時に出てくるでしょうが、僕はもっとうがっていうと、1mSvだったら際限がないから、やれないからじゃないですか?

1mSv以下にするというふうに言ったら、小出先生、現実的にどうなんですか?
(小出氏)私は除染はすべきだとこれまでにも発言してきました。ただし、除染をすべき場所は、子供たちが集中的に遊ぶというそういう場所に限って私は除染をしてほしいと私は言ってきました。学校の校庭であるとか、幼稚園の園庭であるとか、或いは家庭の小さな子供が遊ぶ庭であるとか、そういうところは表土を剥ぎ取ってほしいと言ってきましたけれども、できるのはそこまでだと私は言ってきたつもりです。
それ以上の除染というのは、ものすごく困難ですし、田んぼや畑の除染というのは、まずは原則的にできません。森林も除染はできません。

これ、田んぼや畑が原則的にできないとおっしゃるのは、どうしてなんでしょう?
(小出氏)土をはがしたら、田んぼや畑は死んでしまいます。表土が命です。

はぁ・・・。そうなんですか。
森林の場合は、国の考え方ですと、
「森林や土壌は除去しないで、落ち葉の回収でも対応は可能である」
というふうに言っているようなんです。
(小出氏)落ち葉を集めるというととはいいことだと思います。しかし、落ち葉だけでなく、既に森林の土壌も汚れてしまっているわけですから、基本的には除染はできないと言わなければいけないと思います。

そしたら、その森林で働く方たち、林業の方たちはもう仕事できなくなりませんか?
(小出氏)そうですけれども、本来であれば、1年間に1mSv以上の被曝をしてはいけないのですね。林業関係者も。しかし、もう日本の国は、そんなことどうでもいいと言っているのだから、野放しにされると思います。

(近藤氏)先生、落ち葉でもね、光合成っていう働きがあるわけでしょ?そういう自然の営みも、落ち葉とっちゃったら、その分えらいことですよね?
(小出氏)生態系というのは循環してますので、その一部を断ち切るというようなことをやれば、またそれなりの悪影響は出るだろうと思います。

この5mSv以上の地域を対象とする除染の計画について、環境省はなんで5mSvか?という理由に答えて、こういうことを言っています。
「時間が過ぎれば、放射性物質の量も減るし、風や雨で拡散していくので、目標の年間1mSv以下になっていくであろう」
と。
これは、どうなんですか?
(小出氏)何十年か先にそうなります。

何十年か先!?
何年か先ではないですか?
(小出氏)今、汚染をしている正体は、セシウムの134番と137番です。
134番のほうは2年経つと半分に減ってくれますので、もし5mSvに簡単にできるのであれば、2年後には2.5mSvまで・・・、あ、ごめんなさい。セシウム134の部分が、半分に減ると。137の方は減りませんので・・・。

これは、どれくらいかかるんですか?
(小出氏)137は、30年です。ただし、環境省が言ったそうですけれども、風なんかで吹き飛ばされていくものもありますし、地面の下に潜り込んでいくという部分もあって、空間ガンマ線量は、30年よりは早く減ると思います。
それでも、15年とか、20年でようやく半分になるという程度です。
ですから、今、2.5mSvのうちの半分は、137ですので、それが半分になるとしても、15年後20年後にセシウム137がまだ1mSv以上は残っているということになると思います。

また、環境省、この5mSvについて、こうも言っております。
「それ以下の低い線量の地域では、表面の土壌を削るなどしても、どんだけさがるかということでいうと、効果がなかなかあがりにくい」
と言うんです。
つまりこれは、費用対効果を考えていると、そういう意味でしょうか?
(小出氏)そういうことですね。

はぁ・・・。同じお金をかけてどれだけ下がるかというのが見えにくい、実施しにくいということですね?
(小出氏)そういうところはやらないでおこうと言っているわけですね。

ただ、これ先生がおっしゃるように1mSvを目標に、もし、今除染するとしたら、ものすごい量の除去した汚染土壌が出てきますよね。
今の計画だけでもですね、5mSv以上のところをやるだけでも、除去すると東京ドーム23倍分の土壌と落ち葉というようになるそうです。
それが、福島県の面積の13%にあたるという話もありますので、全部になると、東京ドーム何百杯分なのかわかります。そうすると、それをどうするのか?というのも問題ですよね。
(小出氏)そうです。どうしようもないので、どこかにまた積んでおくということしかできません。

飯舘村の計画によりますと、除染作業ででた放射性廃棄物は、コンクリート製の容器に入れて、裏の国有林、林に仮置きするということなんです。
この計画はどのように評価なさいますか?
(小出氏)これまで原子力発電所で生み出されてきた低レベルの放射性廃棄物というのがありますが、それは青森県の六ヶ所村に今ドラム缶につめた形で運び込まれていまして、既に20数万本分が六ヶ所村に運ばれています。
それは、コンクリート製のプールのようなものの中に次々とドラム缶を沈めていって、いっぱいになったらコンクリートのふたをするということで、やっています。
ですから、飯舘村の計画は、それに近い形でやろうとしているんだと思います。

今としては、これがベストだと思われますか?
(小出氏)わかりませんけれども、本当だったら、もっとちゃんとやって・・・。青森県六ケ所村のやつも、私は賛成しているわけではないのです。
そこに300年間じっとしておいてほしいと国のほうは言っているわけですけれども、300年後という未来は多分予測できないです。
300年昔のことを言ったら、元禄時代の忠臣蔵の討ち入りの時代になってしまいますので、そんな先まで見通すこともできないし、私は六ヶ所村のようなことはやってはいけないとこれまでも言ってきました。
それを飯舘村が、やむにやまれずそれをやろうとしているわけで、大変難しい選択だなと思います。

もう一つ伺いたいのは、文科省が公表しているデータですが、セシウムの蓄積の量を測定した汚染マップを公表しております。
それを見ますと、汚染の帯と呼ぶべきですかね・・・。
これがですね、福島第一原発から250㎞も離れているところまで広がっていると、いうんですね。
で、例えば、180㎞離れております、これ群馬県ですね、みどり市や桐生市の一部では、1平方メートルあたり10万ベクレルから30万ベクレルという数字が出ております。
これ、どれくらいのものですか?
(小出氏)1平方メートルあたり4万ベクレルを超えるような汚染物は、管理区域から持ち出してはいけない、つまり、そういう汚染物は管理区域の外側にあってはいけないと、そういう法律が日本にはあります。

つまり、一般人が立ち入ってはいけない区域ですね?4万ベクレルあるところは。
しかしながら、180㎞離れたところで、10万から30万ベクレル
(小出氏)そうですね。ですから、それが大地そのものがそれだけの汚染を受けてしまっているということですね。

チェルノブイリの時には、3万7千ベクレル以上は汚染地域として指定されたんですよね。
(小出氏)そうですけれども、本当であれば、そういう地域に住む人たちを避難させなければいけなかったのですが、ソ連という国もそこまでとうとう力が及びませんで、崩壊してしまったわけですね。
ですから、1平方メートルあたり、3万7千ベクレルを超えるようなところに、未だに565万人の人が住み続けています。
日本の場合もそれに近いことになるわけですね。

しかしながら、チェルノブイリの周辺では、さまざまな子供たちの悲劇が伝えられてますよね?
それから、近藤さん、こういう実態がどんどん明らかになってくると、こんな実態がはっきりわかる前に賠償の枠組み決めていってますけど、どうなんですかね?
(近藤氏)それは、ちょっと意味がないよね?除染の面積が広がるにつれて、賠償額も当然それに比例していくでしょうし、そうなってくると、今決めている数値と言うのは、仮の数値でしかないのでね。

そうですね・・・。
こうした測定を終えた県の汚染マップは、文部科学省のウェブサイトで公表されております。
小出先生、ありがとうございました。
(小出氏)ありがとうございました。
【以上】

失礼します。
【追記】
飯館村が除染計画 宅地2年、農地5年で完了
福島民友ニュース (2011年9月29日 福島民友ニュース)
 東京電力福島第1原発事故で全域が計画的避難区域に指定されている飯舘村は、居住空間の追加被ばく線量を年間1ミリシーベルト以下に低減する除染計画を策定した。宅地など居住環境は約2年、農地は約5年、森林は約20年で除染を終え、原発事故以前の環境回復を図る方針
 菅野典雄村長は28日、政府と県に計画を提出した。計画によると村と県、国の連携とともに村民の参加を得ながら除染を進める。
 農地や、キノコなどが自生する森林の低減目標は、土壌の放射性物質濃度で1キロ当たり1000ベクレル以下に定めた。村内の国有林に仮置き場を設置し、除染で生じた汚染土壌などをコンクリート製の保管容器で密閉して一時的に保管する。
http://www.minyu-net.com/news/news/0929/news1.html