<01:09:45->
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 さて、時間の関係でそろそろ終わりにしたいのだが、格納容器の破損に至る例を一つお見せする。
 炉心が溶融する。圧力容器が壊れる。すると溶融物がデブリという。溶融物デブリがペデスタル=圧力容器を支えている床の基礎、そこに落ちる。そうすとそこのデブリがドライウェルに流出して接触する場合、或いはペデスタルが破損して圧力容器が壊れる・落っこちる、或いは、圧力容器のスカートが破損する、こういうことが起こって、圧力容器が落下して、今度は格納容器が壊れていく。これは一つのシナリオ。こういうことが実は無限にある。一杯ある。そういうことを研究してきている。過酷事故というのは、そういうこと。
 これは、いつもお見せしているのもで飛ばす。
 こういう形でやっている。これを多層防護で守ろう、なんとかしようと設計で考えている。しかし多層防護が成立しないことがある。それが原子力プラントの特徴。
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 それはなぜかというと、どんなに確実でない対策を重ねても、大規模な事故は防げない。これが結論。福島の事故について考えると、津波自身が原因として考えた時に、それを防ぐシビアアクシデント対策と言っているけれど、確実ではない。つまりシビアアクシデントの発生確率、多層防護していても、発生確率が小さくなるだけで、原理的にその過酷事故を防ぐことは、原子力プラントの性格上できない。そういうふうに理解すべきだと思う。
 これは提言の話だが、私はこういう風に思っている。
 ・反応度事故を起こさないこと。
 ・炉心溶融(一部損傷も)、絶対に起こしては駄目、起こした後のことを言ってもだめ。
 ・格納容器の機能を全て喪失しないこと。
 せめてこれだけは最低限。こういうことを条件にしないと、私は運転してはいけないと思っている。
 これを突破された後は、信頼性がないから。
 アクシデントマネージメントは、信頼性が低く、安全対策として認めがたい。せめて全てに、ここが一つポイントで、もし仮に今の条件で運転をするというならば、単一故障基準を適用すべき。アクシデントマネジメントに。つまり、耐圧ベントがあったら、そのベントにひとつひとつのバルブが故障しても大丈夫なように対策をとっていく。その見込みをすべきだ。それからさらに、多重故障を考慮すべきで、多重故障に対して、つまり単一故障基準というのは、一つの機器が壊れることを言っているが、同時多発に壊れること、必要なものについては当然考えなければいけないと思う。そういうことの主要なものについてやるということは、考えていかないと原子力の??は通れない。
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 非常に対策で緊急性を要すると私が思っている項目だけを確認する。
①地震時の制御棒の挿入。特にBWR。非常に重要。
②再循環系を中心とした耐震性の確保。マークI、マークII。
③沸騰水型(BWR)圧力抑制タンクの機能喪失。これは特に地震が来た時心配。地震時のにスローシングとかが起こったときにどうなるか。マークI型、或いは他の水面運動量が結構心配。或いは損傷しないか心配。
④それとあまり詳しい話をしたことはないが、柏崎刈羽で耐震で浮上した問題に、格納容器のスタビライザーの問題があった。これは複雑な問題なので、時間を改めて話す。
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加圧水型に関しては、
①格納容器が大型で窒素封入していないので、水素爆発の危険が高い。非常にこれが怖い。これは緊急を要する。万一福島のようなことになった時、格納容器が爆発する危険性が高いので、この危険性をきちんと見直すべきだと思う。
 これは安全委員会の責任でもある。
②蒸気発生器の配管破断についても、評価と対策をきちんとやるべき。

それから加圧水型と沸騰水型の共通の問題として、
①圧力容器の照射脆化。経年プラント。特にいのぐちさんが指摘されてるように経年プラントは玄海はじめ美浜、敦賀の1号とか非常に線溶度が上がってきている心配がある。これはちょっと実力評価をして大丈夫だという言い方は非常に危ない。絶対的にこれは余裕を持って入っていないと危ない。脆性破壊というのは、起こったときどうしようもない。一気に爆発する。先ほどいったDCHと同じモードになる。
②地震による配管破損と機器の故障。これは田中光彦さんが非常に強く指摘されている。再循環ポンプ系の先ほどあったが、他にもいろんなところが地震で破損する危険性がある。原子力プラントで実は配管破断については、一部配管が破断しても、格納容器が支えられるようになれば、なんとか収束できるという設計にしている。だけど、やはり配管が多重に、いろんなところを同時にいったりして、他の機器の損傷に加わると、例えば今回の場合、もしかしてどこかの配管が壊れていて格納容器が機能喪失する、重なった時には完全にシビアアクシデントになっている。そうするとこれは非常に重要。多重故障の原因になる。
③過酷事故に至る代表的なシーケンスに対しては、安全設計上の基本的な設計を見直し
 実は私が申し上げたことは、全てもしかりに、ストレステストなるものがきちんとやるとなれば、これらを全部やるということを意味している。私はその意味でストレステストをやるべきだと思う。
 当然こういうものに対しての評価が保安院、あるいは安全委員会からなされるということを期待している。そうでないと、このプラントは運転できない、当然ではないかと私は思っている。
<01:18:00->
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 前にもお見せしている繰り返しになるが、時間に対して原子力はぐっとエネルギーが上がってしまっている。それを制御して安全装置で多重防護であって、多重防護がうまくいけばいいが、いくつも多重防護しても、確実とは限らない。確率が落ちるだけ。多重防護が成立しないで共通容易故障でバサッとやられると、一気にいってしまうというのが原子力。だからこれを防ぐ方法はないのかというのがポイント。でも残念ながら、この多重防護以外に他の方法が今ない。部分的に猶予を持たせるとかの設計があるが、そういうものを以ってしても確実に防ぐことはできないということが、原子力の特徴。
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従って、福島原発の事故原因、まだ特定されていないから、きちんと事故原因をやるべきだ。
抜本的な安全性の見直し。
起こりえないはずのシビアアクシデントが起きてしまった以上、対策は小手先では無理。

原子力安全委員会は責任を持って全ての耐震基準、安全審査指針を見直すべき。それを全プラントに適用するまでは、運転は許されない。
というのが私は自明だと思う。
もし、百歩ゆずって、ここのところに「そんなことはない、そこまでいうな」とどこかで運転しようというなら、それこそ中身を全部説明した上で、「ここに関してだけは運転せざるをえない」ということを言うべき。今は、運転をしていい条件はない。今運転しているのも、本来止まるべき。なぜかというと、事故原因と関わっている可能性があるから。怖い。
だから私は抜本的対策なしに再稼動なんかとんでもない話だと思っている。
是非これだけは、安全委員会はじめ保安院の方々、我々のために、全国日本国民のためにそういうことを考えていただきたいというのが、本当の私の真摯なる願いです。
今日の話は、ストレステスト、耐性評価、それで安全委員会と私の意見を言わせて貰った。ありがとうございました。

(澤井氏)今このような考えだと、結局事故原因がわからない、例えば地震津波についての評価もできていないと、ストレステストの試験項目自体を作れない。
(後藤氏)ですから、安全委員会の斑目さんが言ったのは、表現の中にPSA確率論的安全評価の事故シナリオをきちんと見て評価をしなさいと。ただし、確率論的にやってはいけない。確率的にやらない。絶対値で接待評価をする。私がやったのは、それ。シナリオをちゃんとやっていけば、きちんとおのずと組み込まれるはずだと、私はそういう風に理解している。
それを甘くいい加減にしてはいけない。内容的にはそういうことだと思う。
私は、この期におよんで、小手先である評価をしないとかなら、私は本当に怒ります。論外。そんなごまかし方。所謂EU流のストレステストを見ればわかる。あらゆる考えられる外的事象を全部評価するという姿勢。それでも安全性を保とうとすれば、私は当然のことだと思う。そういう姿勢を持たなかったら、原子力なんか運用する資格が全く無い。しかも日本は世界に誇る技術力を持って安全性をアピールするんだと言っている。ということは、EUが考えている以上のストレステストを日本側から提案すべき。というのが、先ほど単一故障基準の見直しとか、そういうことも含めて言っている。そこまでやって初めて日本は世界に確たる原子力の安全に対する責任を果たすとそういう風に理解している。
(澤井氏)具体的には、先ほどの試験みたいに、実際に原子炉を壊すまでやるわけにはいかない。全部コンピュータの・・・
(後藤氏)先ほどのは、なぜ破壊試験をやったかというと、計算している。大体ひずみとかどのくらいになったら壊れるかなというのを予測しているが、どの程度精度があるのかを調べるため。結果は全部解析でやる。それが評価できない部分の実験データを持っている。そういうわけで、全てにおいて実験をやんなきゃいけないということではない。
(澤井氏)今度、実際実プラントだから、全部シミュレーションになる?
(後藤氏)ただ、申し上げておきたいが、それをやったら十分安全かといったら、そんなことはない。それは、ちょっと今日は時間が無いので詳しいことは説明しきれないが、例えば、ある一つの計算でやったときに、現実のプラントを材料は実力用、でも構造は実質強度は持ってこれない。図面上から標準的な寸法を持っていくしかない。いろんなずれがある。それが実際に評価に影響を与える。私も実際にそういうデータを持っている。一度そういうことがどういうふうにずれるかをきちんとお話しします。そういうことも含めて、ストレステストというのはやったほうがいいけど、やはりそれでも完璧ではないということを是非ご理解いただきたいと思う。
(澤井氏)わかりました。今日は長くなってしまったが、ストレステストについて後藤さんにお話を伺った。
また政府のほうからもいろいろ出てくると思うので、また引き続きその問題点を考えていきたいと思う。

【以上】

失礼します。