※この記事は、6月8日【内容起こし】名古屋大沢田昭二名誉教授×岩上氏@IWJ【その①】の続きです。

(46:58-)
(岩上氏)そういうメカニズムなんですか。
(沢田氏)雨雲とはまた違う微粒子があったのではなく、一旦上昇し水滴を帯びて黒い雨の元になったが、落ちてくる途中で蒸発してしまったということ。長崎でも多くの証言があり、「真っ黒い空に真っ赤な太陽が浮いていた。怖いから逃げたが着いてきた。」真っ黒い空は放射性微粒子が大気の中に充満していたから真っ黒く見えた。被爆者は雨には気づくが、微粒子には気づかない。被爆者は呼吸などで取り込んだことを意識していない。しかし、葉っぱの上に白い粉があったとか、水を飲んだりしているが、気が付かない。ときどき黒い煤のまま落ちてきて、黒い雪が降ったりしていたという証言もある。ということで、放射性微粒子が充満していたということは物理的に考えて当然である。それを被爆者は吸い込んでいるが、風に流されているので後で測りようが無い。雨は雨粒で落ちてきた微粒子が土の中にしみこんだものを測れる。しかし大部分は風で流され見えなくなっている。
(岩上氏)例えば地表に降り落ちた微粒子や放射性物質は、表土に降り積もっているので、測定可能では?
(沢田氏)しばらくはあったと思う。しかし2度の台風や大洪水で流されている。流された後は、放射線による病気は急速に起こらなくなった。ということを医者が証言している。「長崎の鐘」というアニメの話。当初は広島・長崎には人は何十年も住めないと言われていた。幸い流されたものだから、被曝影響が少なかったということ。
(岩上氏)なるほど。台風が来て雨で流されたということは、二つの側面がある。良いほうは、そこに暮らしている人にとっては、表土にあった放射性物質を流すことによって、ずっと放射線の影響を受けるということが少なくなった。被曝の程度が軽くなった。悪いほうは、アメリカの思惑を持った調査によれば、この内部被曝のもとにもなるだろうし、その後の残留放射線の影響も軽く見積もる「科学的根拠」になってしまった。実際には濃厚に残っていたかもしれず、流された後に取った数値でで研究がつまれたために、残留放射線の影響が軽く見積もられてしまった。
(沢田氏)それで私がどういう方法でやったかというと、被曝すると急性症状が起こる。急性症状の調査はたくさんある。日本の放射線研究者たちは、急性症状発生率から逆算し、放射線降下物の影響など調べる必要があったが、不思議なことに誰もそういった研究をしてこなかった。それは、放影研などが「放射性降下物の影響は少ない、無視できる」と言ってきた。そういうところで育った研究者たちが、日本の放射線影響学会の大部分を占める。
(岩上氏)そこ出身の人たちは、いわゆる何学会にいらっしゃる?
(沢田氏)放射線影響学会。僕は素粒子物理学という(湯川先生たちと同じ)研究をやってきたが、定年退職後、裁判に関わるようになり、それを明らかにする責任があると思った。(自身も被爆者であるから)被爆者はきのこ雲の下から考える。科学者たちはきのこ雲の上から考える。パゴシ会議などで核兵器をなくすために議論してきた物理学者たちに、広島で1995年初めてパゴシ会議が開かれ、原爆資料館に連れて行った。彼らは資料館をみて頭を抱えていた。「自分たちは核兵器廃絶のために議論してきたが、原爆資料館に行って初めてきのこ雲の下でどういうことがおこっているか、リアルに想像できた。自分たちに想像力が欠落していたことを今更のように思い知った。やはり自分たちは原子雲の上からしか見ていなかった」だから、ああいう被曝の実情を見て、原子雲の下から見なければいけないと口々に言っていた。被爆者はもともと下にいたのだから、そういう発想で考える。
(岩上氏)当事者性ということですね。当事者性の欠落と、俯瞰している視点というものも加工した視点で、上からみる視点など本来人間は持っていないはずなのに、頭の中ででっち上げてしまっている。
(沢田氏)被曝の影響の研究者たちは日本にたくさんいて、何十年間もそういう発想で、回り全体がそういう雰囲気だから、それに毒されていった。折角いろいろ調査結果があるのに、そこから引き出そうという努力をしなかった。
(岩上氏)今、まさに福島第一原発事故が起こって以降、たくさんの学者がTV・新聞に出てきて、私からするととんでもない発言をする人たちが、いっぱいいた。そういった人たち全員が放影研とは言わないが、放影研の影響は非常に大きく、ICRPのような国際機関と行ったり来たりしてる人がたくさん居る。そういう人たちが本当のオーソリティ専門家だといわれ、隣接する学問分野の人たちも、放射線の影響に関しては、この専門家に耳を傾けて影響を受ける。そういう中で今回の事故の放射線の影響というものを過小に評価しようと、できるだけ小さく見積もろうとするプロパガンダ、宣伝が延々続けられている。そういう歴史的背景がある。
(沢田氏)初めて放影研が遠距離の被爆者と近距離の被爆者の被爆者同士を比較したことを論文に書いたのが、ブレーメン大学のインゲ・シュミツホイルへーケさん、女性で専門は物理学だが放射線の影響の研究をしてきた科学者。世界的にも評価されている。今ヨーロッパ放射線リスク委員会の会長をやっている。彼女が初めて1980年代に、放影研の研究が被爆者同士を比べている、当時は、遠距離被爆者は初期放射線を浴びていない、だから、初期放射線を浴びていない被爆者ともっと初期放射線を受けた被爆者とを比べている。「これでは、駄目だ」と彼女が初めて遠距離被爆者と入市被爆者(=爆心地から概ね2km圏内に入った人)と日本人の平均と比較した。
(岩上氏)なぜこの比較の仕方では駄目なのか?
(沢田氏)彼女は、なぜだめであるかを論文に書いた。本当に被曝していないのは日本人の平均だが、それと被曝していない人とを比べないといけないと指摘した。
(岩上氏)それはちゃんとした研究にならないと。
(沢田氏)疫学研究という放射線の影響を調べようという場合は、全く放射線を浴びていない人と、放射線を浴びた人とはどう違うか、ガンが発生する時期がどう違うか、ガンによって死亡率が変わるかなど、そういう研究をしないと、研究にならない。ところが、遠距離の被爆者は、放射線降下物の影響を受けている可能性がある。本当はそういう人ではなく、全く被曝経験の無い人と比べなければならないのに、放影研が調べた対象は、遠距離被爆者と日本人だった。そうすると遠距離被爆者は、ちゃんと被曝をしているということを彼女は見つけた。入市被爆者も、早く入市した人は白血病の発症率が高い。日本人の平均に比べて2倍以上高いということも彼女が見つけている。それを論文に書いて出そうとしたが、そういう論文は科学雑誌に掲載されない。放射線の影響を発表する論文、何度も投稿したが、拒否され、しょうがないのでレターという形で(レターだと審査にかからない)出すことができた。そういうことが世界中で起きている。
(岩上氏)日本でも圧力が、そういうことが起きている。科学はニュートラルで中立的だと思っていたが、実は政治的な影響も受け、その枠組みの中で研究する。ゆがめられている。世界の中でもそれがあった。
(沢田氏)アメリカでもイギリスでも駆け引きを持っている国の政府は、科学者にお金を出すが、そうでない科学者にはお金は出さない。ということで、結局世界的に、主に研究している科学者(駆け引きを持っている)も多いので核兵器を持っている可能性もあるのですから。だから世界中です。日本だけではない。国際防護委員会もそういうう風に、政府にお声がかかるような人がいっぱい集まっている。放射線防護委員からお呼びがかかった。日本も放射線防護委員会に推薦させているが、経産省がまた推薦しているのだと思う。科学者団体が推薦しているものではない。
(岩上氏)制度的にそういう仕組みになってしまっているということですね?
(沢田氏)だから彼女のような研究をやってもなかなか掲載されない。1985、6年のこと。
(岩上氏)これはチェルノブイリの影響を受けてではなく?
(沢田氏)無い。
(岩上氏)時期的な近さもあり、ずっとその前から・・・。
(01:00:00-)
(沢田氏)彼女の動機は、DS86 という1986年に初期放射線をコンピュータで計算したものが初めてできた。そういう広島の初期放射線の研究結果が出せるだろうと予測して、そういうことだけじゃく他の影響も考えなければならないということに気が付いた。それで初期放射線の影響を受けていない人々の放影研がどうなっているかについて、疑問を感じた。彼女は、そこで放影研の、(被爆者と被爆者で無い人を比べることをコントロールというが)被曝をした人としていない人を比較して、しかしそのコントロール自身が被曝をしていたということに気が付いて、そのコントロールを本当に被曝をしていない日本人と比較することをやった。そして、「死亡率(ガン)はちょっと高い程度だが、発症率がはるかに高い」ことを見つけた。全体の死亡率は、コントロールの人たちは、日本人は死亡率が平均的に低いことも見つけている。
 なぜかというと、コントロールの人たちも、原爆手帳をもらっている。毎年検診があるので、ガンも早く見つかる。だから死亡率は低くなっていく。彼女はそういうことを指摘した。原爆症認定集団訴訟というものが2003年から始まる。その集団訴訟が始まるので、放射線降下物を調べることがより必要になると思った。先ほど言った、たくさんの急性症状の発症率のデータはたくさんあるので、その中でも国が否定できないのは、放影研が持っている1950年頃にABCCが調査した結果がある。その脱毛発症率を元にして、ほぼ同心円状に影響があると仮定して、研究した。調べた結果、すごく深刻だということがわかった。
これをちょっと見てください(資料のアップ 01:02:53-)
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(岩上氏)広島急性症状発症率と書いてある。
(沢田氏)こちらのほうが簡単。(資料のアップ 01:03:17-)
沢田昭二1


これは放影研の前身であるABCCが1950年ごろにABCCがこれから調査しようとする被爆者集団を、どういう被曝をしているかあらかじめ調べておこうということで、脱毛の発症率を調べた。爆心地からの距離ごとに、赤い四角が脱毛の発症率。調べられたとおり、初期放射線量は2km地点でほぼゼロになる。しかし、それよりも遠いところで脱毛が起こっている。しかし、放影研の人々は、この赤い四角から遠距離のほうは、わけのわからない影響で髪の毛が抜けたと考え、初期放射線のみに注目して研究したので、1990年代にストラームとミズノという研究者が、わざわざこのデータから初期放射線のみを引っ張りだすということもやっている。
(岩上氏)なるほど。
(沢田氏)それが所の方針ですから。で、遠距離の方は(初期)放射線の影響かどうかわからないと言っている。彼らは、遠距離の脱毛は「精神的なショック」が理由なのではないかと説明するが、日本の都市が空襲で焼け野原になっているのに、広島・長崎以外は、このような脱毛の現象は見られない。とすると、これは放射線の影響以外に考えられない。放射線だとすると放射線降下物の影響以外考えられない。逆算して、この発症率から降下物の影響を引っ張り出す必要がある、ということに気が付いた。
 実は今はもういないが、放影研にいた人がマウスを使って実験している。
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(資料アップ01:05:30-)白い小さい丸は、マウスを使って脱毛率の実験を行った。これも放影研の研究所で行った。正規分布(赤いカーブ)という分布になることが常識なのだが、発症率10%だったら、被曝線量が1.○SVかとわかるわけです。こうやって、さっきのデータを逆算して調べられる。
その結果がこれ。
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(01:06:18-)爆心地に近い1km以内は、たくさんの人が死んでしまっているので、データがよく無いだろうということで、さっきから求めるとこういうカーブ(赤い四角)が出てくる。近いところは初期放射線の影響をモロに受けている。推定被ばく線量はすごく多くなる。4Gyや(ほとんど4SVと考えていい)という、4SV 浴びると半分の方が亡くなる、そういう数値。
(岩上氏)この間、福島第1原発で、4000mSV、だから4SV検出された・・・
(沢田氏)だからこれだけの線量を浴びたら、急性症状を起こすし、すぐに亡くなってしまうとてつもない線量。それを浴びた人は幸い今のところ居ないだろうと思うが、迂闊に知らないで浴びたら、作業員が亡くなることが起こってしまうだろう。大体1km以内の人は、そういった線量を浴びているので、60日で半分が亡くなるという線量。初期放射線の影響を差っ引いてみると、距離と共に屋内被曝がメインだということで、赤い点線で下がっていき、2kmでほぼゼロ。この影響を全体から差っ引いてやると、降下物の影響が出てくる。降下物の影響はこう。初期放射線の影響と降下物の影響は(爆心地から)1200mで大体同じになる。それよりも遠距離は、降下物の影響のほうが大きくなる。これまで国が黒い雨を測ったもの、広島だと○○地域というが、ほとんどゼロ。それと比べると数十倍違うということが判った。この違いは主に内部被曝の影響が深刻だと示している。
(01:08:20-)
(岩上氏)なるほど。つまりここで内部被曝の話にふれなければならないわけだが、体外被曝=外部被曝と内部被曝は全く作用の仕方が違う。別に考えなければならない。ところが今も福島第一原発事故をめぐって大量の情報が報道されているが、どうも混乱している。内部被曝というものが、非常に軽く見られている可能性がある。この点について先生の考えを教えてほしい。
(沢田氏)外部被曝というのは、人間に入ってきて被曝をする時に、電離作用というのが根本。身体を作っている生体分子の原子を結び付けているのが電子。その電子に放射線がエネルギーを与えるわけ。エネルギーをもらった電子は、それまで原子を結びつける作用をしていたが、エネルギーをもらうと自分が飛び出してしまう。すると、今まで結びつける役割をしていた電子が飛び出していってしまうため、分子が千切れてしまう。これが電離作用。放射線の持っているエネルギーはものすごい。単位で言うと何万電子ボルトとか、何百万電子ボルト。電子が電離作用で飛び出すのは、せいぜい10電子ボルトくらい。だから、一発放射線がやってくると、何百万ヶ所も電離作用で一旦電子が飛び出していく。切断もそれだけ起こる。起こるが、その辺に電子がまだいるので、また繋ぎなおす、修復作用がある。
(岩上氏)修復というのはそういう風に行われるのですか。離れてる電子をもう一回呼び戻すような、やってくるというか・・・
(沢田氏)ものすごいエネルギーをもって飛んでいくので、呼び戻せないが、体内には電子がたくさんあるので、それを引き込んで修復する。
(岩上氏)なるほど。修復とはそういうことだったのか。
(沢田氏)切れたのを繋ぎなおすことをやっている。大量に切断されるが、ほとんど元に戻るから。しかし時々間違った修復をしたり、修復できなかったりということが起こる。そういうことが起こる割合は、切れた場所が近いと間違って繋ぎなおすことが起こりやすくなる。ということは、「電離作用が起こる密度が、濃いかバラバラか」ということで影響が違う。透過力が大きいガンマ線は、ポツンポツンと電離作用をしていく。電離作用をすれば、エネルギーを与えるから、自分のエネルギーが減る。しかし、ポツンポツンだといつまでたってもエネルギーが減らないから、ずっと透過力が強く、投下していく。しかし、ベータ線という電子は、それに比べれば、集中して電離作用をしていくので、エネルギーの減り方が早い。それでエネルギーを失って止まる。
(岩上氏)速度とか飛ぶ距離なども影響するのか?
(沢田氏)速度はものすごく速い。どんな放射線でも早い。速度が遅いほど電離作用の密度は高くなる。だから、だんだんエネルギーを失ってゆっくりになったら集中して電離作用を起こす。しかしもともと重いものほどゆっくり走るので、重いものほど集中して電離作用を起こす。アルファ線というのは、ヘリウムの原子核。負電子を二つ持っている分、余計に電離作用が強い。紙一枚も通り抜けられないくらいで止まってしまう。皮膚の表面に来たら、皮膚の表面で止まる。これがアルファ線。しかし、早く止まるということは、集中して電離作用が起きている。ミクロで見ると、傍でどんどんぶった切られるので、誤って繋ぎなおす可能性が急速に増える。
外部被曝のほうは、透過力の強い放射線が身体の中まで入ってきて、いろんな影響を与えるわけだが、内部被曝の場合は、そういった放射性物質を身体の中に取り込む。
(岩上氏)これは当然、放射性物質はいろんな物質があり、その核種によって出す放射線の種類も違う。そこで今話しにでているガンマ線、アルファ線、ベータ線などの影響の違いも核種の違いによって生じるのか?
(沢田氏)放射性物質の前に、放射線の微粒子が身体の中に入ってくるんだが、水に溶けるか溶けないか、油に溶けるか溶けないか。例えば呼吸をして放射性微粒子が5ミクロンより大きかったら鼻毛に引っかかって体内に入らない。5ミクロンより小さいと体内に入ってくる。1ミクロンより小さいと肺の中の肺胞という袋の壁から欠陥の中に入ることが出来る。血管の中に入った時、水に溶けやすいものであれば、微粒子はバラバラに溶けて原子分子のレベルになってしまう。例えばヨウ素だったら、その原子分子が甲状腺に集まりやすいとか、ストロンチウムだったら骨髄に集まりやすいとか、そうやって種類によってどこに集まりやすいか変わる。それが全身をぐるぐる回っている間に、大量に回っているから、甲状腺に集まりやすいヨウ素は、そこで濃縮されて大きなダメージを与える。水に溶けずに壊れないままだと、微粒子のまま身体を回る。どこかに付着すると1ミクロンの微粒子といえども、その中に何百万個の放射性原子核が入っている。付着したところで放射線を浴び続けるので、局所的に被曝をする。そういう微粒子が大量に身体に入ってくれば、身体のあちこちで被曝をしている。ということでいろんな病気を引き起こす。微粒子が水に溶けるか溶けないか、油に溶けるか溶けないかということでも違う。微粒子がどういう元素であるかということで影響が違う。そういうことを内部被曝の場合考えなければならない。外部被曝の場合は透過力の強さを考えなければならない。内部被曝の場合は、透過力の弱いものが・・・。
(01:15:55-)
僕がこの研究をやっていて典型的に明らかになったことは、「下痢」。
下痢は爆心地に近いところは、脱毛に比べて発症率が低い。それは、透過力の強いもの、ガンマ線などが腸の粘膜まで到達しないと、下痢を発症させない。腸の粘膜は薄い。ガンマ線が透過力が強いということは、まばらな電離作用しかしない。薄い腸の粘膜に、ポツンポツンとちょっと修復できる程度で透過してしまう。ものすごい強い量のガンマ線でないと腸壁に傷は残せないので、すごい放射線量を浴びて初めて下痢が起こる。国側も放射線影響の研究者たちは、「下痢が起こる線量というのは、人々が死ぬる4SVよりもっと10SVくらい浴びないと下痢は発症しない」と未だに言い続けている。
 しかし実は、1.5kmとか放射線降下物の影響が大きいところでは、脱毛や紫色の斑点ができるよりもはるかに下痢の発症率が高い。彼らは、放射線の影響ではないというが、下痢は身体の中に入ってきた時、内部被曝だと透過力の弱いものが集中して影響を与える。つまり低い線量でも発症率が高くなる。こういうことが放射線の影響を調べると明白だった。そういうことを研究者が明らかにすべきだった。
(岩上氏)これはネットなどで紹介している論文ですか?これは意見書も付いてますね。
(沢田氏)裁判で使ったから。裁判のものはあまりネットでは公開されていない。
(岩上氏)これは公開しないようにしているのか?
(沢田氏)いや、大丈夫です。
(岩上氏)これを我々でUPしてもかまわないか?
(沢田氏)OKです。差し上げます。
(岩上氏)ありがとうございます。こうやって見てくれている視聴者の中に、もっときちんと読みたいという方もいると思うので、その為にレファレンスをつけたいと思う。
(沢田氏)これはかわなかゆうこさんという岡山の裁判所で敗訴し、今控訴しているのだが、27の判決では被爆者の側が勝利しているが、唯一岡山地裁だけが、一人しか原告がいなかったこともあるが、全く放射性降下物の影響を考えないで判決を出しているから、今控訴している。彼女は4kmで被曝している。4kmだとかなり放射線降下物の影響を受けていることは明白。これは先ほど言ったおくけんさくさん、広島のお医者さんが、特に中心地に出入りしなかった被爆者(中心地に出入りすると、残留放射線の影響受けるが、)、そして屋外で被曝すると火傷などで病気になる可能性があるような屋内被爆者と、分けて調べているのはおくさんしかいない。すごく貴重なデータ。彼の研究結果によると、四角が脱毛、丸が皮下出血。この二つはほとんど距離と共に共通している。しかし下痢(三角)については、近距離は逆に発症率が低い。
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(資料アップ 01:20:30-)
 この違いを説明するためには、近距離は、初期放射線による外部被曝、つまり透過力の強い放射線が腸の粘膜まで傷つける。それは大量に浴びなければならないから、発症率が低くなっている。遠距離は、放射性降下物の影響で内部被曝、つまり透過力の弱い放射線が影響を与えているという説明ができる。これをやったのは僕が初めて。
 こうした被曝したデータをちゃんと解析すれば、外部被曝・内部被曝の違いは解る。それを全然今までやってこなかった。僕は素粒子専門だから、それまで放射線の影響など研究していなかったが、こうやって研究すると脱毛・皮下紫斑・下痢の症状を比べると、全部違った急性症状を同じ線量で同時に説明できることを見つけた。論文を書いて投稿するが、雑誌に掲載すると大混乱が起きる。科学的な拒否の理由ではなく、「今までと全然違うから、大混乱が起きる」ということで掲載を拒否される。
(岩上氏)どこの雑誌でしたか?
(沢田氏)オックスフォードの出している国際的な雑誌「Radiation Protection Dogimatory」。先ほどのヨーロッパの放射線リスク委員会も自分たちが出した論文のほとんどが毎回拒否されるから、「あなたも根気強く続行しなさい」と激励してもらった。
(岩上氏)ヨーロッパ放射線リスク委員会=ECRRですね。ECRRについては、いろいろな形で中傷されている。私がツイッター等で少しECRRに触れると、匿名だが恐らく専門知識をかじっている方がせつせつと中傷してくる。こうしたECRRに対する強い批判・非難は根拠があるのか、ないのか?その前提として、先ほど話しかけたが、ECRRはチェルノブイリ以降、科学者の集団として結成されたそうだが、どういう人たちのどんな集まりなのか?その上でECRRを評価するとどうなるか?
(01:24:23-)
(沢田氏)かなり個性の強い人もいる。個性が強くないとああいうところでは頑張れないとは思うが、インゲ・シュミツホイルへーケが会長をしているが、その前はアリス・スチュアートさん(すでに90代で亡くなったが)、彼女は子供の白血病が起こることを一番最初に研究した方。イギリスにおいて真剣に研究された。ロザリー・パーテルさんはカナダの研究者だが、これに関わっている。彼女はアメリカの核実験に参加した兵士たちの裁判で証人になり支援した。内部被曝に関しても丹念に研究をしている。僕が尊敬するようなすばらしい研究者がたくさん含まれている。
(岩上氏)女性が多いですね。
(沢田氏)女性のほうが自分の思っていることをやれるのかもしれない。
(岩上氏)アメリカ或いはヨーロッパといった地域の区分け、ICRPはアメリカの研究者が多い、ECRRはヨーロッパが多いと。
(沢田氏)2008年にギリシャのレスポス島に招待されてエーゲ大学の環境学部とECRR共催で行った国際会議に行った。今話した内容の報告をした。チェルノブイリを研究しているロシア、ウクライナ、ドイツいろいろなところから集まっていた。それぞれすばらしい研究をしている。だから、ECRRを一概に批判するというのは、全然あたらないと思う。そこに集まった人たちが、共通に考えていることは、「国際放射線防護委員会が、内部被曝についてまともに考えてくれなかった」ということ。

その③へ続きます。