※この記事は、6月24日 1号機ベント失敗していた可能性-問われる責任の続報です。


昨日、後藤さんの1号機ベント失敗についての解説を見ることができました。技術的なことで難しいかと思っていましたが、とても判りやすく解説してくださっています。是非ごらんください。
原発の過酷事故に対する安全対策が、いかに貧弱であるかが露呈しています。

2011/6/24 CNIC News 後藤政志氏 福島原発1号機のベント「失敗」について
http://www.ustream.tv/recorded/15584058  (25:59)
http://cnic-movie.blogspot.com/2011/03/328-cnic-news.html (25:29)
どちらも同じ内容です。

【以下、時間のない方のために、内容を起こしています。ご参照ください】

(澤井氏)
今日各新聞で1号機のベント、所謂「排気」ですが、それが失敗していたと東電の関係者の証言があるということで、どういうことになっていたのか。政府が今IAEAに報告書を出しているが、それではベントが成功したと報告されている。それが違うのではないかという大きな疑念がでてきた。これについて、後藤さんに解説してもらう。

(後藤氏)
今日、1号機の格納容器ベントの失敗ということが仰々しく出ていたが、今見ているのは毎日新聞。東電が「弁の開放が出来ていない、未確認だった。ベント成功したと言っていたが、実際は未確認だった。」という情報。
今日は少し短めに、これについて何があったのかと私の見解を若干つけて話しをさせてもらう。
(01:34-)図で説明開始
福島第一原発1号機のベント経過

6月24日 毎日新聞より
  ①MO弁
  ②AO弁・小弁
  ③AO弁・大弁
9時15分ころ       ①を手動で25%開ける
9時半ころ        ②を手動で開けようと試みるが高線量で現場に辿り着けず
10時17-24分 ②を開けようと中央制御室から操作したが効果確認できず
2時ころ          ③を開けるため空気圧縮機起動
3時36分        水素爆発 

これは格納容器。圧力抑制プールから耐圧ベントというシビアアクシデント対策用でつけられたベントラインがあり、これから上の排気筒へ繋がっている。バルブの一つは①MO弁を手動で開けようとした。ただし全開できなくて25%程度しか開かなかった。作業場の問題だろうが、そういうことが9時15分頃にあったとなっている。①MO弁を開いてベントするためには、②AO弁・小弁ともう一つ③AO弁・大弁の二つが並列になっており、これを空気圧縮機を使って作動させる。要は、ベントをするためには、②AO小弁か③AO大弁のいずれかと①MO弁の両方が開かないと出て行かない。今話した①MO弁は何とか一部だけど開いた。②AO小弁を手動で開けようとしたが、非常に高線量であって現場にたどり着けず、結果としては、開けることができなかった。これが9時半で、さらにそれから相当経って、45,6分以上経ってから②AO小弁を開けようともう一度中央制御室から操作した。つまり②AO小弁を必死で開けようとした。しかし、結果としてはその効果を確認できなかった。つまり開いていたとは看做せなかった。それで、さらにそれからだいぶ経って、3時間半くらい経って、③AO大弁を開けるために空気圧縮機を起動した。
そうすると9時から始めて2時頃までずっと作業を続けて、ここ(2時頃の)の作業をやって開けたと表現していた。

格納容器圧力の推移

(04:15-)そしてそれは、時間で見ると、今の格納容器の圧力と、4百数十Paが設計圧なので、それのだいたい倍近くの750オーダーまであがっている。これがだんだん時間と共に落ちてきて、ここでベントしたと言っているが、実際はこの下まで、500を超えている状態。つまり、格納容器の設計圧はこれより下だから、設計圧よりまだ高い状態。弁としたといっているが、こうなっている。しかもこの2時50分以降、弁とした後に上昇傾向にある。ということは、ベントできていないのでは?ということ。『政府の報告書として「成功」と書いたのは、間違っている。訂正しないのはけしからん』という趣旨のことが(毎日新聞に)書いてある。
一つの問題は、ベントが遅れたことは何が問題かというと、当然、格納容器ベントというのは、前から話しているとおり、本来は出してはいけない放射能を出す。それでも設計圧より大幅に超えていて爆発してはたまらないので、ベントするということがある。そういう意味ではこんなに何時間もベントできないことは非常に問題。これについては、毎日新聞の中でもコメントとして東工大の先生が、格納容器のベントについてちゃんとこれだけ時間がかかったことは問題だと主張している。私もそれはそうだと思う。
ただ、このときちょっと考えてみたいことがある。(06:20-)この状態は実は、上沢さんが作ったデータなのだが、放射性物質の線量率がどう変化したかを見ている。細かいところは見にくいだろうが、11日12日、ベントに成功したと言われているこの段階の放出量、空間線量は、後の大きく出てくるものとは違って、それほど大きくない。そうするとベントがちゃんと出来ていないのではないかと、このデータから見てもそういう風に言える。
ただ私が気になるのは、これについてベントがうまくいったかいかなかったか、手順が悪かったのではないか、そういうことに対する批判なんだが、それを事実として認めた上で、本質的な問題はそういうことではないだろう。何がいいたいかというと、この格納容器ベントというのがもし失敗した時には、格納容器が爆発する可能性を持っている。極めて危機的な状態。それにも関わらず、ここのバルブを手動で操作する。電気が行っていないので仕方がないのだが
、①MO弁に行って手動であけようとした。で、完全に開け切れなかった。②AO小弁も手動で開けに行ったが、高線量で開けられなかった。さらに制御室に行ってなんとかやろうとしたが、それも出来なかった。仕方が無いので③AO大弁を開けようとした。この時に①と③が開かないと出来ない。
これを設計するシステムから見るとどうかというと、①MO弁を開くのを失敗したらおしまいです。②AO小弁と③AO大弁の両方を開くのを失敗しても駄目です。何かというと、これは原子力における単一故障基準、つまりこの安全系として考えた時に、この操作が出来なかった時にどうするかというバックアップがない。つまりSingle failure、というには、ある一つのことが駄目になったら、それを以っておしまいというシステム。それは原子力の安全系では考えられない考え方。なんでこんなことやっているという話。実はこれは過酷事故用であって、本来原子力で設計している安全設計思想は入っていない。単についているだけ。だからこれは私が前から言っているように、過酷事故対策というのは、そういうことであって、信頼性がない。だからそういうものに頼っても無理。これが一番いい例。だから、今回私はこれがあっても全然びっくりしない。こういうものだと思っている。機械というのはこういうもので、トラブルがあったときには、操作できないのは当たり前。その時にどうするかということを考えて初めて原子力の安全設計というのは、議論の対象になる。だから、ここで遅れたこと、発表の仕方がいけないのはそのとおり。まぁいいですよ。政府の発表も成功したっていうのも議論があるのはわかる。しかし、私が一番気になるのは、そういうこともありうるシステムなのだから、じゃぁこれからどう考えたらいいのか?現有のプラントも全てこういうものでしかない。事故がこの状態になったら、同じ状態になる。信頼性はない。そういう状態になっているということを、というか、そういう設計思想で、現状そうなっているということが、私が一番気になっていること。
だから、今回の事故原因、まずなぜこうなってしまったか。原子炉の水位が落ちて、その後格納容器の圧力がなぜ2倍までなっていたか、この前田中光彦さんが説明してくれたようにどこかの配管、あるいはどこかの径が破れたりして出てきたのではないか、それから、私も考えているが、格納容器のどこかの機能が喪失していたのではないか、そういうことからこうなったのではないか、と推測している。そのことの大切さ、それは非常に大切。
それと同時に、こうなった時に対策としてある耐圧ベントなるものが、こういうもの。
これは過酷事故関係ではすべて言えることだが、電源がなかったから電源車を持ってきた。つなごうと思ったがつなげなかった。電源車そのものがそもそも交通渋滞でなかなか着かなかった。そういう話もある。水だってそう。水を確保しようとしたが、水源が無くなってしまい、海水を入れるしかなくなった。水はどこから入れるか。通常の系統はないから、これも過酷事故対策として、消化系から入れると前から考えてある。その容量も極めて小さい。しかもそれに以ってくる水のラインを付けてつなぎこみをして作業をして入れることは、決死の作業。放射線が非常に強い時にやるわけだから。そういう中で極めて難しい作業、本当にうまくいくかどうかわからない作業でここまできている。そういう風に見える。
今回の事故全体を見たとき、「こういう過酷事故対策があるからいい」とそういうレベルで考えるのは、安全設計としては前から言っているとおり間違っている。これが一番気になっていること。
これについては、考え方として今後もう少しきちんと話しをさせてもらうつもりだが、耐震基準の見直しと、安全設計審査指針の見直し、この前も一部少し話したが、安全委員会も当然考えると言っている。どのレベルで考えるのか?私はそれを非常に気にしている。安全設計、あるいは耐震設計の審査の審査指針の考え方の根底をもう一度見直さないと同じことをやってしまう。
例えばある一つのことがあったから、それに対する対策をやるというレベルでは全然成立しない。なぜかというと、これはまたきちんと話しなければいけないが、過酷事故の爆発はものすごくいっぱいある。いろんなモードがある。端的に私が思い出すだけでも、最初に核反応の制御に失敗すると、核暴走する。核暴走しなくても、例えば圧力容器が高圧で破損すると一気に全部ぶっ飛ぶ。格納容器もすっ飛ぶ。あるいはそこまでいかなくても、圧力容器が破損までいかなくても、炉心溶融になってメルトダウンしてそこから例えば溶融物が出てきて、それによって冷却、あるいは溶融物が落下する時、下にプールがあって水蒸気爆発を起こしたとか、で、爆発する。そういう意味で見ると、爆発的なモード、爆発的破損の仕方はいっぱいある。水素も危ないから今回窒素封入した。して、現在になっている。格納容器では水素爆発は起こらなかった。だけどそれが漏れて爆発した。こういう格好になっている。いずれにしても原子力は、そういう爆発的な現象が起こりうるもの。だから怖い。そのエネルギーが大きいから。その可能性が少ないという。私も可能性が多いとは言っていない。水蒸気爆発だってすぐに起こるとは言わない。しかし、現象として、起こる可能性がある。それは起こってしまったらおしまい。だから確実に防がなければならない。ところが過酷事故対策はどれ一つとっても、確実ではない。可能性を低めるだけ。下げるだけ。それが、私は非常に恐ろしいことだと思っている。だから、今回まず耐震設計に対して震度は実態を上回るように設定しなければならない。これは鉄則。それと同時に、故障が起こったときの対策が万全に
バックアップを取れなければいけない。なにか故障したら、確実に防ぐ方向にならなければいけない。今回のように多重故障がありうるのだったら、それに対しても対策ができていなければならない。その対策というのは、このように信頼性のない対策では対策になっていない。
例えば、もうちょっと説明すると、これに単一故障基準を設定するとどうなるか。一例でいうと、この①MO弁なるものが開かなかったら、その場合は、ダブルにする。管を二本にして、もう一個バルブをつける。どちらかが開けば大丈夫。そうすると確立的には半分になる。だけど、確実とはいえない。そしたら、サーモをつけるか。そういう議論。②と③はダブルになっている。少なくとも二つある。でもこの二つですらうまくいかなかった。そうなるとそもそもの環境や操作方法が、電源がなくてそういういろんなことを全部考えて、これが駄目だった時はこれがある。これが駄目だった時の対策はこうすると、全部の対策がいる。それが安全設計の考え方。それは普通のプラントの中のシステムもそう設計している。だからこういうところも徹底的に適応すればいい。だが、過酷事故対策というのは、安全設計思想を適用しなくていいという考え方。だからそれは単なる場当たり的な、設計の立場から言うと、信頼性のある設計ではないというのが繰り返しの内容。そこが前から申し上げているが、私が気になっているところ。
それでなお今回ここで例の水素爆発が起こったのを先ほどのこれ(格納容器圧力の推移)で見ると、私のイメージでは、やはり2倍近くの圧力になっているため、それが一部どこかから漏れている可能性が高い。漏れると逆に閉じる。フラン時といって蓋、格納容器の上の部分がだんだん開いていく。開いていくとそこから漏れてきて、漏れると圧力は下がるから、落ちる。そういう可能性もある。そういう観点から、それによって核の容器はベントしなくても結果として格納容器から漏れて、それによって水素が出ていってそれに火がついた、という可能性が高い。
なお、格納容器の底から漏れたことに関しては多分、格納容器が爆発的に壊れるよりは、漏れる可能性のほうが高いのだが、本当にそうかどうかは保障の限りではない。ばらつく。例えばフランジの部分が頑張ってしまい、先に漏れると思ったら漏れなかった。どんどん圧力が上がっていく。構造的な部分が破壊したら爆発する。それは結果としてここから漏れたというだけであり、何の保障もない。可能性が高いと言っているだけ。事故というのはそういうもの。そういう意味でこの事故を考える時に、今の原発の設計思想は、いろんな手立てをしたから、確立が小さいとしている。これを確率論的な安全評価と言っている。確率論をベースにした設計にそういう考え方が一部入ってきているところが一番問題。それはいけない。やはり単一故障基準といって、あるシステムがあったら、あるバルブが壊れたらどうなるか。それについて対策をとる。少なくともそれくらいは過酷事故対策でとらなければ駄目。
もう一度まとめると、過酷事故対策に対する単一故障基準を適用しなさいと言っている。もう一つ、単一故障基準では、本体のシステムは甘い。主要のシステムについてはもうちょっと深くやるべきというのが、私の見解。そこまでやらないと今より安全になったとは言えないのではないか。これが私がずっと考えている安全設計の考え方です。是非安全委員会で過酷事故対策含めて考える時には、「今回非常にまずかった」と斑目委員長は言っているから、それを含めて是非検討していただきたい。
今日のベントのところから少し話を大きくしてしまったが、これを見ていてそういう思いを強くした。
今日の話は以上。
(澤井氏)
多重故障を考える?単一故障だけではいけなくて、多重故障になるということを考えるべき?
(後藤氏)
いくつかある。単一故障基準というのは、ある安全系が働いたら、その中のA系が駄目になったら、対策がある。Bが駄目になったらそれに対して対策がある。単一故障基準というのは、安全系のあるシステムを動かすためにはそのコンポネントそれぞれ一個一個壊していく。それでも大丈夫に設計してある。これが原発の設計思想。それだから安全だといわれてきた。それがおっしゃるように多重故障、同時に二つ以上起こることを考えていないから、
多重故障を考えなさいとそういう意味ですね?だから単一故障基準だけでは足りない。それともう一つは、過酷事故対策は、単一故障基準すら適用していない。これは全然設計上、当てにならない。「こんなことは起こりえない」と思っていたからこういう設計になっている。しかし、今回の地震で判ったことは、はっきりとこういうことが起こりうる、現実にあるわけだから。当然こういうことは全て考えなければならない。それとなお、これはきちんとした議論が必要だが、ではこの系を単一故障基準を入れて、格納容器ベントをすることが本質的安全かというと、そんなことはありません。格納容器をベントしなければいけないということ自身が安全設計上間違い。格納容器は便としてはいけない。ベントなしの格納容器にしてください!というのが私の考え。これが安全設計というもの。小手先の話という意味で説明したが、本当の意味での安全設計は、ベントするということ自体が根底から間違っている。そういうこと。

(質問)
②AO小弁が高線量で近づけないということだったが、もともと高線量だったのか、何らかの配管の破断などで高線量になっているのか、それはどうなのか?

(後藤氏)
私もそこは読み込みが出来ていないが・・・

(澤井氏)
そこに行くまでにどこかが高かったのかもしれないですね?高線量で現場にたどり着けないと・・・

(後藤氏)
「同9時半頃、小弁の開放を目指したが、付近の放射線量が高く、手動での作業を中止し、同10時17分中央制御室から機械操作で弁の開放を行った。」
つまり付近の放射線量だからわからないが、多分ちょっとくらい放射線量が高いところを通過するならやってしまうかもしれない。作業するバルブのあるところ、詳しくはわからないが、この周囲がかなり放射線量が高かったのではないかと思う。つまり、どこかの格納容器から漏れていると。漏れているから周囲の放射線量が高いと考えるしか、他にルートがない。格納容器から漏れているのは明らか。

(澤井氏)
放射能は中からしかこない。
1号機のベントの評価自体、このように成功したという政府の報告が、東電の詳しい調査によっては、全くベントできなかったのではないかと見られていて、この事故の経過自体もたくさんの検証がもっと行われないと真実がわからない状態になっているということが、今日のニュースではっきりしたと思う。またいろいろな解説を後藤さんにお願いしたいと思う。今日はこれで中継終了します。

【以上】

失礼します。