※この記事は、7月23日 小出氏講演:「原爆・原発と憲法9条」@堅田9条の会【その①】の続きです。

 ここで皆さんに一つ質問がある。
 1kg灯油を買ってきたとします。もう一方で火薬を買ってくる。多分買えないと思うが、買ってきたとする。それを両方1kgずつ買ってきて、両方に火をつけてみる。どっちがどれだけエネルギーを出すでしょうか?
 時間がもったいないので、答えを言います。

 灯油は、1kg燃やすと1万キロカロリーの熱が出る。では、火薬はどのくらい出るかというと、1000キロカロリー。灯油の10分の1しか火薬はエネルギーがでない。
14 灯油と火薬の燃焼エネルギー

 
 皆さんは火薬というとものすごいエネルギーが(音声不良)、たった10分の1しかエネルギーが出ない。
 なんでそういうことになっているかというと、ものが燃えるという性質もあるし、原爆というものの本質的な性質が隠されている。
 ものが燃えるには酸素が必要。ものと酸素が結びついて、燃える。酸素が無ければものは燃えない。例えばコップの中のろうそくに火をつければ燃えるが、ガラスをかぶせてしまえば、コップの中にある酸素が無くなればそれで終わり。灰、二酸化炭素とか熱が出てくる。これが燃えるということ。
 でも火薬というのは、酸素が無ければ燃えないということでは困る。火をつけたら、全部燃えてくれないと爆発にならないので、酸素なんか無くたって燃えるというものを探し続けて、ようやく見つけ出したのが火薬。その時には、1kgあたり灯油の10分の1しか出ない。非常に効率の悪いものしか見つけることが出来なかった。

15 ものが燃えるには酸素が必要


 火薬は酸素を必要とせず燃えるが、その性質を獲得するために、発生するエネルギーが大幅に少なくなってしまった。こういうこと。
 
 では、原爆に使ったウランの核分裂についてはどうか。

16 核分裂の秘密①


 ウランは広島に落とされた原爆、(音声不良)、原子核というものがあるが、それに中性子がある。中性子は酸素を必要としない。これがぶつかると、この原子核が核分裂をする。

16 核分裂の秘密②


 そして、このときに中性子が飛び出していく。この時に重要なことは、はじめにぶつかったのは1個だが、分裂後は2個から3個に増えている。

16 核分裂の秘密③


 つまり一番最初に「火(=中性子をぶつける)」さえつけてしまえば、火種は山ほど出てくる。これを次のウランまたはプルトニウムの原子核にぶつければ、次々と核分裂していくわけだから、あっという間に全てが燃えてしまう、つまり爆弾になれる。
 核分裂反応というのは、はじめから爆弾の原理。火をつけさえすれば、一気に爆発する、そういう性質を持ったもの。
 原子力の平和利用はいいものだと言う人たちの言葉で、核分裂反応が原爆という形で利用されたのが不幸だという表現をする人がいるが、そうではない。不幸でもなんでもない。核分裂反応がもっている性質が一番ちゃんと開花して爆弾になっている。核反応が爆弾向きだということを皆さんに覚えておいてほしい。

 これは、左側が広島に落とされた原爆=リトルボーイ。右側が長崎の原爆。今見ていただいたように、広島に落とされた原爆はウランだったし、長崎に落とされたのはプルトニウム。

17 広島と長崎の原爆

 今私は一言でウランと言ったが、ウランは地球上どこにでもある。私の体の中にも、皆さんの身体の中にもある。
 実はウランには2種類の組成がある。
 この中の核分裂をする、燃えるウランというのは235番という番号がついているが、全体の0.7%しかない。99.3%は燃えないウラン、核分裂しないウラン。原爆にもならなければ、原子力発電の燃料にもならない役立たず。つまり、折角ウランを地底から取ってきても、役に立つ成分は0.7%しかない。これに火をつけようとしたら、火がつくか?というとなかなかつかない。

18 天然ウランの組成



例えば皆さんアルコールは買える。薬局に行けばほとんど純度100%のアルコールが買える。皆さん簡単にそれを燃やすことができる。でもアルコールにどんどん水を加えていって、50%くらいにアルコール濃度を下げるとする。火がつけられるでしょうか?例えばジン、ウォッカ、ブランデーを燃やすことができるますか?皆さん。
 燃やせます。私は酒が好きで、何度も実験をしたことがあるが、角砂糖にブランデーでもアルコールをしみこませて、角砂糖の角のところにマッチでもライターでも火をつけると、青白くボーっと燃える。でも、またそれに水をどんどん加えていって日本酒くらいにしてしまう。アルコール濃度15%くらいにしてしまったら、多分どうやっても火はつかない。もっと水を入れてビールにしてしまう。アルコール濃度5%なんていったら、決してどんなことをしても火はつかない。このグラフの0.7%では火はつかない。原爆にできない。
 「さて困った、どうしようか?」と考えた。「しょうがない原爆を作るためだったら、取ってきたウランの中で0.7%しかない燃えるウランをなんとかして集めよう」ということを考えた。しかし、燃えるウランも燃えないウランも同じ元素なので、化学的、ケミカルで分けることはできない。とてつもなく難しいのであって、この235という番号と238という番号は、重さをあらわしているが、ほんのわずかしか重さの違いがない。その重さの違いを捉えて同位体分離という特殊なことをして、この二つを分離し、そうしてようやく広島原発を作った。

19 ウラン濃縮はオークリッジ


 こんなところ。ちょっと写真が見にくいが、米国国内に秘密都市を作った。たくさんの科学者・労働者をこの中に閉じ込めて、秘密を守りながら情報が外に漏れないようにしながら原爆を作った。

20 オークリッジの設備


 こんな巨大な工場。
 そしてようやく広島原爆を作り上げたが、作り上げた時の爆発力は16キロトン。先ほど聞いていただいたとおり。では、この原爆を作るために燃えるウランを集めるという作業のために、どれだけのエネルギーが必要だったかというと、50キロトン分のエネルギーが必要だった。

 これは大変控えめに私が計算した。同位体分離という作業をするためだけにどれだけ必要だったかを、大変控えめに計算して出した。秘密都市を作るためのエネルギーも何も(音声不良)、エネルギーも計算しない。ただあの工場を動かすために必要なエネルギーだけを計算してもこれだけ。50キロトンのエネルギーを投入して
爆発させたら16キロトンしか出ないわけだから、まことに馬鹿げたことをやった。でも、たった一発の爆弾で一つの町を壊滅させることができる爆弾。だから「軍事的には大変価値がある。」としてエネルギー的な損得勘定はもういいとして、米国はこの原爆を作った。その後もたくさん作り続けているということになった。
 でも、「やはりこれは大変だな」ということで別のことを米国は考え出した。どんなことを考えたかというと、長崎の原爆を作ろうとした。つまりプルトニウムという物質で原爆を作ろうとした。しかし、プルトニウムという物質はこの世界には一つも無い、1gもない、そういう物質。
 そこで、これは人工的に作るしかない。どうやって作るかというとこうやって作る。
 まず燃えるウランはどうやって反応するかというと、燃えるウランに中性子がぶつかると、核分裂という反応が起こり、核分裂生成物という死の灰と膨大なエネルギーとさっき聞いていただいた2-3個の中性子が出てくる。これが燃えるウランの反応。
 では、役立たずだといった燃えないウラン、238番については、一体どうなるのか。こうなる。中性子がぶつかると、核分裂はしないが、補核という反応をしてウラン239という原子核になる。このウラン239は放射能を持っていて、ベータ線を出しながらプツニウム239という放射能に変わる。このプツニウム239も放射線を持っていてベータ線を出しながらプルトニウム239に変わる。
22 プルトニウムの製造


 役立たずだと思っていたウラン239に中性子をぶつけてやりさえすれば、プルトニウム239というものが自然に出来てくるということを物理学者が見つけた。それを米軍に教えて、米軍は
「それならウランの中に0.7%しかない燃えるウランで原爆を作るよりは、99.3%を占めている燃えないウランをプルトニウムに変えて原爆にしたほうがよさそうだ。」ということに気がついた。

23 プルトニウム生産はハンフォード


 その為に米国はハンフォードという大変な僻地にやはり秘密都市を作った。たくさんの原子炉をここに作った。原子炉を動かすと燃えるウランが核分裂してたくさんの中性子が出てくるわけだが、その中性子を燃えないウランにぶつけてやれば、自然にプルトニウムが出来ていく。その原理を利用しようとした。そして出来てきたプルトニウムを再処理という方法で処理して、長崎の原爆を作った。

24 ハンフォードの再処理工場


 これが再処理工場。今、青森県の六ヶ所村に日本が作ろうとしているのも、この工場。そのことも、大変重要な問題で聞いてもらいたいが、それを聞いてもらおうとすると、今日の講演1回分くらい(音声不良)。秘密都市を作って原子炉を作ったり再処理工場を作ったりして長崎原爆を作った。
 結局米軍の(音声不良)マンハッタン計画というのは、そこで何をやったかというと、こういうことをやった。

25 米国の原爆製造(マンハッタン計画)


 まずウランを掘ってきた。掘ってきたウランの中から燃えるウランだけを集めるという作業を私たちは「濃縮」といっている。そして、濃縮ウラン。燃えるウランの塊を作って、広島原爆を作った。
 もう一方では、これは大変だということで、原子炉を作ってプルトニウムを作り出し、それを再処理工場で取り出す。それで長崎原爆を作り出す。
 こうやって二つの流れをやって、米国は原爆を山ほど作りだす力を得た。つまり、重要(音声不良)ウランを集めるという作業。それと燃えないウランをプルトニウムに変換する原子炉。そして変換したプルトニウムを(音声不良)。原爆を作るにはこの3つの技術を手に入れるということが必要になった。
 話が余談になるが、濃縮という作業をして、濃縮ウランができるが燃えない成分も残っている。それを劣化ウランと呼んでいる。こちらのほうでは、原子炉を動かして、燃えないウランを燃やした後、減損ウランと私たちが呼んでいる、やはり燃えるウランの少なくなった役立たずのウランが残る。これが現在、米国が劣化ウラン弾としてイラクやアフガニスタンで人々を殺すために使っている爆弾。

25 米国の原爆製造(マンハッタン計画)②劣化ウラン


 この話を聞いていただこうとすると、また1回分の講演が必要になる。(音声不良)
<00:37:00-> 
 こうして原爆というものを作り上げるためには、とてつもないエネルギーが必要だということを知った。
 私自身もそうだった。東京の下町に住んでいて、東京でたくさんの原爆展というのが行われていた。それを中学・高校時代に見に行った。それで、「原爆というのはとてつもないものだな、こんなにエネルギーを出すものがあるのか」とびっくりした。でも、その驚いて恐ろしいと思ったことは、私の心の中で逆転した。
「これだけのエネルギーを出すものであれば、これを平和的に利用したら人類のためになるのではないか?」
という風に思って、私は原子力の平和利用のために自分の人生をかけようと思ってしまった人間。
 日本で原子力が始まった頃、どのように夢が描かれていたかというと、こういうふう。

26 原子力にかけた幻の夢前半


 私は、このとおりに思った。多分、今日の会場にいらっしゃる方も、今でもこう思ってらっしゃるかもしれない。化石燃料はいずれ無くなってしまうから、将来のために原子力(音声不良)と私は思ったし、多くの日本人も未だに思っているだろう。でもこれが全くの間違いだった。それを今から聞いていただこうと思う。
 これは新聞の記事だが、後半もあるので見ていただく。

26 原子力にかけた幻の夢後半


 こんな具合。この後半は全部間違えていると皆さん歴然と分かっていただけると思う。電気料金は世界一高い。原子力発電所は火力発電所より小さいなんてことはなくて、お化けのような工場になった。もちろん都会なんかに建てることはできない。過疎地に押し付けた。ビルディングの地下なんかに原子力は絶対にできない、そういうものだった。

【その③】へ続きます。

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