<00:21:30->
(澤井氏)EUのストレステストの違いというか、誰が評価するのか、誰が評価するのかという違い、今のEUに関して言うと、試験は各電力会社がやり、各国当局が評価する。その後に、他の加盟国の専門かもこれを評価する。
(後藤氏)Peer reviewというやつですね。
 海外では常識なのだが、Peerreview=第3者が独立でチェックする機構を持っている。これは必ずやる。日本も形の上ではそういうことを言えるが、どうもきちんとした評価ができていないというのが現実。だからそこの構造の作り方自身が問題になっていると私は理解している。それを安全委員会がどうなの保安院がどうなのか。だけど、それを急に作りこむことを、政治の力でやるべきだといっている。つまり、政治家がきちんとそのことを理解されていない。安全性を保つとはどういうことかということを、理解していない。だから、事故調査委員会を作ってやるということで、畑村委員長以下、委員会構成でやるんだが、そのことの事故の調査っていう部分と安全性の評価をどう見るか、どう評価する。そこは、非常に大事。
 今のストレステストなるものは、事故原因調査と密接に絡んでいる。そのことは重要なこと。
 今日は全体像の話はもう一度改めてどこかでさせてもらう。
 今日は、ストレステストとはなんぞやと言われた時に、「耐性評価、耐性試験」それについて、話をさせていただく。
<00:23:30->
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 これは、私自身は、格納容器の耐性評価という研究をしていた。その話を少しさせてもらうとイメージがわかると思う。全く同じとは言わないが、この設計を超える状態、ここ(ピンクの点線)が設計の条件。そこの想定を超えて何らかの形で冷却材喪失事故とか電源喪失事故があって、所謂メルトダウンしてしまった。するとシビアアクシデントになって、制御不能の状態になる。この状態の時に、いろんな対策をやろうとするが、格納容器はどこまで持つのかということを評価する必要がある。
 これは格納容器がどこまで持つかということを評価する、この1点においてのみ評価する。
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 これは、マークI型、マークI改良型。ここがドライウェルといって圧力容器。炉心から万一配管が破断したり、今回も炉心溶融を起こしているが、中の容器から全部格納容器に出る、それをサプレッションプール、圧力抑制プールにベント管のところに送って冷却しながら全体を冷やす。格納容器の中に放射性物質を閉じ込める。これが特徴。
 その時に、マークI改良型というのがあり、胴の部分を太らせて、容量を大きくした。中のものを余裕を持って作る、こういう改良がされた。
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 さらにマークII型がある。
 今回あまりマークII型はお話してこなかったが、福島でいうと6号機。第二福島もそう。柏崎もだいたいもの型。もともとマークIIはこうなっていて、ここにダイアフロムフロアという床(サプレッションチェンバーの上部)があって、この上にいろんな機器類が載っている。これは圧力容器、これ(圧力容器下部中央部分)はペレスタルというコンクリートの一部でこういう構造物。この下にプールがある。このプールにベント管を縦に入れる。これでドライウェルで吹くと、例えば配管破断が起きると、蒸気がでる。最初は窒素だけれど、ざっとふいて、ここから下で蒸気を凝縮して圧力容器に再送。これが所謂サプレッションチェンバーとか、サプレッションプール、圧力抑制室という。
 マークII改良型はこれは同じく太らせている。余裕をもたせてこういう格好になっている。これも、形は同じような格好。110万(キロワット)クラス。大体最新型はこれ。
(澤井氏)110万?
(後藤氏)110万。これはそれより小さいタイプが多い。
<00:26:45->
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 それで、実はもう一つあって、BWR=沸騰水型、最新型。ABWRという。ABというのは、Advanced BWR。つまり改良型のBWR。大体135万キロワットクラス。原子炉建屋が合って、それに直径29mの鉄筋コンクリート製の格納容器がある。これが原子炉。(黒い部分)鉄筋コンクリート製で厚さ2m。この内側にライナが6mmの薄い鉄板。実際にはステンレスまたは鋼板が張ってある。これによって水や空気が漏れないようになっている。事故がおこったときには、この部分(炉内左上部)にいろんな機器類や配管がある。ここからもし個々で事故が起こって蒸気が出ると、このABWRは必要によっては詳しく説明するが、弁通管といってこの構造物の中から吹いてくる。ここの横から出て、ベント管へ吹く。ここにぐるりと円筒型ドーナツ型のタンクがある。これがABWR型。
このRCCVというのは、鉄筋コンクリート製格納容器のことをRainforced Concreat Containment Vessel=鉄筋コンクリート。
(澤井氏)初めて全部コンクリートでっていう?
(後藤氏)はい。これ全部コンクリート。沸騰水型では初めて。なぜかというと、(マークII型までは、)建物と格納容器が離れている。切り離してしまって自由に動く。フリースタンディング。これをABWRは建物に組み込んでいる。建物と一体になっている。いい面もあるが、???設計が難しい面もある。
(澤井氏)これは柏崎の?
(後藤氏)えぇ。これは柏崎の6,7号機、それから浜岡の5号機。志賀の2号機。それから、島根もそう。最新鋭。これはまた詳しいご説明は折を見て。格納容器は形状は円筒型。これはトップスラブとあるがフラット、平ら。だか持ち上がってしまう。これをプールの壁で押さえ込んでいる構造。
<00:39:40->
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 さて、加圧水型の格納容器を説明すると、これは鋼製で出来ている。外側にコンクリートで少し覆っている。直径が38mで高さが80mもある。すごい。こちらは、PCCVといって、Prestressed Containment Vessel。Prestressedというのは、鉄筋なんだが、鉄筋コンクリートの中にワイヤーが入っていて引っ張る。そうするとあらかじめ引っ張っておくと、コンクリートというのは、中に鉄筋が入っていて、圧力が掛かると伸びる。コンクリートにはクラック(亀裂)が入る。鉄筋で引っ張る力を持つが、どうしてもコンクリートが割れやすい。それを割れにくくするためにあらかじめワイヤーで引っ張っておいて、Prestress=あらかじめ力を掛けて圧縮しておく。それによって、割れにくくする。Containment Vesselは格納容器。PCCV。このときには、直径が非常に大きい。43m。高さが67mもある。この厚さが1.3mしかない。どういうことかというと、板厚は容器の直径に比例する。直径が例えば30mだったのが60mになったら2倍。そうすると30mの格納容器と60mの格納容器、直径が違うと、板厚は単純に2倍になる。だから本来は1.3mとかじゃ済まない。これはなぜかというとPrestressで非常に強くしているから。Prestressが効いているからこれ。Prestressの問題点もある。Prestressを掛けたが緩んでしまった。緩んでしまうと持たない。だから、そういうふうに高性能のものはその機能を失うと大変なことになる。だから、日本ではないが、アメリカではPrestressを使っていないから壁厚が2.何メータある。そういう特徴がある。
 それと、加圧水型の特徴は、圧力抑制プールが無いこと。つまり、ここで配管があったり蒸気が出たり、全部この中でこの圧力温度、格納容器のなかで抑えられる。水で冷却しなくていいようになっている。
 つまり、沸騰水型の場合、今回指摘しているようにこの格納容器が圧力抑制プールの機能を失うと、どんどん圧力温度が上がって駄目になってしまう。それが、加圧水型にはそういうことはない。プールを使っていないから。その中でできる。そういう違いがある。
 ただし1点だけ重要な問題がある。
 こちらの沸騰水型の時は、何度か話しているとおり、炉心溶融が起こっり水素が出たときに備えて、ここに窒素を封入している。だから水素爆発が起こらない。しかし、加圧水型は、容器には窒素封入していない。つまりそのままの空気。そうすると、ここで水素がでると、ほっておくと爆発してしまう。それで、水素を燃焼装置などの処理装置をつけている。だから、もちろん全く水素の安全性を考えていないということではないが、怖いのは、その機能が失われたら水素爆発を起こす。格納容器で水素爆発が起こると、非常に大変なことになる。
 今回、もし加圧水型の方で事故が起こっていたら、その問題が正面に出ていたと私は思う。つまり、格納容器内の水素爆発が脅威になっていたであろう。これは実際にスリーマイル島で水素爆発が起こっている。ずっとそれが長い時間問題になった。
<00:34:30->
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 さて、格納容器のこれはいいと思うが、実は、格納容器の壊れ方、破損モードというが、先ほどストレステストと言っていたが、いろんな原因があって、格納容器が壊れる状態になったらどうもっていくか、格納容器の耐性評価。いろんな壊れ方がある。
 その元になるのが、DCH=Direct Containment Heatingと言って、これは、圧力容器自体が、非常に高圧の状態で爆発すること、壊れること。例えば、今非常に古いプラントに問題になっているが、照射脆化で圧力容器が駄目になる。それが爆発的に高圧で割れると直接この中の蒸気がぶわっと出る。その状態になると格納容器が部分的でなく、一気に壊れて、そうすると格納容器もヒートアップしているから、格納容器も一気に壊れる。そういう壊れ方を??している。非常に脅威。1時間たたないうちに全滅する、そういうことがありえる。
 それから、反応度制御失敗。
 そしてチェルノブイリのように所謂制御棒の、制御に失敗すると水素爆発する。Detonation=水素爆発。爆発が厳しいと、音速で圧力が上がり、音速以上の速度で周りを壊していく。それをDetonationという。これは明らかに3号機の爆発はDetonationが確実に起こっている。1号機も多分Detonationになっていると思う。
 あと、デブリ接触といって、これは前にもちょっと話したが、炉心が溶けてメルトダウンして、溶融物が床に落ちる。それが流れてきて格納容器のシェルを溶かしてしまう。そういうモード。特にマークI型で問題になる。それが、デブリ接触。今回これが起きたのではないかと疑っている。なぜかというと、メルトダウンが相当早く起こったとすると、流れて一番いきやすい。これが実際実験もやったり検討をしている。だけど、このデブリ接触を起こさなくて済むという保証はない。
 それと、水蒸気爆発、これが溶融物が???のここで圧力容器の中で冷却できずに水蒸気爆発を起こすか、格納容器に落ちた後ここで爆発を起こすか。水蒸気爆発に関しては、実は、マークI型はここへ落ちた時に水がない。だからここで落ちた後に水を入れる格好で冷やすが、マークIが水蒸気爆発の大規模なものを起こらなかったと思うが、マークIIならどうでしょう?これで炉心溶融を起こした時、ここに落ちた時そのままダイレクトにプールの中に溶融物が落ちる。これはものすごくリスクが高い。この時は水蒸気爆発を起こしてもおかしくない。マークIでも起こしてもおかしくないが、特にマークIIの場合のほうが起こしやすい。脅威になる。
 従って水蒸気爆発の脅威というのは、格納容器の形によって違う。マークII型は一番脅威ということ。ただし、他のが大丈夫というわけではない。他のも水を入れて冷却するその時に爆発の可能性があるので、そのことを忘れてはいけない。
 それと、MCCIというのは、コア・コンクリート反応といって、先ほどここで溶融物がここでコンクリートと接触して大量のガスがブワーッと出る。これはまた凄い状態になる。それでコンクリートを侵食してどんどん溶融物が沈む。そうすると格納容器の鉄板も溶かして下にいって、これが所謂チャイナシンドローム。そうすると、地下にある地下水に接触すると蒸気爆発を起こす。これも厳しいシナリオ。
 以上のようなこれを早期破損モード、エナージティックな破壊と言っているが、こういう爆発的な現象がこんなに一杯ある。それが原子力の特徴。だから、今まで水素爆発っていうのは、どちらかというとかわいらしいといってはおかしいが、そういうものだった。
 さて、耐性評価という格納容器については、これを言っている。これではもう駄目。こういうことが起こったらどうしようもない。準静的な加圧・加温モード、破損の。これが問題になる。
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 これは私が昔研究していた時の内容。炉心が溶融したりすると格納容器の除熱に失敗したり、コアコンクリート反応起こしたり、これは早期エナージティックな現象、これは駄目なんです。どうしようもない。
徐々に圧力温度が上がった場合には、格納容器本体が壊れるか、フランジが加圧、或いは加温でリークするか、電気配線の貫通してもれるか、その面積がどのくらいあるか?それによって放射性物質がどれくらい出ると、そういう評価をしている。このときに、条件がある。例えば、私がやったのは、沸騰水型の鋼製の格納容器で評価した。マークI、マークI改良型、マークII、間マークII改良型、先ほどの4種類について、代表的なプラントの構造で、
①最初に弾性解析といって比較的簡単に設計でできるような計算。弾性解析といって、コンピュータで解析して、どこが弱いかな?と弱そうなところはどこかなと抽出する。そこについての評価を少し。
②材料データを取る。高温時の温度で材料がどのくらいもつかという材料データを取って、その材料のデータを使う。つまり普通は設計っていうのは、例えばJISのSS400とかあったら、そのJISのその規格値とその規格の強度を持っていると考えて設計する。しかし、ここで言っているのは、実際のプラントで使ったデータをミルシートというが、それからデータを読んでだいたいどのくらいあるかというのを確認する。そうすると、規格値よりも1.2倍とか1.3倍あるとそういうことが出てくる。それを強度の計算に使う。
③格納容器シェル本体とフランジ部については後で出てくる。弾塑性解析という、これは解析の方法が最初は設計でやる弾塑性解析より少し、材料はだんだん力が掛かってくるとやわらかくなる。そして塑性変形をしてしまう。そういう領域まで考慮した解析を弾塑性解析という。用途によっては弾塑性解析やると少し、弾性解析を??確認できる。そういう評価をする。
④その時に構造物の破損のクライテリアをとって、どういうふうにしたら壊れるかという評価基準を決めて、私はこのとき上限・下限の二つを用意した。リークについても実験をしたり計算をして設定をした。
⑤これらを元に圧力温度上に構造破損、或いはリーク限界、これを耐性評価線図と言っているが、これを作成した。
⑥これらをして、さらに確認のために格納容器の破壊実験等をやった。こういう経緯。

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このうちの一つが、格納容器の上のほうにあるフランジ、それだけじゃなくて、機器の搬出入をするところにフランジがある。型式はこれだけじゃなくて次回のとききちんと話すが、フランジのタイプがいくつもある、そうすると、直径が大きいほど弱いんだが、トップフランジが弱いと確実に言えるかというと、必ずしもそうではない。トップフランジじゃなくてももしかすると機器フランジが弱い場合もある。それがこうやって開いていく。圧力で。ここにガスケットが2錠入る。これはシリコンゴム。これが入っていると開いていっても圧力があると、変形しながら少しくらいなら漏れない。この開き量のデータを求めて、これが圧力を掛けて開いていくと大体、私のやった実験では、1.7倍くらい。これは幾何学???で壊れる。そっと触っただけで。本当はこの状態だとすぐに漏れてしまうが、締め付けておいて圧力をかけてぐっと延ばしていくと、ここのこの形状で一度力を掛けなかった時がこうやって弾性になっている。それよりも1.7倍ももつ。実は。
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つまり、ぐっとしめつけておいてそれを圧力をかけてずっとやっていくと、変形して、こういう感じになる。ここを締め付けてみる。これを続けると、この形が元に戻る状態がある、その状態より持つはず無い。しかし、圧力を掛けてこうしてずっと戻っていくと、もとの状態より1.7倍持った。押し付けて。これはセルフシール機能という。ガスケットにそれ特有の機能があるので、バっといったときに、すぐに漏れるというわけではない。それは実験的に私は確かめている。そういう意味では、この1.7というのはこのときやった実験なので、実際のプラントでどのくらいの制度があるかはわからない。
ただ、このくらい余裕があったというのは事実。
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開きをやるとだいたいこうなる。ここにセンサーをつけて圧力を上げていくと、徐々に。この縦軸は、先ほどのフランジの開き量。この距離をとっていくと値が5mmくらいとか漏れるまでに5mm。大体6-7mm持った。ただしこれは、ガスケットに温度掛けていない、圧力だけ。圧力だけだとこのくらい持ったということ。ところが、これはゴムなので、温度を上げると弱くなる。これを200度、250度、300度と温度を上げて実験した。開きをコントロールするとこういうデータが出た。
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これは型式の違いだが、大体同じような特性。300度ちょっと上げたところ、縦は圧力、横は温度。ある温度、例えば300度くらいだと、ある圧力だとここで漏れるとか、15キロ、20キロくらいになると、250度くらいで漏れてしまう。こういう関係。圧力よりも温度に厳しい。圧力に対しては依存性が少なくて、温度で漏れる。ガスは窒素と蒸気、そういうのを実験でやっている。水素については危ないのでやっていない。
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 今回これで評価をして、さらに電気配線加圧、これも実験した。この結果を元に先ほどの温度が何度になったら漏れるでしょうか?ということをやった。実験で求めた。
これは、有機シール材(エポキシ材)その中をこうやって樹脂が詰まっている。ここ(中央連結部)は格納容器の壁がある。溶接してついている。しかし電線が通るために、溶接できないので、樹脂が入って詰めてあるだけ。これが温度があがると抜けてしまう。それがだいたい300度くらいで抜ける。
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それともう一つ。少し強度計算の話なのでちょっと難しい話を・・・。
強度計算というのは、例えば格納容器のある部分に力を掛けてだんだん変形していく。格納容器に圧力を掛けると、ずっと膨らんでいく。この量をmmで出す。これ(縦軸)は、圧力。圧力をどんどん上げていくと、圧力とともに変形が進んでいく。最初はまっすぐ。これを弾性解析という。ここで材料が限度に達するとここからグニュッと曲がり始める。圧力はあまり上がらないんだけど、どんどん変形が進んでいく。これをここを弾性解析、弾塑性解析という。塑性変形といって、変形してしまう。弾塑性解析というのは、設計はこの弾性解析でやるが、今回のように弾性評価、どこまでもつかというのを計算するために、これをぐっとコレまで計算している。そのときの評価基準で下限界をASME、アスメ、米国の幾何学会のセクションIIIにある2倍勾配法を使った。どういうことかというと、初期の勾配がこうなっていたのを、このカーブの2倍の角度、タンジェントこれが2倍いったところに、直線を引いてぶつける。そこの線で交わったところ、ここで限界ですと決める。これを2倍勾配法という。勾配が2倍のところまでは働いたと考える。これを下限界、つまりここまでは持つであろうというふうに考えた。
もう一つは計算してこのコンピュータ解析をやって、理論的にもつ限界までずっと伸びて、解析する。亀裂が発生しないことが条件。そうやって計算をして上限を求めた。つまり、下限と上限、両方を求めて、この間くらいに入るんじゃないの?というのが、評価。

その③に続きます。