ツイッターでつぶやかれていたので、聞いてみました。この言論NPOは初めて知ったのですが、聞きやすくシンプルな内容ですので、抵抗無く聞いていただけるかと思います。崎山さんはCNICでもおなじみですね。
放射能汚染がどういうことなのか、もう一度考えて見ましょう。
「命を守るのか、電気を守るのか」

では、どうぞ。

司会:工藤泰志(言論NPO代表) 
【ゲスト】
崎山比早子氏 (元放射線医学総合研究所主任研究官) 
菅波完氏(高木仁三郎市民科学基金事務局) 
放射能汚染の問題をどう考える (18:42-)

(JFN系列「ON THE WAY ジャーナル『言論のNPO』」で2011年6月22日に放送されたものです)

【以下、時間のない方のために、内容を起こしています。ご参照ください】

(工藤氏)東日本大震災から3ヶ月たった。依然福島第一原発は安定せず、未だに放射能汚染が続いている状態。今回は、放射能汚染の問題をどう考えればいいか考えるために、ゲストを二人呼んでいる。崎山比早子さん(元放射線医学総合研究所主任研究官) 菅波完さん(高木仁三郎市民科学基金事務局)、よろしくお願いします。
  今日皆さんと考えたいことは、放射能汚染、どうしたら被害を最小にできるかということ。こういう問題提起そのもの自体に、いろいろ異論がある方もいらっしゃるが、まず僕たちはそこから入ってみようと思う。
早速議論を始めたいが、私がこの間感じて、悩んでいることがある。メディア報道含めて見ていると、放射能汚染の現状、現実をなにか軽く考えられているような感じがしてたまらない。あたかも時間が経てば、酔いがさめるように直っていく、そういう問題なんだろうか?真面目な議論でも「風評被害になってしまう」と、いろいろなことが真面目にがいえないような気配がある。ただ、現実をオブラートで包んでも、本質的に風評という問題は解決しない。その意味でまず現実をどのように僕たちは捕らえればいいのか 、お話を伺いたい。
(菅波氏)今、いろいろな情報が飛び交っている。このリスクをどう捕らえるかということで、皆さん混乱して、不安になっていると思う。その不安の原因の一つが、政府が「安全です。ただちに影響はありません」と言い過ぎている面がある。やはりこれは、放射能の影響というのは、崎山さんから詳しく解説してもらったほうがいいと思うが、やはり確率的なもので、すぐに人が死んでしまうようなリスクと、長くかかってだんだん発生してくる影響・リスクがある。それについて厳しく見る見方と、楽観的な見方と両方ある。その中で政府が発表していることが、極めて楽観的なことだけを流し続けることによって、むしろ不安が増幅している。その辺が問題なんだろうと思う。
(工藤氏)確かにそう。こういう場合は厳しく見たほうがいいですよね。
(菅波氏)そう思う。
(工藤氏)崎山さんは放射線の被害について、僕たちはどういう風に考えればいいのか?
(崎山氏)厳しく見るとか緩く見るとかそういうことじゃなくて、科学的な事実を事実として皆に知らせるということがいい。特に厳しくする必要もないし、緩くする必要もない。今まで放射線生物学が積み重ねてきた治験を、正確に皆に知らせるということが、理解を深めて風評を防ぐ。自分で判断する正確な知識を、皆で情報を共有することが、一番風評被害というものを防ぐ手段だと思う。正確な情報を流す。
(工藤氏)そうですね。正確な情報がないと、僕たちも対応できない。すると二つの意味がある。まず一つは、被災地の放射線の汚染という問題。なんとなく話題になったのが、校庭で子供たちが遊べる基準があって、それに対してこれで大丈夫か?という問題が広がっている。やはりどこまでが安全かを皆も知りたい。そういう不安がある中で、何かの基準を求め、でもわからないから、機械を買って(ガイガーカウンタ)確認したり、子供たちを転校させたり、つまり自己防衛せざるを得ない状況。この問題はどう考えればいいか?
(菅波氏)今被曝の限度について1mSVにする、20mSVに拡大するとか言われていて、特に問題になっているのは、子供に対して。本来大人よりも子供のほうが放射線への感受性が強いので、もっと厳しく安全側の管理を気にしなくてはいけないのに、それが出来ていない。今言われているのは、一時間に3.8μSVを超えるところであれば、外の活動を1時間に制限しなさいと、極めて緩い指導がされている。しかし、それは一般で放射性管理区域で労働者が入る時、その基準が0.6μSVだから、それよりも随分高いところで子供が遊んでいてもいいと行政が言っている。このことは冷静に考えればものすごく大きな問題であって、これが国の姿勢であっていいのか?と多くの不安を招いている。私たちは緩すぎると思っている。
(工藤氏)なんでそうなるのかという疑問があるのだが、この被曝限度1mSVとか20mSVとか、これどういうことなの?ということを崎山さんから説明してもらえるか?
(崎山氏)1mSVというのは、私たちの身体は60兆個の細胞で出来ているが、その細胞の真ん中に核があり、そこに身体の設計図であるDNAが入っている。そのDNAに傷が付くことが、放射線障害の一番重要な作用。私たちが害を受けやすい。そのDNAが入っている核に、平均して1本放射線が通るというのが、1mSVということ。例えば胸のCTを受けて10mSVというと・・・
(工藤氏)CTは10mSV?
(崎山氏)そうですよ。10本平均で放射線が通るという感じ。
(工藤氏)結果として今の被曝限度が人体に対する影響はどのようになるといわれているか?
(崎山氏)1万人の人が1mSVを浴びると、その中の一人、10mSVだったらその中の10人、100mSVだったら100人がガンになるということを、国際放射線防護委員会(ICRP)がこれ以下だったら安全だという閾値がない直線説に基づいて防護をしなさいという勧告を出している。
(工藤氏)閾値がない直線というのは、つまり、どれ以下だったら安全とかではなく、段階的に増えていけば、それに比例して増えるということですね。この国際放射線防護委員会の基準というのは、これは信用できる数字なのか?
(崎山氏)それは、一番きちっとやっているのが、アメリカの科学アカデミー。アメリカの科学アカデミーが今まで発表された非常に多くの論文を全部総合して、これ以下だったら安全領はない、直線説で計算したほうがいいということを発表するわけです。それを国連科学委員会が認めて、それからICRPにくるわけです。だからもともとはアメリカの科学委員会。科学アカデミーが全ての研究をまとめて結論を出した。それにしたがってやっている。しかし科学アカデミーのほうは、ICRPよりはちょっと厳しい。
(工藤氏)なるほど。これは今のICRPは、1年間で20mSVというのは20人くらいの人がガンになる可能性があると。では、子供の場合はどうなるのか?
(崎山氏)多分発表する人によって違う。子供の年齢によっても。このICRPのモデルも広島・長崎の被爆者を基礎にして出している。広島・長崎から出ている論文だと、0歳~9歳までの被曝と、たとえば40歳以上の被曝は、やはり10倍くらい違うんではないかというモデルが出ている。
(工藤氏)10倍。10倍っていうのは200人ということになる。するとやっぱり不安ですよね。
(菅波氏・崎山氏)当然です。
(工藤氏)それに対して、そういうリスクをきちっと考える。ただ今は見方がよくわからない。今日もテレビを見ていたら、海水浴場を開きたいので、基準を早く決めてくれと。基準について、その基準の中では安全だよという理解でいいのか?
(菅波氏)いや、それは他の公害でも環境基準があるようなものは、全て同じ。ここまでだったら安全ということはない。社会的にいろいろな産業との関わりの中で、産業上のメリットも考えて社会的に基準に合意してきている。
(工藤氏)つまり、本当は人体だけ考えれば、そこで泳がないほうがいいのだが、そこではいろいろな生活・ビジネスがあるし、大変な影響が出てしまう。これくらいだったら、何とか我慢できるんじゃないか、そういう目安だと思っていいか?
(菅波氏)それ以下に抑えようという社会的運用上の合意としてやってきている。実際、放射線の1mSVは、実情から考えると高い数字。そこまで現状がぎりぎりまでいっているわけではなくて、今1mSVだからいいというのは、かなり危ない議論。
(工藤氏)すいません。今1mSVはかなり高いとおっしゃったが、この前崎山さんの本を読んだら、一般の自然界でも放射能を1mSV浴びると書いてあった。それは高いと見たほうがいいのか、どうなのか?
(崎山氏)いや、それはやはり自然放射線というのは、どうやっても避けることはできない。鉛の家に住まない限り。食べ物を食べれば放射性のカリウムがあるし、内部被曝もしている。だから生きている以上は絶対避けられない。それプラス人口放射線を浴びることになる。自然放射線だから全く安全という保証はない。人口放射線も化学物質も全く無い大昔でも、ガンはあった。そういうガンはもしかしたら自然放射線が原因だったかもしれない。それは放射線であれば、人口も自然も同じでDNAを傷つけるということに変わりはない。だから全く安全だということではない。
(工藤氏)たぶんこの話は1回で終わるような話ではないと感じてきた。例えば汚染地域で、原発近くは退去・避難とかされている。それは同心円状ではなくて、風向きとかいろんな形があり、だんだんそれが拡散している状況。実際問題汚染地域の現状を見た場合、どうやったら直る?それとも、かなり厳しい自体だと思えばいいのか?どう考えればいいか?
(菅波氏)今もう既に出ている放射能の汚染の話と福島については、これからまだ出るかもしれない放射能もあるので、両方を考えなければならない。両方含めてやはり、汚染の高い地域から優先的に移動・避難するのは、いろいろなコストもかかるし、手順も必要。優先的に動ける人から手当てをして動いてもらうことは必要だと思う。
(工藤氏)なるほど。僕が気になっていたのは、確かに厳しいところは移る。ただ移ると一人暮らしの方など、結構社会的に逆に弱くなってしまうことがあり得る。だから、社会として政府も考えなければならない。一方で人の被曝の状況をちゃんとモニタリングして、どうなっているかをちゃんと見られれば、その人たちは安心する。そういうことはやってないですよね?やってるのか?
(崎山氏)やってないでしょ。WBCの数が足りないのだろう。高汚染地域にいる特に子供は、心配だったら測ったほうがいいと思う。
(工藤氏)それは、ガイガーとは違うわけですね?
(崎山氏)ホールボディカウンタは違う。
(菅波氏)違います。身体の放射線を測定する機械だが・・・
(崎山氏)あの空間線量の外部被曝はわかりますよね?そこにいれば、空気を吸ったり食べ物で汚れたりする。特に地方に行けば自家野菜など食べる。そういうのでもし汚れていたら、食べ物から内部被曝をする。やっぱり環境が汚れていると、それに比例して内部被曝も高くなるので、どうなっているか不安であれば、調べるといい。
(工藤氏)でもそれは最低限やらないといけない。
(菅波氏)そうです。やはり住民の皆さんの被曝の状態を管理して記録しておいて、それに対するきちんとした対応ができるように、今からしていかなければならない。
(工藤氏)よく被爆者手帳というやつ。そういうもので自分の被曝をわかっていないといけないですね。でもそうやって考えると、どうしてそれをやろうという動きが出ないのか?なぜ?
(菅波氏)福島県ではそういう話が出ている。そういうことを主張している人も出てきている。住民の方の被曝の管理はきちんとしていかなければならないと思う。
(工藤氏)やはり対応が後手後手。なぜ?命を守ることに関して、すごく軽視されている感じがするが、そういうのはおかしいか?
(崎山氏)いや、それは私も思う。命が第一で、命をまず優先するという政策というか考え方がない。私は、今思う。「命を守るのか、電気を守るのか」私たちは究極の問いの前に立たされている思う。
(工藤氏)なるほど。話が尽きなくて、僕もちょっといいとこに来たのにね!ッていう感じなんですが(笑)ちょっと時間がないので、この話は多分何回もやって、聞いている方も意見をどんどん寄せてほしい。自分たちの命を守らなければいけないだけではなく、こういう被害や大きな災害に対して、みんなが必要な考え方とかを共有する必要があると思っている。
 今度原発問題を6月23日に芸能スタジオという形で議論してみようと思っている。いよいよ僕たちも原子力発電、エネルギー、そして命の問題に対してきちっと議論していきたいと思っている。改めてありがとうございました。
工藤泰志 言論のNPO番組公式twitter : http://twitter.com/OWJ_WED
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