【吉田氏の講演】
 <01:30:50頃>

誰に投票しましたか

(吉田氏)「誰に投票しましたか?」ということが世代別に書いてあります。こちらの資料は東京MXが選挙の時に出口調査を行った資料です。
非常に面白い結果が出ているなと感じています。20台30台40台とありますが、見事に綺麗に分かれているというか、ナナメの線が出ているような気がするんですね。こちらご覧になって、上杉さん?
(池上氏)70台は石原さん、圧勝・・・でしょ。やっぱり東国原さんだんだん年齢が上になるにつれて、数字が低くなってきてる。共産党の小池さんが面白いですよね。70台は20台よりも指示高いですよ。
(上杉氏)50台と20台・・・
(池上氏)50台と70台高いでしょ?20台が少ない。
(上杉氏)東国原さんは、20台30台だけで投票すれば都知事になってましたね。
(吉田氏)本当にそういうことなのかもわからないですね。
(上杉氏)この会場で投票していたら、危なかったという・・・、東国原さんが都知事になっていたかもしれないし、逆に言うと石原さんは、次はもう出ないとまた嘘をついているかもしれませんが、出ないとなると、東国原さんが最有力になって、4年後はもしかして、東国原都知事が誕生しているかもしれないと。これだけ見ていると年齢上がってきますので・・・
(吉田氏)そんなこともあるんでしょうか。というのは、今日ですね多分ここに来て頂いている方は、きっと投票に行かれた方が多いんだろうと思います。ですけれども、行ってない若年者層っていうのは、非常に多かったはずなんです。彼らがもっと投票に足を運んでいたら、本当に違う結果が出ていたというのは、多分このグラフで感じるところなのかなとは思っています。
(上杉氏)そうですね。小池さんに関しては、自由報道協会に実は事前に記者会見をやったんです。4候補、主要、あ、5候補ですね。ドクター中松さんも含めて。で、渡辺さんと東国原さんと、小池さんとドクター中松さんと。で、その時は石原さんも来たんです。そして、松田さんも来てもらって記者会見をしてもらったんですが、今流れているニコ動さんもですけど、小池さんの人気はすごい高かったんです。インターネットのメディアの中では。びっくりするほど高くて、意外だなって。ですから、共産党じゃなかったら、当選していたかもしれない。
 <会場笑い>
(吉田氏)あの、そういう意味ではインターネットのユーザーというのは、実は政策論争というのに目が長けているというか、そんなことが言えるのかもしれませんね。いずれにしましても、民主主義において投票というのは非常に大事な行為だと思います。しかし、今日第一部で皆様にやっていただいたようなオープンな議論、これは大事なことです。
主体的に行動する方法

このオープンな議論を通じて、自分たちが持った意志、この意志に基づいて行動を起こすということ。この議論と行動があることによって、健全な世論が形成される。そして、この世論がきっちりと政治に反映されれば、ここにかかげてありますように、私たちが望む社会が実現させることができる、本当に正常なプロセスなんじゃないかと思っております。
こんなプロセスをきっちりちゃんとするためには、やはり我々は主体的に行動していかなければいけないと思います。また、議論して、行動することで、それがどうしたら政策にまで行き着くことができるのか、ここは私自身も非常に疑問を感じているところ。その方法がわからないところでございます。
残りの時間を使いまして、今、申し上げたようなテーマでお話を進めていただければと思います。よろしくお願いいたします。


【主体的に行動する方法、政治に関心を持ち続ける仕掛け】
<01:34:45頃>
(池上氏)はい。わかりました。ということで、では政治に関心を持ち続けるしか、???あるいは世論を形成する上で私たちに何ができるかというところなんですが、政治も報道もし、あるいは国会議員の秘書もやっていた立場で言いますと、ようするに有権者なり国民がどうすると政治家は動くんですか?
(上杉氏)やはり、選挙に直結した形での動きっていうのが一番大きいですね。それは投票行動なんですが、それだったら例えばデモもそうなんですが、声が届くと政治家というのは耳を傾けざるをえないんですよ。そういう意味では声を届かせると。今そういう部分では非常にいいツールがあるんですね。
 たとえば、ツイッターとかふFace Bookもそうですが、こういうのはツイッターのアカウントを持っている多くの政治家は、意外と持っていると意外と気になって自分のタイムラインとかずっと覗くような癖があるので、そこに対して、デモじゃないですけど陳情という形で個別陳情をかけると意外と個別の声は届きやすいと、ここ2、3年の感覚ですね。これまではそういうことはできなかったんですが・・・
(池上氏)なるほどね。ツイッター使ってないお年寄りの国会議員も随分居ますよね。
(上杉氏)だいぶいますね。秘書が・・・。ただ、秘書から伝わるっていうのはだいぶ難しいかもしれないです。その温度差が自分に直接くるのと、一旦事務所を通して、私も秘書やってましたけれども、それから代議士とかに伝えるっていうのは、ちょっとワンクッションおくので、その部分は、これまでのメディアを通じてとかそういうやり方だと思うんですが、ただどうですかね?このオープンな議論というか政治に関心を持つっていうのは、意外と世界中を回っていると発展途上国とか、いわゆる先進国ではない国のほうがむしろ政治的な関心高くないですか?どうですか?
(池上氏)これはね、例えばアメリカにしてもイギリスにしても、いわゆる草の根レベルで皆きちんと意見を持っていて、やっぱり非常に象徴的なのは、自分たちの仲間から議員を出しちゃうんだよね。で、要するに自分たちの中から「こいつを議員にしようじゃないか」って言うと、「お前は金ださなくていい。我々が手弁当でやるから」ってやるわけですよ。結果的に全く金の掛からない選挙になっていくわけですよね。これは、全然違いますね。
(上杉氏)政治参加の意志っていうのは、非常に強いですよね。日本だと、例えば今日もそこの銀座でやってますけど、東電に向かってデモが相当大きいのをやっているんですね。でもあまり報じられないしデモに出ること自体が、やはりあまりクールじゃないというような若者の中に意識があるんですが、池上さんの時代ってデモってありましたよね?
(池上氏)私は団塊の世代の一つ下ですけれども、ちょうど1970年安保の前の頃っていうのは、ものすごかったですね。
(上杉氏)今あんまり若い人たちって出ない・・・。私も出ませんけど、あんまり。
(池上氏)この前の渋谷で反原発のデモってものすごい人が出たでしょ?たまたま通りかかった人が、あまりの数でびっくり仰天、驚いた。
(上杉氏)2万人くらいで、海外メディアではもう報じられていましたが、大手のメディアはあの部分はあんまり・・・
(池上氏)扱ってましたけど、扱い小さかったですね。 
(上杉氏)海外だと原発反対デモっていう形で、脱原発デモ、自然再生エネルギーデモっていって、かなり大きく扱われてましたけど、そういう意味で温度差がありましたね。
(池上氏)あの時面白かったのは、イタリアが原発にNOって言ったでしょ?
(上杉氏)国民投票で原発の再開を中止するっていう90%以上の得票で。
(池上氏)で、イタリアの国民が大喜びしたり、抗議活動してるのを日本のメディアが大きく取り上げていたんです。お膝元の渋谷の反原発デモは小さな扱いで、イタリアの反原発の動きは大きかったですね?
(上杉氏)そうですね。あれ、何なんですかね?自主規制なんですか?メディアのほうの。
(池上氏)自主規制じゃないですね。あれはね、空気なんですよ。不思議ですよね。
(上杉氏)空気。山本七兵さんみたいですね。
(池上氏)まさに山本七平さんの空気の研究って、未だに日本てそうだなっという。それぞれの新聞の空気っていうのはあるんですね。だから、反原発だっていうと、ある新聞記者が取材に行くとそれなりの扱いになるなってところもあれば、うちはどうせたいした扱いにならないんだろう?って誰も提案をしないとそのままっていうところと。実は提案をすれば、取材に来て原稿を書けば乗るんですよ?ちっちゃくても。
(上杉氏)じゃ、やってないわけですか?
(池上氏)要するにやりますよって奴が出てこなかったり、興味が無かったり、「どうせやってもな」みないな冷めた空気があります。
(上杉氏)社会全体に同調圧力じゃないですけど、均一性を求める空気がありますよね。例えば人と違ったらいけないという、これは日本人の横並び精神っていうか横並びで良いか悪いかは別にして、例えば、こうやって行動を起こすということもそうですし、政治参加するということも、人と違うと。それは全員が参加すると参加するんですけど、横並びで違うとなるとやらない。
 例えば、クールビズでクールビズやるというと、私も10年前からクールビズやってるんですけど、その時は国会に入れてくれなかったんですね。ネクタイしなくちゃいけなかったんで。ところが今だったら逆にクールビズをやってないほうが、何でネクタイしてるの?ってなりますし、そういう横並びの雰囲気って言うのは非常に強いなって。
 先ほどニュースでありましたが、レバ刺しが一応今後食べられなくなる可能性があると厚生労働省が発表したんですが、生のレバーを食べちゃいけないと。でも、レバ刺しも食べたい人は食べればいいんじゃないか?と、どうでもいい話になりましたけど。
 つまり、
多様な価値観っていうか、こうだっていう強迫観念を自ら自分たちでその道を進んでしまってるんじゃないかな?と。そうすると、そういう主体性な動きっていうのは、横を見てから、「はい、次、主体性」っていうよりも、失敗してもいいから、自分たちでどんどん進んで、結果として、同じ方向を向いている人が勝手な集まりになるというそういうような社会のほうがむしろ多様性が生まれやすいと思うんですけどね。
(池上氏)不思議だよね。「人と違ってみんないい」なんて詩を皆もてはやすくせにね。
(上杉氏)あー、それ逆にないからそれを求めるんですね。海外だと当たり前ですからね。
(池上氏)当たり前ですよね。わざわざそんなこと言う必要がない。「人と違ってみんないい」って、当たり前じゃんとしか言いようがない。
(上杉氏)あの、メディアの中で一番気になるのが、私NYタイムズに12年前かな、入った時に一番びっくりしたのは、当時、NYタイムズの支局員のステファニーさんがビジネス記事を書いたんです。そしたら、たまたま同じ日に、ワシントンポストで東京発で同じような記事が出たんですよ。日本だったら安心しますよね。「あ、良かった」と。もうびっくりしたのは、その時にNYタイムズもワシントンポストの人もたまたま知っていたんですが、二人とも大騒ぎするわけです。
 なぜかというと、「同じになってしまった。自分たちは決して示し合わせたわけでもないし、相手のを見たわけでもないし、おんなじソースから協調してやったわけでもないし、メモ合わせをやってない。」メモ合わせは余計ですけど。とにかく同じことが逆にマイナスになるんです。それはどうしてかというと、場合によっては、本当にそういうことをやっていたら、首になってしまうんです。つまり、メディアもそうですけど、言論は基本的に多様っていうのがまず第一歩にあって、むしろ同じ言論っていうのをジャーナリズムの側が非常に嫌うという根本の空気、それこそ逆の空気が少なくともアメリカのメディア界にはあるのかなと。それは日本と特にアメリカの言論空間の大きな差異になってしまったのかなというのは、12年前に大きく感じましたけどね。
(池上氏)あの、それはそれで、議論としてわかるんですけど、それもやっぱり有権者として世論をどう形成していこうかって考える時に、例えば先ほどツイッターでツイッターをやってる人に対しては、いろいろ陳情をするとか意見をいけばいいよというのがありましたね。
 もう一つは、直接、議員に働きかけるということ。つまり国会議員って次の選挙が気になりますから、そこにどれだけ直接的な働きかけができるかだと思うんですよ。というのは、菅内閣に対する不信任決議で随分ゴタゴタしたでしょ?あの後、不信任決議が否決されたんですけど、あの騒ぎの時に、自民党の人たちが皆、金曜日土曜日で選挙区に帰って戻ってきてから、急に態度が変わりましたよね。
 つまり、「菅を何としても引きずり降ろさなければいけない」っていう力がふわっと減ったの。つまりそれぞれの選挙区に帰って、「おまえ何やってるんだ?菅も情けないけれど、だからといってこんなことやってる場合じゃないだろう?」と皆で有権者や支持者に怒られたんですよ。
(上杉氏)そうですね。やっぱ特に池上さんがおっしゃったように、その自民党の議員もそうですし、多分民主党の中に、一旦菅降ろしに加担した人たちは、やはり政治家としての信念を直前で変えたということで、かなり批判はされましたよね。その象徴なのが鳩山幸夫さんですとか、原口さんもそうだったんですが、やはりNOを一回突きつけてそう言った以上は、政治家っていうのは、中身の問題よりまず自分の言葉が変わることが有権者に不信感を与える。その部分は少し残念なのかなと思うし、逆に有権者のほうもそういうような変わる政治家に対しての厳しい目を持つことが必要なのかなと・・・
(池上氏)と同時に、政治家を動かすためには、直接的な働きかけ、つまりそれぞれ皆さん方の選挙区から当選している人にいるわけですよね。今比例代表で復活当選という形で自民党と民主党、両方が当選している人もいれば、どっちかだけというとこもありますよね。そこの事務所に抗議電話があり、あるいは激励の電話なり、あるいはそこに行って「こうこうこういうふうにしてはどうですか?」と直接的な働きかけというのが実は極めて効果的なんですよ。
(上杉氏)それは秘書の立場から言うと、非常にめんどくさいんですが。できうる限りやめてほしい電話ですよ。
(池上氏)だけど、そんな電話が一杯掛かってごらんなさいよ。秘書が悲鳴上げて「先生、こんな電話が一杯掛かってます。どうしましょう?」っていうだけで、議員にはすごいプレッシャーになりますよね。
(上杉氏)そうですよね。えー、あんまりお勧めしませんが・・・確かに聞くことは聞きますよ。
(池上氏)こらこら。つまりそうやって働きかける、或いはそういう中でこいつが駄目だとなったら、次に誰かを立てていくと、いうことが大事なことですよね。
(上杉氏)まさに選挙にそれは変えられることなんですよ。マニフェストを掲げた今回の前回の衆議院選で、マニフェストは4年間の工程表だったんですよ。それを今チェックできるわけですから、「あれ?やってないな」と思ったなら、それは投票したということで契約を結んだわけですけれども、「契約違反だな。あなたには約束を破ったから入れませんよ」という行動に出られますよね。投票行動によって。
(池上氏)そういうことです。やっぱりね、政治家を育てるっていうことが実はとっても大事なことだと思うんです。あの、日本の政治家は情けないと思うでしょ?信じられない人が多いんだけれども、それを嘆いていても、でもそれ「政治家を選んだのはだれよ?」っていう話になるでしょ。
 アメリカの場合、例えば大統領になる前に、まずそれぞれの党の候補にならなければいけない。来年11月のアメリカ大統領選挙に向けて今もう、共和党は候補者選びが始まっているでしょ?現時点で既に来年の8月に共和党の党大会で共和党の候補者が決まるのに、そこに向かってもう手を挙げている人が何人もいるんです。手を挙げた途端に、マスコミがそいつが過去に何を言っていたのかっていうのを全部洗い出されて、前に言っていたことと違うじゃないかとか、全部洗いざらいだされ、更に有権者がそれに対して意見を言っていくんですね。ここからなんですよ。
(上杉氏)そうですね。そういう厳しい検証期間というのに耐えて初めて大統領候補になれますし、あと、イギリスも総選挙出るだけで、党の候補者選定作業っていうのは1年間くらい徹底的に議論・スピーチをやらされて、そして投票を重ねて選ばれると。当選しても最初の一回目は、相手の最強のところ、つまり労働党だったら保守党の党首クラスのところの選挙区で出て鍛えられると。
 こういう風に政治家になる前に、政治教育課程がある。日本の場合は、どっかの世襲議員じゃないですけど、ぽんと出てきて、やはりそういう鍛えられてないんで、ちょっと批判されただけですぐ辞めてしまうとかですね、そういう甘い状況になっているので、その辺の部分を考えてみると、政治家のみならず、それを支える一般の国民、そして私たちマスコミの人間ですよね、チェックを果たさなくてはいけない、政治家を甘やかしてはいけない部分の役割をちゃんと果たしていないのかなという意味では、メディアもそういう意味で政治に関心を国民に持ち続けて頂くための役割を、もう一回見直したほうがいいんではないかと思います。
 やっぱり政治家だけのせいにしたり、かといって有権者のせいにしたり、役人のせいにしたりすると。日本のメディアに欠けているのは、自分たちのメディア検証っていうのが他の国と違ってないんですよ。他の国では、必ずNYタイムズならNYタイムズの中にNYタイムズを批判する欄があって、毎日それを見ているわけですけど、そういうようないろんな言論があるということをメディア自身がやっていかないと、どうも国民の方もそういうような関心を持ちにくいのかなと思いますね。

第二部【その④】へ続きます。