今日もたねまきジャーナルを聞きました。
長崎市長の平和宣言は、胸に迫るものがありました。
是非ご一読ください。

では、今日は原爆と原発について解説されています。

どうぞ。

20110809 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

【以下、時間のない方のために内容を起こしています。ご参考まで】

今日は長崎で66回目の原爆の日を迎えている。広島・長崎でも、今年は特に原爆と原発を放射能の被害を受けるという意味で共通するということで、原子力発電所に対する問題に言葉を発する方も多いようだ。
今日は一つお願いがある。
原爆と原発の事故というのは、そもそも科学的に言うとどう違うのかというメカニズムを教えていただきたい。いかがでしょうか?
(小出氏)原爆というのは、むき出しの原子炉だと思っていただけばいいが、核分裂をしたときに、強烈な放射線が飛び出してくるし、その時に核分裂生成物という放射性物質ができる。原爆の場合には、核分裂をしたときの強烈な放射線がまず降り注ぐ。その時にできた核分裂生成物という放射性物質が後々までも影響を及ぼす形になる。
原子力発電所の場合は、核分裂自身は原子炉で起きている。強烈な放射線はほとんどはエネルギーという形に変換されて、電気になる、あるいは海を暖める形になっている。ただ、できた放射性物質、核分裂生成物という放射性物質自身は、原爆でできるものと同じもので、それが今回の事故のようなことになると、大変に噴出してきて環境を汚すことになる。

今おっしゃた、核分裂でできる放射性物質というのは、原爆、核兵器としての原爆のときには、「死の灰」という言葉があるが、それのこと?
(小出氏)それのことです。ただし、原爆の場合には、核分裂した直後に全てがその場から放出される。

つまり一瞬のうちに死の灰も含めて外に放出される?
(小出氏)そうです。だから、短い寿命の放射性物質もすべてが放出されてくる。
原子力発電の場合には、核分裂してできた放射性物質、核分裂生成物のうち、短い寿命の放射性物質は、原子炉の中にある間にある程度なくなってくれている。だからある程度寿命の長い放射性物質だけが事故のときに噴出してくる形になる。

ということは、確か、寿命の短いヨウ素というようなものは、原発ではいくか一部しか出ないが、核兵器の原爆の時には全部一瞬にして出てしまうということでいいか?
(小出氏)そのとおりです。

今の話だと、強烈なエネルギーを一箇所に、原子炉の中に閉じ込めるという技術が原爆よりは難しいと思えるが、どうなんですか?技術的に?
(小出氏)もちろん難しい。ただ、強烈な放射線と私は言葉にしたが、アルファ線ベータ線ガンマ線、あるいは中性子線という形でそれが噴出してくるが、それが原子炉の炉心と呼ばれている部分で、アルファ線やベータ線は簡単にエネルギーに変換されるし、ベータ線もかなりの部分はエネルギーに変換され、中性子線はそれも、まあそれなりに変換されながら、周辺のものを放射化させるという形になってしまう。それら全て制御しながらやりたいというのが原子力発電という技術。

すいません、「エネルギーに変換」というのは、何になること?すいませんね、分からなくて。
(小出氏)放射線というものは、エネルギーの塊と思っていただければいいと私は思う。

エネルギーの塊とは見えないものを言っている?
(小出氏)本来は例えばアルファ線というのは、ヘリウムの原子核、ベータ線は電子。言ってみればモノ。

見えないけど、ものなんですか?
(小出氏)そうです。電子というのは所謂、私たちが電気製品を使うとき電流として流れているものであって、決して無色透明とか形のないものではない。それは、この世界にある限り、簡単にエネルギーに姿が変わってしまうもの。
それが、原爆の場合には、爆発した時に噴出してくる。

それは、例えば、原爆の被害に遭われた人にとっては、熱線という言葉を聞く。「凄まじい熱線が来た」と、この熱線が今おっしゃった「エネルギーに変換」されたもの?
(小出氏)そうです。熱線と爆風にほとんどのものは変換されている。

熱線と爆風になってエネルギーが放出されるということですね。
では、原発の場合は、発電所の場合は?
(小出氏)その発生した熱を使って水を沸騰させて、出てきた蒸気でタービンを回すというのが原子力発電。

それで電気がおこるんですか?
(小出氏)はい。タービンに発電機が繋がっていて、タービンが動くと発電機が動いて電気が起こる仕組み。

だからそれを原子炉の中で制御してやっていれば、エネルギーの良い使い方ができるという考え方ですね?
(小出氏)理論的にはそうです。

そのエネルギーの大きさは、核兵器の原爆とくらべてどう?
(小出氏)広島の原爆の場合には、ウラン800g燃えた。大量の放射線と、熱線と爆風がまずは起きて、核分裂生成物という放射性物質が周辺を汚染して人々を被爆させた。原発の場合には、今日だったら100万kwというのが標準になっているが、その場合には、1年間に3kgのウランを核分裂させる。つまり広島原爆約4発分のウランを毎日核分裂させながら、電気を起こして海を暖めて、出来た死の灰は原子炉の中にたまっていくという機械が、原子力発電所。

では、原発のほうは、エネルギーはもっと大きいわけですか?
(小出氏)はるかに大きい。

今回、福島の事故でよく言われている比較されている広島型原爆の20発分とか、先生は当初もっと大きい単位のことをおっしゃられたが、これが今まで出ているデータでは例えば何発分という言い方?
(小出氏)多分100発を超えていると思う。

すいません。もう一度言ってください。
広島に落とされた原爆のエネルギーの100発分のエネルギーっていうか死の灰って言う意味ですか?
(小出氏)そういう意味ではない。
広島原爆がばらまいた核分裂生成物、その中の代表的な核分裂生成物はセシウム137。その広島原爆がばら撒いたセシウム137、100発分を超えるセシウム137を福島第一原子力発電所で既に環境にばら撒いたということです。

100発分のセシウムが既にばら撒かれた?中にまだ格納容器の中にある分ではない?
(小出氏)違う。大気中にばら撒かれた。今、12万トンの汚染水として多分それを越えるものが汚染水の中に存在している。

そんなに!!!???
多い量なんですか?!
(小出氏)もちろんです。福島第一原子力発電所は46万kw、第二、第三は78万kwで、3基あわせると200万kwある。100万kwの原子力発電所は、先ほど言ったように1日3kgsのウランを燃やす。つまり、1年間に約1トンのウランを燃やしている。

1年間に1トン?
(小出氏)はい。広島原爆は800gですから、ゆうに1000発分を超える。200万kwあるから、一年間に2000発分を超える核分裂生成物を生み出している。
原子炉というのは一度動き出すと、約3年経たないと燃料を取り出さないので、平均すれば2年分くらいは原子炉に溜まっているはず。だから、1号機2号機3号機をあわせれば、広島原爆4000発分に相当するくらいの核分裂生成物が炉心の中にあった・・・。そのうちわずか100発、200発、或いは300発と私は言っているわけだから、まだまだ大量の放射能は閉じ込められた形で残っている。

4000発分の100発というような大雑把な言い方をするとそういうこと?
(小出氏)多分そうだろうと私は思う。

多分外に出たと。
(小出氏)そういうことです。

これが100発の単位がもっと上がっていて、全部・・・
(小出氏)全部出れば10倍あるということ。

それが出て行く恐れというのは、あるのか?
(小出氏)はい。私はそれがないことを願っているが、完全にそれがないとは断言できない状態に私はいる。東電も今現在炉心を冷やそうと作業員の方々が大量の被曝をしながら、作業をしているということは、破局的な被害を防ごうとしている。

完全にないといえるにはどうしたらいい?
(小出氏)原子炉をこれ以上壊さないこと。

これ以上原子炉がとけたら、これから10倍ものものが出てくる恐れがないとは言えないということ?
(小出氏)私自身はそう思っている。なんとか作業員の方に頑張ってほしいと願うし、多分東電もそうしようと思っていると思う。

またいろんなお話を聞かせてください。
ありがとうございました。
【以上】

失礼します。
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